第百八十二話 元気に【ルージュ】
『ルージュ、俺が一緒にいて守ってやる。だから安心してくれよ』
ふふ、なんか恐くなくなっちゃった。
ヴィクターは頼りになる人だと思う。
・・・わたしよりも背が高いから?
なんにしても、一緒に来てくれるのは嬉しい。
もっと仲良くなりたいな。
◆
「準備って何するの?」
わたしはヴィクターと一緒にお屋敷の外に出てきた。
大変なら手伝いたいし、お買い物があれば一緒に行きたい。
「・・・着替えとかかな」
「たくさんある?ニルス様の鞄を借りればなんでも入るよ」
「・・・助かるよ」
ヴィクターが素っ気なくなった。
どうしたんだろ・・・答えてはくれてるけど、目に光が無い。
なんか元気無いのかな?さっきの話し合いの時はそんなことなかったのに・・・聞いてみよう。
「ねえ、ステラさんとなにかあったの?」
原因はこれしかないよね・・・。
「・・・大丈夫だよ。・・・スナフから出たことないからな。街が不安なだけだ」
本当かな?
でも・・・それなら心配ない。
「平気だよ。きのうのお礼に、わたしがテーゼを案内してあげるから」
「・・・ルージュが?」
「うん。あとね、友達のセレシュも紹介してあげる。だから元気出してよ」
「・・・悪いな、心配かけた」
ヴィクターは言いながら自分の胸を叩いた。
すごい音・・・。
「気を遣わせてごめんな。・・・もう平気だ。そういやシリウスってのもいるんだろ?」
あ・・・笑ってくれた。
原因はステラさんじゃなくて、初めて行く場所に緊張してただけみたいだ。
ふふん、わたしが安心させてあげられたんだね。
「シリウスはテーゼには・・・あれ・・・シリウスのことも知ってるんだね」
「まあな、シロはよく友達の話をしてくれたんだ。ルージュのことも聞いてたよ」
「あ・・・わたしが男の人苦手なの知ってたもんね。ん?でも、わたしはヴィクターの話聞いたことないよ」
おじいちゃんのことは聞かせてくれたけどヴィクターは・・・一度も無い。
「あー・・・恥ずかしいから話さないでくれって頼んでたんだ・・・」
「わたしが女の子だから?」
「・・・そうだよ」
「あ・・・赤くなった。ふふ、おもしろーい」
待てよ、そしたらセレシュとはどうやって友達になればいいんだろ?
・・・しばらくはわたしが間に入るしかないな。
「笑うなよ。・・・ルージュ、これから一緒に買い物行かないか?」
「うんいいよ、お菓子買おうね」
「俺の支度なんだけど・・・」
「わかってるわかってる。じゃあニルス様の所に戻ろうよ」
わたしたちはお屋敷に引き返した。
ニルス様はステラさんと一緒にいるはず。
・・・お小遣いをもらわないと。
◆
「買い物か・・・」
ニルス様はテーブルの上で縫い針を磨いていた。
気に入ってるのかな?
「はい、ニルス様とステラさんも一緒にどうですか?」
「いや・・・オレはいい」
あれ・・・なんかニルス様も元気無いな。
「ニルスが残るなら私もそうする。二人で行ってきなさい」
「ヴィクター、ルージュから目を離さないようにしてくれ」
「はい」
「今お金を渡す・・・持ちづらいな・・・」
ニルス様は小さい体を半分だけ鞄に入れてお財布を取り出した。
お小遣い・・・。
「これを渡す。ヴィクターの必要な物も買うといい」
「え・・・ニルスさん、それはちょっと・・・」
「どうした?」
「さすがに・・・悪いですよ」
まさか財布ごと渡されるとは思わなかった。
・・・たくさん入ってそうだ。
「遠慮しなくていい。・・・ステラ」
「はい、じゃあルージュが持っていなさい」
「あ・・・はい」
財布はステラさんからわたしに渡された。
重い・・・。
「ずっしりですね・・・」
「五十万くらいは入ってる。無駄遣いはしないようにな」
「ごじゅ・・・」
そんな大金持ったことないよ・・・。
周りの目が気になりそう。
「あ・・・それと宿だけど・・・」
「あー!そうですよ、わたしの荷物はあそこにあります」
忘れてた。
ていうかきのうは戻ってない・・・。
「・・・最後まで聞け。カザハナさんが行ってくれるって言ってた。荷物も全部運んでくれるらしい」
「ご迷惑を・・・」
「あとでお礼を言わないとダメだよ?」
「はい・・・あと、宿のご主人さんたちにもご挨拶をしてきます」
ずっとお世話になってたから、黙って出て行くのはダメだよね。
「そうするといい。・・・ヴィクター、準備は今日で終わりそうか?」
「はい」
「そうか・・・明日には出よう。ルージュ、なにか心配事があればいつでも言ってくれ」
あれ・・・。
「はい・・・ありがとうございます」
ニルス様の様子が気になる・・・。
気遣ってくれてはいるけど、いつもと違って寂しそうだ。
「ニルス様こそ、なにか心配事がありそうです」
ステラさんがいるけど、わたしも力になりたい。
「・・・この身体は、やっぱり不便だなって思ったんだよ」
「大丈夫よルージュ、私が慰めててあげるから」
「服を脱がそうとしてたくせに・・・」
わたしも早く元に戻ってほしい。
またぎゅっとされながら眠りた・・・あれ?今日は誰と寝ればいいんだろ・・・。
「ニルス様、今夜は一緒にいてくれますか?」
「大丈夫よルージュ、私が一緒に寝てあげるわ」
「え・・・いいんですか?」
・・・ステラさんなら大丈夫そうだ。
「セレシュやシリウスの話を聞きたいの」
「はい、たくさんお喋りしましょう」
そうだ、ステラさんが起きたことをセレシュにも教えてあげよう。
シリウスにも手紙を書かなきゃいけない。
「だから、今はニルスと一緒にいさせて。ちゃんと元気にしておくから」
「はい・・・」
すごい自信だ・・・。
ステラさんにとっては簡単なことなのかな?
◆
「まずは宿に行きたい」
「わかった。そのあとは商店通りだな」
「うん」
ヴィクターと二人でまた外に出てきた。
ニルス様にはステラさんが付いてるから大丈夫だ。
「ステラさんは、なんにも心配事が無さそうだったね」
「そりゃそうだろ、やっと目覚めることができてニルスさんもそばにいるんだ。・・・今のステラ様に恐いもんなんて無いんだろうな」
「そんな感じだよね」
八年も眠ってて、起きたら大好きな恋人がいて・・・。
幸せなのは間違いないよね。
◆
「長い間ありがとうございました」
「いやいや、ふた月も使ってくれてありがとう」
「また来てね」
「はい、本当にお世話になりました」
わたしはご主人とおかみさんに深く頭を下げた。
朝と夜の食事、お部屋のお掃除にお洗濯、わたしのためだけのお風呂・・・とってもいい人たちだったな。
「ヴィクター、しっかり守れよ?」
「女の子にケガさせちゃダメだからね?」
「そのつもりだよ・・・」
本当にいい人たちだ。
◆
「服はどうするの?」
わたしたちは商店通りに入った。
よくお昼を買いに来てたから、ここはよく知っている。
「今は・・・田舎者って感じか?」
「そうは見えないけど・・・着替えはたくさんあった方が選ぶ時楽しいでしょ?」
「うーん・・・それなら服はテーゼに行ってから見ようかな。案内してくれるんだろ?」
「もちろん」
それも楽しいかも。
ヴィクターが一緒なら、どこに行っても許してもらえるもんね。
「買うもんは無くなったけど、気晴らしはしたいんだ。・・・テーゼって大きな街なんだろ?不安なのは本当だからな」
「なあんだ、じゃあ・・・色んなお店見て回ろうよ。お金もたくさんあるしね」
「それはニルスさんのお金だろ・・・」
「無駄遣いはしないよ」
なにも考えずにお買い物なんて久しぶりだ。
「じゃあ、まずはそこからね」
わたしも少しだけ気晴らしがしたくなった。
今起こっている問題は、まだあんまり前に進んでない。
だけどニルス様、ステラさん、それにヴィクターもいるからなんだか全部うまくいきそうな気がする。
それにせっかく男の子の友達ができたわけだし、楽しいことをしたい。
あ・・・ヴィクターはもう大人だから男の子じゃないのかな?
◆
「お嬢ちゃんしばらくぶりだね。悪いけど品ぞろえはそのままだ」
赤毛を買ったお店に入ってみた。
ここでの修行が終わったら見にこようと思ってたんだよね。
「櫛を見せてください」
「勝手に見てっていいよ」
綺麗な模様の櫛を見たかった。
手作りのもたくさんあって、わたし好みな気がする。
「櫛・・・持ってないのか?」
「持ってるけど気になってたんだ。模様が素敵なんだもん」
「ふーん、ばあさんの入れたこれがね・・・」
ヴィクターが並んだ一つを手に取った。
誰がとかは関係ないんだけどな。
それに他の人がなんて言おうと、自分がいいと思ったらそれを使いたい。
「・・・あんたが女連れで来るなんて初めてだね」
おばあちゃんがヴィクターの背中を叩いた。
ああ・・・またか。
「うるさいな・・・」
「この子・・・黒髪も似合いそうだ。かわいいからね」
「あの赤毛・・・ばあさんが売ったんだな?」
スナフの人たちはみんなヴィクターを知っている。
『おい、騎士が女連れてるぞ』『遊んでねーで聖女様を守れよ』『修行はどうした?』『俺、女に興味無いからさ・・・似てたか?』
ここに来るまでに色んな人たちに話しかけられた。
ヴィクターと同い年の人たちは特に・・・。
『なんだ・・・年下が好きだったんだね』『あたしちょっといいなって思ってたのに』『からかわれてる女の子いたら助けてあげてたんだよ』『そのあと面白いんだよ。礼なんか言うな、離れろ・・・って、ひどいよね』
お姉さんたちは色々教えてくれた。
女の人が苦手って言ってたけど、向こうからは好かれてたみたいだ。
なんか・・・わたしよりもヴィクターのことを知ってる人がいるのってもやもやする。
そりゃ、まだ知り合ってふた月だから仕方ないけど・・・。
◆
「ついでにこれとかもどうだい?」
おばあちゃんが、ちょっと恐い顔の仮面をいくつか取り出した。
でも、模様は素敵な気がする。
「あのさばあさん・・・こんなもん作って誰が買うんだよ。だいたい何に使うんだ?」
「そうだねえ・・・強盗とか誘拐には使えるんじゃないか?」
「物騒なもん売ってんじゃねーよ!」
それだったら必要ない・・・。
うん、櫛だけを買おう。
そうだ、セレシュの分も・・・これを渡して「ごめんね」を言うんだ。
◆
「はあ・・・やっぱり買い物はテーゼでしよう。ここだと村の奴らが鬱陶しい」
ヴィクターは、外に出た途端に溜め息を吐き出した。
疲れたのかな?
「わたしは見てて楽しいよ。まあ、わたしも櫛が手に入ったからあとはなんでもいいかな」
ちょっと強がった。
本当は庭園で二人だけのお喋りがしたい・・・。
「・・・ならあとはお菓子買って帰ろうぜ。色々詰め込まないといけないからな」
「棚ごと持っていけばいいんだよ。わたしもそうしてるよ」
「あの鞄か・・・まあそれでもいいな」
わたしも使わなかった荷物は全部しまっている。
そういえば、なにを入れたか忘れたら取り出せなくなるんだったな・・・。
わたしも戻ったら確認しよう。
◆
「おい、お使いの子どもら」
お菓子も買って、通りを出ようとした時だった。
「え・・・わたしたち?」
「そうそう、あんたたち」
地面に不思議な色の水を並べている女の人がいた。
「万能薬、ここにあり」って手書きの札が前に置いてある。
「家族に具合悪いやついねーか?」
「具合・・・」
「なんでも作ってやるぞ」
たぶん・・・若い。ミランダさんと同い年くらいに見える。
恰好はあの人よりも露出が多いな。
・・・全身暗めの服で物語の中の魔女って感じだ。
「あんた・・・スナフの人間じゃないな?」
ヴィクターが一歩前に出た。
たしかに・・・そんな感じじゃない。
「そうだよ、旅をしながら薬を売ってんだ。さっき目がぼやけるって言ってた年寄りと、風邪気味の兄ちゃんに薬を売った」
「薬師か・・・。うちに病気の人間はいない。悪いけど必要無いな」
「あたしはどんな調合でもできる。なんでも治してやれるぞ」
「なんでも・・・」
・・・それって、もしかしてニルス様の身体も?
「あの・・・お話を聞かせてください」
「いいよ。暇だし、なんでも答えてやる」
薬師さんは妖しく笑った。
見えてるおへそが色っぽい・・・。
「大丈夫かルージュ?魔女って感じだぞ」
ヴィクターが心配そうな顔をした。
目の前でそんな失礼なこと・・・。
「あはは、ぼうやはご本の魔女しか知らねーみてーだな。あたしはいい魔女さ」
「・・・ぼうやってのは俺のことか?」
「あんたが女だったら謝るよ」
・・・この人もけっこう言うな。
それに荒っぽい話し方・・・ティムさんが浮かぶ・・・。
「とりあえず下脱げ。男のしるし見してみろ」
「ふざけんじゃねー・・・」
「あ?ぼうやって思われたままで・・・ああ、そっちはぼうやだったのか?そりゃ悪かったな」
「あー?」
「そこまでです。二人とも落ち着いてください」
とりあえず話を戻そう。
ヴィクターが怒ったら何も聞けないかもしれない。
「あの・・・本当になんでも治せるんですか?」
わたしはヴィクターの背中をさすりながら薬師さんの目を見つめた。
可能性があるなら確かめたい。
まだ迷惑しかかけてないし・・・役に立ちたい。
「大陸一の薬師にできない調合は無い。・・・症状言ってみ」
「ルージュ、やめた方が・・・」
「でも・・・」
「話だけでもいいから聞かせろよ」
そうだよね。まだお金も払ってないし、無理そうだったら戻ればいい。
「ヴィクター、任せて」
「・・・無駄遣いなら止めるからな」
「それはお嬢ちゃんが判断することだ。ぼうやは黙ってな」
「・・・」
なんて説明しよう・・・。
「あの・・・わたしたちの師匠がですね・・・えっと・・・小さくなってしまって・・・」
ジナスっていう精霊にやられたせいかも・・・っては言えないよね・・・。
でも、できる限りどんな状態かを教えてみよう。
「・・・小さく?」
「はい、前はもっと大きくて・・・」
「ん?・・・いつからだ?」
「花の月の末くらいからです」
全部話せたら楽なんだけどな・・・。
「男か?その師匠の歳、それとそれまではどうだったのか教えろ」
「はい、男性です。えっと師匠は・・・二十五歳って聞いてます。それまではなにも問題ありませんでした。とっても逞しくて・・・見てると元気をもらえて安心するんです」
「・・・」
薬師さんは左手で顔半分を隠した。
・・・口元が少しにやけてる気がする。
「花の月から・・・ずっとそうなのか?」
ずっとではない、果実を食べれば・・・。
「ええと・・・たまに元に戻るんですけど一日だけで・・・。だからほとんど小さいままなんです」
「元気も無くしてそうだな」
「そうですね・・・落ち込んでいるような、そんな感じです。また、大きくて元気な師匠に戻ってほしいんですけど・・・」
「・・・」
薬師さんは顔を隠してしまった。
どうだろ・・・うまく説明できたかな?
「薬じゃ無理だろ・・・」
横を見ると、ヴィクターが難しい顔をしていた。
そんなうまくいかないかな・・・。
「無理じゃねーよ。調合してやる」
薬師さんが顔を上げた。
え・・・。
「調合・・・本当にできるんですか?」
「お嬢ちゃんの教えてくれた症状なら簡単だ。でもちょっと高いよ」
お金・・・今五十万エールはある・・・。
『オレは元に戻るためならなんだってする』
ニルス様はなんでもする・・・。
なら・・・ちょっとくらい高くても大丈夫だよね。
「おいくらでしょうか?」
「本当は五万・・・でも、特別に四万でいいよ」
それなら・・・。
「ありがとうございます。さっそくお願いしてもいいですか?」
「わかった。とびきりのを作ってやる」
やった。これでニルス様が元に戻る。
そしたらきっといっぱい褒めてくれるし、またぎゅっとしてもらえる・・・。
「おい、本当に薬でなんとかなるのか?ニル・・・師匠のは特殊だぞ?」
ヴィクターは信じられないみたいだ。
「特殊ってなんだよ・・・今の症状で間違いないなら治せるさ」
「すげーな・・・旅なんかしてないでどっかに落ち着いた方が稼げるだろ」
「あたしは・・・旅が好きなのさ」
薬師さんは話しながら色んな材料を手際よく取り出している。
・・・かっこいいお姉さんだ。
◆
「あんたらの師匠も若いのに大変だね。・・・ほら」
薬はピカピカの瓶に流し込まれて、しっかりと蓋が閉められた。
これが万能薬・・・。
「ぼうやも試してみていいぞ」
「小さくなってない俺に効くかよ・・・」
「へー・・・自信あんだな。気が向いたらでいいよ」
「なんの話だ・・・」
たしかにヴィクターが飲んでも仕方ないよね。
それより・・・。
「あの・・・中身は何が入ってるんですか?」
これは聞いた方がいい。
「なんだってやる」って言ってたけど、よくわからないものだったら飲んでくれないかもしれないし・・・。
「配分は教えられないが・・・これだ」
薬師さんは材料を紙に書いてくれた。
これならニルス様も信用してくれるはずだ。
◆
「お・・・いい風だ。あたしはこの風を追いかけるよ。また会えたらいいな」
薬師さんは、広げていた荷物をしまいだした。
本当に今思い立ったって感じだ。
「海が近いからな。潮風も混じってるんだ」
「海沿いを歩いてきたから知ってるよ。・・・北北東に吹いてるな」
わたしの顔にも夏の風が吹き付けてきた。
・・・いい気持ち。
「薬師さん、また会いましょう」
「風次第さ・・・じゃあな」
薬師さんは風に背中を押されながら歩き出した。
なんだか、ニルス様に似てるな・・・。
旅人の雰囲気?
「いい人・・・だったのかな?」
「うーん・・・いい魔女?」
淑女とは真逆の恰好だったな・・・。もっと落ち着いた感じにすればいいのに。
いや違う、今はそんなことより・・・。
「ヴィクター、戻ろうよ。早くニルス様に飲んでもらわないと」
「ああ・・・そういや名前も聞かなかったな」
「あ・・・」
そういえばニルス様の時もだったな・・・。
次からいい人には最初に名前を聞こう。
「また会えたら聞く。それより・・・お屋敷まで競走しよ」
「・・・俺に勝てると思ってんのか?」
「やってみなきゃわかんないよ」
わたしは走り出した。
・・・今日はいつもよりも速く走れそうな気がする。
ふふ・・・わたしだって役に立てる。
ステラさんも喜ぶし、ニルス様もきっと元気になってくれる・・・考えるだけで、わたしの足はどこまでだって走ってくれそうだ。




