表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那にて  作者: ゆいき
21/66

感染したコーシ

翌日の朝、コーシは不快な気怠さで目が覚めた。

頭と体が妙に重く、呼吸をするのでさえ億劫だ。


「まずい…やられた…」


昨日通り抜けた地上の湿地には、独特のウイルスがいる。

そこを通る者に即高熱をもたらすと有名な場所だ。

なるべくそこを避けながら通ったものの、まんまと感染したようだ。


「コーシ、まだ寝てるの?」


あまりにもコーシに起きる気配がないので、セーラはそっと顔を覗かせた。


「いや…、今起きる…」


なんとか体を起こそうとするがすぐに沈み込む。

セーラはすぐに異変に気づくと駆け寄った。


「コーシ!!すごい熱!!待ってて…誰か呼んでくる!!」


慌てて飛び出そうとしたが、コーシはその手を掴むと引き戻した。


「いい…。原因は分かってるから。これは、二日ですぐ引く熱だし、その後は、すぐに回復するから…」


ぜいぜいと喘ぎながら声を出す。

セーラは心配そうに頷くと、コーシを一つしかないベッドに横にさせた。


割れるような頭の痛みに堪え、べたつく汗に苛つく。

コーシは久々に出した熱に苦しみ、何度も寝返りをうった。


しばらくすると、ふと頭の痛みがましになる。

うっすら目を開けると、よく冷やされたタオルがかけられていた。

不思議に思いながらもぼんやりとしていると、今度は首元に温められたタオルが当てられた。


「あ、ごめんね。起こしちゃったかな。汗がすごかったから…」


セーラは手を引っ込めたが、コーシは目を閉じると荒い呼吸の中で言った。


「…気持ちいい」


セーラは目を見張ったが、少し安心した笑みを浮かべるとコーシの襟元に手を伸ばし、そのまま汗をぬぐい始めた。


セーラの手つきは慈愛に満ちていて、献身的な母親のようにコーシを看病した。

コーシはもちろん母親なんてものは知らないが、いたとしたらこんな感じなのかとぼやける頭でなんとなく思った。


熱が少し落ち着くと、セーラはすりおろしたおろしに蜂蜜ときめ細かい氷を混ぜ、コーシの口に運んだ。

喉が酷く痛むので何も口にしたくはなかったが、これは特に負担もなくするりと喉を通過した。


「…うまい…」


コーシがちゃんと食べてくれたので、セーラはほっとした。


「食べられそう?お水もレモン水にしたからちゃんと飲んでね?」


コーシの世話をするセーラは、充実感に溢れていた。

これが自分の本来の役目なのだ。

コーシが再び横になると、寝付くまでそっと髪をなで続ける。

愛しくて愛しくてたまらない。


「コーちゃん。ゆっくり眠ってね」


昨日の葛藤などころりと忘れ、すっかり母親モードのセーラは、動けないコーシにやりたい放題甘やかした。


翌日の朝、昨日よりだいぶ体が起こせるようになったコーシはなんとか自力でベッドから出た。


「…あのやろう…」


小さく悪態をついていると、洗濯物を手に持ったセーラが部屋に入ってきた。


「コーシ!起き上がって大丈夫!?お水なら持ってきてあげるから待っててね」


くるりと踵を返すと、コーシが何か言うよりも早く部屋を出ようとする。


「…っセーラ!」


なんとか声を出すと、返事の代わりに洗濯カゴが床に転がる音が響いた。

顔を上げると、セーラは膝から崩れ落ち床に手をついている。


「セーラ!?」


ふらつく体を引きずりながらセーラの元に寄ると、荒い呼吸が聞こえる。


「バカお前…、うつってんじゃねーか!!」


感染力の高さがこのウイルスの特徴だ。

コーシはセーラを抱えるとベッドに戻ろうと力を振り絞った。

だが流石にその途中で崩れ落ちる。


「やばい…。無理…」


そのまま二人で床に転がる。

コーシは玉の様な汗を浮かべるセーラを見て舌打ちした。

なんだかんだいってもセーラは生身の人間だ。

ウイルスが感染することも、なんら不思議ではない。

渾身の力で手を伸ばし、上掛けをベッドから引きずり下ろすと、コーシはそれをセーラにかぶせた。


「そうだよな。おまえは、俺と同じなんだ…」


小さくつぶやくとそのままコーシも意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ