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銀河戦國史 (漂泊の星団と貴賤の騒擾)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第18話 側近貴族の安堵

 北の分王国で、現国王の不人気が、側近貴族の反抗を招く。

 貴族の反抗が、エシャヴェリーナによる粛清の嵐に繋がる。

 過酷な粛清は、貴族達の離反と逃亡を引き起こす。


 こんな負の連鎖で北の分王国は、致命的な弱体化を余儀なくされた。


 一方で、南の分王国で現国王となっているプサイディアの子が、成長と共にメキメキと頭角を現した。

 母の死によって枷を外され、開放された才能が、親政を始めるや否やで伸び伸びと本領を発揮し始めたらしい。

 国内の貴族達を掌握したのに加えて、北から粛清を嫌って逃れて来た多数の貴族たちをも抱きこみ、巧みに統率するようになる。


 そんな経過を経た後、国力に決定的な差が付いた頃合いを見計らって遂に、北の混乱に付け込む形で攻勢に転じた南が勝利を治めた。

 それを見た東も、その後には一戦も交えることなく南に屈し、プサイディアの子であるトラヴィヌセンによる3つの分王国の統一が実現した。


 王国の再統一と隆盛への礎を築いたとして、トラヴィヌセン王はその国における中興の祖とも、大賢王とも評されるようになる。


 我が子のこのような成功を目にすれば、たいていの母親は喜ぶだろうが、さて、亡きプサイディアはどうであろうか。

 彼女に君臨されることもなく、彼女に思いのままにこき使われる悲劇も味わわないままに、王国は繁栄を遂げ民衆は安寧を寿いでいる。

 支配者たるを望んだ彼女には、喜ぶべき状況なのか、そうではないのか。


 ただ、中興の祖となったトラヴィヌセン王の母后として、彼女自身の美貌も一助となり、プサイディアは後の世の民からは、「我が王国復興の女神」として広く深く敬慕される存在となる。


 命の燃え尽きた後に、念願だった〝 女神 ″の称号だけは、手に入れることができた。

 そのことに彼女は、死者の世界で、何を思うのだろうか?




「顔色が悪いな」

 貴族が執事に、この日もまた、そう話しかけた。「少し、働きすぎではないか」

「お気遣い、感謝いたします、ご主人様。

 ですが、今こそが、私には踏ん張りどころですので、少々疲れがたまったからといって、音を上げるわけにはまいりません」

 痛々しい、無理に作った笑顔で、執事が貴族に応じた。


「そうか。偉大なるトラヴィヌセン王による賢明な御英断のおかげで、例の星系はとうとう、所領として我らの手元に戻って来てくれたのだからな。

 数々の勢力が、我がものとするべくあの手この手の策動を仕掛けて来たにもかかわらず、それらをきっぱりと跳ねのけ、実に速やかに実行なされて下さった。

 あれから5年が過ぎ、いよいよ惑星状星雲となって広がっている星系ガスからの資源採取も、それを使った各種の生産活動も軌道に乗って来て、あそこからの収穫が増えて来たからな。

 ここで所領経営の安定を、確かなものとしておきたいところだな」


「おっしゃる通りです。偉大なるトラヴィヌセン王のもとに、我が星団は、強大なる一つの王国として統合されました。

 そのおかげで、以前まで北や東の分王国として分かたれていて、断絶状態にあった宙域とも、活発な交易が展開されております。

 ですので、商業活動の方でも、仕事が激増しております。所領における生産の安定と共に、交易ルートの展開にも力を入れることで、我が一門の将来をより明るいものとしたいと考えております。

 まだまだ私は、疲れてなどいられません」


「ははは、しかし、あまり無理はするな」

 無理をしているのがひと目で分かる執事への、貴族の言葉。「仕事が増えたのなら、その分人を増やせばいいのだからな。お前ひとりで、抱え込むことはないのだぞ」

「重ね重ね、ありがたいお心遣いに、感謝致します、ご主人様。

 もちろん、人は増やしてはおるのですが、それを育て上げて管理官等の役目が務まるようにするには、結局は私が腕を振るわねばなりません。

 従来の管理官達も、更に技量を高めてやらねば、所領経営は追いつきません。

 それらに目途が付いて来れば、楽もできましょうが、やはり今は、私には踏ん張りどころでしょう」


「そうか。嬉しい悲鳴と言うやつだな。一門の繁栄と安定が、あと一歩で確かなものとなるのだからな」

「ええ、まったく。こうなると、あの恐ろしかったプサイディアやエシャヴェリーナにも、感謝の気持ちが芽生えてまいりますな。

 あの2人の活動が、とくに、プサイディアの尽きることのない支配や権力への野心が、今日の王国の統一と繁栄をもたらしたと言っても、過言ではありますまい。

 一方は道半ばで病に斃れ、一方は北の分王国敗退の後に、捕えられて無残に処刑されてしまいましたが、どちらも、この王国の礎として生贄に捧げられたのだと、思えてきます」


 自身の言葉をかみしめるように、何度もうなずいて話す執事に、貴族も大きくうなずいて応じた。

「うむ。王妃として、摂政として、あの2人が2つの分王国を操った結果が、今日の統一をもたらしたとも言えるのだからな。

 プサイディアの方は、今でもその美貌とプロポーションで、我らの目を楽しませてくれているしな」

「ははは、そうですな」

 今までにない、明るい笑いが漏れた。「王妃や摂政であったころより、今の方が、彼女の姿を目にする機会は多いくらいですな。

 復興の女神などと呼ばれて担ぎ上げられ、至るところに画像が氾濫しております。

 惜しい女を亡くしたという気分も起きますが、以前にはあり得ぬくらいに、素直に楽しんで、あの抜群のプロポーションを鑑賞させてもらっております」


「はっはっは、疲れた体にはうってつけの、目の保養になっておるわけだな、プサイディアは。結構、結構、あっはっはっは・・・・・・」

 主従の顔から、影が消えた。

 実際に目にはしていなくても、思い出すだけでも何らかの効能のある映像が、彼らの脳裏に浮かんでいるようだ。

「その通りでございます、ご主人様。あはははは・・・・・・」

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2022/3/19  です。


 プサイディアの死をきっかけに、分裂していた王国の再統一が一気に進むという、ストーリーの上では見せ場にしなければいけない場面だったのですが、改めて読み直してみると、もう少しドラマティックに演出できなかったものかと悔いています。

 今考えても上手いアイディアは浮かばず、小説家として必須のスキルが致命的に欠如しているのではと、悲しくなっています。


 自分の手で王国を再統一したかったプサイディアだったのに、死んでしまってからそうなるということの哀愁みたいなのも、演出したいところでしたが、できていません。


 こういう物語が未来の宇宙を舞台に巻き起こることに、センスオブワンダーを発生させられないかとも目論んでいたはずなのですが、不発に終わっている気がします。


 そもそもの構想が無謀だったのかも知れませんし、小説家としてのスキルが欠如しているのかもしれませんが、失敗覚悟の実験的作品のつもりで書いたものなので、問題点を発見できただけで良しとするべきかもしれません。


 今後は、これとは全く違った感じの作品も投稿して行くはずなので、読んで頂ける方がおられることを切に願います。

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