第55話 クロソフィとの闘い
再会がひと段落したところで、ソフィはこれまでの事をユウ達へ説明した。
長々と会話に時間を費やして大丈夫なのかとユウは問いかけたが、この部屋は管理者の権限を持って抑えているので、モンスターは侵入してこれないらしい。
アルンとソフィの関係について何も知らないウィーダが、先ほどのやり取りに関して首をかしげていたが、アルンが手短に説明しておいた。
そして、その場に集った者達を一度見回して、ソフィと名乗った少女は口を開いた。
それは彼女自身の事と、彼女が今までやってきた事の話だ。
このクリエイト・オンラインの世界……仮想の世界に生み出された元NPCのソフィは、自我が芽生えた事によって開発スタッフに見いだされ、今からおよそ三年程前に、この世界の管理の役目を与えられたという。
彼女の自我はまだその時点では人のそれよりは不完全なものであったが、この世界で多くのプレイヤーからデータを得る事で成長し、もともとあった意識を更に強固なものとしていきながら、枯れ土が水を吸収させるように急速に自意識を発達させていった。
だが、アルンと出会い交流を深めていた頃に問題が発生したらしい。
彼女の精神は負荷がかかった事により、二重に分裂してしまったのだという。
仮想世界から出たくとも出る事が出来ないソフィはエラーを頻発させた。
その対処でやむなく緊急的にきりはなした己の一部が自意識を持ってしまい、ソフィの願いを歪んだ形で叶えてしまったという事だ。
生まれ落ちた孤独を嫌うその人格を、ソフィはクロソフィと名付けて呼んでいる。
そして、クロソフィは独自の進化を遂げ、己の望みを叶える為に、プレイヤー達をこの世界に閉じ込め、未帰還者を生んだらしかった。
ソフィはそんなクロソフィの行動を制限する為に、今までプログラムの領域で戦っていたのだと言う。
だが、戦いながらもソフィは秘密裏に手を打っていた。
ソフィに最初に声をかけた開発スタッフであり、未帰還者の親であったエリザの父親とコンタクトをとりながら、めぼしい人材であるユウを育て、アルンがこの世界から離れないように手をまわしてきたのだった。
未帰還者が目覚めたのは、それらの準備が整ったから。
ソフィが抑えなくとも、開発スタッフたちがクロソフィを抑えられるようになったからである。
そこまで話をしたソフィは、ウィーダを見て言いよどんだ。
ソフィ「あと、その人の事なんですが……」
ウィーダ「俺?」
まったく今までの説明で出番がなかったウィーダは、まさか己にも関係している話だとは思わなかったのだろう。
自分を指さして、間抜けな顔をさらしていた。
ソフィ「開発スタッフさんが時々貴方の行動に干渉してます」
ウィーダ「へ? えぇえ! 何だそりゃ!」
すっとんきょな声を上げて驚くウィーダだが、ユウには心当たりがあった。
それはつい最近あった、奇妙な出来事で……。
ユウ「ギルドホームの壁の落書きか。後は剣の訓練の……」
ウィーダ「なんだよ、あのホラーって何か重要なメッセージだったりするのか?」
ずっと気になっていたらしいウィーダだが、それに対する答えは否だ。
開発スタッフ、いや未帰還者の親がわざわざあのギルドホームに落書きをした意味は、よく考えればウィーダでも分かる事だろう。
一足早く内容の意味が分かったらしいアルンがため息をつく。
アルン「親心よね。そりゃあ、色魔がいたら心配にもなるわ。意外に余裕があるのかしら」
ウィーダ「はぁ、何だよ、どういう意味だよ」
アルン「教えてあげない。たくフラグ立てるだけ立てて鈍いんだから」
つまりはそう言う事だった。
ウィーダ「フラグ? ……って、はぁぁ!? 俺はそんな事しねぇよ!!」
年頃の娘を持つ親の私情の心配……いや、配慮なのだろう。




