ついに来た!異世界召喚
楽しんで読んでいただけたらと思います。
世の中はたくさんのフィクションで溢れている。それは多くのものが想像力豊かな証拠でもあるのだろう。
だが俺、櫻川咲斗は多くの作品を見て思う事がある。海外のドラマでもアニメや小説で見る異世界でもいい。なぜ悪役は忌み嫌われなければならないのか?もちろん無差別に人を殺す通り魔や昔はいたであろう市民を苦しめる王様などは別だが、多くの悪役は自分たちの信じる正義を貫き通す。その為ならば自分の命は惜しまない確固たる意志を持った者もいる。ただそれが大衆とは正反対の少数派の意見であっただけなのだ。もし立場が逆転すれば彼らは英雄として奉られただろう。
前置きが長くなったが俺は様々な理由から正義というのは1つだけではなく、悪役も悪い奴らだけではないと思うのだ。あくまでこれは個人の意見なので俺とは違う意見を持った者がいても俺は否定しない。その人も自分が信じるものを信じただけに過ぎないのだから。
1人頭の中で結論付けると俺はいつものように朝食を済ませ歯を磨き学校へと向かっていた。
電車とバスを乗り継ぎ1時間ほどで学校に着く。俺はこの海上学校の2年生だ。顔や背は良くもなく悪くもなく平均的、それ故に目立たないので友達はいない。それどころか喋る相手すらいない。まー正直友達などいても勉強の邪魔になるだけだし、俺にはアニメという強い味方がいるので毎日楽しい。
俺は自分でも自覚があるほど他人とは違った感性を持っている。それが先に述べたあの持論だ。同じ意見の者がいると俺としても嬉しい限りだ。
俺の目の前、昇降口ではちょうど朝の部活が終わったのか多くの生徒がいる。そのおかげで中に入るのに少し手間取ってしまった。朝の挨拶などするような相手は俺にはいないので真っ直ぐに教室へと向かう。俺の教室は3階の左から2番目、2年B組だ。教室に入り自分の席、窓側の1番後ろの席に座る。はぁ、今日も退屈な一日が始まると思うと憂鬱になる。
―キーンコーンカーンコーン―
チャイムがなり同時に先生が来る.......はずなんだが何故か今日は先生が来ない。すると1人の男子生徒が席を立つ。
「先生が遅刻なんて珍しい。ちょっと呼んでくる!」
彼の名前は神山輝このクラスの学級委員だ。そのルックスから校内ではファンクラブもあるほどだという。つまり俺とは正反対の人間だ=嫌いである。別に何か彼に問題がある訳では無い。ただあの優しい笑顔を見ると無性にイライラするだけなのだ。
と、次の瞬間教室全体が何やら丸い円のようなものに包まれる。
「なっなんだこれは!」
誰かが叫んだ。俺はこれを見たことがある、ゲームやアニメで出てくる魔法陣だ、きっとこのまま行けば、
―ピカーーーーっ!―
「う、うわぁぁぁあぁぁぁぁあああ!!」
「きゃぁぁあぁぁぁあぁぁぁあああ!!」
辺り一面が明るくなり全員が声にならない声を上げる。俺はたまらず目を瞑る。やっぱりこれは!
俺は心の中で確かな確証を得た。こ、これは異世界召喚だ!
と、次の瞬間目を開けるとそこは綺麗で上品な王宮だった。
(異世界召喚来たぁぁぁぁぁあああ!!!!!)
俺はみんなとは違う意味で声にはならない声を心の中であげた。
「どっどこだここ!」
「わ、私たち学校にいたよね?」
「どうなってんだこりゃー?」
皆が次々に声を上げる。ん?皆?ちょっと待て異世界召喚って1人の勇者を召喚するんじゃねーの!?
俺の知ってる状況と違うため今の状況を把握するのに少し時間がかかった。
「み、みんな1回落ち着こう。まずは人数の確認だ、誰もはぐれてないか?誰かいないやつがいたら言ってくれ!」
「輝!み、美智子がいない!」
「こっちもだ輝!優紀と悠斗がいない!」
どーゆーことだ?クラスの全員が召喚された訳ではないって事か?それにしても妙だ。召喚されたのなら近くに召喚者がいるはず。だがここは王宮だって言うのに誰もいない。あれ?俺を迎えてくれる美少女は!?
―コツっコツっコツっ―
すると1人の足音が近づいてくる。
「だ、誰だ!」
輝が声を上げる。ばっかこのタイミングで来る人なんて決まってんだろ!それは
「これは失礼しました。私はこの国の王女、ラクト=レイス=メルーンと申します。この度あなたがたを召喚したのは他でもないこの私と直轄の魔術師たちです。」
きたきたきたー!美少女王女きたー!やっぱり異世界召喚はこうでなくちゃ!
「召喚?魔術?悪いがあなたは何を言っているんだ?」
輝がそう言う。ま、アニメとかゲームとかあんまやらなそうだし、そりゃそうなるわな。ではでは王女様ー説明をどうぞ。
「そうですわね。まずはこの世界の説明からとしましょう。最初に、今いるこの世界は君たちのいた世界とは異なります。それは外国ということではなく違う世界線にいるということです。そして、あなた方をここに呼んだのは私であるということです。」
「ど、どういうことだ!ここは地球じゃないってことか?」
焦りながら聞く輝に王女は優しく答える。
「その認識で問題ありません。そして今我々の国、いえこの世界は魔王軍の進軍によって滅亡の危機にあります。その危機から救ってもらうべくあなた方、勇者になれる可能性の高いあなた方を召喚したのです。」
やっぱりそうきたかー!いいねー!燃える展開だ!
俺は1人の心の中ではしゃいでいた。
「ここからが本題です。どうか、勇者候補のあなた方には今からここにいるもの達でパーティーを組んでいただきレベルアップしてもらいたいのです。そして来る魔王軍の進軍に対抗して欲しいのです。」
王女様は深々と頭を下げる。その姿を見た俺は今まではしゃいでた俺を殴りたくなるほどに真剣なものだった。
「あ、頭をおあげ下さい王女様!た、確かにいきなり召喚だとか何とかで呼び出されたのは少し腹が立ちましたがそちらの事情が事情です。俺たちでよろしければ力になりますよ!」
「ありがとうございます。」
王女様はそう言うともう一度頭を下げた。輝俺が言いたかったセリフ言いやがって、これだからイケメンは!
「それではまず皆さんの.....」
「すみません。その前に少しいいですか?」
そう言って輝は王女様の話を遮る。
「ここにどれくらいのクラスメイトがいるかを把握したいんですけどいいですか?」
「あ、はい、もちろん構いません。」
「ありがとうございます。」
輝は軽く頭を下げる。いやー出来る男だねー、自分だけじゃなく周りの心配とは関心関心。
「じゃあ、さっきの続きで、ここいるのが俺に智也、に白雪に加奈子、彩乃それと、櫻井くん?」
「櫻川咲斗だ。」
「あ、あぁすまない。咲斗の6人か、くそ、少ないな」
輝は学級委員だけに本当に残りの人達を心配しているようだ。
「まぁ輝あいつらはきっと元の世界にいるさ、それよりも今ここにいる仲間たちの心配しようぜ!」
6人のうちの1人、智也が輝にそう言った。確かにどっちかと言うとこちらに召喚されてしまった俺たちの方が状況的には悪い、智也の指摘は最もかもしれない。
「話し合いは終わりましたでしょうか?」
「あっはい、大丈夫です。それで俺たちは具体的に何をすれば.......。」
王女様に話しかけられて話し合いが終わる。そう、ここからが問題なのだ俺たちはこれから何をすれば.......
「この世界では天職と言うものがあります。まずはこの説明からとしましょうか、天職と言うのは普通、努力しその天職に相応しい人間にならなければその称号を貰えません。しかしあなた方、一般に召喚者には召喚されたその時に天職がさずけられるのです。天職というのはそれだけで強力なもので勇者などの天職に着けば、普通ならば一生かけて勇者に相応しい力を手に入れるのですが、それが一瞬で手に入ります。つまりは裏技、チートという訳です。ここまではよろしいでしょうか?」
そこまで言うと一旦説明を終わらせる。ほうほう、まーゲームやアニメで見たのとだいたい一緒だな。
「はい、大丈夫です。」
輝が1拍あけて答える。
「つまり召喚者と言うのは召喚された時からある程度の力を持っており、その中でも強力な天職であればかなりの戦力になるというわけです。それでは皆様が1度天職を確認して見ましょうか。」
すると俺以外の5人がいっせいにキョロキョロする。そりゃやり方味方なんてオタクの俺以外に分からないよな、んじゃ、ここは俺の経験上最もあるやり方でっと
「ステータスオープン」
小声で呟く、すると俺の目の前にたくさんの表示が出てきた。
「おぉ」
思わず声に出てしまった。
「サクト様、さすがでございます。みなさま、ステータスオープンと口にしてください。そうすれば自分の前に自分のステータスが表示されるはずです、できましたら右上をご覧下さい、そこに自分の天職が書いてあるはずです。」
すると残りの5人も次々にステータスオープンと口にする。ほうほう右上右上っと
「ステータスオープン、おっ出た!えーと右上右上、って!俺!弓兵なんだけど!これっていいの?」
そう言ったのは智也だった。ほう弓兵、弓使いかまーハズレじゃないんじゃね?
「弓兵も立派な天職でございます。本来ならば15年ほどかけてなれるものです。良かったですね。」
「15年かぁ、まー勇者ほどではないけどハズレじゃないみたいだしいいか!」
前向きなヤツめ、もしかしたら一瞬でチート能力を手に入れることが出来るかもしれないというのに、少しは残念だとは思わないのだろうか?
「私は魔法使い?これはどうなのかなー?」
おー魔法使いか、この世界ではどうか知らんが強いんじゃないか?
「ま、魔法使いでございますか!これは良かったですね。この世界では、魔術師や魔導師など魔術関係は様々ですがその中でも魔法使いは最強と言われております。魔法使いになるには50年ほどかかるとか、改めておめでとうございます。」
「ご、50年!俺のよりよっぽど強えーじゃねーか!」
智也は少しガッカリしていた。白雪は魔法使いね、なんか似合ってるわ。まー魔法関係はだいたい強いんだろうなー、どれどれほかの人達はー?
「私は盾兵?えーなんか弱そう.......」
「そんなことはございませんわ、盾兵になるにはとても厳しい訓練が必要だとかで人が少ないのです。1パーティーに1人はいた方が良いと言われるほどです。頑張ってくださいね」
加奈子はタンクね、タンクってあんま強そうなイメージ無いけど、そうかーこの世界では訓練しないと着きたい天職に着けないから訓練が厳しいとなりたい人も少なくなるのかー、納得納得。
「私は槍兵ね、まー普通かなー、おみくじで言うところの吉って感じなのかな?」
「おみくじ?と言うのはよく分かりませんがイメージで言えば弓兵と似たような感じですね。これから頑張ってください」
「俺と同じハズレだな(笑)」
「ハズレではないでしょう」
どうやら彩乃も大した事はなかったようだ。すると周りが騒ぎ出した。
「えっ!まってよ輝、お前まさか!」
「ど、どうしたのよ智也いきなり大声出さないでもらえる。」
また智也と彩乃が何か言いやっている。輝が同化したのだろうか。
「どうしたのですか、輝の天職が何か?」
「はは、どうやら引き当ててしまったようです。その、チート天職。」
輝はニッコリ笑ってそう言う。そう言われると嫌でも気づいてしまう。あーきっと輝の天職は勇者だったのだと、くそ!ルックスだけじゃなくて天職にも恵まれるとは運の良い奴め!っと、そろそろ俺も自分の天職を確認しないと、どうかチート天職でありますように!
そう思いながらチラッと右上を見る。そこには
「ま、マジかよ、こんな事ってあるのかよ.......。」
俺が引き当てた天職それは
「せ、精神操作.......。」
そう、俺は文字のまま精神を操作するという天職を授かったのだった。
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