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Our Story  作者: NeRix
気の章 第三部
377/481

第三百六十二話 消えた思い【ニルス】

 「風がさ・・・飛び出しちまえって言ってたんだよ」

ティムの言葉で、談話室にいた何人かの目がオレに向いた。

なぜ・・・。


 「・・・なに?」

「・・・ニルスじゃないのか?」

母さんが真面目な顔で言った。

 「何言ってんの?」

「そういえば、お前が家を出たのはアカデミーが終わる日だったな。・・・ティムの歳とも合う」

十五の誕生日・・・。

たしかにあいつは二つ下だけど・・・知るかよ・・・。


 『お・・・見てニルス、そういや今日はアカデミーが終わる日だったね』

でも、テーゼを出た日はそうだった。


 『世界には、あなたよりも不幸な子はたくさんいるんだ。旅をする中で出逢ったら、助けになってあげてね』

セイラさんが色々話してくれて・・・。

 『・・・どこで聞いたか、何かで読んだか忘れたんだけど、風は心でできてるんだって』

『心・・・』

『うん、なんか素敵だなって思うんだ。ふふ、ニルスは風神くんだっけ?』

セイラさんが教えてくれて・・・。


 『というわけで、ニルスの心も風に乗せてみよう。風神くんならできるんじゃない?』

『・・・風に乗せるのは、どんな心?』

『そうだな・・・じゃあ、今不幸な子への助言とか。届いたらいつか出逢えて、仲間になってくれるかもね』

まさかな・・・。


 でも、あの時に飛ばした思いは・・・。

いや・・・偶然だろう。



 「ちょっと静かにしてよ。聞こえないでしょ」

ミランダがオレを睨んできた。

言うことは聞いておこう・・・。


 「魔女は趣味が悪いですね・・・」

「あんたほどじゃないよ。・・・よくやるわ」

「愉快かと思っただけです」

ハリスも来ていた。

もちろん、リラとチルもだ。


 よくないこと・・・わかっているけど、ここにいる全員で会議室の話を聞かせてもらっている。

 

 『リラ、チル、どっちでもいいから精霊の耳貸して』

ミランダは戻るなり二人に声をかけていた。

 会議室を貸したのはこのためだったのかな・・・。

まあいい、今は向こうの声に集中しよう。


 「ティム様が戻らないことで、あの女は激怒していました・・・」

「・・・なんかされたか?」

「いえ・・・探してこいとだけ・・・。そこでティム様の鞄と書き置きが見つかりました・・・」

話はまだ終わっていない。

なんていうか、知っておきたい。

 「あの女は書き置きを見て・・・もういないティム様をシャルメル様と共に嘲りました」

「あのババアか・・・。まあ・・・別にいいや」

ババア・・・先代のことか?


 「その夜・・・何人も屋敷を去りました。今のティム様のことは・・・その全員が知っています・・・。みな返事をくれましたから」

「俺は・・・戻った方がよかったのか?」

「いえ・・・今のティム様が幸せだとわかり喜んでくれています。ご自身で決めたことを間違っていたとは思わないでください」

辞めた使用人たちもみんなティムを愛していた。

助けられなかったことをずっと悔やんでいたんだろう。



 「飛び出してからは、南を目指してずっと走ったんだ。全然疲れなくて、倒れて寝て、起きたらまた走った」

ティムの声が明るくなった。

ここからは、暗い思い出は少なそうだ。


 「何日かそれを繰り返してたけど、調子が悪くなって動けなくなったんだ。その辺に生えてる草とか食ってたせいかもな・・・」

・・・そういうところは今と変わらずバカだったわけか。

 「なんとかオーゼの川までたどりついて・・・そこで意識が無くなったんだ。次に気付いたら、ほとんど裸の女に抱かれて水の中にいた・・・」

「はい、それは私です」

オーゼの綺麗な声が聞こえた。

そういやそうだったな。


 「あなたが・・・」

「あ・・・まだお名前も・・・」

「水の精霊オーゼです。気まぐれもありましたが、なんだかかわいそうだから助けました」

「シロ様やカゲロウ様と同じ・・・」

「そうですね。あの頃の私は大体川にいたので」

そのままオーゼと一緒にいれば、オレたちともっと早く出逢っていたのかもしれないな。


 「お魚とか木の実とか、大丈夫そうなのを食べさせてあげたの。あ、でも・・・生は・・・無理だよ・・・って文句言われたわね」

急に子どもの声が聞こえた。

 「ティム様の声・・・」

「そうです・・・かわいらしい声でした」

「・・・やめろ」

オーゼが出したみたいだ。

意外だな・・・「生で食えるわけねーだろ」って感じだと思ってた。


 「なぜか警戒されていて、その時は名前も教えてくれなかったのよ」

「半裸のやべー女にペラペラ話せるかよ・・・。もしかしたら食われるんじゃねーかって思ってた・・・」

そう言われたら・・・ちょっと怖いかもしれないな。

 「とりあえず身体も元気になったし、どうするのって聞いたら・・・北部にはいたくないから、南部に行く・・・って言ってたわね」

「真似すんな・・・」

「まあ、止める理由も無いから送り出したのよ。お金も渡したわね。けっこうあったんでしょ?」

「二百万くらい・・・」

二百・・・なんでオーゼが持ってたんだろ・・・。

 

 「お金まで・・・」

「水の中に落ちてるのを集めてあげたのよ。当面は大丈夫だったみたいね」

「ああ・・・助かったよ」

なるほど、だからなんとかなったのか。



 「最初に買ったのは剣だった。強くなって・・・あいつらに復讐してやろうと思ったんだよ・・・」

ティムの声が少し低くなった。

 自由を手に入れたのにまず考えるのがそれか・・・。

相当辛かったんだろうな。


 「まずは勝てそうな魔物を相手にしていった。山、森、海・・・一人でなんとかなってて、自信も付いてきた」

「あたしと出逢ったのはそんくらいの時だな」

「あ・・・すみません。あなたは・・・」

「モナコ・フランジャー、大陸一の薬師だ。今は精霊の城にいるけど、旅をしながら薬を売るのが本業さ」

モナコの嬉しそうな声が入ってきた。

どんな出逢いだったのか・・・。


 「薬の材料集めのために入った森でテント張ってたら、こいつのうめき声が聞こえたんだ。まあ・・・詳しくは言わねーけど、ヤバいキノコ食って錯乱してたんだよ」

「森で迷っちまったんだ・・・。買い込んでた食料も尽きて、それで適当に食った・・・」

一度その辺の草で危険を知ったはずなのによくやる・・・。

 「とりあえず、縛ってテントにぶち込んだ。診てすぐに原因がわかったから処理・・・いや、処置してやったのさ」

「ああ・・・感謝してるよ」

「あんたらの言う通り、たしかにかわいいガキだった。ん・・・助けてくれて・・・ありがとう・・・」

「おい・・・」

モナコもティムの声を真似したみたいだ。


 「あたしにも生まれとか事情とかはすぐに話してくれなかった。でも・・・なんか気になったからさ、荷物持ちで一緒に来いって誘ったんだ」

「もう毒で苦しむのは嫌だったからな。薬師なら病気の心配もねーし、旅の知識もかなりあったからそうしたんだ。見た目は魔女だけど・・・」

「なかなか強かったから魔物の心配も無くなった。いい守り手でもあったぞ」

「そうかよ・・・お前との旅はたしかに悪くなかった」

モナコとの旅か・・・楽しかったんだろうな。

オレには一度も話してくれなかったけど・・・。


 「ひと月くらい一緒にいたら、こいつから自分のことを話してきた。正直やべーなって思った・・・あたしが誘拐したみたいじゃないか」

「ティム様がいなくなったことは・・・外には出すなと言われました。それなら・・・それがわかっていたら・・・私が連れ出していた・・・」

「ハンナ・・・」

「今悔やんでも仕方ないぞ。あたしもそこまで気にしてなかった。追っ手が来てもどうにか逃げ切れるように準備はしてたからな」

たしかにモナコならうまくやりそう・・・。


 「風も北部には向いてなかったから南部を旅してた。そん時に話し方も矯正してやったんだよ。なよなよしてて男らしくなかったからな」

「あなたが・・・」

「それはしないでほしかったです・・・」

「あはは、僕から俺に変わるまでずいぶんかかったな。間違うたびに謝ってきて鬱陶しかったぞ」

虚勢はモナコの影響だったのか。

話し方だけでも大きく見せれば、カッコだけの奴は遠ざけられるからな。


 「あとは強くなりてーつってたから修行もつけてやった」

「え・・・モナコさん戦えるんですか?」

「いや、あたしじゃない。賞金出る魔物、宿場とか街のケンカ自慢とやらせてた」

「人間とはあんまり勝負になんなかったな。俺に勝ったら十万エールとモナコひと晩が付く、それでバカを呼び込んでたのがよくなかったと思う」

たしかにあんまりよくない。

 本当に強い人は自分から争いにはいかない。だからやり方が悪すぎる。

・・・たぶん強くなったのは、魔物を狩っていたおかげだ。

 十五にしては動きが速かった。

野性を相手にしていたからだったんだろう。


 「危険なことはしてほしくありませんでした・・・」

ハンナさんが溜め息をついた。

そんなことをしてるとは思ってなかったんだな。


 「人助けもしてた。魔物に襲われてた奴らとか、あたしらで何人も助けてやったぞ」

「お前はなにもしてねーだろ。行け・・・それだけだった」

・・・雷神よりも厳しいな。


 「ですが・・・ありがとうございます」

久々にエリィさんの声が聞こえた。

みんなの話を静かに聞いてたって感じか。


 「何度もいらねーよ。それに・・・お前だけで行けよ?あたしはなんもしてねーからな」

「ちっ・・・。明日にでもそうするよ」

なんのことなのか・・・。

精霊の耳を借りる前に、どんな話をしていたんだろう・・・。



 「こいつと旅して一年くらい経った頃だ。戦場が終わるって話が出てきた」

モナコの声に寂しさが混じり出した。

オレたちがテーゼに着いて、色々と決まった頃・・・。


 「それを聞いて、こいつがテーゼに行きてーって言ってきた。戦場が終わったら雷神と戦えなくなるかもしれない。今行って自分の力を試したいってさ」

「雷神が女だってのは知ってた。そいつを倒せば、すぐにあの女をぶっ殺しにいくつもりだったんだ」

「あたしは・・・なんか気分が乗らなかったんだ。だからそこで別れることにした・・・」

モナコの寂しさが濃くなっている。

本当は止めたかったのかもしれないな。


 「テーゼと他の街に続く分かれ道・・・別れはやけにあっさりだった。ならここまでだ、じゃあな・・・これだけだったな」

「モナコお姉様になんか期待してたのか?」

「別に・・・引き留めねーんだなって思っただけだよ」

「あたしは・・・連れてってくんねーんだなって思ってたよ」

やっぱりか、二人とも素直に言っておけばよかったんだ。

 モナコもティムも、どんな顔で別れたんだろう?

あっさりだったのは、泣き顔を見せないため・・・それだけはわかる。



 「テーゼに着いて、すぐ訓練場に殴り込んだ」

オレが知るティムの話になった。

たしか・・・イラついてたな。


 「雷神出せっつったら別な奴が出てきた。そんな強くなくてさ、戦士ってこんなもんだったのかって思ったんだ」

「ティムさんは強いですから・・・」

「そうじゃなかったんだよセレシュ・・・。相手をしてくれたのは、治癒隊の待機兵・・・。やべー奴らは俺に見向きもしなかった」

そりゃそうだ。最後の戦場だけを見ている戦士が、子どもなんかに構ってくれるはずがない。


 「何人かぶっ倒して、気分も良くなってた。そん時にあいつが・・・ニルスが出てきやがったんだ・・・」

今度は談話室全員の目がオレに向いた。

 『出戻りのニルス君は新人と同じ扱いなんだよ。・・・上の命令は聞かないとダメだろ?』

オレじゃない、ウォルターさんだよ・・・。


 「お兄ちゃんは・・・」

「ああ・・・強かった。そこまで積み上がった自信、粉々にされたんだ。俺・・・自分が思うより弱かったんだなってさ」

・・・そうでもないだろ。

戦士を除けばだけど・・・。


 「蹴り一発で起き上がれなくなった。おまけにはらわたも潰された・・・」

「あはは、ニルスもやるな。かなり煽ったんだろ?」

「適当に戦士たちをバカにしてたけど・・・そん中に、あいつを本気で怒らせた言葉があったんだよ・・・」

うん、怒った。

 『戦士は臆病者しかいねーって言いふらすぞ!!』

今は何とも思わないけど、あの時はかなりムカついたな。


 「今思うと・・・その時の俺じゃあの女には勝てなかった・・・。だからあれでよかったんだと思う」

そう思ってくれてるんならオレも心が楽になるよ。

・・・どう考えてもやり過ぎだったからな。

 「それで戦士になったのですか?」

「そうだよ、ウォルターっておっさん・・・セレシュの親父に誘われた。でも・・・気が付いた時からあそこに残ろうって思ってたんだ」

「ニルスさん・・・ですか?」

「そうだ、目標ができたんだよ・・・。あいつに勝てれば、きっとあの女も軽く殺せると思ったんだ」

オレは踏み台ってことか・・・。


 「あいつとアリシアは毎日ひたすら戦ってた。正直、かなり遠いなって思ったよ。あの蹴り食らって平気な顔してるアリシア、剣でぶっ刺されても止まんねーニルス・・・いつ追いつけんだろーなって考えたら体が熱くなってくるんだ」

オレも必死だった時期だ。

今だと・・・どうだろうな。


 「俺はずっとニルスとアリシアを見てた。あいつらの動きを覚えて、夜に一人でやってたんだ」

「教えてもらえばもっと早く・・・」

「自分の力がよかったんだ。教えは請わねーって決めてた」

ティムから笑いが零れた。


 「けどさ、じーさん・・・一個前の聖女の騎士だな。よく俺に構ってくれた」

カザハナさんを見ると、優しい笑みを浮かべていた。

 『今回最年少なんでしょ?生き残れるようにしてあげて』

『そうですね、弟子に死なれては困りますから』

そう、弟子だからな。


 「シロもさ、夜に来て人形を出してくれたんだ。あれは助かったな」

「みんな気にかけてくれていたんだと思います」

「ミランダもそうだ・・・。なぜかあいつの隊に入れられた。だからか知らねーけど、一番話しかけてくれたのはあの魔女だったな」

ミランダの口元が大きく持ち上がった。

 『・・・死んじゃったらどうすんだっての。いいよ、それまでに躾けとくから』

『ミランダ殿は優しいのう。あの男はそこまで弱くない』

『じゃあ・・・あたしが安心できるくらいにしてよ』

本当に気にかけていた。

普段は言い合うこともあるけど、そういうところは優しい。


 「ニルスとアリシアも・・・俺の相手をしてくれるようになった。あいつらとやってると、自分が強くなってくのがわかって・・・なんか楽しかったんだ」

「ティム様・・・」

「このままがずっと続いても楽しいだろうなって・・・思い始めてた。わりーけど、モナコのことはちょっと薄れてたな」

「気にすんな」

たしかにあの時のティムは楽しそうだった。

 『おい見ろ!!ニルスに剣を抜かせたぞ!!!』

本当に・・・。


 「ニルスにさ・・・生まれのことを話した日があった。最後の戦場まであと半月ってくらいの時だ・・・」

憶えてるよ。

 『けどさ・・・戦場までにお前に剣を抜かせることができたら教えてやる』

そういう約束だったからな。


 「なんかさ、あいつには教えてもいいかなって思ったんだ。けど・・・誰にも言わねーと思ってたらアリシアに話してやがった」

「秘密だって言わなかったんですか?」

「信用・・・してたんだと思う。・・・そしたら少ししてアリシアから、家族にならねーかって言ってきやがった・・・」

今度は全員が母さんを見た。


 「少し聞いただけだ・・・。戦場が終わったあとにも話したが、全部断られた」

色々理由はあるんだろうけど・・・。


 「わたし、戦場が終わったあとにお母さんに聞かれましたよ。ティムさんが家族になってもいいかって。その前にも言われていたんですね」

「そうだな・・・」

「なぜ、アリシア様の申し出を受けなかったのですか?」

「ニルスが兄貴なんて絶対に嫌だっただけだ」

本当にそうなのかな?

 「それに・・・お前たちの顔が浮かんだ・・・それだけだ」

「ティム様・・・」

ふふ、そっちが本音か。



 「・・・戦場の前日、お前らと初めて会ったな」

ティムの声色が変わった。

声だけだから会議室の様子はわからないけど、今のはルージュとセレシュのことだろう。


 「ルージュは普通に話しかけてきて、セレシュはその後ろで少し怖がってたな」

「初めて会う人だったので・・・」

「わたしは・・・ミランダさんたちの仲間なら、いい人なんだろうなって思ってましたよ」

そういえば、ティムも花を貰ってたんだったな。


 「こいつらがさ、戦場に行く前に花をくれたんだ。帰ってきてくれっていうおまじない・・・だったな」

「あとで知りましたけど、夕凪の花は帰還と再会の象徴でもあります」

「おまじないにぴったりのお花でした」

「そうか・・・。あの時はさ、お前たちにとってはただ余ってた花の一つだったのかもしれない。けど・・・俺にとってはそうじゃなかった」

ティムの声が震えた。

 「帰ってきてってさ・・・嬉しかったんだ」

「ティムさん・・・」

「そん時に・・・俺が帰る場所って、テーゼなんだなって思ったんだよ。そして・・・こいつらのおまじないってのをちゃんと形にしてやりてーなっても思った」

「はい・・・ちゃんと帰ってきてくれました」

「そのあと・・・ただいまって言ってくれましたね・・・」

ルージュとセレシュの声も震えている。

 

 『まだステラの戦いは終わっていない。・・・だからルージュに会うことはできない』

ステラのことを聞いてテーゼに帰らない決心をした時、もちろんルージュのことも考えた。

 『俺は・・・必ず生き残る。ルージュとセレシュ・・・あいつらが帰ってこいってさ』

だけど、ティムがいるなら大丈夫かなっても思った。

そして、大丈夫だったな。


 「戦場が終わってテーゼに戻った時、お前らに花を見せたらいい顔で笑ってくれたな」

「だって本当に嬉しかったんですよ」

「お父さんのは・・・ドラゴンの炎で焼けたって言ってましたから・・・」

でも、ウォルターさんも帰ってきた。

 花を貰ったことでおまじないになる。

あとは失くしても問題無いんだろう。


 「勝って訓練場に戻ってきてさ、ニルスたちを待ってた。一緒にルージュんとこ行ってやろーと思ったんだ。そんで・・・ミランダとシロが戻ってきたけど、あいつはいなかった・・・」

ちょっとだけ胸が痛んだ。

根に持ってんのかな・・・。


 「あいつに勝ったら復讐・・・そう考えてたんだけどさ・・・。事情聞いて、仕方ねーなって思ったんだ」

「あの・・・本当に復讐しようと思ってたんですか?」

「実は・・・少し違う」

足音が響いた。

ティムが立ち上がって、誰かに近付いたみたいだ。


 「訓練場にいる間に、いつの間にかその気持ちが減っていってた。もうあの女はどうでもいいなって・・・」

「そんな気がしました。テーゼに来てからのティムさんは、ずっと幸せだったんじゃないかなって」

「関わってきたら別だったけどな・・・こっちからなにかするってのは考えなくなった」

たぶん、ルージュとセレシュの頭が撫でられている。


 「けど・・・戦場が終わる時、その感情はまだ少し残ってたんだ。それを・・・お前らが消してくれた」

「私たちは・・・なにも・・・」

「おかえりなさいってさ・・・それで消えたんだよ」

談話室のみんなが笑顔になっていた。

きっと会議室も同じだろう。

どうでもいい話 27


ティムというキャラは、初期構想ではニルスの後釜でアリシア隊に入った男でした。

ニルスへの対抗心をずっと出しているキャラで・・・と考えていましたが、アリシアとの和解に邪魔だなと思ったので今の形になりました。


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