第30話 矛先
それからもモンスターを何体か倒したが、出現するのはどれも低レベルモンスターのみだった。
バグの様なものは二、三か所見つかったがメールで知った情報以上のものを得られる事は無かった。
一度、珍しい植物型のモンスターが出てきた際、アルンが液体窒素を素材にして錬成したアイテムを駆使し、瞬間冷凍させてストレージ(アイテム保管庫)へと保管していたが、珍しいモンスターから珍しい素材がポップしただけだ。それ以外に、特に変わった事は無かった。
抜き身の剣の柄を手の中でクルクルと回しながら、再び暇になったウィーダが話しかけてくる。
ウィーダ「なあ、ユウ。これからどうなるんだ? 俺らはまだ良いけど、他のプレイヤー達をいつまでも町に留めておくわけにはいかないだろ? どんくらいで出てくると思う?」
頭の回転が鈍くて重くても、考えるべきところは考えているらしい。
ウィーダがこちらへと疑問をぶつけてくる。
根は善人なのだ。
その善人性が、本人の頭の出来が悪いせいで、アルンには残念に見えてたまらないらしいが。
特に他に優先すべき事もないので、ユウはその疑問へと答えていく。
ユウ「外出禁止の強制はしていない。だが、段階的に行動範囲を広げていっていい場所を公表するそうだ。俺達が……高レベルプレイヤーが安全を確認した所から順に」
ウィーダ「そっか、じゃあしっかりやらないとなぁ。特にトラップ探知とかは、目に見えない分、モンスターよりタチが悪い」
やる気を見せているウィーダを横に置きながら考える。
フィールドにあるトラップの中で一番タチの悪い仕掛けと言えば、やはりランダム転移だ。
一パーセントの確立にも満たないトラップだが、ごくまれに発生する見えない罠。
フィールドを歩いている時に、トラップ解除のスキルもしないで、それにひっかかってしまえば、レベルの高い低いに関係なく、どこか別の場所に飛ばされてしまうもの。
町の傍や、この付近の様に低レベル向けのマップであればいいのだが、一瞬で秘境やら、隠しマップやらに飛ばされてしまう可能性もある。なので、初心者には極めて危険なトラップだった。
だが、真に危険なのは、それ自体ではない。
飛ばされた慣れないマップで待っている二次災害についてだ……。
アルン「はぁー。やっぱり、トラップ解除の魔法をかけて、進むしかないわよね。解除のスキルをパーティーに同伴させるしかないわ。私達はともかく、初心者プレイヤー達には絶対にそうしてもらわないと、そこのところ徹底的に広めてもらうようにしないと後が大変になっちゃうわ。でもスキル持ってる人も限られてくるのよね」
ウィーダ「なーんだ。外に出たら出たで、ストレス溜まりそうなんだな」
辟易したようなウィーダの言葉に、ユウも内心では同意していた。
トラップ解除のスキルは、マジックポイントの消費が激しく、かつ極めるのに時間がかかるので、あまり使える人間がいないのだ。
とすると、そのプレイヤーをパーティーに入れられるという幸運な人間が限られてくるわけで、有能なプレイヤーん奪い合いでいざこざが起きるなんて事も、まったく考えられないはなしではなかった。
ウィーダ「とりあえず、今日一日頑張って何でも良いから収穫見つけていってやろうぜ」
アルン「そうね。何も得た物がないと、私達がぶつけ場所のない怒りの矛先になっちゃいそうだし」
目の見えない犯人。
理不尽な状況を強いられているという現状。
ぶつける場所を失った怒りは、目につきやすい場所にぶつけられやすい。
その矛先になるのは、現実で救助を試みている人間か、真っ先に高レベルプレイヤーである自分達だろう。
アルン「嫌な想像だって思うけど、仲間割れなんてぞっとしな……あ」
ふいに、腕をさすりながら言葉を発したアルンが、途中で口を閉ざし動きを止めた。




