言葉思い
こんにちは、リルンです。6作目は短編恋愛小説です。シンプルに現代を舞台にした話です。
主人公は声を出せない一人の男性。名前は美瀬野亮。
何の特徴のない男性が普通に恋愛…は正直鉄板すぎて、つまらないという私の考えより、亮君にはかなり残酷な設定にしてしまいました…。申し訳ない…亮君…。短編でもかなり短いです。すみません、途中でネタが尽きました……w かなり短めかつ、内容も薄いかもです…。
それではどうぞ。
「好き」
「ありがとう」
「ごめんなさい」
「おはよう」
「お休みなさい」
「こんにちは」
「こんばんわ」
「さようなら」
「いただきます」
「ごちそうさまでした」
これらの言葉を言ったことがありますか。
気持ちを誰かに伝えたことがありますか。
御世話になった方に、ちゃんと感謝の言葉を言ってますか。
悪いことをした時、きちんと謝罪の気持ちを込めて、謝っていますか。
……きっと皆様は家族や友達、大切な人……様々な人に、気持ちを言ってこられたと思います。
そして、言えずに終わってしまったと…後悔の気持ちになっている方もいらっしゃるかもしれません。
このような言葉には様々な意味が込められています。感謝・謝罪・憎しみ・悲しみ……。嬉しい・楽しい・幸せ・怒り・辛い……などなど、色々な感情が言葉の中にあります。
だからこそ、口に出して言うことは大切なことです。
メールやLINE……このような物で伝えるのもいいですが……少しだけ考えてみて下さい。
言葉を偽るのは簡単で、メールでもLINEでも何でも、今の時代では、これらSNSで言うことが出来るでしょう。
ですが、本当の気持ちを表すのは難しいことなのです。
言葉とは「言う」に「葉」と書きますが、僕は、様々な事々を口に言うことこそが、真の「言葉」だと思うのです。
もちろんお互い遠くにいるという状況ならば仕方がありません。ですが、そうでない方でも今はそうであってもいつかお互い会うことになるという方でも、このことを考えながら……これから話す、僕の話を聞いて下さると有難い限りです。
ちなみに僕はこのような言葉を言ったことはありません。寧ろ、言えませんでした。
なぜなら
僕は――声を出せないからです。――――――
僕は小さい頃に、重い病にかかり近所の小さな病院に入院しました。小さな病院には十分な機械がなく、しかも僕の病は難病と言われている物らしく、手術をしても、助かる確率はわずか5%でした。明らかに助かるはずがありませんでした。
両親はただただ泣くばかりでした。まだ幼かった僕はどうして親が泣いているのが分かりませんでした。きょとんとした顔で僕はこう言っていたそうです。
「ママ……パパ……どうしたの……?」
その時、両親はただ泣いて、僕を強く抱き締めたそうです。よく分からなかったのですが、少なくとも、僕に何かあって、長くは生きられないということだと理解しました。
そんなある日、母が僕に言いました。
「新しく出来た薬を試してみるって、お医者さん、おっしゃったの。もしかしたら助かるかもしれないよ、亮」
母は嬉しそうでした。
ああ、僕としたことが、名乗り忘れていましたね。
僕は美瀬野亮と申します。一応、この話の主人公です。
以後、御見知りおきを。
本題に戻りますが、どうやら僕に新しい薬を試すと。
要は人体実験みたいなものです。
僕の体は人体実験に使われることになりました。
そのことを思い出したのは実は最近です。両親が話しているのを偶然聞いた時、僕はこの時のことを思い出しました。
今思えば、どうして親は僕の体を使うように言ったのが疑問です。僕が退院して10年経った時、母に聞かされた。
「あの時はどんな小さな希望でもって思って……貴方に薬を使って下さいと医者に頼んだのよ」
薬は僕の病を和らげました。
ですがその時から僕は、声が出なくなりました。
声を出そうにもかすれ声しか出ず、おまけに出そうとすると、吐血してしまうのです。
そして僕は誰にも感謝の言葉「ありがとう」や気持ちを伝える言葉―例えば「好き」とか―を言うことなく、声を失いました。伝えたくても伝えられないことが僕を苦しめました。
こんなこと考えてはいけないと分かっていたのに、死にたいとも思いました。
『気持ちも伝えられず、ただ生きていくだけ……。ただ呼吸するだけ……。こんな世界……生きていても仕方がない……死にたいな……。でも、親が……あの医者が繋いでくれた命を無駄にしたくない……。もう少し…頑張ろう…僕はまだ死ねない……』
あれから20年。
僕は社会人になりました。
未だに声は戻ってこなく、いつも通り他の社員とは手話で会話していました。
あれから僕は何とか生きていました。僕を支えてくれた両親のために。命を繋いでくれた…医者のためにも……。精神が病みそうになりながらも、生きなければいけないと。命を繋がなければ申し訳ないと思いながら。
「おはよう、亮君」
優し気な声が聞こえ、振り向くと可愛らしい女性が僕を見て微笑んでいました。長い黒髪を下ろしていて、清潔感のある人でした。
彼女は僕の同僚の本田 唯さん。いつも笑顔で僕に挨拶してくれます。
『おはようございます、本田さん』
その度に僕は必死に手話で伝えようとします。
それを懸命に観察し、いつも笑顔で頷く本田さん。
他の人は僕とのコミュニケーションを面倒臭がって、紙に書いて会話しています。仕方ないことだなと、僕はそれを受け入れていました。
だけど本田さんだけは、頑張って理解しようとしてくれ、手話も僕のために勉強し、いつも僕に手話しながら話してくれました。
そんな本田さんに僕は心を寄せていきました。
『本田さんは優しい人だな……。あの人なら…僕の苦しみ…分かってくれるのかな…。絶対フラれるって分かっているのに……僕は馬鹿だ。僕は…本田さんが好きになってしまった……』
ある日、僕は決意しました。本田さんに気持ちを伝えよう、と。
そのために僕は何回も声を出すリハビリをしました。
途中で吐血してしまうこともしばしばありました。
それでも僕は本田さんに言葉で思いを伝えたかったのです。フラれることになったとしても……気持ちを伝えたい。
それが僕の思い全てでした。
僕は本田さんを呼び出して、二人で話したいと頼みました。すると、彼女は
「いいよ」
と、小声で返事してくれました。
嬉しい気持ちと緊張が混ざり合い、複雑になっていたのを覚えています。ですが不安もありました。思いを伝えて、嫌われないかと……。
彼女は僕にとって、かけがえのない存在でした。そんな彼女に嫌われ話しかけて来なくなったら……。そう考えると震えが止まりませんでした。
だけど、逃げちゃ駄目だと、思い直して僕は待ち合わせ場所へと歩き出しました。
そして約束の時間。彼女は急いで待ち合わせ場所に駆けつけてくれました。
「お待たせ……!! 亮君!! ごめん…待ったかな…?」
息を切らせ、本田さんは言いました。
『いえ、僕も今さっき来たところなので』
僕は必死に手話で本田さんに伝えました。すると、本田さんはほっとした表情になり
「良かった……」
そう言って、はぁはぁと息を切れているのを、整えていました。
しばらくして
「話って何?」
本田さんは息を整え、走ったせいで乱れた長い髪を直して、僕を見つめました。
僕は声を出して、思いを伝えようと喉に力を入れました。
口の中の血を飲み込んで、すっと息を吸って――――――
「ぼく、は……あな、たの……こと、が……好きです……!!」
僕なりに頑張りましたが、やっと出た声は酷くかすれ、何を言っているのか分からないぐらいのものでした。しかし彼女は大きな目を見開かせていました。
「……!! 亮君……声が……!!」
僕はコクリと頷きました。すると本田さんは涙を浮かべて僕を抱き締めました。
「……!?」
「ありがとう……亮君。私のために……頑張って声を出してくれて……。辛かっただろうに……。でもね、貴方の思い……伝わったよ……!!」
「……ほんだ……さ、ん……!!」
本田さんは僕を離して、改めて僕を見てそして笑顔で――――
「私も好きです、亮君。いや……美瀬野 亮さん」
僕は初めて幸せを感じました。
相変わらず、声は出ないままで、出てもかすれ声で血が出てきますが、僕はもう一人じゃなくなりました。本田 唯さんという大切な人も出来ました。
現在、彼女は僕の傍にいてくれ、サポートしてくれています。
いつもあの笑顔を見せてくれます。
僕はとても幸せな日常を送っています。これまで経験したことのないような…幸せな毎日。
そして僕も言えました。
「好きです」という大切な思いを。
もし僕と同じように大切な思いを伝えていないのであれば、まずは家族に言ってみて下さい。
きっと喜びます。
恥ずかしいと思っても、言ってみて下さい。一回言えば、恥ずかしくなくなります。
かつての僕みたいに、伝えたくても伝えられない状況にいつなるか分かりません。
だから今、声が出せる時……思いが固まった時……貴方がその大切な思いを言えますように。そしてその思いが相手に届きますように――――――……
―終―
<雑談&後書きコーナー>
亮『僕の話、いかがでしたか? 今回、僕の話をさせて頂いたのは、ただ単に幸せを伝えたい訳ではありません。もし、そんなこと言うと、リア充爆発しろと言われ、僕は殺されます…笑 そうではなくて、思いを伝えることは大切ということです。中には僕よりも酷い症状を持ち、一切話せない人もいらっしゃると思います。その方は声で伝えれなくても、他のことで気持ちを表したらいいのです。例えば、手紙。あえて手間のかかる、手紙がお勧めです。もちろん現在、便利な世界ではメールやLINEで伝える方が早いかつ、楽です。この小説を書いた、作者も携帯のメールとかでよく気持ちを伝えています。ですが、手紙の方が気持ちが込められます。自筆の手紙を貰ったら、きっと誰だって嬉しいと僕は思うのです。ちなみに僕もそんな手紙が来たら、嬉しいです。声が出せる方は、声が出せるうちに、たくさん声を…喉を使って下さい。僕みたいにいつ、声が出なくなるか分からないからです。そして話せない人を馬鹿にしてはいけません。この世の中にも…声を出したくても出せない人もいるのです…。思いを伝えることは大切ですが、言っていいことと、悪いことがあるのです…。僕が伝えたいことは以上です。聞いて下さった皆様、ありがとうございました』(手話なため、後に唯が通訳)
唯「お疲れ様、亮君」
亮『本田さん!! お疲れ様です!!』
唯「話、聞いてたんだけど、実際亮君は心のない言葉、言われたことあるの?」
亮『ちょっとね…』
唯「そうなんだ……酷いね、その人」
亮『もう過ぎたことです。あまり気にしません。だって僕には貴方がいますから』
唯「…!!/// ちょ…ちょっと亮君…恥ずかしい…」
リ「…………」
亮・唯「!? どうし…ました…? リルンさん…?」
リ「ここは二人イチャイチャするとこじゃないんですけど…!?」
唯「ひゃ…!! リルンさんが怖い…!!」
リ「いや…別に貴方達を離そうと思わんから大丈夫やけど…さ。ここ、後書きなんだよね。ここ、作者が感謝やら何やら語るとこ」
亮『いや…あの…この小説が伝えたかったことを僕が伝えたんですけど…』
リ「いや、まぁ…うん。それはありがとう、助かったわ…でもね? だからってイチャイチャはするな…ヨ?」
亮『ひええ!! 怖いです、リルンさん、落ち着いて……』
リ「じゃあ、こっからあたし言うから…邪魔しないでね?」
亮・唯「はい!!」
リ「長くなってすみません……。ここまで読んで下さり、ありがとうございました。この雑談も読んで下さった皆様は神様です、本当に。優しすぎます、泣きそう…。泣きませんけど…w さてさて、いかがだったでしょうか。短すぎですね、すみません…」
亮『本当短いですよね、この小説。これ、小説なんですか?』
リ「むぅ……!!」
唯「私、あまり出てないです。もっと出たかったです」
リ「うぐぐ……」
亮・唯「ジィィ……」
リ「……最後になりますが、この小説に関わった全ての方に感謝しつつ、後書きとさせて頂きます!! ありがとうございました!!」
亮『強制終了ですか!?』
唯「リルンさん……ちゃんとして下さい」
リ「お前等ちょっと黙ろうか……」
※グダグダですみませんでした。雑談まで読んで下さった方、ありがとうございました!!
この物語はフィクションであり、登場人物等は架空です。