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Our Story  作者: NeRix
地の章 第二部
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第三十二話 胎動の剣【ニルス】

 父さんがオレを認めてくれた・・・こんなに嬉しいことはない。

アリシアとは違う。ちゃんとオレを見ててくれたんだな・・・。


 「ちなみに・・・精霊鉱はこれで最後なんだ。でも、君のためなら惜しくないよ」

とても貴重なものみたいなのに・・・オレのために・・・。

 「本当にいいの?」

「もう決めたんだ。・・・嬉しい?」

「うん、嬉しい。聖戦の剣と栄光の剣、あの二つよりもずっと上のを作ろう」

「そのつもりだよ」

二人で作り上げる剣、それを持って旅に・・・。

 テーゼを出た時とは違う。

その剣が完成したら本当の旅立ちなんだ。


 ・・・しばらく世界を見てきたら、オレはここに・・・「ただいま」を言える場所に帰ってくることにしよう。

旅の話を父さんに聞かせて、また一緒に仕事をするのもいい。


 できれば・・・ルージュにも聞かせたいな。

あの子はもう四つ、さすがに話せるようになってるかな?


 『たとえば・・・アリシアじゃなくてもいい。ルージュちゃんに・・・』

『振り返らないこと・・・旅人の心得だ』

兄だと名乗ることはしないけど・・・できるなら会いたい・・・。


 

 「装飾は・・・女の子に似合うものにしたい」

二人で工房に移動した。

今日から・・・楽しみだ。


 「・・・ルージュちゃん?」

「まあ・・・いつか・・・いつかあの子には見せたい」

オレとアリシアのものはすでにあるけど、あの子のは無い。

使わせるわけじゃないけど、仲間外れはかわいそうだ。


 「すぐには・・・戻らない?」

「そう・・・いつか・・・あの子だけには・・・」

「ニルス君・・・わかった。なら、僕に考えさせてほしい」

「そのつもりだったよ」

同じように父さんが作ったものがよかった。

君が何歳になる頃かはわからないけど・・・待っててね。


 「じゃあ・・・それを炉に・・・」

父さんの顔が引き締まった。

オレも気合入れないとな。


 「じゃあ、火を入れる・・・」

父さんが念じると、工房の温度が一気に上がった。

今は明の月、真冬なのに夏みたいだ。

 「すごい熱だね・・・」

「まだ上げる・・・平気?」

「平気・・・こんなに火力がいるんだ・・・」

「うん、精霊鉱は生半可な熱じゃダメなんだ。だから精霊と契約した僕がいないと加工ができない。どの鍛冶屋の工房でも、ここまでの高温は出せないからね」

父さんは服を脱いだ。

オレも脱ぎたいけど・・・まだ我慢しよう。


 「この熱でも時間がかかる。柔らかくなるのは表面だけ、叩いて・・・また炉に入れて・・・少しずつ形にしていくんだ」

「どのくらいかかるかな?」

「僕たち次第だけど、遅くても明の月が終わる前にはできるよ・・・」

じゃあ・・・できたら支度をして出発しよう。


 恥ずかしいけど・・・旅立ちの時は背中を押してほしい。

その時に頼んでみよう。



 「そろそろ一度取り出して、少し叩こうと思う。ニルス君、ちょっと手を・・・」

「え・・・」

オレの手が掴まれた。


 「・・・これで君も鉄・・・というか作るものかな。それに思いをこめることができるようになった。この世界の人間では、父さんと君しか使えない魔法だ」

「なにそれ・・・」

「魂の魔法・・・栄光の剣にも使った。なにか感じなかった?」

「・・・感じた」

あの剣にあった暖かさは、これのおかげか。

だから・・・会ってもいいかなって思ったんだった。


 「なんていうか・・・愛のある人なんだろうなって。実際・・・そうだと思う」

「・・・そうでもないよ」

父さんは切ない顔で笑った。

・・・オレに負い目があるのか。


 「でも、剣にはそれをこめたんじゃないの?」

「・・・君もそれができるようになった」

「本当に父さんとオレだけ?なんで誰にも伝えなかったの?」

「精霊からダメだって脅されたんだ。そうでなくても、ここには来る人はいないからね。・・・ハリス、アリシア、ニルス君、行商さん。あと・・・挨拶くらいだけどセイラちゃんとテッドさん・・・六人か」

たしかにそうだな。ここに家があって工房もあるなんて、よっぽど物好きじゃないと知らないことだ。

 

 「ていうか・・・脅されたのにいいの?」

「・・・たぶん怒らないと思うんだ。それと・・・この魔法を誰かに伝えるかは君次第になる。ただ、伝える人はしっかり見極めてほしい」

「どうして?すごくいい魔法だ」

「栄光の剣は、そんなつもりは無かったんだけど・・・思いをこめるっていうのは呪いに近い。誰かを不幸にするために使う人もいると思う。だから・・・僕や君のように愛があって、ものづくりに一生懸命な人を選んでね。そうすれば、精霊もなにも言わない」

オレに愛・・・考えたことなかったな。

けど、ルージュの幸せを願うことはそうなのかもしれない。

 

 ルージュ、君が幸せであるように・・・。

ちゃんと毎日思っているよ。


 「つまり、この剣はルージュを想って打てばいいってことだよね?」

「まあ・・・そうかな。僕は家族を想って打つけど。・・・でも心配だな。ニルス君、妹に恋はしちゃダメだよ」

「当たり前だろ・・・」

「ふふ・・・」

からかったんだろうな。

ルージュは大切に思っているけどそういうのはありえない・・・。


 

 「うわ・・・ほんとにダメだ・・・」

「ね、言った通りでしょ?」

オレたちは精霊鉱を打ち始めた。

でも・・・本当に硬い。


 「少しずつでいい・・・また炉に入れて」

「わかった。待ってる時間の方が長そうだね」

「その間は鍛えてていいよ。そうだな・・・君が森を走って戻ってくる頃にもう一度出そう」

「・・・なにもしてないよりはいいな」

じっと待ってても仕方ない。

それに旅立ちはもうすぐ・・・少しでも体力を付けておこう。



 走り終わって戻ってきた。

次は何回叩けるかな・・・。


 「じゃあ頼んだよハリス」

「・・・対価をいただかない仕事はこれが初めてです。本当によろしいのですね?」

「君にしか頼めない・・・」

「ご冗談を・・・他に頼める者がいないだけでしょう」

工房の外で、父さんとハリスが話していた。

仕事の依頼かな?


 「・・・また呼ぶよ」

「・・・承知しました。では・・・」

ハリスはすぐにいなくなってしまった。

なんか、オレを見て帰したって感じだったな・・・。


 「なにか仕事が入ったの?」

「まあ・・・そうだね。二つだけ・・・でも、これは僕だけで作るから大丈夫だよ」

「なんか・・・具合悪い?」

父さんの調子が少し悪そうに見えた。

 「いつもより神経を使ってるからだと思う。だから・・・ついでにこれ以上仕事は持ってこないでって頼んでおいた」

「無理しないでよ?疲れたら寝ててもいいからさ」

「いや・・・僕も打つよ・・・」

父さんはオレから目を逸らした。

なんか・・・気になる・・・。



 三日が過ぎた。

精霊鉱は最初よりも薄くなってきていて、炉から出す時間も短くなっている。


 「ハリス・・・頼んだよ」

「本当にお会いした時でよろしいのですか?」

「うん・・・君からは必要ない」

父さんがハリスに包みを渡した。

注文されたってやつか?でも・・・。


 「ねえ、それ・・・いつ作ったの?」

ずっと一緒にいたけど、そっちをやっている様子は無かった。

 「君が走りに行ってる時かな」

「・・・そんな気配無かったぞ」

わかりやすい嘘だ・・・。

 「・・・ごめん、夜にここへ戻ってきて作ってた」

「は?休めよ・・・ていうかそれだったらオレも手伝う」

「もうできあがったから大丈夫だよ。君には・・・そっちだけに集中してほしかったんだ」

今度は本当みたいだ。

まったく・・・。


 「次からは勝手なことするなよ?」

「うん・・・隠そうとしてごめんね・・・」

「そうですね・・・勝手なことを・・・」

「ハリスも・・・ごめんね」

父さんは本当に申し訳なさそうだ。

まあ・・・許してやるか。



 五日が過ぎた。

慣れなのか、熱さは精霊鉱を叩いていると忘れてしまう。


 「父さん、水だよ」

「・・・」

「交代しようよ」

「・・・」

父さんは必死な顔で叩いている。

オレの剣・・・そこまで・・・。


 「ふーーー・・・ニルス君、交代しよう」

「さっきから言ってたんだけど・・・聞こえてなかった?」

「え・・・ごめんね。あはは・・・僕は鞘の装飾を作るよ」

「大丈夫?なんか・・・相当疲れてる」

なんだか心配になるくらいだった。


 ていうか・・・様子が少しおかしい気がする。

あんまり食べなくなったし、睡眠もたぶん短時間、憑りつかれてるような感じだ。


 「・・・ふふ、息子に心配されるのは嬉しいな。全然・・・平気だよ。なんなら・・・話しながらやろうか」

なにかを隠している感じがする。

・・・アリシアも父さんもそういうの好きらしいからな。


 「これができたら旅立つんだよね?」

「まあね、でも・・・疲れたら帰ってくると思う」

「・・・君は寂しがりだから、まず仲間を見つけた方がいいと思う。一緒に悩んでくれたり、元気がない時は寄り添ってくれて、なんでも分かち合えるような」

「寂しがりって・・・。でも仲間は考えてたよ」

自分の足りないところを埋めてくれる存在、そういう人の為なら戦える気がする。そして、なにがあっても守るんだ。


 「でも、どうやって見つければいいのかな?」

「うーん・・・悪いけど僕には教えられない。誘われたり誘ったりっていうのはあんまり経験がないんだ」

「まあ、そうだよね。こんなとこに住んでるし・・・」

父さんは、たぶん人間ていうものがあんまり好きではない気がする。

 オレが初めて来た時も、名乗らなければ出てきてはくれなかったはずだ。

弟子が欲しかったって言ってたけど、取らなかったのはそういうことなのかもしれない。

 

 「あと、本当に困ったらハリスを頼って。ベルを鳴らせば、どこにでも来てくれるはずだ。・・・忘れないでね」

「あの人・・・自分のこと話さないよね」

「頼んではあるんだ。・・・いい奴だからさ」

そのかわりに、大切な人に対しては目に見える大きな愛をくれる。


 これはオレの考えで、直接聞いたわけじゃない。なんとなく思っただけだ。

そう思ったのは、たぶんだけど・・・自分も同じだから。



 八日が過ぎた。

もう少しで芯まで熱が入りそうだ。


 「アリシアはね、ただ不器用なだけなんだ・・・」

父さんは作りかけの装飾を見つめた。

アリシアの話・・・。

 「なんていうかさ・・・君がこうあってほしいっていうお母さんだと思う。ただ・・・言葉にするのが苦手なんだよ・・・」

「だから・・・なに・・・」

「アリシアは無理でも、父さんは信用してほしい。それだけだよ・・・」

オレはなにも答えずに精霊鉱を打った。

だから・・・なんだよ・・・。


 「・・・ニルス君、旅の目的はあるの?」

「・・・そうだな、行きたいところはたくさんある。だけど、風に任せてみようかなって。自由にさ・・・とわにさすらうって、なんかかっこいいでしょ?」

時間はたくさんある。

吹く風を追いかけて、思い立ったら別の場所へ行ったり・・・。


 「・・・風がアリシアに吹いていたらどうする?」

「その時は・・・風に逆らうと思う」

「・・・まあ、今はそうだろうね」

今は?

どうだろう、ルージュに吹けば話は別だけどさ・・・。


 「・・・風は自由だ。でも、君が動くことで生まれる風もある。・・・きっとアリシアに向かう日が来ると思うんだ。その未来は必ずある・・・」

父さんは、オレとアリシアをまた会わせたいみたいだ。

 

 オレは色んなことを決意して「さよなら」を言って出た。

最後に抱きしめてもらった時は・・・少しだけ嬉しかったけど、それでも帰ることはできない。

 あの家に戻るのは、逃げ帰ることのような気がする。

オレは臆病者じゃない、だからそんな日は来ない。


 「父さんも・・・親に会いたくないの?」

少し苦しかったからそっちに逸らした。

どっちにしろ、聞いたことが無かった話だ。

 「僕の親・・・君のおじいちゃんとおばあちゃんは・・・もう死んでるんだ」

「そうだったんだ・・・生きてたら、会いに行ってもいいと思ったんだけど・・・」

「あはは・・・残念だったね。僕が子どもの時だった・・・」

随分若い時に死んだんだな・・・。

 「じゃあ故郷は北部?」

「まあ・・・そうだね」

「違うの?」

「なんていうか・・・どうでもいいからさ」

教えたくないって感じだ。

みんなそういうことあるよな・・・。



 思いをこめて、叩いて・・・繰り返して十八日が過ぎた。


 「父さん・・・どう?」

「・・・文句なしだ。あとはしっかり研いで刃を作ってね。できあがってからだと治せない。今最高の状態にするんだ・・・」

もう完成間近、父さんからの「合格」も出た。

もうすぐ・・・もうすぐ・・・。


 「ねえニルス君、そのまま聞いて・・・」

父さんがオレの横に座った。

今日は・・・少しだけお酒を・・・。


 「精霊鉱は、僕の命でできている・・・。そして、それは最後の一つ、完成したら僕は死ぬ・・・のかな」

オレは手を止めた。

 歩くだけで息を切らしてて、精霊鉱を叩くのがとても辛そうに見えていたから知ってる。


 交代の間隔・・・どんどん短かくなっていったけど、理由は聞けなかった。なんとなく気付いてはいたから・・・。


 「今・・・ここでやめたら・・・死ななくて済む?」

「それは許さない・・・怒るよ」

今までの優しい顔が変わった。

父さんから叱られたことはない、だから初めてのことだ。


 「ごめん・・・。僕はね、君と旅をしてみたくなったんだ。その剣は僕の命・・・一緒に連れて行ってほしい。そうしたらいつかはルージュちゃんにも会えると思うし・・・」

「・・・乗り移るわけじゃ・・・ないだろ?」

「どうだろうね・・・試したことないからな・・・」

涙が一粒、剣に落ちた。


 アリシアも、父さんも勝手だな・・・。

この人はオレが欲しかった親からの愛をくれた。

 だから死んでほしいとは思ってないけど、大好きな父さんの考え方を否定したくもない・・・。


 「オレは・・・父さんと会えてよかったと思ってる。・・・生きててくれてありがとう。大丈夫・・・ちゃんと完成させる」

「あはは、息子にそんなふうに思われてるなんて・・・ごめんね・・・」

オレの肩に暖かい手が乗せられた。

 「ニルス君と最初から・・・一緒に暮らしてみたかったよ」

「別にいいよ・・・」

「・・・たぶんアリシアとは、君のことでケンカをしたかもしれない。けどそうしていれば、きっと今みたいにはならなかった。そして旅立つ時は、ここに来た日の顔はしてなかったと思う」

・・・言えてる。

最初から父さんがいれば、違った今になっていたんだろう。


 「ニルス君、泣かないでよ・・・」

「違う・・・忘れないためだよ。涙で色付けて見たものはずっと残るって・・・聞いたんだ」

「そうか・・・なら僕が今見ているものもずっと残るかな・・・」

年月、季節、それらをいくつ重ねてもきっと残る。


 「テーゼで育った君は・・・旅人を夢見た。でも・・・ここで育ったらどうだったんだろうね・・・。考えてみたことある?」

頭を撫でられた。

・・・どうだったろう。

 「答えは・・・別にいらない・・・」

父さんがオレから離れた。

邪魔にならないようにか・・・。



 「ああ・・・アリシアにもう一度会いたかったな。ルージュちゃんも一度でいいから抱いてあげたかった・・・」

震えた声が聞こえた。

 「でも・・・これでいいんだ。君を放っておいてしまったからね・・・ニルス君が苦しんでいる時に、僕は何もしてやれなかった・・・」

父さんはひとり言のように後悔を吐き出している。

 

 オレもこんな感じで気持ちを言えていれば違ったと思う。

だけど・・・自分を責めないでほしい。


 「・・・父さんはニルス君を愛しているよ。剣を触るたびに思い出してね・・・。君の心の傷・・・忘れさせることはできても、治すのはアリシアにしかできない。・・・どうしようもなくなったら会いに行くんだよ」

心が満たされていく。


 「一緒に暮らせて・・・毎日楽しかったよ。僕の誕生日には・・・ご馳走を作ってくれたね・・・」

「オレの時も・・・祝ってくれた・・・」

「本当に幸せだったんだ・・・」

オレはこういう言葉をアリシアから聞きたかったんだろうな・・・。



 刃が輝き始めた。

その時は近い・・・。


 「もうすぐ完成かな・・・。美しい刃だ・・・」

父さんは思いを吐き出せて落ち着いたみたいだ。

 精霊鉱を使うと決めた時、同時に覚悟も決めていたからあれくらいで済んだんだと思う。


 「なんでも斬れそうだ・・・」

剣は研ぐたびに輝きを増していった。

磨けばもっと美しくなるに違いない。


 「・・・君がそうしたいって思えば、文字通りなんでも斬れるよ」

「・・・父さんの悲しみも?」

「・・・いじわるだね。誰に似たのかな?・・・そういうのは無理」

心地いい会話だ。

ずっとこの時間が続けばいいのに・・・。


 「でも栄光の剣ほどオレの手に馴染まない気がする」

「まあ・・・ルージュちゃんのために作ったようなものだからね」

そうだな・・・。

 装飾は女の子が持つようなかわいらしいものになっている。これならきっと喜ぶはずだ。


 「幸福な未来・・・輝きだす夢・・・青空にかかる虹・・・僕の中にある美しいものを全部形にした・・・」

「うん・・・あの子も好きになると思う」

「僕たち家族しか持てない・・・全部そうだけどね」

それがいい、だから大切にしたい。


 「ニルス君・・・あとは剣に名前を・・・」

「あ・・・忘れてた。ええと、聖戦・・・栄光・・・次は?」

これも父さんに付けてもらいたい。


 「実はもう考えてたんだ。名前は・・・胎動の剣ルージュ」

刃が一瞬だけ強く光った。


 「君は・・・夢見ていた未来と共に生まれ変わるんだ。気に入ってくれた?」

「胎動・・・よくわからない」

「止まっていた君の世界、これから色付いて回り出す・・・。ニルス君のこれからを祝福する言葉だ。・・・本当は栄光の剣をこの名前にすればよかったよ」

父さんの瞼が少しずつ閉じていく。

・・・もっと、もっと話したいのに。


 「でもね・・・自分の子どもに栄光や名誉をっていうのは、愛を持っている親ならみんな考えると思うんだ。僕の両親もそうだったと思うし・・・アリシアもそう・・・だから君を鍛えたんだろうね・・・」

「オレは・・・」

オレは父さんの体をしっかりと支えた。


 「オレは・・・そんなもの欲しくなかった・・・」

「うん・・・だから君を苦しめてしまった」

「・・・いい迷惑だ」

「ふふ、勝手だけど・・・父さんたちの気持ちもわかってくれると嬉しいな。だから、本当に小さくてささやかだけど・・・この剣を作り上げた君に・・・僕から栄光を贈るよ・・・」

父さんの体から力が抜けていく・・・。

 「君は・・・とても美しい魂を持っている。きっと・・・いい仲間に出逢えるよ・・・」

瞼が完全に閉じてしまった。


 「僕が・・・親から貰って、一番嬉しかった言葉。飾らずに・・・心を伝える言葉・・・。アリシアからも貰えるといいね・・・」

「・・・父さん?」

「・・・」

閉じていた目が少しだけ開いて、潤んだままオレを見つめてくれた。


 「ニルス・・・愛しているよ・・・」

父さんは最期に微笑んだ。

その顔は、オレが今まで出会った人の中で一番幸福なものだった。

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