エピローグ
短くなっております。エピローグなので><。
結局、親父は防弾服を着ていたから助かって、銃弾を受けた衝撃で気絶してしまったらしい。まったく、人騒がせな親父だ。
優意はあの祐樹とかいう奴のことを思い出してからというもの、付きっきりで看病しているとか。背中を斬ったことは、もう謝ったみたいだ。
そして俺は理奈と一緒にこの病室にテレポートしてきたらしい。医者たちは驚いていたが、理奈の懸命な呼び掛けに俺を手術してくれたそうだ。
先ほどから、推測の「~らしい」とか「~そうだ」は俺が気絶していたからだ。
俺の目が覚めたのは、あの出来事から二日経ってからだった。
そして今――
祐一と理奈は一部屋の病室に二人っきりだった。親父どもはもうとっくに部屋から退室した後だ。非常に気まずい。
さらに祐一は手術には成功したものの『絶対安静にしてなさい状態(祐一命名)』だった。
しかし、目と首だけは動かせるので、辺りを見渡すことは出来るが、時たまに理奈と目が合ってしまうので非常に気恥ずかしい。よって、祐一は理奈のいない窓側を眺めているのだ。
「あの……」
理奈が小声で言った。しかし、祐一はそれに気付かなかった。頭を他のことに集中させようと試行錯誤しているせいだった。
「あの!」
「何、かな?」
祐一は別段あわてる様子もなく、顔の向きは変えずに答えた。
「祐一さんは、わたしのこと……その、嫌いですか?」
「へっ? いやっ、そんなことは……なんで?」
「だって、ずっと窓の外ばかり眺めてるじゃないですか!」
「いや、これはその……いっ!」
起き上がって弁解しようとしたのが不幸したのか、傷口が少し開いたような気がする。祐一は悲鳴を押し殺して再びベッドに着いた。
「大丈夫ですか? あの、ごめんなさい。そんなつもりはなくて……」
「……いいよ。分かってるから」
長い沈黙が訪れた。
いったい何十分経っただろうか?
実際にはそれ程時間は経っていないのだが、静かだと余計に長く感じてしまうものなのだ。
「あのさ……」
切りだしたのは祐一だった。
「理奈はこれからどうすんの? 家に帰るのか? もう『ゴッドハンター』なんて滅んだし(つーか、滅ぼしたし)さ、監視島の出入りも自由になったし。『能力者』ってのは一応隠さないといけないけど、理奈の母さんにも会えるんだぜ」
「わたしは……」
「それに、理奈の両親も心配してると思うぞ。夏休みも終わるし、学校行かないといけないだろ? 俺もそう――」
「どうして祐一さんはわたしと離れることしか言わないんですかっ!」
すごい声だった。看護師たちが部屋を覗きに来たくらいだ。祐一はそれを無視した。
「俺だって……」
離れたくないさ。
言いたかったが声が出なかった。傷の痛みとかそんなモノのせいではなくもっと他の何かが自分を止めたのだ。
祐一は息を整え、深呼吸すると言った。
「別に一生離れるわけじゃないんだ。それに理奈にはテレポートができる。俺から会いに行くことは出来なくても、理奈から会うことは出来るじゃないか。それに……」
「それに? 何ですか?」
(俺にはまだ能力があるんだ。『テレパシー』さ)
目の前の祐一は口を閉じたままだ。腹話術にも見えない。理奈の頭の中に直接声が送られてきたのだ。
「それって、わたしから話すこともできるんですか?」
「できるよ。心の中で俺の名前を叫べばいい。そうすれば、どこにいても聞こえる」
理奈は祐一から逃げて泣いて道にしゃがみ込んでいた時のことを思い出した。
「あっ! だからあの時、わたしが『消えたい』って思ってるって分かったん
ですね!」
「あの時? ……ああ、あれか。理奈の場合は『消えたい』なんて強く思うと、本当にどこかに行っちまうからな」
「でさ」と祐一は続けた。
「これならいくら離れてても、いつでも会話はできるだろ?」
理奈は弾けるような笑顔で答えた。
「はいっ!」
しばらく話しているうちに山勢さんが理奈を呼びに来た。理奈の家まで送っていくそうだ。理奈は自分の家がどこにあるかすら知らないので、その方がいいだろう。
(いつでも、会えますよね?)
祐一の頭の中に理奈の声がした。見ると祐一を見て微笑んでいる。
「もちろん!」
祐一と理奈は笑い合った。その様子を山勢は不思議そうに見ていた。
理奈が帰ってから、祐一は窓を眺めた。夕日が赤く輝きながら遠くの山々の中に沈もうとしている。
祐一は沈みゆく夕日に顔を赤く照らされながら微笑んだ。
「さて、もうひと眠りするかな……」
祐一は腕を枕代わりにして、自分の頭の下に置いた。
今日が最後ってわけじゃない。そのうちまた会えるさ。絶対に……
一ヶ月近くありがとうございました。この作品は終わりましたが、別のやつはまだつらつらと書いていくので付き合っていただけるとありがたいです。
もしかしたら続きを書くかもです。多分、癖とか変わってると思いますが。




