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6.

 挨拶をしてくれた店員さんは優しそうな雰囲気の白髪の老紳士だった。茶色のスーツをうまく着こなしておりかっこいい。

 もしも黒の燕尾服を着ていたら漫画に出てくる執事のようだ。乙女ゲームだと攻略対象にもなりそうなイケメン老紳士。


「何かお探しでしょうか」


 私たちが入り口から動かずいたからか声をかけられた。


「えっと、黒猫に案内されて……それでお店に入ってみたんです。こちらはどのようなお店なのでしょうか」


「ああ、黒猫に」


 イケメン老紳士な店員はなにか納得したようだ。


「それならきっとあなた方が探しているものはこちらにありますよ。あの子は特別な力を持っている黒猫ですので」


「特別な力?」


 どのような力なのだろうかと気になったが、店員は軽く頷き微笑むだけである。詳しくは教えてくれなそうだ。


「店内には様々な物や書籍がございますのでごゆっくりお探しください。何かございましたら遠慮なくおっしゃって下さいね」


 それだけ言うと店の奥へと去っていた。


 私たちはゆっくりと店内全体を見渡す。

 

 店の入り口付近はアクセサリーや雑貨など小さめの物がテーブルの上に見やすく置かれている。店の壁側には服や大きめの雑貨など。店の奥の方はぎっしりと本が詰め込まれた大きな棚が並んでいる。その本棚の前にも本が積まれており、そのせいで店の一番奥までは見えない。


「ティアーナ、せっかくですしゆっくりと見ていきましょうか」


「はい」


 ティアーナとまずは入り口から一番近いテーブルに置かれている物から見ていく。このテーブルに置かれている物はアクセサリーがほとんどのようだ。


 アクセサリーごとにそれぞれ魔道具としてどのような効果があるかについて書かれた紙が値札と一緒に置いてあった。


「シャローズ様、こちらのアクセサリーも魔道具のようですよ」


 ティアーナがネックレスを手を取り後ろに小さな魔石が付いていることを確認しながら言った。


 魔道具は基本的に魔石が付いている。魔石は電池のようなもので、魔力がなくてもその魔石や魔道具に対応した魔法を使うことができるのである。


 たまに魔石が付いていないものもあるが、それは使用するたびに自分で魔力を流し込まなければならない為、魔力があまり多くない庶民には需要がない。欲するのはたまたま魔力を多く持って生まれた人々や魔力を多く持っていることが多い貴族ぐらいなので、貴族街にある魔道具店で購入することがほとんどだ。


「魔道具店へ行こうとしていたところだったし、ちょうどよかったかもしれないわね」


 シャローズもネックレスを一つ手に取りどのような効果があるのか確認してみる。


 アクセサリーなら貴族には毒無効化や麻痺無効化といった状態無効化が人気である。シャローズも念の為、毒無効化のピアスを身につけている。これをつけていれば外食の時も安心して食事をすることができる。


「罠探知? 珍しいわね」


 しかし、この店のアクセサリーの魔道具は状態無効化の物ももちろんあるが少ない。

それよりも見たことがない効果のものがたくさんである。


「この髪飾りかわいい……」


 シャローズが次に手に取ったのは赤色の花の髪飾り。花の真ん中にはパールのような小さな魔石が何個かついている。


「シャローズ様の銀色の髪によく似合っていて可愛らしいですね」


 テーブルに置かれた鏡を見ながら自分の髪に合わせてみていたらティアーナが褒めてくれた。


「これはどのような効果があるのでしょうか」


 魔石がついているので何かしらの効果はあるはずだが、他のアクセサリーのように何の効果があるのか書いた紙が置いていないためわからない。


 仕方がないので先程の店員に聞いてみることにした。


「すごい量の本ね……」


 店の奥へ行くためには、この高く積まれた書籍や書籍がぎっしりと詰まった棚と棚の間の細い通路を通っていくしかない。

 奥へ向かっている途中に地震が起きたらシャローズやティアーナのような華奢な女性は倒れてくるものを受け止めきれず大怪我間違いなしだろう。


 そんなことを考えながら、積み上げられた書籍にぶつからないようにゆっくりと奥へ進んでいく。


 奥にはレジカウンターと2人がけのソファ。そのソファには1人の男性。その男性はサイドテーブルに置かれたコーヒーを飲みながら本を読んでいた。


 黒色の長い髪を無造作に一つにまとめているがサイドの髪が落ちてきているためにその男性の顔は見えない。


 黒いローブを羽織っているのでなんだか絵本に出てくる魔法使いのようだ。


「おや?お客さんかい? ドーベル、ドーベル!」


 男性は私たちの足音に気づき、すぐにレジカウンターの奥にある扉へ向かって人を呼ぶ。


 そして、もうすぐ来ると思うから少し待っててと言いながらシャローズたちの方へ顔を向けた。その顔が一瞬にして目を見開き驚愕しているとよくわかる顔に変わる。


 きっと私もティアーナもその男性と同じような顔になっているだろう。


「シャローズ!?」


「おじいさま!?」


 それもそのはず、その男性はなんと今日街へやってきた本当の目的である祖父、ベルモント・カロリアだったからである。

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