第14話 ギルドホーム
無限ダンジョン内へと足を踏み入れ、襲い来るモンスターをいなしつつ、ゴンドウを回収したユウ達は、アイテムを利用し最低限の戦闘だけでその場から脱した。
そして、ゲームシステムに手を加えたという事を、現実世界に帰還できなくなったプレイヤー達(その中でもとくにヤケを起こしそうだったり、危なそうだったり、後は右も左も分からない新人プレイヤーなどに)伝えて回って行き、ざっと一日分の時間を費やす事になった。
半日経っても混乱し続けるような、そんな彼等の存在はデスゲーム攻略を考えれば取るに足らないものなのかもしれない。
だが、だからといって見捨てる事などできなかったし「電光石火」のリーダーであるウィーダが、よしとしなかったのだからしょうがなかった。
ゴンドウには、事情を話した後に礼を言われた。
やや細かな話の部分では「まあ、とんでもなく大変な事が起っとるんだろうな」と若干理解不足そうだったが、これからは軽はずみな行動には出ない事を約束してもらった。
そうして怒涛の一日目の夜が更けていく。
が、例によってこの仮想世界はデスゲーム状態になっており、ユウ達は現実に戻れない。
そうすると、夜の寝床を確保する為には自然と「宿をとる」という選択があがってくるところだが、生憎とミントシティは現在かなりの人口密集地帯となっている。
宿の数より明らかにプレイヤーの数が多いので、確保しようとしたとしてもそれは難しい。叶うのは望み薄だ。
ならば、ユウ達が野宿で夜を明かすしかないかというと……事態はそこまで切迫してはいなかった。
ギルドホーム 内部
ウィーダ「こういう時、俺達が集まれる家があるってのはでかいよな」
ユウ「ああ」
「電光石火」の活動拠点用として手に入れたミントシティ内に存在する一軒家。
その中にユウ達は集まっていた。
木材でつくられた簡素な家ではあるが、普通の一軒家並のスペースはある、気の置ける仲間と過ごすには十分すぎる空間だろう。
内装の家具や飾りなどはアルンの趣味よりとなってやや、ファンシーに染まっているものの、ユウはそう言ったものをあまり気にかけないし、ウィーダも小言はたまにいうものの、特に抵抗がある様子ではない。
野宿で夜を明かす事に比べれば、問題にすらならない些末な出来事だった。
ウィーダ「外であぶれてる人達も、泊めてやりたいとは思うけどな……」
ここに来る前に、宿に泊まれなかったプレイヤー達が右往左往するのを見ていたウィーダが、そんな案を口にしたりもしたのだがユウが却下していた。
ユウ「碌な事にならないだろう」
ウィーダ「そっか、じゃあ仕方がないな」
残念そうなウィーダだが、こればかりは譲れなかった。
一人に向ける善意を、他の人間にも平等に配る事ができるというのならそれでいいかもしれないが、現実はそうではない。
中途半端な手助けをして、ユウ達が共倒れするような事になっては本末転倒でしかなかった。
理屈ではなく感情で物事を判断しがちな傾向があるウィーダは、なおももやもやしたような顔をしつつも、気をそらすように装備品やアイテムのチェック、メールの確認を済ませていく。
その内に、ダイニングで遅めの夕食を作っていたアルンがやってきて、釘を刺してきた。
アルン「馬鹿男、手助けするんだったら、出来るとこまでよ。お人好しのあんたにはちゃんとそう言っておかないとね。見かけた橋から、際限なく良い顔しだすんだから困ったもんだわ、まったく」
ウィーダ「俺、そんなに見境なくねーよ」
アルン「どうだか」
百パーセントは信じられないといった態度で、アルンは作った料理を並べていく。