第七十八話 違った【ステラ】
あの土地から離れたことはなかった。だから野宿なんて初めてだ。
みんなと夕食の支度をして、そのあとは焚き火を囲んで・・・それだけで本当に楽しい。
戦いなんて無くなって、こんな日がずっと続いてほしいな・・・。
◆
「ねえ、聞きたかったんだけどさ。女神様ってなんでジナスに負けちゃったの?」
ミランダが太めの木を火に投げ入れた。
揺れる炎はみんなの顔を赤く照らし、夕陽に染まっている時と似ている。
「気になるの?」
「あ、オレも気になってた」
ニルスも話に入ってきてくれた。
これは嬉しい、でも・・・。
「なんでかは私もわからないの。・・・女神は優しいから、言いくるめられたんじゃないかな」
「意外ね。・・・神様ってなんでもお見通しって思ってた」
「本当にどうにもならなかったのかな・・・」
まあなんでもいい、話せれば嬉しいからね。
「・・・僕はなんとなくわかる。ジナスの所に話しに行った時にまじわって、そこでやられたんだよ・・・」
シロが真顔で細い木を折った。
ああ・・・そういうことかも。
「まじわって・・・なにそれ?」
ニルスは炎に手をかざした。
私が教えてあげよう。
「求愛みたいなものだよ」
「そうなのか・・・女神がジナスと・・・」
ニルスはちょっとだけ恥ずかしそうな顔をした。
想像してる?
「女神はジナスが変だって気付いてたんだよね?・・・なんでまじわったの?」
「女神は甘いのよ。きっと愛で止めてみろ・・・とか言われたんじゃない?」
「神なのに情けないな・・・」
女神は「愛」って言葉に弱い。
ジナスの言葉に偽りがあることはわかっていてだろうけど、それでも自分の愛を伝えれば心を入れ換えてくれるはず・・・って感じかな。
「女神様はね、色んなことができるけど全能っていうわけじゃないんだ」
シロがニルスに微笑んだ。
「そう、それにけっこう感情的なのよ」
「人間とあんまり変わらないんだな・・・」
ニルスは、私の話にも反応してくれる。
あまり焦らずに・・・でも距離は詰めていかないとね。
◆
スナフを出て五日目、なんだかうまくいかない・・・。
「ニルス、よかったら二人きりで話さない?女神とか魔法とか精霊とか、気になるなら色々教えてあげるよ」
「え・・・いや、いいよ」
ニルスはどうしてか私を避けている。目が合うと逸らすし、誘っても来てくれない。
ミランダとシロが間に入れば喋ってくれるけど、私と一対一にはなりたくないって感じだ。
『大丈夫だよ』
『うん、なんの心配もいらない』
シロとミランダはニヤニヤしながら教えてくれた。
でも、肝心なところは言ってくれない。
うーん・・・嫌われてはいないと思うんだけど、どうすればいいかな・・・。
◆
「ねえ、ニルスがあんまり構ってくれないの」
ヴィクターに聞いてみた。
よく二人で話してるから、なにか聞いてるかもしれない。
「そんなことはないでしょう。語り掛ければ答えてくれるではありませんか」
「いや・・・そうなんだけどさ」
「心配無用ですよ」
ヴィクターも呑気な顔だ。
とは言われても・・・。
「ニルス、今日も綺麗にしてあげる。さあ、服を脱いでさらけ出せ」
「やめろ・・・湯浴みを出すから待ってよ」
ミランダとはけっこう距離が近いのよね・・・。
「待てん!!」
「自分だけずるいぞ!最近隠れて着替えてるけど、オレのは見てくる」
「おじいちゃんの視線が気になるからよ!」
「いや、そんな感じじゃないぞ!」
まあ、あそこまでとは言わないけど・・・。
「どうしたらいいかしら、いつも一緒に話してるでしょ?」
「ニルス殿はステラ様のことを嫌ってはおりませんよ」
「言葉が足りないわ。どうしてわかるのか教えなさい」
「・・・ミランダ殿から口止めをされています」
ヴィクターは目を逸らした。
三人で組んでたのか・・・。
「あなた・・・私の騎士じゃなかったの?」
「・・・」
「言いなさい」
「・・・二人きりだと恥ずかしくなって話せないと言っておりました」
「え・・・」
胸を打たれた。
それは、私に特別な感情を持ってくれているってこと・・・。
ミランダの言った通りだ。少年ニルスは、まだその感情がわからずに戸惑っている・・・。
「わかった。ヴィクター、明日は協力なさい」
「承知しました」
「あら素直ね。またいじわるするのかと思った」
「今あなたは真剣にニルス殿の心を知ろうとしています。そのために悩むこと・・・それが大きな幸福に繋がるのです」
ヴィクターは優しく微笑んだ。
つまり、私が悩んでいるのを知ってて教えてくれなかったのか。
「色々経験してほしいってこと?」
「そうです。あなたには幸せになっていただきたい」
「・・・ありがとう」
幸せにか・・・流れる前に、今までの騎士たちも私に似たようなことを言ってくれたっけ・・・。
みんないい人たちだったな。
◆
テントに入ると、睡眠が必要な人たちは寝てしまった。
さて、明日どうするかを考えるか・・・。
「どうして・・・来てくれないの・・・」
ニルスの悲しそうな声が聞こえてきた。
スナフを出てから毎晩こうだ。心の傷が夜に開き、子どものような声でうなされている。
「・・・またなの?」
ミランダが起きてしまった。
「私がやるから心配しないで寝てていいよ」
「・・・うん、お願いね」
「ミランダ殿、不安なら儂が添い寝をしてやろう」
ヴィクターはずっと起きていたみたいだ。
「おじいちゃんさ・・・毎晩胸揉んでんの気付いてるからね。奥さんに報告するために全部覚えてるから・・・」
「・・・ナツメのが恋しいだけじゃ。それだけは許してくれ・・・」
「とりあえず今日はちょっと張ってて痛いからやめてね」
「・・・」
仕方ないおじいちゃんだ。
「二人とも静かにしてあげて」
シロだけが大人って感じね。
・・・今はニルスに集中しよう。
「大丈夫よニルス・・・私がいるからね」
安らぎの魔法と抱擁、これですぐに治まってはくれる。
でも、毎晩は異常だ・・・。
アリシアが付けた傷はとても深い、だから・・・許せない・・・。我が子に・・・。
◆
「今まで気を抜いていたけど、夜は守護の結界を一応張っておくね」
六日目の夕暮れ、シロが私の耳元でそっと囁いた。
結界か・・・なんにも考えてなかったな。たぶんジナスは、私がスナフを離れたことに気付いてないとは思うけど。
「大丈夫なんじゃないかな・・・」
「一応だよ。僕たちの居場所は探るかもしれない」
「言われてみればそれはあるわね。じゃあ、お願いするわ」
私がやってもいいけど、あとから面倒だしシロに任せることにした。
疲労も反動も、まったく無いって便利よね・・・。
「あと、気になってたんだけど、あのテントとかもシロが作ってあげたの?」
シロならおうちなんかも余裕で作れるはずだ。
テントの中は楽しいけど、どうしてあれにしたんだろう。
「違うよ、馬車以外は全部ニルスが買ったんだ」
「え・・・どうして?あなたたち精霊はなんでも作れるじゃない」
「お買い物楽しいから・・・まだ食材はたくさんあるけど、次はステラも一緒に行こうね」
特に深い理由は無かったみたいだ。
買い物か・・・私もしたいな。
「それに、なるべく人間の仕事を取っちゃいけないと思った。馬車は仕方ないけど、お鍋とか野菜とか、作っている人がいるからね」
「たしかにそうね。あなたたちは命の手助けくらいでいいと思うわ」
「よっぽどじゃなきゃね。魔法だって本当は与えちゃいけないんだよ」
「そういうのは女神が解放されたあとに直接伝えなさい」
私に言われても仕方ないからね。
「それと、移動が馬車なのも気になるわ。楽しいけど、急いでいるのなら鳥の人形を作って飛べばいいと思う」
「ミランダが高いとこダメなの」
・・・なるほどね。誰も逆らえないわけか。
時間はあるからそうしたんだとは思う。よっぽど切羽詰まっていれば、ミランダも我慢して従ったんだろうな。
◆
「ニルス、ミランダがキノコのスープにしてって言ってたよ」
「そうなんだ・・・。じゃあこれを薄切りにして入れよう」
「私がやるよ」
「あ・・・うん」
食事の支度は一緒にやるようにしていた。
少しでも距離を縮めたい。
「ミランダは濃い味付けが好きよね」
「・・・そうだね」
「シロはなんでもおいしいって食べてくれるよね」
「・・・いつもそうだよ」
味気ない会話だ。でも、少しずつでいい。
恥ずかしそうだけど、言葉を交わしてくれるからね。
◆
「さて、鍛錬の時間じゃな」
「今日はおじいちゃんも僕の人形と戦ってみる?」
「そうじゃな。それとミランダ殿の実力を見たい、もう少し広い所に行こうか」
「いいよ。ニルスの攻撃だって防げるんだから存分に打ち込んできてよ」
夕食のあと、ヴィクターは約束通り二人を連れ出してくれた。
さて、私は・・・。
「私たちはお片付けしよっか」
「そうだね・・・」
「あっちに行きたい?」
「いつもは誘ってくれるから・・・」
たしかにそうだ。きのうまでは一緒にやってたのに、急にこうされると違和感があるよね・・・。
まったく・・・もうちょっと考えてほしかったな。
◆
「あ・・・気が付けば二人きりになってたね。・・・ねえニルス、今日は鍛錬をお休みしてお喋りしようよ」
食事の片付けが終わった。
あとはもっと近付く・・・。
「お喋りって言われてもな・・・別に・・・」
「なんでもいいんだ。あなたと一緒にいたいの」
「・・・」
ニルスは私の隣に座ってくれた。
でも、困った顔・・・きのうまでなら引いていたけど今日は攻める。
「じゃあ旅の話ね。この戦いが終わったら、私も旅に連れて行ってほしいの。ミランダとシロはいいよって言ってくれたんだ」
「・・・そうなんだ。オレも構わないよ」
私だから?それとも二人がいいって言ったから?
・・・聞いてみたいな。
「ねえ、一番最初にニルスに聞いても・・・いいよって言ってくれた?」
「え・・・まあ、そうかな・・・」
ニルスはちょっとだけ嬉しそうに言ってくれた。
いい感じなのかも。もう少し世間話をして・・・。
「あ・・・石鹸はどの香りが好き?」
「え・・・やっぱり色付く朝・・・かな」
「そうなんだ。じゃあ、ニルスの香りって名前に変えようかな」
「そんなことしなくていいよ」
ああ、いい感じかも。
「あはは、冗談だよ。あ、知ってる?同じ石鹸でも使う人によって香りが変わるんだよ」
「そうなの?」
「うん、例えば汗とか・・・そういうのが混ざると変わってくるの。色付く朝とニルスは・・・とても魅力的な香りがする」
私はニルスの首筋に鼻を近付けた。
やっぱりいい、あなたに一番合う。
「そ、そんなに近付かなくても・・・」
「だって、ちょっと真面目なお話になるから・・・」
このまま本題に入ろう・・・。
「ねえニルス、毎晩うなされているけどなにか嫌な夢でも見てるの?」
真実は知っているけど、それは見破られないように話した。
「・・・」
ニルスは答えずに目を閉じた。
あなたから直接聞きたい、心の中を私にも見せてほしい。
「とても苦しそうに見える。・・・勝手だけど、抱きしめて安らぎの魔法をかけていたのよ。あとはよく休めるように深い眠りの魔法も・・・」
「そうか・・・自分でも気づかなかった・・・。ありがとうステラ」
これで少し緩んだ。
このまま最後まで聞き出す。
「悪夢でも見てるの?」
「悪夢・・・たぶんそう・・・途中から変わるけど・・・」
「途中から?」
「みんなが・・・ステラが・・・いや、なんでもないよ」
ニルスはなにかを言いかけてやめた。
もう一歩、こっちから踏み込んであげないとダメか。
「夢の話を教えてほしい。私はあなたの力になりたいの。だって、もう仲間でしょ?」
「・・・笑わない?」
「大丈夫だよ。恥ずかしいなら顔を上げなくてもいい」
これで安心してくれたかな?
「・・・」
ニルスがまた目を閉じた。
「これは・・・父さんにも、シロにも、ミランダにも・・・恥ずかしくて話したことないんだ」
「私にだけ教えてくれるってこと?」
「なんでだろう・・・ステラになら話せる気がしたんだ。あ・・・」
私はニルスの肩に頭を預けた。
言葉にはしなかったけど「嬉しいよ」って意味だ。
「その理由も知りたいな」
「シロとミランダもそうだけど・・・夢で助けてくれた時に・・・ステラが一番安らぎを感じたから・・・」
ニルスは焚き火を見つめて黙ってしまった。
どう話すかを整理しているのかな?
助けたからっていうのは安らぎの魔法のこと?
まあ・・・あとは待っていればいい。
◆
「・・・見る夢はいつも同じような内容なんだ。・・・オレは長い坂を登ってる。その坂の頂上は見えているんだけどとても遠い・・・」
長い沈黙が終わり、ニルスは夢の話を始めた。
私のためだけに教えてくれること、聞くからにはすべて受け入れる覚悟が必要だ。
それは・・・もうできている。
「・・・頂上にはアリシアがいるんだ。オレの方をただ見ていて・・・早く行かないといけないんだけど、どれだけ進んでもたどり着けない・・・。いつの間にかアリシアが消えていて暗闇・・・そんな夢」
「・・・悲しいの?」
「どうしてただ見ているだけなのか。どうして迎えに来てくれないのか。夢の中でオレが思っているのはそれだけなんだ。たしかに消えると悲しい・・・のかな」
近付こうと頑張っているのに向こうからはなにもない。それでもいつかアリシアは自分の所まで来てくれる・・・そんな感じかな。
ジナスが弱点として突くくらいだから、母親の存在はかなり大きいのね。
「私はアリシアのことをよく知らない。あなたにとってどういう存在か教えてほしい」
「・・・とても強い人。オレよりもずっと・・・」
「・・・なにがあったの?」
「始まりは・・・八つの時だったと思う・・・」
ニルスは静かにため息をついた。
全部、真剣に聞こう。
◆
「・・・行かないでくれとか、そういう言葉が欲しかったんだ」
ニルスは私にも過去を話してくれた。
「・・・不器用なのね」
「・・・自分もそうだと思う」
少しだけアリシアへの印象が変わった。
それは当事者のニルスが一切彼女を悪く言わなかったからだ。
アリシアは愛を与えられないのではなく、伝えるのがあまり得意ではないんだろう。ただ、自分の子どもにそれはいけない。
・・・やっぱり許せないわね。
「アリシアと会うのが恐い?」
「大丈夫だよって二人には言ってるけど・・・恐い。・・・なんでかな、ステラには言える・・・」
ニルスの声が震えた。
信頼はあるけど、ミランダとシロには見せたくない顔もあるんだろう。
「ジナスにまた負けるかもしれない」なんて、あの二人にそんなこと言えるはずない。
ずっと抑えてきたけど、あとひと月もしないうちにテーゼに着く。
不安は大きくなるけど、頼りにされているのがわかっているから相談もできない。
本当はミランダとシロにも思いを打ち明けてほしい。みんなで支え合う、それができるように私が繋いであげたい。
だから、もっと心を教えて・・・。
「お父さんのことはどう思ってるの?シロから少し聞いたけど、その精霊鉱はお父さんなんでしょ?」
「そうだよ。・・・父さんは、とても愛のある人だった。オレもそうなりたい」
「・・・私も会ってみたかったわ」
「姿は無くなったけど、ここにいる・・・一緒に旅に出たんだ」
ニルスは胎動の剣を力強く握った。
その剣の名前は「ルージュ」大切な妹の名前が付けられている。
ニルスにとっての光、そういう存在なら私も仲良くなりたいな。
「まだ・・・なにか聞きたいことはある?」
ニルスは少しだけ緩んだ顔を見せてくれた。
そうだな・・・あとは、あなたにとって私が必要って思ってもらえるような話がしたい。
「そんなにないかな、色々話してくれてありがとう。アリシアへの不安はわかったけど、テーゼに着いたら会わないわけにはいかないと思う。その時はちゃんと話せそう?」
「・・・心を凍らせるんだ。昔はできる限りそうしてた。・・・もし、みんなに素っ気なくなったりしても気にしないでほしいな」
ふふ、「気にかけて」って言ってる。わかるよニルス、もっと寄り添ってほしいんだよね?
「もうそんなことしなくて大丈夫だよ。私はあなたの味方、なにがあっても守ってあげるわ。だから・・・私のことを愛してほしい」
きっとニルスはこういう気持ちをアリシアから貰いたかったはずだ。
「愛して・・・」
ニルスが私の顔を見てくれた。
振り向かせるためもあったけど、心からの気持ちでもある。
だから・・・響いた。
「ステラ・・・」
「私の前では強がらないで、いつでも抱きしめてあげる」
「・・・」
ニルスは私に体を預けてくれた。
まだ母の愛が足りない、そっちを満たすのが先だ。女として意識させていくのはそのあとかな。
◆
「・・・夢の続きを話していい?」
ニルスが私の胸から顔を離した。
そういえばみんな助けてくれたって言ってたわね。
「聞きたいな、教えてほしい」
さっき言いかけたこと、その続きってことだろうから。
「・・・暗闇の中でオレは泣いているんだ。・・・父さんが来ると頭を撫でてくれた。ミランダは柔らかい胸で抱きしめてくれて、シロはオレの手を強く握ってくれて・・・そしてみんな大丈夫だよって言ってくれる。でもステラは違った・・・」
「夢の私はどうしてくれたの?」
「・・・やっぱり内緒」
「教えてくれるまで離さないわよ。みんなそろそろ戻ってくるんじゃない?」
ちょっといじわるだけど、どうしても聞きたい。
夢の私は何をしてくれたのか・・・。
「えっと・・・唇を・・・」
「唇を?」
「重ねてくれた・・・なによりも幸せな夢、ここ数日はそうだった」
私はニルスを抱きしめていた腕をほどいた。
あなたも私との距離を近付けたいって思っていたんだね。
「ニルス・・・顔を上げて」
「え・・・」
できるだけニルスの夢と重なるように・・・。
私も初めてだったけど、ニルスが感じた幸せはこういうものなのかな?
このまま二人だけの世界で時間が止まればいいのに・・・ずっと重ねていたい。
◆
焚き火の炎が弱くなってきている。
でもニルスの腕の力は強い、まだ重ねていたいってことなんだろう。
「おじいちゃん、ああいうのは守らないの?ステラが押し倒されたら騎士失格よ」
「・・・ステラ様がそうされたいのじゃ。それにニルス殿なら構わん」
「ねえ、いつ戻ったらいいの?それとも、また向こう行く?」
声が聞こえる。できれば、もっと抑えて話してほしい。
ニルスは・・・聞こえてないみたいね。
そろそろ離れないとみんな戻ってこれないか・・・。
私は余韻が残るようにゆっくりとニルスから離れた。
「不安になったら言いなさい。全部私が吹き飛ばしてあげる」
「オレは・・・寂しがりらしいんだ・・・」
「うん、だからこれからもいっぱい話してほしいな」
「・・・ありがとうステラ」
精霊とは違うけど、これで私とあなたには強い繋がりができた。
これから一緒にいる日々で、誰であっても断てないものにしていこう。




