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1.

 変わった夢を見た。


 ここじゃない世界の夢。


 大きな建物がたくさん建っている。どこをみても馬がいなくて、馬車みたいな物は馬なしで動いている。ドレスを着ている人もいなければ、執事や侍女が着ているような服を着ている人もいない。


 ーーここはどこ?


 どこかわからない。けれど、私はここをよく知っている。


「しぃは"バーナード王国物語 〜怪物から王国を守れ〜"終わった?」


 隣にいる女性に声をかけられた。


 ーー誰??


 誰かわからない。でも、彼女は私にとって大事な人。


「昨日FDも全部終わったところだよ!めちゃくちゃストーリーもキャラもよかったよー!!貸してくれてありがとね」


「お!それならよかった〜!でさ、推しは誰!?」


「うーん……みんな好きすぎて選べないなあ。箱推しかな!」


 "バーナード王国物語 〜魔物から王国を守れ〜"? 知ってる。

 名前が乙女ゲームっぽくなくて、これは本当に乙女ゲームなのかと疑って購入していなかったら、手鞠が貸してくれた乙女ゲームだ。

 攻略対象が全員かっこよくて、ヒロインも可愛かったから、ヒロインも含めて箱推しだ。ストーリーもおもしろく、終盤のバトルはすごく盛り上がった。

 ……って、ん?乙女、ゲーム……?


「あ、信号青だ!ゲームは今度遊ぶときに返すね!またねー!」


 先程、箱推しだと答えていた女の子はそう言うと”しぃ”と呼ばれていた女の子に手を振り信号の方へ走っていく。


 横断歩道の半分くらいまで行ったところで後ろから手鞠の声が聞こえた。


「……っ!しぃ!危ない……!」


 その瞬間、ドンっと大きな音と体に大きな衝撃があったと同時に私は吹き飛んだ。


 ーー手鞠、ごめん。ゲーム、すぐには返せそうにないや……。


 吹き飛びながら私はそんなことを考えていた。そして体が地に着く前に意識を手放した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 深い深い眠りに落ちていた。暖かくて、なんだか優しい感じがする。


「シャローズ様!シャローズ様!!!」


 しかし、唐突に必死に私を呼ぶ女性の声が聞こえた。何か答えなきゃ、そう思うがまだ眠たいのか体は言うことを聞かず目を開けることも指先を動かすこともできない。


「シャローズ様!!」


 名前を呼ばれながら体を揺さぶられ、少しずつ体が覚醒し始める。


「な……に……?」


 まだ覚醒途中だからだろうか、口を小さく動かし、薄っすらと目を開けるのが精一杯で声にはならなかった。けれども、先ほどまで名前を呼び体を揺すっていた女性は気づいたようだった。


「シャローズ様! やっと、お目覚めに、なられたのですね」


 声の主の方へ顔を向けるとせっかくの綺麗な顔をくしゃくしゃにして泣いている女の人の顔が見えた。


「体調はいかがですか?」


「だ、大丈夫です。それよりここは……」


……っ!?


 ここがどこか訪ねるために体を起こそうとした途端、頭に雷でも落ちたのかというような痛みが走った。

 痛みと同時に、頭の中に一気に誰かの記憶が流れ込んでくる。

 先ほどから必死に声をかけてくれていた女の人と小幼い頃に遊んでいた記憶、お父様お母様とお庭で遊んだ記憶、マナーやダンスのレッスンをしている記憶、侍女や執事にわがままを言って困らせている記憶。そして最後はお父様とお母様と食事をしていたら突然頭が痛くなり倒れてしまった記憶。


 この記憶はこの体の持ち主の記憶?

 なぜだかそんな気がする。


「シャローズ様!? ご無理をなさらないでください。すぐお医者様を読んで参ります」


 私のことを必死で呼んでいた女の人はそう言い残し、バタバタと部屋から出て行った。

 それと同時に私はまた強い眠気に襲われ、すぐ意識を手放した。

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