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Secret Force  作者: 日元ひかげ
ゴッドハンター
6/13

夜戦

 少年は遊んでいた。大人たちが何をしようが知ったことではないが、邪魔をするのであれば許せない。


「お前の邪魔をする奴はみんな殺しても構わないよ」


 そう言われた。だから少年は今『邪魔する大人』っていう奴を殺そうとしている。

 『飛んでいる大きな箱みたいなモノ』から、『光』が飛んできた。それは空中で花火のように煌々と辺りを照らした。

 少年は光に目を奪われた。

 ナんてキレイなんダロう……

 しかし、そんなことを考えられたのも束の間。すぐにヘリに視線を移す。

 コンなキレイな光をだスノはいいケど、うるさイから邪魔だナ。

 ヘリを睨みつけた。そして力を集中させた。

 光を作ルのナら、静かに、大キく、ゆっクりと。

 目の前に庭で作ったものと同じものを作り出した。

「ふふっ、イヒヒ。……こうジャないと……」

 空中に出現したそれも、次第に回転を始めた。それと同時にヘリからイグラー‐V空対空ミサイルが発射された。




 前方に庭にある白い球と同じものが出現し、パイロットたちは焦った。

『距離約四六〇(よんろくまる)メートル! イグラー発射する』

 赤い発射ボタンを押すと、バシュッとミサイルが飛んでいく音がした。

『こちらアサルト3。同じく、イグラー発射する』

 空中で白い煙を噴出しながら、ミサイル二基は白い光に向かって飛んでいった。

 一基目が光に触れて爆発し、二基目は少し差をつけて爆炎の中に潜り、再度爆発した。

『やったか?』

『油断するな! 地上の光の球はまだ残っている!』

 それぞれのヘリの後ろに、光球が二つあることにまだ二人は気付いていなかった。

 それぞれの光球から発せられた光の粒がヘリに直撃した。

『こちらアサルト5、被弾した! 操縦できない! 墜落する! くそっ、くそっ!』

『本部、聞こえるか! こちらアサルト3。やられた。電子系等が全滅だ。脱出する!』

 プロペラが止まったヘリが叩かれたハエのように黒煙を上げながら墜落した。

その上をパラシュートが二つ、ゆっくりと落ちていった。




 源太郎と山勢、現場に到着したそれぞれのCSP隊員はしばらくの間、空中戦を見守っていた。いつの間にか庭にあった光球も上空に昇っていった。

 我慢の限界がきたのか源太郎は叫んだ。

「おいっ、てめぇら! あのガキを撃ち落とすぞ!」

『了解しました!』

 光球から放たれる光の粒によって、殆んどの電気機器は使い物にならなくなっていた。

『こちら、第七班。現場に到着! おいっ、聞こえているのか? くそっ! もう使えん!』

 空にいる少年に向かって無数の銃弾が浴びせられるが、効果は見られない。それどころか、少年は飛んでいく銃弾を避ける素振りも見せなかった。

「おお! 総官、お会いできて光栄です!」

 こんな時に呑気なものである。源太郎は見覚えのない隊員に怒鳴った。

「うるせえっ! こんな事してる暇ぁあったら、奴をさっさと撃ち落とせ!」

「しっ、失礼しました」

 隊員は足早にその場を去っていった。その後姿を眺め、源太郎は独り言を漏らした。

「ったくよぉ、なんなんだあのガキは? 弾ぁ当たってんのか?」

 そう思うのも無理はなかった。あの白い球は攻撃能力こそあるものの、防御力はゼロに近いはずだった。なぜなら、あの光球に弾を撃ち込んだとき、貫通して壁に銃弾の痕が残ったのだから。

 源太郎はそんなことを考え、空に浮いている少年に銃口を向けた。

 頭に狙いを定め、引き金を引いた。銃口から真っ直ぐに飛んでいった銃弾は少年の眉間を撃ちぬいた……はずが、少年は平然としていた。

 そんなバカなっ! なぜだ、なぜ当たらないんだ? あ? そもそもなぜ今も奴の姿が見えているんだ? 照明弾なんてとっくに燃え尽きて……

「山勢っ、いるか!」

「はいっ、ここに」

「ヘリが撃ち落とされてから、誰か照明弾を撃ったか?」

「いいえ、恐らく撃たれていないかと……」

「なら、なんであいつは光って見えているんだ?」

 源太郎は空に浮かぶ少年を指差した。

「……分かりません」

「答えは簡単! 奴はもうあそこにはいない。あれは少年の姿をした電気の塊

だからだっ!」

 源太郎は少年から山勢に目線を移すと、小声で言った。

「恐らく、本体はそいつから見えている所しか攻撃をしていないはずだ。だとすると、奴の場所は分かったも同然だ。付いてくるか? 山勢」

「当然です。隊ちょ……いえ、総官!」

 二人は姿勢を低くして戦場から逃れた。




優意は住宅街の上を跳び越えて進んでいた。遠くに輝く白い光が見える。恐らくあれが『能力者』に作られた何かだろう。

「本部、聞こえますかぁ? おーい、応答せよ。ねぇ、聞いてるの?」

 少し前から通信機が故障でもしたのか、何の反応も見せなくなっている。

「『目標を発見、今から攻撃を行います』……で、いいのよね?」

 伽耶からの返事はなかった。優意は仕方なくため息をつくと足を速めた。




 源太郎は目と指で山勢に合図を送った。言葉は発していない。僅かな音でも気付かれてしまいかねない。

「お父さん? こんなところで、何してるのぉ?」

「うるせぇぞ、クソガキッ! 奴にばれるだろぅ……こんなとこで何やってんだ、優意?」

 山勢、源太郎、二人の動きが止まった。

「え、何って。伽耶さんから、連絡受けたからぁ、目標を斬りに来たんだけど」

「こんなところで何やってんだ、優意?」

「もう言ったよ……」

 三人はしばらく呆然となって、少年のことも忘れてしまっていた。

 この沈黙を破ったのはその忘れられた少年だった。首だけをこちら側に向けて犬歯を剥き出しにして、笑いながら言った。

「ねえ、アソボうよ。お姉チャンたち……フフッ」

「気持ちの悪いしゃべり方だな」

 と源太郎。

「そうね」

「う、確かに……」

 残りの二人もその意見に賛同した。

「ヒヒッ、鬼ごっコをシよウ」

 優意は腰に差してある二本の刀を抜いた。擦れる金属音がして、鈍く銀色に輝く刀身が姿を現した。

「鬼はあたしたち三人でいいわね」 

「いいよォ……鬼さんコッチ! フふフフ」

 少年はトテトテと走り出した。

「飛ばねえのか?」

「えっ? 飛べるの?」

 言い争っていると、少年は塀の向こうに姿を隠してしまった。

「おいおい、逃げちまったじゃねえか」

「あたしの責任にするの?」

「違う……とにかく追うぞっ!」

 源太郎たちは少年の向かった方向に走って行った。

「そんなんジャア、捕まラナいよ……」

 少年は塀の上からひょっこりと顔を出して、三人の後姿を眺めて残念そうにため息を吐いた。


優意は足を止めた。

「ん、どうした?」

 源太郎たちも走るのを止めた。

「ちょっとね。声が聞こえたから」

「声?」

優意は自信たっぷりに微笑んだ。

「お父さん、後はあたしがやる」

 源太郎はただ頷いただけだったが優意にはそれだけで十分だった。

「頼んだぞ」

 それだけを言い残して源太郎と山勢はその場から走り去った。


 足音に気付くのよりも早く、少年の背後で声がした。

「誰が、誰を捕まえられないのかなぁ?」

 振り向くと少年の後ろには刀を構えた優意が立っていた。普通なら聞こえない距離だが、優意にしてみれば何でもなかった。

 サイボーグなのだから普通の人間と比べ、身体能力、聴力も跳ね上がっており、僅かな物音も聞き逃しはしない。

「ア、……フふ。面白いね、オ姉ちゃん。気づかナカったよ」

「それはどうも。で、攻撃やめる気になった?」

 少年は首を振った。

「アッチは、せんそうゲーむなんだから」

 その瞬間、少年の横を優意が走り抜けた。優意の速さについていけなかった少年は遅れて振り返った。

少年の頬には斬られた痕が二本残った。この時点ではまだ少年は気味の悪い

笑みを浮かべていた。

さらに少年の背には赤い平行線が二本、服の下から滲み出ていた。次に服が

破れて、少年の斬られた背から血が滴った。優意が目にも留まらぬ速さで斬っ

たのだ。

「ねえ、本当に止める気ないの?」

 少年の顔に初めて恐怖の色が写った。それを見た優意は声色を変えて悪魔の

ような冷笑を浮かべて言った。

「止める気……ある?」

 効果覿面(てきめん)だった。少年は手を輝かせて空に浮いている白い球に向けた。する

と光球は四散し、跡形もなくなった。




 救急車の赤いランプがあちこちで回っている。ここは少年の作った光球との

戦闘があったところだ。

 あれほどの戦いだったにも拘らず死者は一人もいなかった。救急車に乗る者

には皆、所々に丸く焦げた痕があった。光の粒が当たったのだろう。

「やけにあっさりといったな」

 源太郎が優意の後ろから歩いてきた。

「あ、お父さん……あんな子供だから気は進まなかったけど……でも」

「『でも』何だ?」

「なんか、どこかで見たような……」

「誰を?」

「あの子。どこだったっけ? 忘れちゃったなぁ……」

 首を傾げてみたが思い出せそうになかった。源太郎はそんな優意の肩に手を

置いた。

「そんなことはまた今度でいい。もう遅いから、帰ったらどうだ?」

「ううん、本部に行くよ。あの子の事も気になるし……後で本部に送られるん

でしょ? あの子」

「そうだな……」

 源太郎はそれだけ言うと優意から手を離し、歩き始めた。

 忘れた、か。そういえば、俺も何か忘れているような……

「――隊長! ご無事でしたか!」

 田元は泥で汚れた顔に笑顔を浮かべて敬礼していた。

 そういや、コイツと会うの裏庭で見送って以来だったな。

 すっかり忘れていた。

「てか、何でお前そんなに汚れてんだ?」

「これは飛んできた弾を避けて、顔から地面に突っ込んだんですよ……」

 田元は照れくさそうに言った。

「ふ、はははは。そーか、それだけで安心した!」

 源太郎は一頻り笑い終えると「さて」と一言。

「戻るとするか、本部に」

 この場にいた隊員は一人の例外もなく疲れていた。それもその筈、こんな大

規模な戦闘など初めての経験だったのだから。




 祐一の前にある壁からシャワーの音が聞こえている。理奈が先に風呂に行っ

たのだ。

 その間に夕飯を作ろうと冷蔵庫を開けると、その中には缶詰以外の物が入っ

てなかった。それも隅から隅までビッチリと、缶詰が冷蔵庫の中を支配してい

た。

 缶詰は冷蔵庫の中に入れる物じゃないだろ!

 しかし、缶詰が使えないわけではないので、皿に出して温めようと電子レン

ジの中に皿を突っ込んだ。

 爆発! ……するかと思ったが(なぜ?)、レンジの中が正常に回り始める

のを見て、安堵のため息をついた。

 米、米はどこだ?

 冷凍庫を開けた。レトルト米だったが、その中に入れてあった。丁度その時。

『あ~あ~♪ ああああー、ああ、でん♪ でん♪ たんっ』

 何だこれ?

 その奇怪な音楽(?)が止まるとレンジが『ピッピッピッ』と音を立てた。

「なんだ、レンジか……」

 変な音だな。

 祐一はレンジを開けて皿を取り出した。

「熱っ!」

 皿をひっくり返しそうになるのを抑えて、指先に伝わる熱を我慢した。

 それを急いでテーブルに運ぶ。その動作を数回繰り返し、ようやく全ての皿

を取り出すことができた。

 ぴたぴたと足音。

 ちょうど理奈も風呂から出てきたようだった……バスタオル一枚で。

 髪が潤って黒光りし、水がまだ滴っている。

「ぬあっ! ▲□※~●×! □■○■!」

 言葉にならなかった。祐一は急いで視線を逸らし、理奈に背を向けた。

「あの、着替え……持ってなくて……」

「ああ、それなら、優意のを借りるといいよ」

「いいんでしょうか?」

「うん、いいと思います」

 なぜか語尾が丁寧になった。

 ぴたぴた、と水気まじりの足音が遠ざかっていくと、祐一はため息を吐いて

独り言を漏らした。

「う~ん? あぁ? なんで?……」

 こんなんで大丈夫か?

 不安は大きくなるばかりである。

サブタイトルに迷いあり。

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