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3.

 バンっ!という乱暴な音と同時に、シャローズのいる部屋の扉が突然開いた。


「旦那様、お待ちください!」


 慌てるティアーナの声が遠くから聞こえる。


「シャロ! 我が愛しい娘シャローズ!!!」


「まあまあ。ソール、深呼吸して落ち着きましょう。そんなに大きな声で叫んだらシャロちゃんの体に響くわ」


 大きな声で私を呼びながら入ってきたのは、私のことを溺愛してくれているお父様こと、ソール・カロリア。このカロリア家の当主であり、バーナード王国の現宰相である。

 そしてお父様を落ち着かせようとしてくれている、ほわほわした雰囲気で私と同じ銀色の髪の方が私のお母様。ジーナ・カロリアである。

 余談だが、お父様は昔は濃い茶色の髪だったが今は白髪である。


「お父様、お母様、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」


 このままだとお父様が暴走してベッドに飛び込んでくるのできそうだと思った為、シャローズはお父様よりも先に声をかけた。


「シャロ、お前が生きていればそれでいいんだ……!」


 私の座るベッドのそばまで来て私の手を優しく握りしめると、ウォンウォンと泣き出したお父様。


「そうよ、シャロちゃん。あなたが目覚めてくれて嬉しいわ」


 お母様もベッドの元へやってきて、シャローズのことを優しく抱きしめてくれた。

 それを見たお父様は、急いで涙を拭い私とお母様を包み込むようにまた優しく抱きしめてくれる。


「わ、わたしも! 愛しておるぞ」


 両親が部屋へ入ってきてすぐは大袈裟だなぁなんて思っていたのだが、こうやって抱きしめられると嬉しくて恥ずかしくて幸せで、私まで涙が出てきてしまった。それはお母様も同じだったようで、少しの間、家族三人で抱き合ったまま泣いたのだった。


 三人の涙が落ち着いてきた頃、コンコンと扉を叩く音が部屋に響いた。

 お父様は慌てて、涙をハンカチで拭い、姿勢を正した。


「入って良いぞ」


「部屋の外まで泣いている声が聞こえておりましたよ」


 お父様が入室を許可すると、呆れた表情でお兄様が部屋に入ってきた。


 オズワード・カロリア。私の5つ年上のお兄様である。頭が良く、剣もできるすごい人。次期宰相でもある。しかし、女好きで、いろんな女の子を口説いているのが数少ない欠点である。


「シャロ、もう起き上がっても大丈夫なのかい?」


 そう優しく問いかけてくれたお兄様。


「はい、もう大丈夫です。ありがとうございます、オズお兄様」


 するとお兄様は先ほどまでの呆れた表情から一変、誰もが惚れてしまうのではないかと思ってしまうような優しい笑顔になり、私の頭を優しく撫でてくれる。


「目覚めてくれて本当に嬉しいよ、シャロ」


 照れてしまった私は恥ずかしくなって俯いてしまう。


「久々に顔を見れてんだ、可愛い顔を上げて、僕に見せて?」


 血の繋がった実の兄だというのに、こんなことを言われたらどうしてもキュンキュンしてしまう。めちゃくちゃかっこいい、こんな彼氏欲しい。

 少し頬を赤らめつつ、ゆっくりと顔を上げると、お兄様はまた笑ってくれた。


 こほん。


「オズ、シャロは起きたばかりだ。あまり困らせるでない」


 お兄様への対処に困っていると、お父様が助けてくれた。


「ごめんね、シャロ。つい嬉しくって」


 もう一度シャローズの頭を優しく撫でるとお兄様は数歩下がった。

 それからお父様は真剣な顔つきで私と目を合わせる。


「シャロ、これから医者を呼んで診てもらおうと思う。それまでまたベッドでゆっくりと休んでいてくれるかい?」


「はい、わかりましたわ。お父様」


 特に断る必要もなかったので素直に頷き、家族と談笑しながら医者が来るのを待つこととなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 数時間後に医者が到着し、シャローズの身体は問題ないということがわかった。

 ただし、少しの間は外出禁止。シャローズが考えていた通り、相当体力が落ちていた為、少しずつ食事をしたり、ゆっくりと屋敷を散歩したりして体力を徐々に戻していこうという話になった。


 久々の食事は部屋に運んでもらった。固形物を食べるのはまだ早いだろうということで、すり潰した野菜がたくさん入ったあったかいスープだ。


 ーーこくん。


 まずはほんの少しだけ飲み込んでみる。スープがゆっくりと身体に染み渡っていくのを感じる。それと同時に心があたたかくなっていく。


 ーー美味しい、幸せだな。


 意外とお腹が減っていたようで、時間はかかったがお皿一杯分のスープをきっちりと食べ終えられた。

 それを見たティアーナは食べきれないと思っていたようで、目を丸くしていた。


「次のお食事では柔らかいパンもお食べになりますか?」


 ちょっと物足りないような気がしていたので、ティアーナの提案に頷いた。


「ふふ、わかりました。料理長にお伝えしておきます」


 あたたかくて幸せな食事の時間はゆっくりと過ぎていった。


 食事を終えた後は、ティアーナに紙とペンを用意してもらい、今後のことについて考えることにした。


 シャローズが生き残るための第一回作戦会議だ。


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