第58話 エリザの役割
会話の意図するところが掴めないといった一同に向けて、エリザは自らの考えを整理する様にゆっくりと言葉を続けていく。
エリザ「ええと、お祭りに集まった人達を見て思ったんです。……ここで戦ってるのは、ごく一部の凄い人たちだけじゃないんだって事を。見ていれば弱い人も、強い人も、色んな人が色んな所で頑張ってるんだなって分かって。そういう関係がいいなって思ったんです」
だって、とエリザは続ける。
エリザ「弱い人を足手まといだって……使えないなんて思う人なんて今のこの世界にはいないように見えるから。守ってあげた分だけ元気を分けてもらってるこの景色が、とても素敵に思えたんです。私、ええと……採取クエストばっかりでレベル上げとかしてこなかったんですけど、そういうの今とは違う全然逆の景色を見ちゃったからなんです。弱いから前に出てくるなって言われて、戦闘が嫌になっちゃって……」
ユウは視線を店の外にある景色に向ける。
意識した事はなかった。
外にある景色は、考えて作ったわけでもない、意図して出来上がった物でもない。
けれど、エリザにはそう見えたらしい。
ここにあるのは良い光景なのだと。
誰もが役割を持って、過ごせているというそんな風景に。
ユウ達はただ被害を少なくしようとしただけで、最善の行動をとろうとしただけだ。
結果的に、上手くやれてる現状があるだけ。
これが絶対的に正しいという考えも、強い信念などもない。
エリザ「だから守りたいって思ったんです。他の人に言われた事なんか、他の人の目なんか気にせずに。この景色を守るために、もう一度立ち向かいたいって。でも弱いのは分かってますから。どうしても無理なら、身を引くつもりです。恩人である皆さんを危険な目には遭わせたくないですから」
つまりエリザは全てを分かった上で、自分にもできる事がないかとそう名乗り上げたのだろう。
レベルも経験も足りない事も重々承知で。
エリザ「困らせてしまったのなら、ごめんなさい」
頭を下げてエリザは話題を終わらせようとする。
だが、ユウはそんな彼女に向けて言葉を発した。
ユウ「いや、仕事ならある……かもしれない」
珍しく歯切れの悪い回答で。
はっきりと役に立つと決まったわけでもない。
利益が必ずもたらされるわけでもない。
それでも、エリザの想いに応えたいと思ってしまったら、声を上げていたのだ。
ウィーダと知り合った時も似たような事があった。
NPCを守るために、ライフ全損でデスペナルティの覚悟を背負って、自分達よりはるかにレベルの高いモンスターに挑む事になった出来事の事だ。
デスゲームでなかった頃は、命の危険はなかったが、その代わりゲーム内で死んだら、レア装備やアイテムをドロップして、「恐怖」というステータス異常も付いた状態で復活する。
その語の活動やレベル上げを行うにはかなりきつい状態で、誰も自らそんな目には遭いたがらなかった。
けれど、ウィーダは足りないと思ってても不可能を覆して、限界を突破していった。
あの時は、ずいぶんと無茶苦茶な事に巻き込まれ振り回されたものだが、今となっては良い思い出となっていた。
その時の事を思い出したユウは、思いついた事をエリザへと告げていく。
ユウ「情報屋から送られてきた破損メールの解析を頼みたい。どうやら特定の事柄に対する内容のものは、敵の監視をする抜けられないようになってるらしい」
エリアの親が、影の落書きなどの限定的な干渉しかできなかったのはそこら辺に原因があると見ていたので、彼女にその件を任せようと思ったのだ。




