第三十二話 胎動の剣【ニルス】
父さんがオレを認めてくれた・・・こんなに嬉しいことはない。
アリシアとは違う。ちゃんとオレを見ててくれたんだな・・・。
「ちなみに・・・精霊鉱はこれで最後なんだ。でも、君のためなら惜しくないよ」
とても貴重なものみたいなのに・・・オレのために・・・。
「本当にいいの?」
「もう決めたんだ。・・・嬉しい?」
「うん、嬉しい。聖戦の剣と栄光の剣、あの二つよりもずっと上のを作ろう」
「そのつもりだよ」
二人で作り上げる剣、それを持って旅に・・・。
テーゼを出た時とは違う。
その剣が完成したら本当の旅立ちなんだ。
・・・しばらく世界を見てきたら、オレはここに・・・「ただいま」を言える場所に帰ってくることにしよう。
旅の話を父さんに聞かせて、また一緒に仕事をするのもいい。
できれば・・・ルージュにも聞かせたいな。
あの子はもう四つ、さすがに話せるようになってるかな?
『たとえば・・・アリシアじゃなくてもいい。ルージュちゃんに・・・』
『振り返らないこと・・・旅人の心得だ』
兄だと名乗ることはしないけど・・・できるなら会いたい・・・。
◆
「装飾は・・・女の子に似合うものにしたい」
二人で工房に移動した。
今日から・・・楽しみだ。
「・・・ルージュちゃん?」
「まあ・・・いつか・・・いつかあの子には見せたい」
オレとアリシアのものはすでにあるけど、あの子のは無い。
使わせるわけじゃないけど、仲間外れはかわいそうだ。
「すぐには・・・戻らない?」
「そう・・・いつか・・・あの子だけには・・・」
「ニルス君・・・わかった。なら、僕に考えさせてほしい」
「そのつもりだったよ」
同じように父さんが作ったものがよかった。
君が何歳になる頃かはわからないけど・・・待っててね。
「じゃあ・・・それを炉に・・・」
父さんの顔が引き締まった。
オレも気合入れないとな。
「じゃあ、火を入れる・・・」
父さんが念じると、工房の温度が一気に上がった。
今は明の月、真冬なのに夏みたいだ。
「すごい熱だね・・・」
「まだ上げる・・・平気?」
「平気・・・こんなに火力がいるんだ・・・」
「うん、精霊鉱は生半可な熱じゃダメなんだ。だから精霊と契約した僕がいないと加工ができない。どの鍛冶屋の工房でも、ここまでの高温は出せないからね」
父さんは服を脱いだ。
オレも脱ぎたいけど・・・まだ我慢しよう。
「この熱でも時間がかかる。柔らかくなるのは表面だけ、叩いて・・・また炉に入れて・・・少しずつ形にしていくんだ」
「どのくらいかかるかな?」
「僕たち次第だけど、遅くても明の月が終わる前にはできるよ・・・」
じゃあ・・・できたら支度をして出発しよう。
恥ずかしいけど・・・旅立ちの時は背中を押してほしい。
その時に頼んでみよう。
◆
「そろそろ一度取り出して、少し叩こうと思う。ニルス君、ちょっと手を・・・」
「え・・・」
オレの手が掴まれた。
「・・・これで君も鉄・・・というか作るものかな。それに思いをこめることができるようになった。この世界の人間では、父さんと君しか使えない魔法だ」
「なにそれ・・・」
「魂の魔法・・・栄光の剣にも使った。なにか感じなかった?」
「・・・感じた」
あの剣にあった暖かさは、これのおかげか。
だから・・・会ってもいいかなって思ったんだった。
「なんていうか・・・愛のある人なんだろうなって。実際・・・そうだと思う」
「・・・そうでもないよ」
父さんは切ない顔で笑った。
・・・オレに負い目があるのか。
「でも、剣にはそれをこめたんじゃないの?」
「・・・君もそれができるようになった」
「本当に父さんとオレだけ?なんで誰にも伝えなかったの?」
「精霊からダメだって脅されたんだ。そうでなくても、ここには来る人はいないからね。・・・ハリス、アリシア、ニルス君、行商さん。あと・・・挨拶くらいだけどセイラちゃんとテッドさん・・・六人か」
たしかにそうだな。ここに家があって工房もあるなんて、よっぽど物好きじゃないと知らないことだ。
「ていうか・・・脅されたのにいいの?」
「・・・たぶん怒らないと思うんだ。それと・・・この魔法を誰かに伝えるかは君次第になる。ただ、伝える人はしっかり見極めてほしい」
「どうして?すごくいい魔法だ」
「栄光の剣は、そんなつもりは無かったんだけど・・・思いをこめるっていうのは呪いに近い。誰かを不幸にするために使う人もいると思う。だから・・・僕や君のように愛があって、ものづくりに一生懸命な人を選んでね。そうすれば、精霊もなにも言わない」
オレに愛・・・考えたことなかったな。
けど、ルージュの幸せを願うことはそうなのかもしれない。
ルージュ、君が幸せであるように・・・。
ちゃんと毎日思っているよ。
「つまり、この剣はルージュを想って打てばいいってことだよね?」
「まあ・・・そうかな。僕は家族を想って打つけど。・・・でも心配だな。ニルス君、妹に恋はしちゃダメだよ」
「当たり前だろ・・・」
「ふふ・・・」
からかったんだろうな。
ルージュは大切に思っているけどそういうのはありえない・・・。
◆
「うわ・・・ほんとにダメだ・・・」
「ね、言った通りでしょ?」
オレたちは精霊鉱を打ち始めた。
でも・・・本当に硬い。
「少しずつでいい・・・また炉に入れて」
「わかった。待ってる時間の方が長そうだね」
「その間は鍛えてていいよ。そうだな・・・君が森を走って戻ってくる頃にもう一度出そう」
「・・・なにもしてないよりはいいな」
じっと待ってても仕方ない。
それに旅立ちはもうすぐ・・・少しでも体力を付けておこう。
◆
走り終わって戻ってきた。
次は何回叩けるかな・・・。
「じゃあ頼んだよハリス」
「・・・対価をいただかない仕事はこれが初めてです。本当によろしいのですね?」
「君にしか頼めない・・・」
「ご冗談を・・・他に頼める者がいないだけでしょう」
工房の外で、父さんとハリスが話していた。
仕事の依頼かな?
「・・・また呼ぶよ」
「・・・承知しました。では・・・」
ハリスはすぐにいなくなってしまった。
なんか、オレを見て帰したって感じだったな・・・。
「なにか仕事が入ったの?」
「まあ・・・そうだね。二つだけ・・・でも、これは僕だけで作るから大丈夫だよ」
「なんか・・・具合悪い?」
父さんの調子が少し悪そうに見えた。
「いつもより神経を使ってるからだと思う。だから・・・ついでにこれ以上仕事は持ってこないでって頼んでおいた」
「無理しないでよ?疲れたら寝ててもいいからさ」
「いや・・・僕も打つよ・・・」
父さんはオレから目を逸らした。
なんか・・・気になる・・・。
◆
三日が過ぎた。
精霊鉱は最初よりも薄くなってきていて、炉から出す時間も短くなっている。
「ハリス・・・頼んだよ」
「本当にお会いした時でよろしいのですか?」
「うん・・・君からは必要ない」
父さんがハリスに包みを渡した。
注文されたってやつか?でも・・・。
「ねえ、それ・・・いつ作ったの?」
ずっと一緒にいたけど、そっちをやっている様子は無かった。
「君が走りに行ってる時かな」
「・・・そんな気配無かったぞ」
わかりやすい嘘だ・・・。
「・・・ごめん、夜にここへ戻ってきて作ってた」
「は?休めよ・・・ていうかそれだったらオレも手伝う」
「もうできあがったから大丈夫だよ。君には・・・そっちだけに集中してほしかったんだ」
今度は本当みたいだ。
まったく・・・。
「次からは勝手なことするなよ?」
「うん・・・隠そうとしてごめんね・・・」
「そうですね・・・勝手なことを・・・」
「ハリスも・・・ごめんね」
父さんは本当に申し訳なさそうだ。
まあ・・・許してやるか。
◆
五日が過ぎた。
慣れなのか、熱さは精霊鉱を叩いていると忘れてしまう。
「父さん、水だよ」
「・・・」
「交代しようよ」
「・・・」
父さんは必死な顔で叩いている。
オレの剣・・・そこまで・・・。
「ふーーー・・・ニルス君、交代しよう」
「さっきから言ってたんだけど・・・聞こえてなかった?」
「え・・・ごめんね。あはは・・・僕は鞘の装飾を作るよ」
「大丈夫?なんか・・・相当疲れてる」
なんだか心配になるくらいだった。
ていうか・・・様子が少しおかしい気がする。
あんまり食べなくなったし、睡眠もたぶん短時間、憑りつかれてるような感じだ。
「・・・ふふ、息子に心配されるのは嬉しいな。全然・・・平気だよ。なんなら・・・話しながらやろうか」
なにかを隠している感じがする。
・・・アリシアも父さんもそういうの好きらしいからな。
「これができたら旅立つんだよね?」
「まあね、でも・・・疲れたら帰ってくると思う」
「・・・君は寂しがりだから、まず仲間を見つけた方がいいと思う。一緒に悩んでくれたり、元気がない時は寄り添ってくれて、なんでも分かち合えるような」
「寂しがりって・・・。でも仲間は考えてたよ」
自分の足りないところを埋めてくれる存在、そういう人の為なら戦える気がする。そして、なにがあっても守るんだ。
「でも、どうやって見つければいいのかな?」
「うーん・・・悪いけど僕には教えられない。誘われたり誘ったりっていうのはあんまり経験がないんだ」
「まあ、そうだよね。こんなとこに住んでるし・・・」
父さんは、たぶん人間ていうものがあんまり好きではない気がする。
オレが初めて来た時も、名乗らなければ出てきてはくれなかったはずだ。
弟子が欲しかったって言ってたけど、取らなかったのはそういうことなのかもしれない。
「あと、本当に困ったらハリスを頼って。ベルを鳴らせば、どこにでも来てくれるはずだ。・・・忘れないでね」
「あの人・・・自分のこと話さないよね」
「頼んではあるんだ。・・・いい奴だからさ」
そのかわりに、大切な人に対しては目に見える大きな愛をくれる。
これはオレの考えで、直接聞いたわけじゃない。なんとなく思っただけだ。
そう思ったのは、たぶんだけど・・・自分も同じだから。
◆
八日が過ぎた。
もう少しで芯まで熱が入りそうだ。
「アリシアはね、ただ不器用なだけなんだ・・・」
父さんは作りかけの装飾を見つめた。
アリシアの話・・・。
「なんていうかさ・・・君がこうあってほしいっていうお母さんだと思う。ただ・・・言葉にするのが苦手なんだよ・・・」
「だから・・・なに・・・」
「アリシアは無理でも、父さんは信用してほしい。それだけだよ・・・」
オレはなにも答えずに精霊鉱を打った。
だから・・・なんだよ・・・。
「・・・ニルス君、旅の目的はあるの?」
「・・・そうだな、行きたいところはたくさんある。だけど、風に任せてみようかなって。自由にさ・・・とわにさすらうって、なんかかっこいいでしょ?」
時間はたくさんある。
吹く風を追いかけて、思い立ったら別の場所へ行ったり・・・。
「・・・風がアリシアに吹いていたらどうする?」
「その時は・・・風に逆らうと思う」
「・・・まあ、今はそうだろうね」
今は?
どうだろう、ルージュに吹けば話は別だけどさ・・・。
「・・・風は自由だ。でも、君が動くことで生まれる風もある。・・・きっとアリシアに向かう日が来ると思うんだ。その未来は必ずある・・・」
父さんは、オレとアリシアをまた会わせたいみたいだ。
オレは色んなことを決意して「さよなら」を言って出た。
最後に抱きしめてもらった時は・・・少しだけ嬉しかったけど、それでも帰ることはできない。
あの家に戻るのは、逃げ帰ることのような気がする。
オレは臆病者じゃない、だからそんな日は来ない。
「父さんも・・・親に会いたくないの?」
少し苦しかったからそっちに逸らした。
どっちにしろ、聞いたことが無かった話だ。
「僕の親・・・君のおじいちゃんとおばあちゃんは・・・もう死んでるんだ」
「そうだったんだ・・・生きてたら、会いに行ってもいいと思ったんだけど・・・」
「あはは・・・残念だったね。僕が子どもの時だった・・・」
随分若い時に死んだんだな・・・。
「じゃあ故郷は北部?」
「まあ・・・そうだね」
「違うの?」
「なんていうか・・・どうでもいいからさ」
教えたくないって感じだ。
みんなそういうことあるよな・・・。
◆
思いをこめて、叩いて・・・繰り返して十八日が過ぎた。
「父さん・・・どう?」
「・・・文句なしだ。あとはしっかり研いで刃を作ってね。できあがってからだと治せない。今最高の状態にするんだ・・・」
もう完成間近、父さんからの「合格」も出た。
もうすぐ・・・もうすぐ・・・。
「ねえニルス君、そのまま聞いて・・・」
父さんがオレの横に座った。
今日は・・・少しだけお酒を・・・。
「精霊鉱は、僕の命でできている・・・。そして、それは最後の一つ、完成したら僕は死ぬ・・・のかな」
オレは手を止めた。
歩くだけで息を切らしてて、精霊鉱を叩くのがとても辛そうに見えていたから知ってる。
交代の間隔・・・どんどん短かくなっていったけど、理由は聞けなかった。なんとなく気付いてはいたから・・・。
「今・・・ここでやめたら・・・死ななくて済む?」
「それは許さない・・・怒るよ」
今までの優しい顔が変わった。
父さんから叱られたことはない、だから初めてのことだ。
「ごめん・・・。僕はね、君と旅をしてみたくなったんだ。その剣は僕の命・・・一緒に連れて行ってほしい。そうしたらいつかはルージュちゃんにも会えると思うし・・・」
「・・・乗り移るわけじゃ・・・ないだろ?」
「どうだろうね・・・試したことないからな・・・」
涙が一粒、剣に落ちた。
アリシアも、父さんも勝手だな・・・。
この人はオレが欲しかった親からの愛をくれた。
だから死んでほしいとは思ってないけど、大好きな父さんの考え方を否定したくもない・・・。
「オレは・・・父さんと会えてよかったと思ってる。・・・生きててくれてありがとう。大丈夫・・・ちゃんと完成させる」
「あはは、息子にそんなふうに思われてるなんて・・・ごめんね・・・」
オレの肩に暖かい手が乗せられた。
「ニルス君と最初から・・・一緒に暮らしてみたかったよ」
「別にいいよ・・・」
「・・・たぶんアリシアとは、君のことでケンカをしたかもしれない。けどそうしていれば、きっと今みたいにはならなかった。そして旅立つ時は、ここに来た日の顔はしてなかったと思う」
・・・言えてる。
最初から父さんがいれば、違った今になっていたんだろう。
「ニルス君、泣かないでよ・・・」
「違う・・・忘れないためだよ。涙で色付けて見たものはずっと残るって・・・聞いたんだ」
「そうか・・・なら僕が今見ているものもずっと残るかな・・・」
年月、季節、それらをいくつ重ねてもきっと残る。
「テーゼで育った君は・・・旅人を夢見た。でも・・・ここで育ったらどうだったんだろうね・・・。考えてみたことある?」
頭を撫でられた。
・・・どうだったろう。
「答えは・・・別にいらない・・・」
父さんがオレから離れた。
邪魔にならないようにか・・・。
◆
「ああ・・・アリシアにもう一度会いたかったな。ルージュちゃんも一度でいいから抱いてあげたかった・・・」
震えた声が聞こえた。
「でも・・・これでいいんだ。君を放っておいてしまったからね・・・ニルス君が苦しんでいる時に、僕は何もしてやれなかった・・・」
父さんはひとり言のように後悔を吐き出している。
オレもこんな感じで気持ちを言えていれば違ったと思う。
だけど・・・自分を責めないでほしい。
「・・・父さんはニルス君を愛しているよ。剣を触るたびに思い出してね・・・。君の心の傷・・・忘れさせることはできても、治すのはアリシアにしかできない。・・・どうしようもなくなったら会いに行くんだよ」
心が満たされていく。
「一緒に暮らせて・・・毎日楽しかったよ。僕の誕生日には・・・ご馳走を作ってくれたね・・・」
「オレの時も・・・祝ってくれた・・・」
「本当に幸せだったんだ・・・」
オレはこういう言葉をアリシアから聞きたかったんだろうな・・・。
◆
刃が輝き始めた。
その時は近い・・・。
「もうすぐ完成かな・・・。美しい刃だ・・・」
父さんは思いを吐き出せて落ち着いたみたいだ。
精霊鉱を使うと決めた時、同時に覚悟も決めていたからあれくらいで済んだんだと思う。
「なんでも斬れそうだ・・・」
剣は研ぐたびに輝きを増していった。
磨けばもっと美しくなるに違いない。
「・・・君がそうしたいって思えば、文字通りなんでも斬れるよ」
「・・・父さんの悲しみも?」
「・・・いじわるだね。誰に似たのかな?・・・そういうのは無理」
心地いい会話だ。
ずっとこの時間が続けばいいのに・・・。
「でも栄光の剣ほどオレの手に馴染まない気がする」
「まあ・・・ルージュちゃんのために作ったようなものだからね」
そうだな・・・。
装飾は女の子が持つようなかわいらしいものになっている。これならきっと喜ぶはずだ。
「幸福な未来・・・輝きだす夢・・・青空にかかる虹・・・僕の中にある美しいものを全部形にした・・・」
「うん・・・あの子も好きになると思う」
「僕たち家族しか持てない・・・全部そうだけどね」
それがいい、だから大切にしたい。
「ニルス君・・・あとは剣に名前を・・・」
「あ・・・忘れてた。ええと、聖戦・・・栄光・・・次は?」
これも父さんに付けてもらいたい。
「実はもう考えてたんだ。名前は・・・胎動の剣ルージュ」
刃が一瞬だけ強く光った。
「君は・・・夢見ていた未来と共に生まれ変わるんだ。気に入ってくれた?」
「胎動・・・よくわからない」
「止まっていた君の世界、これから色付いて回り出す・・・。ニルス君のこれからを祝福する言葉だ。・・・本当は栄光の剣をこの名前にすればよかったよ」
父さんの瞼が少しずつ閉じていく。
・・・もっと、もっと話したいのに。
「でもね・・・自分の子どもに栄光や名誉をっていうのは、愛を持っている親ならみんな考えると思うんだ。僕の両親もそうだったと思うし・・・アリシアもそう・・・だから君を鍛えたんだろうね・・・」
「オレは・・・」
オレは父さんの体をしっかりと支えた。
「オレは・・・そんなもの欲しくなかった・・・」
「うん・・・だから君を苦しめてしまった」
「・・・いい迷惑だ」
「ふふ、勝手だけど・・・父さんたちの気持ちもわかってくれると嬉しいな。だから、本当に小さくてささやかだけど・・・この剣を作り上げた君に・・・僕から栄光を贈るよ・・・」
父さんの体から力が抜けていく・・・。
「君は・・・とても美しい魂を持っている。きっと・・・いい仲間に出逢えるよ・・・」
瞼が完全に閉じてしまった。
「僕が・・・親から貰って、一番嬉しかった言葉。飾らずに・・・心を伝える言葉・・・。アリシアからも貰えるといいね・・・」
「・・・父さん?」
「・・・」
閉じていた目が少しだけ開いて、潤んだままオレを見つめてくれた。
「ニルス・・・愛しているよ・・・」
父さんは最期に微笑んだ。
その顔は、オレが今まで出会った人の中で一番幸福なものだった。




