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7~10 少女の預かり知らぬ裏側 


話は瑠璃が園芸部の部活初日に遡る。


生徒会室は数名の男女が目の前にコピー用紙を束ねた小冊子をうず高く積んで作業に勤しんでいたが、会長である黒羽が休憩だと言って一人窓辺で寛いでいたのだが


「あの女!」


突然、叫んだと同時に生徒会室を飛び出して行く。


しかし部屋に居る者達は平然として見送って何事も無く作業を続けていたが中庭から会長の声を聞き会計のチャラ男が気になり席を離れて窓を見降ろすと3人の男女が揉めており、一人は会長、そして先程知り合った後輩の女子生徒と長馴染み。


「副会長~会長が騒いでるけど良いの?」


取敢えず報告してみる。


「ほっておけ。それよりサボるなら奴の分のノルマを加算しようか」


「それは勘弁かも~」


へらりと笑って元の席に戻って作業を静かに再開し、暫らく静かだったが


ガラッ! バッシン!


傍若無人にドアが開閉され役員達の手が一瞬止まるが会長だと分かるとスルーして作業を続ける。


しかし戻って来た会長は自分の席に戻るが一向に仕事をしようとせずに百面相をして唸っていたのでウザそうにする役員達。


仕事しろよ会長!と思ったが誰も口には出さない。なぜなら副会長が無視しているので自分達が口にする事ではないと判断――実質のリーダーは副会長だと浸透していた結果だった。





そんなお飾りな会長が今現在考えている事とは、


なんなんだあの女!?


絶対におかしい変な女としか言えない。


第1に入学式で俺を睨んでいた事←役員全員睨んでいた


第2に生徒会室で俺に会えたのに怒鳴って逃げだす。←チンケ、不細工と言ってなじる。


第3に玄関で俺直々に待って謝罪しようとすれば突っかかる態度でスネまで蹴って逃げる。←自転車で青色吐息で坂道を登っている横を悠然とタクシーで通り過ぎた上に態度が可愛くないと詰った。


第4に中庭で草むしりをしているのを2階から見掛け、これまでのぞんざいな態度を注意しようとしたが俺の目の前で違う男を好きだと告白する!!←園芸部を好きでやっていると言ったのを勘違い。


驚いて思わず胸倉を掴んでしまったが


なんだあの胸は!!


細いくせになんであんなにでかい!?


ジャージの隙間から見えた胸はくっきりとした谷間を形成し柔らかそうな白い2つの膨らみ←ブラがきつい為により胸が寄せられて盛り上がっていたが、確り見ていたな~


呆気にとられていると何時の間にか居なくなり中庭に取り残された。


声もかけず立ち去った薄情なイチゴに腹が立ち不機嫌に生徒会室に戻るが思いだすのはイチゴの胸。


くっそーーーー!


色仕掛けで俺の気を引こうという作戦だな。


全く使い古された手を


これまで睨んでいたのもスネを蹴ったりするのも全て俺に取り入る為かと思うと合点がいく←完全なる思い込み!!


「そうか……フッ……素直じゃないな…… フッフフッフ~~」


このような残念な思考をしていた。





思い込みの激しい会長が不気味に笑いだすので切れてしまった副会長は持っていた小冊子を会長に投げつける。


バッシ!


見事に会長の顔にヒットさせて低い声で忌々しげに言う。


「何もせずニヤつくとは良い度胸だな黒羽。 役員全員でこの資料の修正をしているのは誰のせいだと思っているんだ」


「俺か?だからと言って物を投げつけるな」


さして悪びれた様子もない会長の様子に青筋を立てる副会長に冷や冷やする役員達。


空気の読めない会長に黙っていてくれるだけで大人しくしていてくれと全員一致で項垂れる。


「そうだ。お前が手がけた資料に不備があった所為だ!」


前もって副会長と確認してからコピーする予定の資料を勝手にコピーに回してしまった会長だったが、見事に沢山の間違いが発覚してしまったので、本来生徒会が無い日だったが全員招集されてしまったのだ……


ところが本人はそれ位の事でいちいち細かい、こんな物その場で口頭で訂正すれば良い物をと思っていた。


それとも


「原稿を修正して刷り直せばいいだろ」


と言い出し更に副会長の怒りを増幅させてしまう。


「私立の学校じゃあるまいし、公立の学校の予算はギリギリで紙1枚も無駄に出来ない。しかもこのエコの時代になんて勿体ない事を言うんだ! それにこの紙一枚も納税者が納めた血税だと思へ」


なかなかの経済観念の持ち主だが、これでもさる系列型のホームセンターを経営している会社の社長の御子息様でお金持ちだ。しかも本来は県内1の進学校の私立カトレア学園に入学すべき男なのだが、折角税金で勉強出来るのに何故態々高い授業料を払ってまで私立に行く意味が無いと桜花に入学した変わり種。


「めんどうくさい……」


ウザそうに言う会長に副会長はとうとう怒鳴り返す。


「お前の方が面倒くさい。 他の人間の士気も下がるから帰れ!」


邪魔なだけなので追い出す事するが、全く堪えていないのが会長で反対に喜ぶ始末。


「そうだな、今日は変な気分だから帰らせて貰う」


立ち上がって鞄を持って部屋を出ようとすると


「明日の体育委員会の打ち合わせには出席しろ」


「おお……」


全く煩い奴だと言わんばかりの気の無い返事。


会長の心の内は、一層の事曽根が会長をやれば良いと毒づいていた。


本来は曽根に会長の打診があったが、俺を会長にするなら副会長をすると教師に言ったらしく、内申書の甘言につられて生徒会長になったのが経緯。


何故、会長に推したか理由を聞けば生徒間で人気のある俺が上に居れば生徒達が積極的に役員活動に参加するという理由らしい。


まぁ~俺くらいの容姿端麗頭脳明晰な男となればどこに居ても注目の的だから仕方が無い←学年20位前後、副会長は万年トップの東大現役合格確実で容姿だけは勝っている。


「俺ぐらいの男の気を引くには普通の手じゃ駄目だと思ったんだなイチゴの奴。 仕方が無いから少しは構ってやるか」



こうして俺様勘違い生徒会長は王子様フェイスを不気味にニヤつかせて下校するのだった。








生徒会長が帰った後の生徒会室は漸く秩序を取り戻す。


「高波。明日の体育委員会ではあのバカを確り見張っておけ」


副会長の命令に静かに頷くだけだが、信頼しているのかそれだけで済ます。


「副会長~ どうせならあんたが会長になった方が良いんじゃない?」


誰もが思っていた疑問を口にする会計の桐野


「確かに能力的問題はあるが人寄せパンダ的に役に立つ。奴が顔を出す会議には委員の出席率に格段の差があるんだ」


進学校故に勉強に時間を取りたい生徒が多い所為で委員会など出席を塾や部活を理由にサボる者がいて、クラスの一般生徒への伝達が上手くいかない事が多々あり体育祭や文化祭などでも毎年混乱が多いのを1年から生徒会に在籍して苦々しく思っていた副会長の曽根。


「会長はあんな性格だけど不思議と信奉者が多いよね~~」


「顔に騙される一般大衆は多いからな。何の経験もないタレントやルックスだけの人間が国会議員や市議会員になるのが良い例だ」


メガネを人差し指でくいと上げて毒舌を吐くのを静かに聞く役員達。


「それに何かあった時に責任を取らせるには丁度良い人間だ。居なくなっても生徒会は確り機能すると思わないか?」


そのセリフが静まり返った部屋に響き渡ると同時に室温が5℃下がったように全員が感じた。


シ―――ン


怖いよこの人!!


絶対に副会長だけには逆らったり敵に回してはいけないと全員が思うのだった。






そして翌日の放課後。


研修室で体育委員会が開かれている最中で体育委員長が球技大会に付いての説明をしていたが女子生徒の殆どが違う席に居る会長様に熱い視線を降り注いでいる中で、会長と言えば窓の外をチラチラと見て気もそぞろ。横に居る会計の高波がいなければ今にも席を立ってしまいそう。


「会長、少し落ち着いて下さい」


小声で注意するが


「煩い、外にイチゴが居るんだ」


イチゴと言われ思い出すのは先日生徒会室に居たイチゴのパンツを穿いた女子生徒の事で、皆が自分の一言で名前をイチゴと勘違いしてしまっていたが訂正するにも本名も知らないのでそのまま放置していたのを思い出す。


「今は会議中ですよ」


そう嗜めるが


「ああーーーーっ!」


突然叫んだかと思うと窓から顔を出して


「コラーーー! そこの二人! 不純異性交遊だ! 離れろ!!」


外に居るイチゴに叫ぶので慌てて高波は会長を取り押えて窓から引き離す。


「静かにして下さい」


「離せ、イチゴとあの男を引き離さないと危ない!」


危ないのはあんただと思ったが面倒くさいので黙らす事する。


バシッ!


そのまま会長の首筋に手刀を入れて気を失わせるのだった。


それを見ていた生徒達は呆気にとられて何が起こったのかと二人を見詰めていたが、気絶した会長を椅子に座らせて机に突っ伏させてから


「お騒がせしました。委員会を続けて下さい」


会計は委員長に向い礼儀正しく頭を下げる。


「……わかった」


訳の分からない展開だが早く委員会を終わらせたいのでそのまま進行をしていき、滞りなく終わるのだった。





しかしそんな中で女子生徒達はイチゴなる女子生徒が誰なのか気になり始めていた。


何しろ生徒会長は女子生徒達の憧れの的で、厳しい受験戦争が大学に入学するまで続く中での潤いであり、あわよくばお付き合いしたいと思ってしまう相手。だが当の会長はどんなに綺麗な女子生徒の告白でも全く相手にせず、年上のゴージャスな美女の恋人が居るというのがまことしやかに噂されていた。だから殆どの女子生徒はファンクラブを作り鑑賞するだけで諦めていた。


その会長が初めて女子生徒を名前で呼ぶので気が気では無い。


皆のアイドルがたった一人の女子生徒に奪われるのは許せないのだ。


委員会が終わり一部の女子生徒が集まり話だす。


「会長様の言うイチゴと言う生徒を調べるのよ」


「珍しい名前だから直ぐに分かるわね」


「イチゴなる相手が会長様に相応しく無い場合は色々考えといけないから慎重に探るのよ」


女子生徒達は頷き合い、こうしてイチゴなる人物の探索を始めるのだった。





予想以上に残念な生徒会長になってしまいましたが、このまま突き進みますので御了承下さい。

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