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Our Story  作者: NeRix
水の章 第四部
133/481

第百二十七話 英雄【シロ】

 大丈夫だ、勝てる。

人形の数はあと百くらい、ステラの方に向かったドラゴンの人形も誰かが倒してくれたみたいだ。


 今回で戦場は終わり、今までに流れた戦士たちの無念は報われる。

そのあとは・・・消された精霊たちの無念だ!



 「どういうことだ?」「半分はとうに倒しているのに・・・」「最後だからなのかもしれない」「全部倒せば終わりってことか・・・」

さすがに戦士たちがざわめき出した。

魔族はどう見ても五百いない・・・ひと目でわかるからな。


 「どっちにしても・・・私たちの勝ちだよね?」「俺たちで、戦場は終わり・・・」「ああ・・・力抜けてきた・・・」

空気も緩んでいて、座り込む人も出てきた。


 「お母さんも休む?」

「いや、最後までやる。シロはどうする?」

「ニルスと一緒にいる」

僕はアリシアの背中から下りた。

もう充分だ、ニルスとミランダの二人は休ませなければならない。



 「疲労のある者は下がれ!!勝利は目前だ!!」

お母さんが巨人の人形に突っ込んでいった。

自分がやりたいからそうしたんじゃないかな・・・。


 「アリシア・・・疲れてるわけねーだろ!!」「煽りやがって・・・」「やってやろーじゃん」

休んでいた戦士たちが全員立ち上がった。

煽りに聞こえるのか・・・。


 「ニルスはもう休んでてね」

「そうするよ。・・・あの人、剣を返してくれなかったな。終わったらってことか」

ニルスは栄光の剣を納めてその場に座った。

調子はよさそうだ。


 「心配してなかったの?」

「カゲロウのこと?・・・あの人が負けるわけないよ」

ほんの少しの心配も無かったみたいだ。

アリシアが勝つことはわかっていたんだろう。


 「あ、いたー!ミランダ隊集合!」

隊長の命令が聞こえた。

ニルスがせっかく座ったとこだったのに・・・。



 「作戦を伝える!!」

僕たちは隊長の前に整列した。

まだまだ元気って感じだ。


 「あとはアリシアに任してもいーだろ」

「お黙り!」

「・・・了解」

ティムは少し離れた間に随分雰囲気が変わった。

思い描いていた戦いができて、その自信を纏っているからかな。


 「で、どんな作戦?」

「僕も早く聞きたいな」

「あんたら二人は素直でいいわね」

結界をかなり使ったはずのミランダに疲労は見られなかった。

熱くなっているのか、上着もどこかに脱ぎ捨ててきたみたいだ。


 「最後の一体を倒せば、戦場を終わらせた戦士になれるよね?」

「まあ・・・そうだね」

ニルスが微笑んだ。

旅をしてた時みたいに穏やかだ。


 「あたしはそれになりたいの。戦場の英雄ミランダ!二つ名として相応しいと思わない?」

「何人も結界で助けただろ。隊長たちも功労者に推薦しようって言ってくれたじゃねーか」

ティムは「もう休みたい」って顔をしている。

でも、命令されたらやってくれそう。


 「それは別な話、功労者って何人もいるじゃん。そういうんじゃなくて、あたしだけの名誉や栄光が欲しいの」

「・・・功労者じゃ足りねーのかよ・・・強欲な魔女だ」

「あはは、いいと思うよ」

ニルスが笑い出した。

 ・・・なんかいいな。

本当の戦いはこれからなのに、ニルスもミランダもいつもの調子で安心する。


 「面白そうな話だな」

「初めての戦場で英雄かよ」

大きな二人が、ミランダ隊長の後ろに立った。

今の話を聞かれてたみたい。


 「あ、おじさんその一とその二」

「私とウォルターも協力しよう。その作戦の仲間に入れてくれ」

「え・・・いいの?」

「私も手伝うよ」

「俺もだ!!!」

いつの間にかイライザさんとバートンさんもいた。

 「若き英雄・・・その方がいい。新しい時代はあんたらが作るからな」

「手伝えることがあったら何でも言え!!!」

「ありがとうございます!」

ミランダが雷神の隠し子みたいな有名人になっちゃうのか。

英雄ミランダ・・・いいかも。


 「ティム、お前の活躍は聞いている。功労者の一人だ」

軍団長さんは若いティムにも栄光を与えた。

僕も人形を出して鍛えてあげてたからこれは嬉しい。

 「他の奴に譲れ、俺はそんなもんいらねー」

「ニルスと一緒か・・・まあいい、戻ったらもう一度聞く。受けておいた方がいいぞ」

「変わんねーよ・・・」

ティムはやっぱり功労者を断るみたいだ。

もったいないとは思うけど、あとで後悔しないならそれでもいいよね。


 「色んな話はあとでしてください。ミランダ、最後はあいつになると思う」

ニルスが空を飛ぶ最後のドラゴンを見上げた。

 落とせるのはアリシアしかいないけど、高すぎて叫びが届かない。

戦士たちは、火球を躱しながら地上の人形を先に片付けようとしている。


 「・・・このままじゃ雷神に取られるな」

「僕がお願いしてくるよ」

敵はもうわずかだ。

 地上にはあと三十・・・かな。

巨人や地竜みたいに面倒なのはもういない。



 「待ってー!!」

走ってアリシア隊に近付いた。

やっぱりあのドラゴンを狙っていたみたいだ。


 「シロ、もう前に出てこなくていいんだ。ニルスたちと一緒にいてくれ」

「お願いがあ・・・」

「シロ!!」

お母さんが僕を抱きかかえて火球を避けた。

 「周りを見ないとダメだ。まだ油断はできないんだぞ」

「ごめんなさい、でも大事な話がある」

別にあれを受けても僕は消えない。

だから放っておいてもよかったんだけどな・・・。



 「そうか、落とせばいいんだな?」

ミランダのことをアリシアに伝えた。

笑ってる・・・最後の一体を取られることは嫌じゃないみたいだ。


 「あれが最後になったらだよ」

「わかったよ。ティララ、ミランダ隊を呼んできてくれ」

「はい!」

「ん・・・もう最後になったようだな」

僕たちが話している間に、地上の人形は全部いなくなっていた。


 「雷神が落とすのを待つしかないな」「あいつ・・・降りてくるのか?」

「とにかく固まるな、散れ!」

いつの間にか生き残った戦士たちがみんな集まっている。


 ・・・かなり減った。

何人流れてしまったんだろう・・・。

今回で必ず終わらせなければ!


 

 「ジナスは何を考えているんだろうな。もう負けは確定だろう・・・」

ドラゴンの人形が、上空から絶え間なく火球を降らし始めた。

 悪あがきだ・・・諦めろジナス。

僕は大きく結界を作り、戦士たちを守った。

 結界を壊せるカゲロウはもういない。

あの一体だけでこの戦況をひっくり返すのは無理だ。


 「シロの結界もミランダのと同じくらい硬いな」

「当然だよ、ニルスの蹴りだって防ぐ。それくらい強いよ」

「そうか・・・先に思いつけばよかったな・・・」

お母さんが笑った。

いい方法が浮かんだみたいだ。

 「何をするの?」

「ミランダたちが来たら教えてやろう」

きっとうまくいく作戦なんだろうな。



 「どんな作戦ですか?」

「単純だ」

ミランダたちと合流して、お母さんが作戦を話し始めた。


 「あいつはあれ以上高度を下げそうもない。岩を登っても私の叫びは届かないだろう」

「はい・・・」

「そこでシロに協力してもらう。さっきと同じように半月の結界をもっと大きく作ってほしい」

お母さんが僕の頭に手を置いた。

・・・結界?


 「どうする気?」

「結界は頑丈だ。駆け上がれると思ってな」

「あー・・・」

足場に使うのか、たしかにそれが一番いい。

 この状況ならジナスも許すだろう。

お母さんは『先に思いつけばよかった』って言ってたけど、戦いの序盤でやっていたら激怒したかもしれないな・・・。


 「なんだ・・・私たちは何もすることがないのか」

「英雄の誕生をこの目で見るのが役目だな」

「まあいい・・・もう終わりだ」

「頼むぞ!!!」

うん、もうみんな休んでていい。


 「ミランダ、みんなが自分を知っているというのはとても恥ずかしいぞ?買い物に出るだけで騒がしい時もある」

「平気ですよ、そこはアリシア様と違う所です。あたしは誇りに思えますね」

「またあとでも伝えるが・・・ニルスと出逢ってくれてありがとう。シロ、頼んだよ」

お母さんがミランダの肩を一度だけ叩いて駆け出した。

これで絶対に決まる。


 「みんな、一度結界を解くから散って!!」

守護が消え、戦士たちは火球を避けるためにそれぞれの方向へ走っていった。

もうこんなに密集しなくていい。


 「たぶんだけどさ・・・ミランダじゃ首を落としたり、頭を貫くのは無理だと思うんだ」

ニルスがもっともなことを言った。

たしかにそうだな・・・。

 「自分でもわかるよ。けど、いい手があるってことよね?」

「うん、オレが一緒にやろう。手柄はミランダだけでいい」

「ふふ、頼んだよニルス」

二人で英雄でもいいと思う。

 ニルスってそんなに目立ちたく・・・お母さんを見て育ったからか。

観光客が握手しにくるとか、そういうのが煩わしいんだろうな。


 

 「あそこからみたいだな。・・・シロ」

お母さんが離れたところで止まった。

 「うん」

結界を作る。

少しくらい急でも、雷神なら駆け上がれるよね。


 「・・・できた!ニルス、ミランダ、準備してて」

あとはお母さんに呼びかければいい。

 『走って!絶対に壊れない!』

『任せてくれ!』

お母さんが結界に足をかけた。

 『止まらずに走る。母さんにも結界を頼むよ』

『もちろん!』

これで急がなくても、無事に叫びの届くところまで行けるはずだ。


 「・・・べモンド、雷神はなんでもできるな」

「そうだな・・・訓練場に来た初日に泣いて帰った小娘とは思えないよ」

「泣かせたのは俺だけどな。・・・今やったら逆になる」

「ああ・・・早く戻って昔話をしたいよ。ジーナやテッド・・・引退した奴らも誘ってこい」

戦場はいつ終わるのか・・・みんな考えていたこと。

この三百年の間で戦った人や流れてしまった人たち・・・みんなが望んだ終結はもうすぐだ。


 ジナス・・・結果がどうであれ、お前は今笑っているんだろう?

・・・いつまでも続くと思うな!



 「ミランダ、しっかり決めろ!落とすぞ!!」

真上から雷神が最後の叫びを響かせた。

同時にドラゴンの翼が羽ばたきを止め、頭から落ちてくる。


 「シロ、結界を消していいよ。あれくらいの高さなら雷神は死なない」

「わかった。頼んだよニルス」

大きな音と砂煙を立て、ドラゴンが大地とぶつかった。

痺れはすぐに無くなったみたいで、前足を立たせようとしている。


 「行くよミランダ」

「うん、連れてって」

ニルスがミランダを抱えて跳んだ。

初めての仲間か・・・僕もそうなりたかったな。


 「なあシロ、今俺が手柄奪ったら・・・隊長怒るよな?」

ティムが二人を見上げた。

そんな気無いくせに・・・。


 「ミランダ・・・終わらせてくれ」

軍団長さんが一粒だけ涙を零した。


 「いつでもいいよニルス」

二人はもう頭の上だ。

 「手を重ねて」

「うん・・・」

ミランダの手がニルスに重なり・・・ドラゴンの頭を貫いた。

 


 「我々の勝利だーーーーーー!!!!!!」

軍団長さんが真っ先に勝利の雄叫びを上げた。

集まっていた戦士たちも呼応し、全員が歓喜の叫びを空を突き抜けるくらいの大きさで上げている。


 「ふふ、一つの決着はついたわね」

「ニルス殿もしっかり温まっているようじゃな」

振り返ると、ステラとおじいちゃんが微笑んでいた。

 「早いね」

「ヴィクターがもう大丈夫って言うから来たのよ。あなたのそばにいないといけないし」

「まだ終わっとらんからのう・・・」

そう・・・まだ先がある。

元凶を絶たなければ・・・。


 「祝いは戻ってからでいいだろ!全員魔法陣の前で待機だ!ティム、シロたちは少しだけ神と話がある。先に戻るぞ」

「引っ張んなよ!おいニルス、戻ったら俺が勝つまでやるからな!!」

ウォルターのおじさんがティムを引っ張っていった。


 同じミランダ隊だったし、本当のことを話してもよかったかもしれないな。

・・・なにもう会えないみたいなこと考えてるんだ。

帰ったら教える・・・そうするんだ!


 

 「遅いな・・・」

ニルスが目を細めて呟いた。

 人形は一体もいない、全部倒したのにジナスの声がまだだ。

何をしているんだろう?


 「・・・私も魔法陣の所まで戻ろう。ニルス、ミランダ隊が戻るまで待つが・・・王には、もう結果は決まっていると報告させてもらう」

軍団長さんが組んでいた腕をほどいた。


 「べモンドさんは厳しい人ですね・・・必ず勝てと・・・」

「戦死者・・・目算だが六百以上・・・無駄にしないでほしい」

潰されたり、一瞬で焼かれた人がそれだけいる。


 ステラの治癒を持ってしても半分以上が流れた。

どちらかがすべて倒れるまで・・・今回の戦いは、数で言ったら過去最多だ。

 僕と仲良くしてくれた人たちの気配も多く消えた。

だから・・・必ず勝たなければいけない。


 「それに・・・何よりも風神を信頼している」

「・・・好きにすればいい」

「もう一つ・・・戻ったら話がある」

「なんとなくわかりますけど・・・聞きますよ」

ニルスの体に力が入った。

約束はまた会う意志、必ず生きて帰るという誓いなんだろう。


 「英雄ミランダ・・・。望みを考えておくといい」

軍団長さんは、ミランダにも声をかけた。

 「ふっふーん、そうする」

「戻ったら大変だぞ。しばらくは寝る時間も無いかもな。・・・帰りを待っている」

「あ・・・うん、待ってて・・・」

ミランダが軍団長さんに抱きついた。


 「・・・どうした?」

「別に・・・なんかしたくなっただけだよ。おじさんは・・・してくれないの?」

「・・・」

「ありがと・・・」

ミランダはどんな気持ちでああしているのかはわからない。

でも、あれも「また会う」という意志なんだろう。


 「シロ、母さんの手を。神・・・いや、ジナスはどうしたんだろうな」

お母さんが僕の手を握ってくれた。

 いつでもいい・・・もう恐がったりしない。

勇気をたくさん貰ったけど、足りているのか不安はある。

だからこの手から貰うんだ。



 「ニルス、信じてるからね」

「心配いらないよステラ。約束しよう、必ず三人で帰ってくる」

「うん、でも・・・少しでも離れたくない・・・」

ステラがニルスに体を預けた。

・・・絶対に勝つ、ステラのためでもある。


 「少しでもか・・・なら、これを君に預けるよ」

ニルスは背中にかけていた栄光の剣を外して、ステラに持たせた。

 「あなたの剣・・・」

「栄光の剣ニルス・・・オレと同じ名前だ」

「知ってるわ。あなたが持つべきもの・・・」

「胎動の剣がある。結界を斬れないそっちは置いていっても支障は無いよ。・・・名前だけでも君のそばに置いておきたい」

「・・・」

ステラは剣をしっかりと胸に抱いた。

 ニルスの言う通りではある。

今回は胎動の剣じゃなければ厳しいから、栄光の剣を置いていっても問題は無い。


 「まあ、ほんの少しの時間だろうけど・・・」

「はい、私はあなたと共にいます」

ステラが笑った時、僕の心に影が差した。


 来た・・・。


 『人間の勝利だな・・・いい戦いだった。大地を返そう・・・』

お母さんが僕を抱きしめてくれた。

ここまで頼んでないんだけど・・・でも、もうやるしかない。

 あいつはいつも一言か二言だけらしい。

そして少しだけこちらに現れて、約束通り大地を返して戻っていく。

そのわずかな時間で・・・。


 「・・・戦場の結界が消えている。シロの言った通りね」

ステラが呟いた。

そう、これであいつの所に行く前に力が使えることは知られない。

 「ステラ、準備をしておいて」

僕は目を閉じた。


 声から気配のかけらを・・・。

そこから糸を引くように・・・捕まえて、追いかける。


 『なんのつもりだシロ?』

すぐに気付かれた。

・・・相手にしてられるか!


 『私の気配を探っても仕方がないだろう』

うるさい!もうお前は恐くない!

 『八つ裂きにされたいか・・・』

掴んだ・・・もう離さない!

どこに消えても探せるぞ!


 「神の声はいつもと変わらないな」「最後だというのに祝福はしてくれないのね」「魔法陣が光った!」「帰る・・・帰れるんだ・・・」

戦士たちが喜びの声を上げている。

そうだ・・・みんなは帰って・・・。


 『離さないつもりか・・・まあいい』

体が震える・・・なんで?

精霊なのに・・・輝石もあるのに・・・。

 

 「シロ、オレが必ず守るよ」

ニルスが触れてくれて、体の震えが止まった。

 うん、もう平気だ。

その言葉で僕は外に出られたんだから・・・。



 ジナスの気配が別な場所へ移った。

ここが洗い場・・・狭間・・・命の流れ・・・。

大丈夫、行ける!


 「捕まえた!!」

目を開くとみんなが僕を見守ってくれていた。

雷神が付けてくれた勇気の炎、ここからもっと熱を上げないといけない。

 「よく頑張ったなシロ。朝食は・・・一緒に食べよう」

僕を抱いていた手が離れ、背中が叩かれた。

うん・・・そうする。


 「すぐに転移させられる!準備ができたら私に触れて!」

ステラの準備はもうできている。

ニルスとミランダも・・・大丈夫みたいだ。


 「シロ、オレはあいつの姿を見たら問答無用で斬る・・・構わないな?」

ニルスの目はとても鋭くなっていた。

 「構わない・・・僕も話すつもりはないよ。景色が変わった瞬間に精霊封印を張る」

「人形を出してきたら任せていいな?」

「その時は一度僕の後ろに。すべて凍らせる・・・」

「よし・・・」

胎動の剣はもう抜かれている。

目に入ったと同時に斬りかかるつもりなんだろう。


 「シロ、終わったら私に呼びかけて。すぐ迎えに行くわ」

ステラの声にとても強い意志を感じた。

全員の治癒と転移・・・長くても三年くらいか・・・。


 「ステラ、あたしがいるんだから心配しないで。早すぎて驚くかもね」

「ミランダは・・・残ってもいいよ」

「絶対にいやよ!!あたしだって戦うんだから!!」

ミランダも昂っている。

君の強気も僕の力になっていく・・・まだ熱は上がりそうだ。


 「心を強く持て!俺はここでステラ様を守る!なんの心配もするな!!」

聖女の騎士は、いつもよりもずっと若く見える。

僕たちの火が燃え移ったからなんだろう。

 「あら、軍団長さんが来たら休んでたくせによく言うわね」

「さて・・・なんの話ですかな?」

・・・とにかく大丈夫そうだ。


 「やはり私も一緒に行った方が・・・」

お母さんが真剣な顔でニルスに尋ねた。

 「話しただろ。何があるかわからない、あなたはすぐに戻ってルージュを守れ!他の誰にも頼めない!」

「・・・わかった!ルージュの心配は一切させない!」

「頼んだよ母さん・・・。ルージュには、戻ったらすぐ会いに行く」

「ああ、待っているよ・・・」

アリシアはニルスを強く抱きしめてから魔法陣へ走った。

ニルスの言う通り、あいつはなにかをするかもしれない。


 『シロも必ず帰ってこないとダメだよ?』

ルージュたちとも、戻ったら遊ぶって約束をした。

アリシアがいれば、きっと無事で待っててくれるはずだ。

 『一緒に・・・アカデミーにも行きたいな・・・』

アカデミーか・・・。

旅もしたいけど、ちょっとだけ行ってみてもいいな・・・。


 『シー君、次はいつ来るの?』

『ええと・・・戦いが終わったらかな』

『わかった。そしたら一番に会いに来てね』

『うん、そうするね』

ああそうだ、バニラとも約束してた。

・・・キビナのアカデミーでもいいのかな?


 『旅人は自由なんだ』

ニルスも言ってたし、ちょっとくらいならいいよね・・・。



 「シロ、ミランダ、行くぞ!!」

ニルスの力強い声が、僕の心を戦いに引き戻した。

わかってる・・・全部終わらせてからだ。


 「二人に精霊の目と耳を授ける・・・」

僕はニルスとミランダに触れた。

 「シロ・・・」

「いいの?」

「万全で行く。絶対に勝とう!」

本当はダメだけど、今回はそんなこと言ってられない。

こうしておけば、ああしていれば・・・そういうのは持って行かない!


 「ステラ!!」 

「はい。繋がり、響き合え・・・さすらう彼らを決戦の地へ・・・」

僕たちはステラに触れた。


 みんなの無念は僕たちが晴らす。

女神様もすぐに暗い地の底から解放する。

ジナス、僕を甘く見るなよ!

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