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Our Story  作者: NeRix
風の章 第二部
190/481

第百八十二話 元気に【ルージュ】

 『ルージュ、俺が一緒にいて守ってやる。だから安心してくれよ』

ふふ、なんか恐くなくなっちゃった。


 ヴィクターは頼りになる人だと思う。

・・・わたしよりも背が高いから?


 なんにしても、一緒に来てくれるのは嬉しい。

もっと仲良くなりたいな。



 「準備って何するの?」

わたしはヴィクターと一緒にお屋敷の外に出てきた。

大変なら手伝いたいし、お買い物があれば一緒に行きたい。

 

 「・・・着替えとかかな」

「たくさんある?ニルス様の鞄を借りればなんでも入るよ」

「・・・助かるよ」

ヴィクターが素っ気なくなった。

 どうしたんだろ・・・答えてはくれてるけど、目に光が無い。

なんか元気無いのかな?さっきの話し合いの時はそんなことなかったのに・・・聞いてみよう。


 「ねえ、ステラさんとなにかあったの?」

原因はこれしかないよね・・・。

 「・・・大丈夫だよ。・・・スナフから出たことないからな。街が不安なだけだ」

本当かな?

でも・・・それなら心配ない。

 「平気だよ。きのうのお礼に、わたしがテーゼを案内してあげるから」

「・・・ルージュが?」

「うん。あとね、友達のセレシュも紹介してあげる。だから元気出してよ」

「・・・悪いな、心配かけた」

ヴィクターは言いながら自分の胸を叩いた。

すごい音・・・。


 「気を遣わせてごめんな。・・・もう平気だ。そういやシリウスってのもいるんだろ?」

あ・・・笑ってくれた。

 原因はステラさんじゃなくて、初めて行く場所に緊張してただけみたいだ。

ふふん、わたしが安心させてあげられたんだね。


 「シリウスはテーゼには・・・あれ・・・シリウスのことも知ってるんだね」

「まあな、シロはよく友達の話をしてくれたんだ。ルージュのことも聞いてたよ」

「あ・・・わたしが男の人苦手なの知ってたもんね。ん?でも、わたしはヴィクターの話聞いたことないよ」

おじいちゃんのことは聞かせてくれたけどヴィクターは・・・一度も無い。


 「あー・・・恥ずかしいから話さないでくれって頼んでたんだ・・・」

「わたしが女の子だから?」

「・・・そうだよ」

「あ・・・赤くなった。ふふ、おもしろーい」

待てよ、そしたらセレシュとはどうやって友達になればいいんだろ?

・・・しばらくはわたしが間に入るしかないな。

 「笑うなよ。・・・ルージュ、これから一緒に買い物行かないか?」

「うんいいよ、お菓子買おうね」

「俺の支度なんだけど・・・」

「わかってるわかってる。じゃあニルス様の所に戻ろうよ」

わたしたちはお屋敷に引き返した。

 ニルス様はステラさんと一緒にいるはず。

・・・お小遣いをもらわないと。



 「買い物か・・・」

ニルス様はテーブルの上で縫い針を磨いていた。

気に入ってるのかな?


 「はい、ニルス様とステラさんも一緒にどうですか?」

「いや・・・オレはいい」

あれ・・・なんかニルス様も元気無いな。

 

 「ニルスが残るなら私もそうする。二人で行ってきなさい」

「ヴィクター、ルージュから目を離さないようにしてくれ」

「はい」

「今お金を渡す・・・持ちづらいな・・・」

ニルス様は小さい体を半分だけ鞄に入れてお財布を取り出した。

お小遣い・・・。

 「これを渡す。ヴィクターの必要な物も買うといい」

「え・・・ニルスさん、それはちょっと・・・」

「どうした?」

「さすがに・・・悪いですよ」

まさか財布ごと渡されるとは思わなかった。

・・・たくさん入ってそうだ。


 「遠慮しなくていい。・・・ステラ」

「はい、じゃあルージュが持っていなさい」

「あ・・・はい」

財布はステラさんからわたしに渡された。

重い・・・。

 「ずっしりですね・・・」

「五十万くらいは入ってる。無駄遣いはしないようにな」

「ごじゅ・・・」

そんな大金持ったことないよ・・・。

周りの目が気になりそう。


 「あ・・・それと宿だけど・・・」

「あー!そうですよ、わたしの荷物はあそこにあります」

忘れてた。

ていうかきのうは戻ってない・・・。

 「・・・最後まで聞け。カザハナさんが行ってくれるって言ってた。荷物も全部運んでくれるらしい」

「ご迷惑を・・・」

「あとでお礼を言わないとダメだよ?」

「はい・・・あと、宿のご主人さんたちにもご挨拶をしてきます」

ずっとお世話になってたから、黙って出て行くのはダメだよね。


 「そうするといい。・・・ヴィクター、準備は今日で終わりそうか?」

「はい」

「そうか・・・明日には出よう。ルージュ、なにか心配事があればいつでも言ってくれ」

あれ・・・。

 「はい・・・ありがとうございます」

ニルス様の様子が気になる・・・。

気遣ってくれてはいるけど、いつもと違って寂しそうだ。

 「ニルス様こそ、なにか心配事がありそうです」

ステラさんがいるけど、わたしも力になりたい。


 「・・・この身体は、やっぱり不便だなって思ったんだよ」

「大丈夫よルージュ、私が慰めててあげるから」

「服を脱がそうとしてたくせに・・・」

わたしも早く元に戻ってほしい。

またぎゅっとされながら眠りた・・・あれ?今日は誰と寝ればいいんだろ・・・。

 「ニルス様、今夜は一緒にいてくれますか?」

「大丈夫よルージュ、私が一緒に寝てあげるわ」

「え・・・いいんですか?」

・・・ステラさんなら大丈夫そうだ。

 「セレシュやシリウスの話を聞きたいの」

「はい、たくさんお喋りしましょう」

そうだ、ステラさんが起きたことをセレシュにも教えてあげよう。

シリウスにも手紙を書かなきゃいけない。


 「だから、今はニルスと一緒にいさせて。ちゃんと元気にしておくから」

「はい・・・」

すごい自信だ・・・。

ステラさんにとっては簡単なことなのかな?



 「まずは宿に行きたい」

「わかった。そのあとは商店通りだな」

「うん」

ヴィクターと二人でまた外に出てきた。

ニルス様にはステラさんが付いてるから大丈夫だ。


 「ステラさんは、なんにも心配事が無さそうだったね」

「そりゃそうだろ、やっと目覚めることができてニルスさんもそばにいるんだ。・・・今のステラ様に恐いもんなんて無いんだろうな」

「そんな感じだよね」

八年も眠ってて、起きたら大好きな恋人がいて・・・。

幸せなのは間違いないよね。

 


 「長い間ありがとうございました」

「いやいや、ふた月も使ってくれてありがとう」

「また来てね」

「はい、本当にお世話になりました」

わたしはご主人とおかみさんに深く頭を下げた。

朝と夜の食事、お部屋のお掃除にお洗濯、わたしのためだけのお風呂・・・とってもいい人たちだったな。


 「ヴィクター、しっかり守れよ?」

「女の子にケガさせちゃダメだからね?」

「そのつもりだよ・・・」

本当にいい人たちだ。



 「服はどうするの?」

わたしたちは商店通りに入った。

よくお昼を買いに来てたから、ここはよく知っている。


 「今は・・・田舎者って感じか?」

「そうは見えないけど・・・着替えはたくさんあった方が選ぶ時楽しいでしょ?」

「うーん・・・それなら服はテーゼに行ってから見ようかな。案内してくれるんだろ?」

「もちろん」

それも楽しいかも。

ヴィクターが一緒なら、どこに行っても許してもらえるもんね。


 「買うもんは無くなったけど、気晴らしはしたいんだ。・・・テーゼって大きな街なんだろ?不安なのは本当だからな」

「なあんだ、じゃあ・・・色んなお店見て回ろうよ。お金もたくさんあるしね」

「それはニルスさんのお金だろ・・・」

「無駄遣いはしないよ」

なにも考えずにお買い物なんて久しぶりだ。


 「じゃあ、まずはそこからね」

わたしも少しだけ気晴らしがしたくなった。

 今起こっている問題は、まだあんまり前に進んでない。

だけどニルス様、ステラさん、それにヴィクターもいるからなんだか全部うまくいきそうな気がする。

 それにせっかく男の子の友達ができたわけだし、楽しいことをしたい。

あ・・・ヴィクターはもう大人だから男の子じゃないのかな?


 

 「お嬢ちゃんしばらくぶりだね。悪いけど品ぞろえはそのままだ」

赤毛を買ったお店に入ってみた。

ここでの修行が終わったら見にこようと思ってたんだよね。


 「櫛を見せてください」

「勝手に見てっていいよ」

綺麗な模様の櫛を見たかった。

手作りのもたくさんあって、わたし好みな気がする。


 「櫛・・・持ってないのか?」

「持ってるけど気になってたんだ。模様が素敵なんだもん」

「ふーん、ばあさんの入れたこれがね・・・」

ヴィクターが並んだ一つを手に取った。

 誰がとかは関係ないんだけどな。

それに他の人がなんて言おうと、自分がいいと思ったらそれを使いたい。


 「・・・あんたが女連れで来るなんて初めてだね」

おばあちゃんがヴィクターの背中を叩いた。

ああ・・・またか。

 「うるさいな・・・」

「この子・・・黒髪も似合いそうだ。かわいいからね」

「あの赤毛・・・ばあさんが売ったんだな?」

スナフの人たちはみんなヴィクターを知っている。


 『おい、騎士が女連れてるぞ』『遊んでねーで聖女様を守れよ』『修行はどうした?』『俺、女に興味無いからさ・・・似てたか?』

ここに来るまでに色んな人たちに話しかけられた。

ヴィクターと同い年の人たちは特に・・・。

 『なんだ・・・年下が好きだったんだね』『あたしちょっといいなって思ってたのに』『からかわれてる女の子いたら助けてあげてたんだよ』『そのあと面白いんだよ。礼なんか言うな、離れろ・・・って、ひどいよね』

お姉さんたちは色々教えてくれた。

女の人が苦手って言ってたけど、向こうからは好かれてたみたいだ。


 なんか・・・わたしよりもヴィクターのことを知ってる人がいるのってもやもやする。

そりゃ、まだ知り合ってふた月だから仕方ないけど・・・。



 「ついでにこれとかもどうだい?」

おばあちゃんが、ちょっと恐い顔の仮面をいくつか取り出した。

でも、模様は素敵な気がする。


 「あのさばあさん・・・こんなもん作って誰が買うんだよ。だいたい何に使うんだ?」

「そうだねえ・・・強盗とか誘拐には使えるんじゃないか?」

「物騒なもん売ってんじゃねーよ!」

それだったら必要ない・・・。

 うん、櫛だけを買おう。

そうだ、セレシュの分も・・・これを渡して「ごめんね」を言うんだ。



 「はあ・・・やっぱり買い物はテーゼでしよう。ここだと村の奴らが鬱陶しい」

ヴィクターは、外に出た途端に溜め息を吐き出した。

疲れたのかな?


 「わたしは見てて楽しいよ。まあ、わたしも櫛が手に入ったからあとはなんでもいいかな」

ちょっと強がった。

本当は庭園で二人だけのお喋りがしたい・・・。


 「・・・ならあとはお菓子買って帰ろうぜ。色々詰め込まないといけないからな」

「棚ごと持っていけばいいんだよ。わたしもそうしてるよ」

「あの鞄か・・・まあそれでもいいな」

わたしも使わなかった荷物は全部しまっている。

 そういえば、なにを入れたか忘れたら取り出せなくなるんだったな・・・。

わたしも戻ったら確認しよう。



 「おい、お使いの子どもら」

お菓子も買って、通りを出ようとした時だった。

 「え・・・わたしたち?」

「そうそう、あんたたち」

地面に不思議な色の水を並べている女の人がいた。

「万能薬、ここにあり」って手書きの札が前に置いてある。


 「家族に具合悪いやついねーか?」

「具合・・・」

「なんでも作ってやるぞ」

たぶん・・・若い。ミランダさんと同い年くらいに見える。

 恰好はあの人よりも露出が多いな。

・・・全身暗めの服で物語の中の魔女って感じだ。


 「あんた・・・スナフの人間じゃないな?」

ヴィクターが一歩前に出た。

たしかに・・・そんな感じじゃない。

 「そうだよ、旅をしながら薬を売ってんだ。さっき目がぼやけるって言ってた年寄りと、風邪気味の兄ちゃんに薬を売った」

「薬師か・・・。うちに病気の人間はいない。悪いけど必要無いな」

「あたしはどんな調合でもできる。なんでも治してやれるぞ」

「なんでも・・・」

・・・それって、もしかしてニルス様の身体も?


 「あの・・・お話を聞かせてください」

「いいよ。暇だし、なんでも答えてやる」

薬師さんは妖しく笑った。

見えてるおへそが色っぽい・・・。


 「大丈夫かルージュ?魔女って感じだぞ」

ヴィクターが心配そうな顔をした。

目の前でそんな失礼なこと・・・。

 「あはは、ぼうやはご本の魔女しか知らねーみてーだな。あたしはいい魔女さ」

「・・・ぼうやってのは俺のことか?」

「あんたが女だったら謝るよ」

・・・この人もけっこう言うな。

それに荒っぽい話し方・・・ティムさんが浮かぶ・・・。


 「とりあえず下脱げ。男のしるし見してみろ」

「ふざけんじゃねー・・・」

「あ?ぼうやって思われたままで・・・ああ、そっちはぼうやだったのか?そりゃ悪かったな」

「あー?」

「そこまでです。二人とも落ち着いてください」

とりあえず話を戻そう。

ヴィクターが怒ったら何も聞けないかもしれない。


 「あの・・・本当になんでも治せるんですか?」

わたしはヴィクターの背中をさすりながら薬師さんの目を見つめた。

 可能性があるなら確かめたい。

まだ迷惑しかかけてないし・・・役に立ちたい。


 「大陸一の薬師にできない調合は無い。・・・症状言ってみ」

「ルージュ、やめた方が・・・」

「でも・・・」

「話だけでもいいから聞かせろよ」

そうだよね。まだお金も払ってないし、無理そうだったら戻ればいい。

 「ヴィクター、任せて」

「・・・無駄遣いなら止めるからな」

「それはお嬢ちゃんが判断することだ。ぼうやは黙ってな」

「・・・」

なんて説明しよう・・・。


 「あの・・・わたしたちの師匠がですね・・・えっと・・・小さくなってしまって・・・」

ジナスっていう精霊にやられたせいかも・・・っては言えないよね・・・。

でも、できる限りどんな状態かを教えてみよう。

 「・・・小さく?」

「はい、前はもっと大きくて・・・」

「ん?・・・いつからだ?」

「花の月の末くらいからです」

全部話せたら楽なんだけどな・・・。

 

 「男か?その師匠の歳、それとそれまではどうだったのか教えろ」

「はい、男性です。えっと師匠は・・・二十五歳って聞いてます。それまではなにも問題ありませんでした。とっても逞しくて・・・見てると元気をもらえて安心するんです」

「・・・」

薬師さんは左手で顔半分を隠した。

・・・口元が少しにやけてる気がする。


 「花の月から・・・ずっとそうなのか?」

ずっとではない、果実を食べれば・・・。

 「ええと・・・たまに元に戻るんですけど一日だけで・・・。だからほとんど小さいままなんです」

「元気も無くしてそうだな」

「そうですね・・・落ち込んでいるような、そんな感じです。また、大きくて元気な師匠に戻ってほしいんですけど・・・」

「・・・」

薬師さんは顔を隠してしまった。

どうだろ・・・うまく説明できたかな?


 「薬じゃ無理だろ・・・」

横を見ると、ヴィクターが難しい顔をしていた。

そんなうまくいかないかな・・・。


 「無理じゃねーよ。調合してやる」

薬師さんが顔を上げた。

え・・・。

 「調合・・・本当にできるんですか?」

「お嬢ちゃんの教えてくれた症状なら簡単だ。でもちょっと高いよ」

お金・・・今五十万エールはある・・・。

 『オレは元に戻るためならなんだってする』

ニルス様はなんでもする・・・。

なら・・・ちょっとくらい高くても大丈夫だよね。


 「おいくらでしょうか?」

「本当は五万・・・でも、特別に四万でいいよ」

それなら・・・。

 「ありがとうございます。さっそくお願いしてもいいですか?」

「わかった。とびきりのを作ってやる」

やった。これでニルス様が元に戻る。

そしたらきっといっぱい褒めてくれるし、またぎゅっとしてもらえる・・・。


 「おい、本当に薬でなんとかなるのか?ニル・・・師匠のは特殊だぞ?」

ヴィクターは信じられないみたいだ。

 「特殊ってなんだよ・・・今の症状で間違いないなら治せるさ」

「すげーな・・・旅なんかしてないでどっかに落ち着いた方が稼げるだろ」

「あたしは・・・旅が好きなのさ」

薬師さんは話しながら色んな材料を手際よく取り出している。

・・・かっこいいお姉さんだ。



 「あんたらの師匠も若いのに大変だね。・・・ほら」

薬はピカピカの瓶に流し込まれて、しっかりと蓋が閉められた。

これが万能薬・・・。


 「ぼうやも試してみていいぞ」

「小さくなってない俺に効くかよ・・・」

「へー・・・自信あんだな。気が向いたらでいいよ」

「なんの話だ・・・」

たしかにヴィクターが飲んでも仕方ないよね。

それより・・・。


 「あの・・・中身は何が入ってるんですか?」

これは聞いた方がいい。

「なんだってやる」って言ってたけど、よくわからないものだったら飲んでくれないかもしれないし・・・。

 「配分は教えられないが・・・これだ」

薬師さんは材料を紙に書いてくれた。

これならニルス様も信用してくれるはずだ。



 「お・・・いい風だ。あたしはこの風を追いかけるよ。また会えたらいいな」

薬師さんは、広げていた荷物をしまいだした。

本当に今思い立ったって感じだ。


 「海が近いからな。潮風も混じってるんだ」

「海沿いを歩いてきたから知ってるよ。・・・北北東に吹いてるな」

わたしの顔にも夏の風が吹き付けてきた。

・・・いい気持ち。


 「薬師さん、また会いましょう」

「風次第さ・・・じゃあな」

薬師さんは風に背中を押されながら歩き出した。

 なんだか、ニルス様に似てるな・・・。

旅人の雰囲気?


 「いい人・・・だったのかな?」

「うーん・・・いい魔女?」

淑女とは真逆の恰好だったな・・・。もっと落ち着いた感じにすればいいのに。

いや違う、今はそんなことより・・・。


 「ヴィクター、戻ろうよ。早くニルス様に飲んでもらわないと」

「ああ・・・そういや名前も聞かなかったな」

「あ・・・」

そういえばニルス様の時もだったな・・・。

次からいい人には最初に名前を聞こう。


 「また会えたら聞く。それより・・・お屋敷まで競走しよ」

「・・・俺に勝てると思ってんのか?」

「やってみなきゃわかんないよ」

わたしは走り出した。

・・・今日はいつもよりも速く走れそうな気がする。


 ふふ・・・わたしだって役に立てる。

ステラさんも喜ぶし、ニルス様もきっと元気になってくれる・・・考えるだけで、わたしの足はどこまでだって走ってくれそうだ。

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