雨
雨だ
窓際に座り、外の景色を眺めていると
重く項垂れた雲から水が降ってきた。
水は嫌いだが雨は好きだ
元飼い猫の〝花〟は尻尾を少しくねらせながら雨音を聞いていた
二つに裂けた尾が踊るように、時折パタリと床を叩いた
「楽しそうだな花殿」
いつの間にか隣には赤い着物のおかっぱ頭の娘が座っていた。
「まあな
それよりいつも突然現れるな貴女は」
そう言うと娘はにやっと笑って
「そうかのう?私にとっては普通のことなのだが」
半端に古臭い口調が特徴の娘はこの家の主
座敷童子の沙夜という妖であった。
「妖が神出鬼没なのは普通なのか?」
「そうかもしれんのう
花殿は人との時間が長かったから感覚が鈍っておるだけじゃよ」
そのうち慣れる。と沙夜は言った。
雨音がリズムを刻む中、人とこうしてたわいもない会話をするのが好きなのだ。
猫又とやらになってもそれは変わらなくて
ふと、かつての家族との思い出が溢れ出た
「泣いておるのか?」
「、、、水は嫌いなのにたまにこう、どこからか溢れてくるんだ」
そう言って毛づくろいをして水を舐めとる
しょっぱい、、、
「不思議じゃのう」
「ああ」
本当に不思議だ
本当に不思議なほど
人が好きだ
時が流れてもまだ
いつまでも