第5話 ダンジョン前
ユウ達の視線の先には、退かされたタンスと、そのタンスによって今まで隠されていただろう扉……例の隠しダンジョンの入り口らしきものがあった。
その先にあるのは、無限ダンジョンという名前のマップだ。
ユウ「この先にいるのか?」
尋ねられたアルンは首を縦に振る。
アルン「はい、そうなんですぅ。ゴンドウさんって知ってますよね。そのゴンドウさんが。さっきの通知メールで町の皆がパニックになってるのを見てて、自分が大丈夫な事を証明してみせるって……。そう言ってこの先に行っちゃったんですぅ」
ゴンドウというのは、このオンラインゲームで知り合った、中年の男性プレイヤーだ。
彼は、オンラインゲームに不慣れな初心者プレイヤーに世話を焼くのが趣味だという。そんな親切な人間であるのだが、たまに人の忠告を聞かずに行動するところがあった。
ユウ達も何度か初心者だった時に声をかけられているので、それなりに知っている関係だ。
名前を聞いたウィーダが顔をしかめる。
ウィーダ「マジか。それでダンジョンに速攻突撃とかするか? いや、確かにこういう時に動くのは、あの人らしいけどな。でも何でここのダンジョンなんだ?」
アルン「あんたそんな事も知らないの?」
定番のやり取りをし始めるウィーダ達を横目にして、ユウはシステム画面を呼び起こしてある操作をしていく。
説明されている内は、ギルドリーダーのウィーダはこの場から動く事は無いだろうと見ての事だった。
ウィーダ「お前はいちいち人の事を罵らないと話が進まないのかよ」
アルン「安心して、あんた限定だから」
ウィーダ「タチが悪い!」
アルン「まったく、仕方ないわね」
アルンの話によれば、この問題が起きたオンラインゲームから死んで無事に現実世界に帰還した事を証明する為には、ここにある隠しダンジョンの機能を使うのが一番有効だという事だ。
ウィーダ「何だそれ?」
疑問符を頭上に浮かべるウィーダが話を中断させれば、アルンが冷たい目線を向ける。
アルン「はぁ……、そんな事も知らないの?」
ウィーダ「悪かったな。つい最近発見されたダンジョンなんだろ、テストが忙しくて碌にロログインできなかったから、情報収集できなかったんだよ」
頭を掻きながらそう述べるウィーダに向かってアルンは、重いため息をつきながら説明していく。
アルン「まったく。……そのダンジョンはね、降参しない限り、無限にトライできるダンジョンなの」
ウィーダ「はぁ? ……いてっ!」
アルンは、どういう事だかさっぱり分からかんといった表情をするウィーダの拗ねを蹴り上げ、続きを口にする。