第53話 挟み撃ち
いつもはしないような考え事をしてしまったせいか、そのモンスターの出現に一瞬反応が遅れてしまった。
ユウ達が出くわしたのは、通常はこんな中途半端な場所には存在しないモンスター……隠しダンジョンの中ボスだった。
それが分かったのは、以前挑戦したダンジョンで目の前のモンスターとまったく同じ相手と戦った事があったからだ。
ライブラを使うがやはり、そうだった。
おそらくこちらを妨害するものが、ここに移動させたのだろう。
敵の名前は、レッド・ケンタウロス
男性の人間の上半身と馬の下半身がついたモンスターだが、サイズが大きく、体表が燃える様な気に覆われて赤くなっていた。
ウィーダ「おいおい、冗談じゃねーぞ」
アルン「何で、こいつがこんなところにいるのよ」
相手は口から強力な炎攻撃をしてくる。
だが、こちらに装備を変えている時間はなかった。
冷や汗を流し、じりじりと交代するパーティーメンバ―だが、相手にこちらを見逃す気はないらしい。
視線はしっかりとこちらをターゲットとックしていて、今にもこちらに向かって突進してきそうな様子だった。
そして、更にやっかいなのはレッド・ケンタウロスの背から出て来た、そのモンスターの周囲を飛び回っり続けている妖精の存在だ。
アルン「あれもいるのね」
ウィーダ「おいおい、どうするよユウ」
だが、確証はこれで持てた。
この先には触れられたくないものがるのだと言う事が。
だから、相手もなりふり構っていられなくなったのだろう。
通常はいないはずのモンスターをこちらに転移させて、妨害してきた。
ユウ達はここで選ばなければならない。
どうにかしてアイテムを使ってここから離脱するか、それとも何とか相手を倒してこの先へ行って手がかりを得るか。
行くとしたら、かなりの乱戦を覚悟しなければならないだろう。
相手の妨害が一回きりという保証はなく、むしろ何度も何度もモンスターをけしかけられる危険の方が高い。
目的地までの長さも分からない中で強行突破すれば、どんな事になるか分からなかった。
悩み終えたユウは決断する。
撤退して、もっと大人数で来るしかない。
だが、その判断は少しだけ遅かったようだ。
???『サミシイ……、カエラナイデ、ズット、イッショニ』
ユウにしてはその可能性を珍しく忘れていた。
黒幕であるかもしれないソフィが、この状況に干渉してくるという可能性を。
その声を聞いたアルンが、思わずその場を動いてしまう。
アルン「ソフィ!? どこかにいるの!?」
いるはずがない。
エリザが聞こえたものと同一であると仮定すれば、近くにいる可能性は限りなく低いのだが、そんな事は彼女には考えられなあったのだろう。
ユウにも、誰にも責められない。
なにせ、三年以上も探していた友人の声なのだから。
モンスター「ブルルル、グルォォォ――――ッ!」
レッド・ケンタウロスが一歩前に出たアルンへ標的を定め突進する。
ウィーダ「馬鹿野郎っ!」
それを間一髪で、ウィーダが横から突き飛ばして、強制的に回避させる。
しかしそこでほっとはしてられない。
突撃してきたモンスターの立ち位置が変わったせいで、ユウ達は分断されてしまったのだ。
こちらはまだいい、レッド・ケンタウロスだけを相手にすればいいのだから。
だが、アルン達はこれで二方向から敵に挟まれる形となてしまった。
モンスターに包囲されたプレイヤーは圧倒的に分が悪くなる。
状況はみるみる内に悪化していってしまっていた。
ユウは歯噛みしながらも、即座に頭を回転させてこの場を何とかする案を組みたてる。
ユウ「くっ……」
自分一人で、何とかレッド・ケンタウロスを相手どり気を引き続けなければ、アルン達の状況は変わらないままだ、覚悟を決めて剣を握る手に力をこめるのだが……。
ウィーダ「なっ!」
アルン「えっ!」
ユウ「っ!」
目まぐるしく状況が変わり続けるその場に突然、フィールドでしか存在しないはずのランダム転移の罠が発動して、ユウ達は別の所へと飛ばされる事になってしまった。




