第26話 見られていたらしい
今度は真正面からの打ち合いになった。
ウィーダ「くぬっ!」
ユウ「……」
力まかせでのつばぜり合いになって、ウィーダの表情が分かりやすく変化する。
ユウは力をいなし受け流そうとし、ウィーダは受け流されないと踏ん張る。
そんなやり取りが何度か続いた。
そののち、スキル発動に絶好の剣向きを掴む事が出来たユウが先に軌道ラインをなぞって、剣術スキルを発動。
三度の突き攻撃を見舞った。
だが、受けたウィーダもそれに負けじとスキルを使用。
上段からの切りつけ攻撃に連撃を放った。
スキル終了の時間を利用して、互いに距離をとる。
ユウ「腕は訛ってないようだな」
ウィーダ「お前も」
わずかに笑みを刻んで、ユウは今度はこちらから仕掛ける事にした。
実際の疲労を感じているわけではないが、体を動かすのは悪い気はしない。
ぼにんやり思考している事が多いユウではあったが、こんな世界で三年以上も活動している事から分かる通り、運動する事は嫌いではなかった。
それからも一心に打ち合う時間を続けた。
だが、変化が起きたのはそれから数分後の事だった。
ウィーダに隙が生まれ、勝機がユウに見えた時。
ユウ「……」
ウィーダの纏う空気が変化した。
右利きである彼は右でしか剣を操れないはずなのに、いつの間にか背後に隠していた左手で剣を握っていたのだ。
二刀流はこの世界では、無い事は無い……というレベル。
物にするのは難しいが武器が二つあるなら、不可能ではないはず、だった。
だがユウは、ウィーダが剣を二つ持っている所を見た事がない。
三年にも及ぶ付き合いの中では一度も、だ。
振るわれたのは、まったくの予想外の一手。
ユウ「くっ!」
それでも、ユウがどうにか捌けば、ウィーダははっとした声を上げた。
ウィーダ「え? ……うおっ、何だ今の?」
ユウは動きを止めて、狼狽するウィーダを見つめる。
先程までの奇妙な感じはしなかった。
あの一瞬、まるで別人へとなり替わったような感覚は。
ユウはしばらく思考するが、その時思った事は脇へとおいやった。
ウィーダ「なんか、勝手に動いた俺どうなってる!?」
予期せぬ行動に対して、口調怪しく戸惑っているウィーダ。ユウはその彼の肩を叩いて、他の事を指摘する。
ウィーダ「何だよ」
ユウ「あれ」
ギルドホームのある部分だ、そこをユウは指し示す。
先程まではあんな物は書かれていなかった。
ウィーダ「え?」
今まで視界の中に定期的に射れていた、見慣れたギルドホームの壁には、何故か赤い文字で「お前を見ているぞ」と書かれていた。
ウィーダ「な、なんじゃこりゃぁぁぁ! 悪戯か? いつの間に!」
頭を抱えて、叫ぶウィーダの仕業ではない事ぐらいは、さすがにユウでも分かった。
なら、第三者の仕業だろう。
予想外の事態の連続に叫ぶウィーダを見て、ユウはたった今起きた不審な現象と、数日前の出来事を思い起こしてある仮設を立てたが、今はまだ口には出さないでおいた。




