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銀河戦國史 (漂泊の星団と貴賤の騒擾)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第16話 側近貴族の困惑

「顔色が悪いな」

 貴族が執事に問いかける。「やはり気にかかるか、あの女の死が? 」

「はい、ご主人様。恐ろしいと思って来た女が、病によってこうも突然に夭折するとは、複雑な想いにさせられます」


「全くだな。北と東の連合軍に対して、我らが南の軍勢が優位に立っていた矢先だったのにな。

 2人の王に身を穢させ、暗殺にも手を染め、権謀術数を尽くして追いかけて来た野望が、ようやく成就しそうな気配を見せていた時に」

 途惑いがちな執事の言葉を、あいまいな笑顔で貴族が受けた。


「まあ、我らとしましては、所領が他国に奪われる可能性も低くなり、北の王妃エシャヴェリーナの脅威も軽薄になっていましたから、実害はないのですが」

「うむ。北の分王国が擁立した新王も、前王や前々王と比べれば、付け入る隙が多いことが良く分かったからな。

 祖母である摂政のエシャヴェリーナには反抗的で、周辺貴族には流され易い性格だ。

 特に、民衆からの不人気が度を越えているところが、統治に悪影響を与えておる。

 手頃な北の側近貴族を買収すれば、あちらの王権を弱体化させるのは容易だった」


「ええ。現在の王があの様では、いくら切れ者のエシャヴェリーナといえども、たいした脅威ではなくなりましたな。

 あの女を恐れずに済むようになれば、プサイディアも我らにとっては、どうしても必要な存在ではなくなりました」

 自分自身を落ち着かせようとしているような響きを、執事の言葉は含んでいた。それでも落ち着かぬ心持ちが、話し相手の貴族にも感染したようだ。


「ああ。むしろ、我らの弱みを色々と握っている分、厄介な存在だ。

 プサイディアこそ一番の脅威だ、と認識し始めたところで病死してくれたのだから、実に好都合と言えるわけだが、何やら手放しで喜べない気分でもある」

「同感です。特に、あの官能的だったプロポーションをもう拝めないのだと思うと、口惜しいような気分になってきますな」

 内心の落ち着かぬわけを、ずばりと指摘されて、貴族は思わず破顔した。


「ははは。正直だな、お前は。実は、わたしもそうだ。

 恐ろしい女だと思い、暗殺などの難題を押し付けられた時には恨みもしたものだが、それでもやはり、あの女の身体に、我らは目を楽しませてもらっていたのだと、しみじみ実感させられておるよ」

「ご主人様も、そうでしたか。

 本当に、あんな恐ろしい性根の女に、あんなにも官能的な身体が備わっているなんて、いや、恐ろしい女だからこそ、その身体に特別な味わいが感じられたのかもしれませんな」


「死んでしまったことで、改めて気付かされる人の魅力というものは、やはりあるものなのだな。

 貴族たちの間でも、あの女の存在感は倍増しているようだしな。

 暗黒から亡き王の子種だけを召し返して身籠ったなんて噂も、以前よりも真実味を増して、人々の間で囁かれるようになっているというではないか」

「よくご存じで。まさしく鬼女として、あの女の名はこの国の貴族たちの記憶に、刻み込まれているのです」

 心にわだかまっていたものを言葉にしたことで、貴族にも執事にも、ようやく表情に落ち着きが出て来た。


「それは、北の摂政となったエシャヴェリーナも同様だな。

 あの2人の美女を、代わる代わるに味わったというのだから、東の王も羨ましい。

 女に国政を売った愚かな王だと軽蔑する気持ちもあるが、羨望の気持ちはそれを上回るな。

 あんな女達を楽しめるのなら、何もかも捨て去ってしまっても惜しくない、などと考えさせられたりもする」

「ははは・・。そうなると、プサイディアが生き続けていたら、我らもいつか、所領の安堵を勝ち取るという大事な目的を、見失っていたかも知れぬ、ということですな。

 死んでくれたおかげで、幸か不幸か、我らは目的を達成できそうです。

 プサイディアの死とエシャヴェリーナの権力衰退のおかげで、長らく手もとを離れていた先祖伝来の大切な所領を、今では手元に取りかえせる寸前となっているのですから」


 主従の顔は、落ち着きを通り越してくつろぎの色を浮かべ始めていたが、直ぐにまた緊張感を取り戻した。

「私も安心するぞ、それを思うと。だが、まだ油断はできぬ。しかとあの星系の知行権がこの手に戻ってくるまでは、気を抜くわけには行かぬ」

「承知しております、ご主人様」


 実質的な最高権力者であったプサイディアの死は、やはり王家や貴族たちの内心に、少なからぬ波風を立てていたが、この側近貴族とその執事に限って言えば、平穏な気持ちを与えてくれるものだった。

 一抹の口惜しさのようなものもあったが、波風というのでもなかった。


 プサイディアの死を機に、顔色の伺い合いを加速させる王族や貴族も続出し、王都の外観に変化が見られないのとは対照的に、そこに住む人々の気持ちはかき乱されている。

 だが、それに属さない者も、少数ながらいるのだった。


 第2惑星の軌道を巡るいくつものリング状建造物が、それぞれに心中穏やかな者と穏やかでない者を抱えつつ、その日も以前から変わらぬ外観を曝しているのだった。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2022/3/5  です。


 前回の記述内容のせいで、少し話が分かりづらくなったかもしれません。

 北と東の連合軍が殲滅されたり、それらの王が屈服したり、というのはプサイディアの夢の中の出来事であって、現実には戦争は継続中です。


 とは言え、戦況は北がかなり優勢で、それを見届けてからプサイディアは病床に伏せたので、このような夢を見たのだとご理解ください。


 実質的最高権力者のプサイディアが倒れたのに、戦況の方は優勢とういのも矛盾しているようですが、優勢を確保してから倒れたということで、ご納得いただきたいと思います。


 一応史実をもとにした物語なので、この辺りの展開も現実離れはしていないはずなのです。

 ですが、元になった史実についての記憶が、作者の中でかなり薄れてしまっているので、きっぱりとは言い切れない有様です。


 改めてその史実を読み返したい気持ちもあるのですが、次回作の執筆に謀殺されていて、全く手を付けられません。


 史実を元に書くのなら、それの記憶をもっとしっかり頭に根付かせてから書かなきゃいけないなと、しきりに反省しているのですが、なかなか思うようにはいきません。


 勉強と執筆を繰り返す中で、少しずつ改善して行くしかないと思うので、長い目で見て頂ける方がいて下さると助かります。

 同じことを繰り返し述べているようで恐縮ですが、これが本心なのでどうしようもないのです。

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