3.ローズ・フォンタージュという女。 Side 総帥
総帥Side。
私は、ローズ・フォンタージュに、総帥と言われている、この国の宰相のジークフリート・フェリオラーゼである。何故だか、ローズ・フォンタージュに総帥と渾名を付けられて、タメ口を聞かれている。
私の方が、年上なのだが(26歳)、まぁローズの力を見出した為か、懐かれている。同い年の息子がいるから、ローズの事は娘みたく思っているが、ローズの能力は何も魔法の才能だけではなかったのだ。
今まで、ガタガタだった、魔法省の運営をたったの二年で、圧倒的に向上させたのだった。そして、魔法に対しての、国民への意識を一気にがらりと変えた。全く、4歳のガキがする事じゃないな、と感心してしまった。
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私がローズに出会ったのは三年前の事だった。最初は、ガキがこんなところで何やってんだ!?と思っていたが、そのガキに魔法で負かされた時は、正直とある一言しか言えなかった。
「お前、私の下で働かないか?」
自分ながら、何言っているんだと思ったが。でも、ローズは目を見開き、二つ返事。それからしばらく、そいつと接してみて、こいつが持っている知識の量は半端なく、自然を愛している人物であった。年齢と比例しない程の神童だなと感じ、思い切ってガタガタの魔法省に長として、入れてみた。
結果は劇的であった。彼女は自分が小さなガキだという事も理解しながらも、それを逆手に取るという戦法に打って出た。そうして、皆から信頼を得てきたのだ。・・・と言っても、ローズが長だと言う事を幹知っているのは、幹部級のほんの僅か。ローズの父親は流石に、知っているようだが、他の貴族は知っている者はほんの少しだけ。
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ローズが文句を言っている。私は、数少ない時間をこいつの文句を聞く時間に費やす。それもまた、導く側としての義務。
「あぁ、ヘラクレス王子に会いたくない・・・。」
「そう言えば、ディーンが娘を王子に会わせるとか言ってたな・・・。何で、そんなにも嫌がるんだ?皆憧れるものなのにな?」
「今の私が、そんなものを憧れるとでも?魔法省をより良くする方に尽力する方がまだマシ。」
・・・そこまで、嫌がるか。寧ろ、魔法省をより良くする方が大変だぞ。良くなってきたとは言え、問題は魔術師希望する者、そもそも素質を持つ者が少ない事が、魔法省の地位低下の原因である。人材不足と言うやつだ。魔法が使える大半の人物は、魔法騎士隊に所属してしまうからな。とは言え、管轄は魔法省だが。魔術師は難関なのである。これには、頭を抱え続ける問題だと宰相の観点からも言えよう。
「よし、私の能力で、魔術師を増やすか!」
「ヘラクレス王子の話はどこへいった!!というか、お前の能力では寧ろ、魔法騎士隊の方が増えるわ!そっちは、人材は十分だ。」
「寧ろ、“人財”が欲しい。言われなくても出来る人物を。人に罪と書いて、“人罪”はいらん。言われないとやらない人物など必要ないわ。」
「色々と奥深いな。話題転換する程にヘラクレス王子と会うのが嫌か?」
「嫌だ!・・・あの人は、中々の王の器を持つ人物じゃないですか。だから、より・・・。」
ハッキリと言う割に、最後は小声で聞こえなかった。王の器を持つと認めてはいるんだな。でも、生理的に受け付けないのか?そして、ため息しか聞こえなくなってしまった為、その日は公務に戻った。
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ローズがヘラクレス王子と会って数日後。
ヘラクレス王子が私の方を見てはため息をつく。私は、ヘラクレス王子の気に障る事でもしただろうか?
「私の顔に何か、ついていますか?」
ヘラクレス王子が頬を膨らませる。ガキですか。いえ、子供でしたね。ローズと同じ態度を取ったら、まずい。
「ローズさんの好みの男性が宰相だなんて、勝ち目ないじゃないですか!!」
「あぁ、そう言えば、そうでしたね。」
「え・・・?何で、知っているんです?」
「・・・あの子の父親がそう言っていましたよ。同じ年ですし、あの方とはよく話しますから。そう言った話は聞きました。・・・それにしても、ローズさんが気になるんですか?」
そう聞くと、ボッと顔が赤くなる。耳まで赤くなるとは、これは、重症の恋煩いですね。若いとは良いものですね。青春です。
「そうですか。では、帝王学を学びましょうか。ローズさんとお話しする機会があったのですが、ヘラクレス王子は王の器をお持ちとの判断でしたよ。」
「それは、本当かっ。嬉しいなぁ。ローズさんに褒められた・・・。」
「僭越ながら聞かせてもらいますが、どういったきっかけで、ローズさんが気になるんですか?」
またしても、顔が赤くなる。さっきから、表情がよく動きますね。こんなにも表情が豊かな方でしたか?もっと、おべっかを使ったような人物ではありませんでしたか?
「・・・正直、媚びていないところかな。他の人達は僕に媚びてきたり、やたらと自己アピールしてくるから、嫌になってくるかな。正直、自分から婚約を申し込もうとしたのは、彼女が初めてだ。そして、断られた。」
理由が子供っぽくない。完全に達観しているし、ローズ、お前寧ろ、好感触だぞ。大丈夫か。でも、ヘラクレス王子が子供らしさを出せていいのかもしれない。しばらくは、ローズに思いを寄せてもらおうか?
中途半端なところで、終わってしまった。そして、続かない。