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楽しみに

第二部です

「おはよう、和くん」


「……おはよう」


 香織に俺の思いを伝えた翌日、香織はいつものように俺の家の前で待っていた。ただ、今日は家が隣同士の幼馴染としてだけではなく、彼氏・彼女として。


「……? どうしたの?」


「いや、昨日あんなことを話したあとなのによくいつもどおりにいられるな、って思って」


「うーん、なんていうんだろう。私今まで誰とも付き合ったこととかないから、どう接したらいいのかよく解らないんだ。だから今までどおりでいいかなって」


 人差し指を頬に当て、可愛らしく首をコテンっと傾けながら香織はそう呟いた。


「たしかにそうかもしれないな。別に無理に変わる必要なんてない、俺達は俺達だ」


「うん、私達は私達だよ」


 そう言いながら、香織は甘えるように俺の胸に顔をうずめてきた。……こいつ甘えん坊にでも成り下がる気か? それとも付き合い始めたからなのか? よくわからない。



         ◇ ◇ ◇



「んん? いつもより二人の距離が近い気がする……?」


 当然いつものように一緒に登校するので、教室に二人で入る。すると、いつからいたのか後ろに翠が顔をしかめながら立っていた。その後ろには大地が「やれやれ」といった顔で立っていた。


「ねぇ、昨日何かあったの?」


 大方翠も予想はついているのだろう。隠しているつもりだろうが、口のニヤニヤを隠しきれていない。


「言うわけ無いだろ、特にお前には」


「むぅ、和希の意地悪ー」


「翠の方こそわかっているのにわざわざ言わせようとしているんだから意地悪なんじゃないかな?」


 翠の後ろからニュッと顔をのぞかせ、いつも通りの涼しい顔でズバリと言い放つ大地。


「大地も敵にまわった……。かおりんは私の味方だよね?」


「う……うん……」


 翠からの泣いているように見せかけて無言の威圧に耐えかねたのか、香織は頷いた。


「ところで、香織ちゃんは足は治ったの?」


「うん、家に帰ってからずっと冷やしていたら今朝には治っていたよ。大地くんもありがとう、心配してくれて。和くんも翠ちゃんも」


 改めて、といった感じで香織はペコリと頭を下げた。


「んんー、治ったみたいで安心したよー。結構心配してたから」


 そういや、昨日クラスLINEでカラオケに打ち上げに行った写真が来たが、大地はいつも通りの涼しい顔だったが、こういうときに一番はっちゃける翠はあまり笑顔ではなかった気がする。


「ほんとうにごめんね、今度どっかに一緒にお出かけしよう?」


「うんっ、約束だよー」


 そういえば、俺と大地はたまに出かけたりするが、香織と翠が二人で出かけた話は聞いたことがない。


「そんなわけで昨日のカラオケあんまり楽しめなかったから、今日は私達とちーちゃんの五人で打ち上げやらないー?」


「いいねっ、私やりたい!」


「俺も賛成、大地は?」


「もちろん僕も賛成だよ」


「あとはちーちゃんだけど……」


 夜叉神さんは何個か習い事をしているので、もしかしたら予定が合わないかもしれない。そうしたら日にちを変えると思うが。

 翠は夜叉神さんに連絡をするためにかスマホを取り出したが……、


「私に何か用ですか?」


 なにかうちのクラスに用があったのだろう、ちょうど夜叉神さんがクラスに入ってきた。


「あっ、ちーちゃん!」


「おはようございます、皆さん。香織さん、足の具合はもう大丈夫なんですか?」


「うんっ、おかげさまで。それよりもちーちゃん、今日の放課後は何か予定入ってる?」


「今日ですか? ……今日の放課後には何も予定はないですよ」


「決まりだねー。今日の放課後は五人でカラオケだよー」


「カラオケ、ですか? わ、私はあまり歌がうまくないのでお、お手柔らかに……」


 何故か顔をカアっと赤くする夜叉神さん。


「歌うのが嫌なら歌わなくても大丈夫だよー。ああいうのは雰囲気を楽しんでるんだからねー。それに、ちーちゃんがもしも歌わないならその分和希が歌う回数が増えるわけだし」


 ムフフ、と言いながら俺のことを見てくる翠。

 その顔を見ると翠が何を考えているのかがよくわかる。初めて翠たちとカラオケに行ったときのことを思い出した。別に、隠していたわけではないがあそこまで笑われたのは初めてだったが。


「……? 和くんがカラオケに行くとなにかあるの?」


「んー、行ってからのお楽しみー」


「勝手に期待させるようなことを言わないでくれ」


「いいじゃん別に、絶対にかおりんもちーちゃんも驚くから」


「そうなんですか? では、放課後を楽しみにしていますね」


 夜叉神さんは、「そろそろチャイムが鳴るのでまた後で」と言って自分のクラスに戻っていった。


「私の歌声も楽しみにしていてね、和くん」


「ああ、無理に歌う必要はないんだぞ」


「わかってるよ」


「かおりんの歌声かー。私もたのしみだなー」


「翠ちゃんも歌うんだよね? 私は翠ちゃんが歌う姿があんまり想像できないや」


 わからなくもない。俺も翠が歌う姿を最初は想像できなかった。

 その点、大地はあのイケボで落ち着いた曲を歌うのは容易に想像できた。


「まあ、いろいろな楽しみがあるってことで放課後を楽しみにしよー」


誤字・用法の誤りなどありましたら気軽に報告してくれると嬉しいです。

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