第38話 オヤツ休み
とりあえず話を続ける。
話を続けてもよさそうなのを見てから、エリザに問いかけた。
ユウ「三年前から今まで、途切れている間の中で何か覚えている事、思い出せる事はあるか?」
尋ねられたエリザは頷いて肯定。
重々しい口を開き、記憶をたどる様にしながらゆっくりとした口調で話を始めていく。
エリザ「ええと、三年前にパーティーの仲間達と共に町の中を歩いていたところから、記憶が無いんです。その日は確か一緒にフィールドに出て採取のクエストをやろうって言ってたんです。それで、森に入って木の実や果物を取って、小一時間くらいして拠点にしている町に帰ったんですけど、その帰り道から記憶がなくって。ログアウトしたとかそういうのじゃなくって、唐突にだったと思います」
ユウ「そうか」
そこまで話したエリザは不安そうな顔をこちらへと向ける。
エリザ「あの、本当に私が倒れた日から三年も経過してるんですか?」
ユウ「ああ」
彼女からしたら信じられない事だろう。
だが、こればかりは嘘をついたり誤魔化すわけにもいかない。
ここで言葉を濁しても、事実を知るのは避けられない。
特に貴重な未帰還者ともなれば、この現状を打破する為の大切な存在だ。
多くの人に事情を聴かれたり、会話することがこの先増えてくるだろうから、早めに事実を知らせておいた方が、よほど彼女の為だろう。
エリザ「本当に三年も……」
エリザは、悄然とした様子で俯く。
一人にした方がいいだろうか、と思う思いかけたところにアルンがやってくる。
お菓子の載った皿とジュースの入ったコップを持って、だ。
アルン「食欲が無いって言ったけど、オヤツなら食べれそう? ジュースも持ってきたわよ」
エリザ「あ、ありがとうございます」
本格的な食べ物はさすがに作らなかったらしいが、それでもエリザの前に置いたオヤツは、「オヤツ」と形容するより「デザート」と言った方が良いような出来栄えだった。
中身をくり抜いた果物の器に、色鮮やかなソースと、縦に層になっているムースが詰まっていて、大変見栄えが良い。
とても素人技とは思えない一品だった。
ウィーダ「やべぇな、いつも思うけど性格は暴れ牛みたいなのに、何でこんな繊細なもんが作れるんだ?」
アルン「ちょっと、聞こえてるわよ」
ウィーダが迂闊に漏らした一言に、アルンが刺々しい言葉で反撃。
失言の主は「うぇっ」と首をすくめてみせた。
だが、「オヤツ」の出来栄えに関しては、エリザの方もユウ達と同じ心境だったようだ。
エリザ「す、凄い!」
そんな風に歓声をあげた。




