第11話 庶民の願望――後半
「わしは絶対、反抗なんかせえへんで。小惑星かち割る腕前見せつけて、絶対どこの領主にでも、気に入られてみせるからな」
「ほら、またコイツ、自分のことばっかりや。そうやって、自分だけええ報酬もらう気やろ」
「そらそうや。何回も言わすなや。自分のことは、自分の努力でどうにかするもんなんやからな。
わしは努力して、小惑星かち割る腕前を磨いて来たんやから、それを精一杯活用するで」
「そんで、自分が気に入られたら、みんながどうなってもええんか? 」
「そらあ、ちょっとくらい口きいたってもええけどな。お手柔らかに、とか言うくらいは」
「それだけか。もっとあるやろ。小惑星かち割るヤツ、わしも一緒にやってることにしてくれや」
「嫌じゃ、ボケぇ。何もやってへんやろ、お前。わし一人の手柄やろ、あれは」
「せやから、記録の上だけでええから、わしもやってることにしてえや」
「絶対嫌じゃ、ボケぇ。勝手なこと言うな」
「ええやんけ。その、今お前が持ってる端末で、記録書きかえられるんやろ。貸してみろや」
「貸すかぁ! 」
「貸せって、うやぁっ! 」
「おわっ、ふざっけんな、いぅっ! 」
「でやぁっ!貸せって! 」
「うわっ、危なっ! やめえって、いやっ! 」
「もう、あっ、ちょっと、止めろやお前らっ、暴れんな、つっ! 」
「貸せばいいねんて、コイツが!ちょっとお前、押えとけ」
「ぶわっ! ええことあるか! 押えんなよ、うぉっ! 」
「何でこっち来んねん、あっちでやれ、わぁっ! 」
「そっちに追い込むねんっ、とりゃっ! 」
「追い込まれるかあっ!えいっ! 」
「いやっ、こっちにも来よった、おうっ! 」
「もうちょっとやのに、せいっ! 」
「しつこ・・ぶぶっ! 」
「ずわぁっ! 」
「うぃっ! 」
「ええぃっ! 」
「ふぅおぃっ! 」
「ぎゃあっ! 」
「こらっ、おっさん、どさくさに紛れて人の嫁はんのケツ触んな、ボケっ!」
「ほんまに、もう、ええかげんにしてくれ、お前ら。ケンカは後で、好きなだけやればええねんから」
「ほんまや。新しい領主に気に入られるのは、各自で努力するしかないとしても、そのための情報くらいは、みんなで協力して集められるやろ」
「わしは、情報なんかいらんで、小惑星かち割る腕前を、見せつけるだけや」
「ほんなら、お前は勝手にせえ。他のみんなは、情報あった方がええやろ。気に入ってもらうにしても、反抗するにしても、情報無かったらどうしょうもないねんから」
「せや、せや。情報欲しいヤツだけで、東の分王国について、手分けして情報集めとこう。
それに協力するヤツだけで、情報は共有しようぜ。協力せんやつは知らんからな。後で泣きつくなよ」
「泣きつくかあ。わしは自分で何とかできるわ」
「ほんまにいらんねんな、情報」
「応っ、いわんわ」
「小惑星かち割る技術だけ、当てにするわけやねんな」
「応っ、それを信じ抜くわ」
「自分だけ気にいられんねんな、次の領主に」
「応っ、気に入られたるわ」
「みんなに触らせんねんな、嫁の乳」
「触らせるか、阿呆。勢いでうっかり〝 応っ ″とか言わんぞ、ボケ」
「あかんか、くそっ」
「阿呆なことばっかりいうとるな、コイツら。
わしはやっぱり、北の分王国がええわ。何とか北にならんか」
「エシャヴェリーナの王妃さんが、がんばってくれはったら、そうなるんかな? 」
「あの王妃さんが、東の分国王だけやなくて、そこの貴族はんたちまでもデレデレにしてくれてはったら、わしらんとこは北に行くことになるんちゃうかな」
「そう言うことなんかな。東の貴族はんらも、わしらんところはめっちゃ欲しがってるやろけど、その気持ちを覆すくらいに、エシャヴェリーナ王妃さんの色気が貴族はんらを骨抜きにしてくれるかどうかやな。
北の方かて、ぜったいにわしらんところは欲しいんやから、王妃さんが色気を武器に取りに来てるのは、間違いないやろうしな」
「それやったら、確実にわしらんところは、北に行くやろ。あの王妃さんの色気、えげつないもんがあるからな。
見たかこの前の、北の新王が即位した時の、セレモニーの映像。
あれにちらっと写っとったエシャヴェリーナ王妃さん、たまらんかったで」
「見た、見た。ほんまに、えげつなかったな、あの服。
あんなにもボディーラインを際立たせる服って、あんねんなあ。あんなことに、なってんねんなあ、あの人のあっこの部分って。
もう、キュウゥッってなってたで。キュキュキュゥッって。キュウキュキュキュゥッやで、キュウキュキュキュっ。もう、あの、あれが、キュゥッ、キュキュゥッ・・・・・・」
「キュゥばっかりか。表現力乏しすぎやねん、お前は、阿呆っ! 」
「まあでも、あのニュース映像は確かに、すごかったわ。
もうわし、何回も繰り返し見てもたもん。王妃さんの写ってるシーンばっかり、繰り返して」
「でも、お前の場合は、生半可でなく異常やで。
後姿だけが写ってるシーンばっかりやったやん、お前が繰り返して見てたんって」
「ええ? 後姿? なんで後姿やねん。前からやろう、あん時のエシャヴェリーナ王妃さんに見とれるんやったら。
後姿なんか、繰りかえして見たりして、何の喜びがあんねん」
「阿呆やな、お前ら。直接見る前からの映像よりやな、後姿をな、イマジネーションの力をもってしてやな、映像を遥かに上回る前からの姿にやなあ・・・・・・」
「何の話をしてんねん、お前ら。そんな場合と違うやろ。よう、そんな話してられるな、こんな時に」
「ほんまやわ。北に行くか東に行くかで、天国と地獄やねんで。生き死ににも関わるかも知れへんねんで。
もっと緊張感持ってほしいわ」
「そんなん言うたかって、どっちに行くかは、わしらにはどうすることもでけへん問題やん。じっと待ってるしかないやん、結論がでるのを」
「そうやな。あれこれ考えを先走らせんと、今はじっくりと、成り行きを見守るしかないで」
「わしもそう思うわ。結論が出るのを、ゆっくりと待ってようや」
「せやな、待ってるとするか、みんなで、のんびりと、コイツの嫁の乳でも触りながら」
「まだ言うか。」
今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2022/1/29 です。
おバカな会話だけに終始した回となると、後書きで書くことも思いつかないのですが、状況としては結構深刻である事は、念頭に置いて欲しい場面でもあります。
自分たちが住む場所が、どこの国の領有となるか、どんな領主に経営されるのか、というのは、生き死にや人生のあり方の根底などに、影響を与えるものでしょう。
それがどうなるか分からない不安定な状況なのですから、ここに登場している名もなき庶民たちは、厳しい立場に置かれています。
そんな厳しい立場にもかかわらず、いやもしかすると、厳しい立場だからこそ、バカなことを言って空騒ぎして、気持ちだけでも明るくなろうと努めているのかもしれません。
そんなことを思いながら読むと、こんなバカトークにも味わいが出て来る、かも?
いつもいがみ合っているくせに、ずっと一緒にいる人たち。互いを称賛し合っているけど、仕事以外では接点を持たない人たち、なんて人間模様も描きたいと、そう言えば書き始めたころは思っていたなあ、なんて今頃思い出したりしています。
こんなバカトークを描いたことに、意味があったのかどうか、推敲を繰り返す度に疑問が積み上がっていますが、色んなことを試してみようというのが本作品を書く上での基本姿勢なので、首を傾げながらも投稿を続けます。
読者様には、こんなのばかりが続くわけではないとご認識頂き、ここでお見捨てにならず、これからも読んで頂きたいと切に願っております。




