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7.

 驚きすぎて全員がフリーズしてしまった。


「な、なぜシャロがこんなところにいるんだ!?」


 最初にフリーズがとけたのは祖父だった。


「まったく。こんなところって失礼ですね」


 レジカウンターの奥の扉からシャローズたちに入店時に声をかけてくれた店員のドーベルさんがため息をつきながら現れた。


「ああ、すまん。ここに孫がやってくるとは思ってもみなくてな」


「お孫さん、ですか」


 シャローズたちも慌ててフリーズをとく。そしてドーベルに向かって優雅にお辞儀をし簡単な挨拶をした。


「お騒がせして申し訳ございません。ベルモント・カロリアの孫のシャローズ・カロリアと申します。彼女は私の侍女のティアーナです


 ドーベルさんは優しく微笑みながら挨拶を返してくれた。

 優しそうなイケメン老紳士、良い。


「はじめまして。この店、『黒猫の足跡』の店主のドーベルです。探し物は見つかりましたか?」


「はい。見つかりました」


 黒猫が探し物まで導いてくれるというのは半信半疑であったが、本当に探し物ならぬ探し人の祖父が見つかった。こんなにあっさりと祖父が見つかると思っていなかった。

 もしかしたら祖父と会うより早くにティアーナによって疲れただろうと強制的に家に帰ることになっていたかもしれない。”かも”じゃないな、絶対そうなっていただろう。ティアーナってめちゃくちゃ心配性なんだもん。この前まで私は眠り続けていたんだから仕方がないことなんだけどね。


 それにしてもさっきの黒猫にはたくさん感謝しなきゃいけないな。今度たくさん撫でてあげよう。好きなご飯は何かな? 何かあげなきゃ。ご飯よりおもちゃの方が良いかな?


「シャローズは探し物をしていたのか。で、なにを探していたのだ?」


「私もシャローズ様がなにを探されていたのか聞いておりませんでした。教えていただいてもよろしいでしょうか?」


 黒猫のことを考えて意識が違うところへいっていた。危ない危ない。祖父とティアーナに問われたので慌てて意識を現実に戻す。


 ここで探し物が何か誤魔化そ……いや、2人ともすごく真剣な顔をしているから誤魔化すのは難しそうだ。正直に答えることにした。


「その……おじいさまを探しておりました」


「わしをか……!?」


「そ、そうです……」


 おじいさまの勢いがすごくて、つい弱々しく返事をしてしまった。

 私が知っているお爺さまは叫んだ理せずドーベルさんみたいに丁寧な喋り方で「わし」なんて言わない。ゲーム内でもこんな喋り方のお爺さまをみたことがなかった。


「な、なぜわしを探していたんだ……?!」


 お爺さまがあわあわとし出した。お爺さまにこんなことを言うのは失礼かもしれないが


「かわいい……」


 心の声が出てしまったかと思ったが、今の呟きは私の隣から聞こえてきた。ちらりと隣を見るとティアーナが慌てて手で口を抑えている。

 やっぱり今のはかわいかったよね。でもティアーナもかわいい……。


 そんなティアーナの呟きはおじいさまには聞こえなかったようでまだあわあわとしている。私を見たり、ドーベルさんを見たりと落ち着きがない。


「おじいさまは錬金術を使うことができますよね……? 私を弟子にしていただけませんか!?」


「なぜ錬金術が使えることを知っている? あやつらは何も言わぬだろうに……」


 あやつらとは両親のことだろう。もちろんシャローズは両親からだけでなく、使用人たちからも祖父が錬金術師であることは聞いたことない。

 前世の乙女ゲームのおかげで知っているだけだ。だが、その事を正直に言うと混乱させてしまうだけだろう。


「秘密です!」


 出来るだけ可愛く見えるように、しーっと言うように口に人差し指を当てながら軽く首を横に傾げた。秘密です!の”!”はハートのつもりだ。


 必殺 孫が可愛いからなんでも許してくれるよね☆


「むむむむむ。知られているのなら仕方ないか。わしは隠したかったわけじゃないしな!」


 効果は抜群でした。よかった。


「あやつらはシャロがここに来ていることは知っているのか?」


「いいえ、知りません。ただ街に買い物へ行くと行ってまいりました。お爺さまが錬金術師であるということを知っていることもみんな知りません」


 ティアーナも両親と同じく、街へ買い物へ来たと思っている。そしておじいさまが錬金術師であることは知らないはずだ。


 ティアーナに目配せすると一歩前に出て証言してくれた。


「はい、私は今初めて知りました。ここへ来た理由も、ベルモント様が錬金術師であることも」


「ティアーナ、騙すような形で連れ出してごめんなさい」


 私はティアーナの方へ向き、頭を下げ謝罪をした。


「しゃ、シャローズ様!?」


 それから私はおじいさまの方へ向き、深く頭を下げた。


「おじいさま、錬金術師になりたい理由はまだ言えません。ですが、私は本気で錬金術師になりたいのです。お願い致します」


「ふむ……。それなら一度アトリエである物を錬金術で作ってもらおうか。弟子にするかどうかはそれから決めようか」


 錬金術を教えてもらえるかはまだわからたいが、おじいさまのアトリエへ行かせてもらうこととなったのだった。

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