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10 少女はタダでは泣かない

放課後になり早速部活に向う。


今日も女子トイレで着替えて一応はジャージの下にTシャツを着ておく。まさか胸を見られるとは迂闊というか想定外だよ~


別に露出狂でもないので確り隠すに越した事は無い。


だが内心私の中で誇れると言ったらこの胸!


痩せてしまった体に反し何故か胸がBカップからCカップに育ってしまったから不思議?


普通は胸が小さくならないか??


その所為か最近ブラがキツイが背中の肉が取れたせいか何とか納まっており、ソロソロ新しいブラが欲しいとお金をせがんでいるが母の給料日待ち……我が家の家計が本気で心配だ。


温室に行くと温室の扉が開いており恐る恐る覗きこむ。


まさか2日連続でハル先輩が女子生徒を連れ込んでいるのかと警戒するが水音が聞こえ部長がジョーロで薔薇の鉢植えに水を遣っていた。


「部長遅れてすいません。手伝います」


「白鳥さん。 もう終わるから待っていて」


そう言われ素直に待つが口は動かす。


「昨日のマフィンありがとございました。とっても美味しかったです」


家に帰ってから紙袋を開けばプレーンとチョコのマフィンが2個づつ入っていて家族で1個づつ食後のデザートとして食べたが好評だった。


食後?


勿論家に帰ってからも用意されていたスパゲティーを食べてお腹がきつかったけど甘い物は別腹で完食。


部活後の男子高校生さながらの食欲に我ながら怖くなるけど、少しでも体重を戻したいので食べる。


以前なら体重を気にしながらお菓子を食べていたのに変われば変わるのだった。


「良かった。 今日はチーズケーキを持ってきたから後で食べよ」


「今日もですか! ゴチになります~」


昨日から入れ食い状態にウハウハしてしまう。


水遣りが終わると昨日と同様に中庭に向い草むしりで今日中には終わりそう。


地道に草むしりに勤しみながら時折辺りを警戒。


また会長様が現れないかと気が気じゃない。恐らく胸を見た事で睨んだ事はチャラになった筈だから無いとは踏んでいるが、睨んだ事をずっと根に持つような執拗さだから気が気じゃない。


絶対にストーカー気質だ!


だけどアレだけイケメンにストーカーされたら世の女性は喜ぶだろうけど私の場合は恋愛感情では無く悪意からだから怖い。


顔が整い過ぎて睨まれると怖いし、直ぐ怒鳴るし、私の頭を鷲掴みするなど行動が乱暴――まるで小学生のガキ大将で精神年齢が低いんじゃないかと疑っている。


絶対に関わっていけない人種で鑑賞だけで十分だよ!と思うのだった。



しかし心配を余所に会長様は現れず1時間ばかりで草むしりも終わりを告げた。


「ご苦労様。こんなに早く草むしりが終わって助かったよ」


優しく労をねぎらってくれる。


「いえ~ あんまり役に立たなかったかも」


何しろ部長の籠には私の倍の雑草がある。


「そんな事無いよ。一人だと寂しいけど二人だったから草むしりも楽しかった」


確かにボッちって寂しいのは身に沁みていた。


「そんなに喜んでもらえるなら毎日に部活に顔出したくなっちゃいます」


「有難う。でも白鳥さんの暇な時だけで十分だから。 それより草は僕が片付けて来るから先に温室で休んでいて」


「私も行きます」


私の分の雑草を持とうとするが部長がそれを私から取り上げようと籠に手を掛ける。


「少ないから」


「それじゃあ」


部長の好意を何度も断るのも悪いのでお願いして渡そうとすると




「コラーーー! そこの二人! 不純異性交遊だ! 離れろ!!」



「「えっ!?」」


突然、会長様の大絶叫が聞こえて驚く


急いで辺りを二人で見回すが姿が見えず気のせいかと思ってしまうが


「取敢えず温室に早く行った方がいいよ」


「はい」


部長も昨日の事があるので急かすよう温室に行くように勧めるので従い、後片付けを任せて走るように中庭を後にした。


しかし、あの会長様はどういう思考回路だ??


不純異性交遊??


部活をしていただけなのに訳が分かららない。


絶対変人だ。


校舎裏に廻り林に入って温室まで一気に走り逃げ込んだ。


そして会長様が来ないか確認してから温室のドアを閉めてホッとするのだが


「どうしたのイチゴちゃん~ 挙動不審だけど?」


「ひぃっ!!」


誰もいないと思っていたのに声を掛けられビックリする。


「なんだ…ハル先輩か…」


見ればテーブルでまったりと寛いでいる。


全く部活もせずにサボってないで少しは手伝ったらどうなんだろう。


「つれないな、イチゴちゃん。 『きゃ~ハル先輩!』とか喜んでよ~」


「無理っす!」


「ちぇ、女の子なら僕に会えたら喜ぶのが普通だよ」


信じられない物でも見るように私を見るが


「ああっーーーーーーー!! ハル先輩何を持ってるんですか」


「あっ、コレ~ 奈那ちゃんのおばさん特製のチーズケーキ」


そう言いながら手に持っていた食べかけを口に放り込み、咀嚼して美味しそうにゴックンと呑み込む。


「いや~~ おばさんのお菓子は絶品だな~~ 甘さ抑えめで濃厚なチーズの味が超美味しい~」


やっぱり部長が言っていたチーズケーキ。急いでテーブルにある箱を覗き込むが空気しか無かった――つまり空っぽ。


こっこっこっこっこいつーーーーーーー全部喰いやがった!


私のチーズケーキが~~~~~~~~~~~~~


思わず涙ぐんでしまう。


「ハル先輩の馬鹿野郎―――――――!」


思いっきり叫んでやる。


まさか後輩から怒鳴られるとは思わなかったのかきょとんとした顔。


「折角部長が一緒に食べようと持って来たのにーー今直ぐ返して下さい!」


「えっえ~~~  お腹の物を出したらゲロゲロだよ」


それは見たくもないし食べれない。


「それじゃあ買って返して下さい」


「そんなの知らないよ~~」


「人の物を勝手に食べたら犯罪なんだから!」


「結構意地汚いんだね…イチゴちゃん」


「ハル先輩に言われたくない……うっう…8ヵ月ぶりのチーズケーキだったのに~~~うえぇ~ん」


やけくそでテーブルに突っ伏して泣いてやる。


「えっ、泣いちゃうの。 マジかよ……」


そこへ雑草を捨てに行った部長が戻ってきて


「白鳥さんどうしたの!?  ハル! 女の子を泣かすなんて見損なったぞ!」


温厚そうな部長がチャラ男をしかりつける。


ざまあみろ~~


「奈那ちゃん、別に泣かす心算は無かったんだ。  分かったよ …今度お詫びのケーキを買って来るから泣き止んでよ」


お詫びのケーキ!


「うっぐ… それならマロニエのスペシャルモンブランがいい……」


どうせなら高いケーキをねだる。


マロニエは駅の近くにあるケーキ屋さんでこの辺では有名店で喫茶店も併設していた。


「もしかして嘘泣き?」


チャラ男がいぶかしむ。


本当に泣いているのに疑われてしまったので乙女の恥じらいも忘れ涙と鼻水だらけの顔を見せてやると


「ゴメン… 取敢えず涙と鼻水拭いてよ」


そう言ってポケットティッシュを差し出してくれるので、有り難く使わせて貰い数枚引き出して鼻をかんで涙も拭き、最後にもう1枚出そうとすると無くなってしまう。


しかしまだ何か入っており


「うん?」


それは3㎝四方のカラフルな薄いパッケージで丸いタブレットのお菓子が入っている。


ラムネかなと思い


「このお菓子食べても良いですか? グッスン…」


と聞きながらも封を切ってしまうが


「イチゴちゃん! 駄目!」


ラムネの1個ぐらいケチくさいと思い中を開けて取り出す。


むにゅ~~と何やら不思議な感触でラムネで無くグミ?


取り出した物を見ればそれはグミでは無く


思わず目が点になる。


もしやこれは所謂コンドウさん――避妊用具!?


「ギャーッ! ハル先輩のセクハラ!」


思わずハル先輩目がけて投げつけてしまう。


「そっちが勝手に開けちゃったんでしょ~」


「ハル、こんな物を学校に持ってくるな!」


部長も真っ赤になってしかる。


「えっえー 男として持つのがエチケットでしょ~~」


「当分ここへの出入りは禁止だから鍵を返してくれ」


「そんな~~ 許して奈那ちゃん」


泣きつくチャラ男だが


「今まで大目に見て来たけど白鳥さんが居るんだから女の子を連れ込まないって約束するなら考えよう」


「そんな~~ わかったよ…。 女の子は連れ込まないと約束する」


渋々拗ねたように言う。


「それとマロニエのスペシャルモンブランもですよ」


忘れないように言っておく。


「分かったよ。 どうせなら今から行く~」


「いいんですか!」


「さっきもモンブランって言ってたけど何の話?」


チーズケーキを食べられてしまった事に気が付いていない部長に空になったケーキの箱を示して


「ハル先輩が全部食べちゃったんです。酷いでしょ」


「もしかしてそれで泣いてたの?」


少し呆気にとられている。


「はい」


私にはとっては重要な事!


「てっきりハルに変な事をされたのかと」


「やだな~ いくら僕でも嫌がる女の子を襲わないよ。 会長じゃあるまいし~」


「やっぱり会長って無理やり鬼畜系なんですか!」


「と言うより無自覚暴走系」


「初めて聞きます…その属性」


コミックやラノベはそれなりに読んでいるけどそんなのあったかな??


「そお~? だからイチゴちゃんは絶対に近づかない方がいいよ」


「はい。 絶対に近づきません」


その意見には賛同しますハル先輩!


「いい子だね~ それじゃ可愛い後輩ちゃんにケーキを奢っちゃう~ 奈那ちゃんもおいでよ」


「僕も?」


「今日は僕が皆に奢るから」


「いよ!ハル先輩太っ腹で素敵です!」


「漸く僕の魅力に気付いてくれたんだね」


顔はイケてても避妊用具を常備している、やり○ンなんてゴメンだよ……取敢えず持ち上げて気持ち良く奢って貰う為のテクニック。


「それじゃあ着替えて来るんで校門で待ってます」


思いっきりスルーして温室を飛び出すのだった。







成り行きでイチゴちゃんと奈那ちゃんにケーキを奢る事になった。


少々痛い出費だが女の子を泣かせちゃったし仕方ないと諦める。それに8ヵ月ぶりのチーズケーキを奪ったのは流石に悪いと感じちゃったよ~~


しかしダイエットをしていたから食べれ無かったのかと思っていたが…目の前でコーヒーに4個の砂糖とミルクをたっぷりと入れケーキを美味しそうに頬張る姿を見て違うと知る。


「そんなに甘党で、なんでそんなに痩せるかな~」


僕と奈那ちゃんはカフェオレだけを注文して向かいに座るイチゴちゃんを唖然として見ていた。


「う~ん 自転車で片道10キロ通学のお陰かな?」


「えっ…そんな遠くから自転車だったの白鳥さん」


奈那ちゃんも驚いている。確かに女の子が往復20キロを自転車はキツイよ~僕でさえ1日でグロッキーしちゃいそう。


「ダイエットの為?」


そう聞くと


「そんな所っす」


誤魔化している感じだけど掘り下げて聞くのは止しておく。


しかし、見れば見るほど地味な顔だが表情が豊かで面白い女の子で見ていて飽きない。恋愛感情はもてなさそうだが可愛い後輩としてこれからも付き合っていこう。


それに会長のイチゴちゃんに対する反応も面白過ぎるし~~~~


ケーキを食べ終わり、外は暗くなって来たので急いで喫茶店を出てイチゴちゃんと別れる。


「ハル先輩、ケーキセット御馳走様でした」


今までにないくらいの満面の笑みをみせるイチゴちゃん。


こんなに喜んでくれるなら奢ったかいがあるという物。


「泣かせちゃってゴメンね~」


「もう暗いけど白鳥さん一人で大丈夫?」


心配そうにする奈那ちゃん。とっても優しく良い奴で小学校からの付き合いで唯一生涯友達でいたいと思わせる幼馴染。


そんな奴だから女の子を一人で帰すのが心配で堪らなさそう。


「大丈夫っす。 それより明日は用事があるんで来週から部に顔を出します」


「別に良いけど、僕が送ろうか」


「先輩は電車だし無理っす。 それじゃあ先輩達さようなら~~」


そう言って元気良く自転車を漕いで颯爽と立ち去ってしまう。


「大丈夫かな…ハル」


「奈那ちゃんは心配し過ぎ~」


何時までもイチゴちゃんの走り去った方向を見詰めていそうなので腕を取って引っ張る。


「ほら、電車が来るから行こう~」


「そう言えばハルと帰るの久しぶりだな」


「そうだね~」


何時の間に僕の背を追い抜いてしまって見上げるほどになってしまった。


「ところで生徒会長なんだけど…白鳥さんと何かあったの」


突然奈那ちゃんが話を変える。


「大した事無いよ~ 少しあの人おかしいから、成るべく近ずかないように気を付けといて。僕も一応言っておくけど~」


「わかった」


昨日も突然生徒会室を飛び出して何事かと思えば、中庭から聞こえる会長の声で窓を見下ろせばイチゴちゃんと揉めており奈那ちゃんまで巻き添えになって楽しい展開!


それから生徒会室に戻って来た会長は仕事もしないで椅子に座って落ち込んでいたので副会長が切れて部屋から追い出されていた。


本人は分かっていないようだがイチゴちゃんをかなり意識しているのは確か~~~


会長はもてるが一度も彼女を持った事が無く、寄って来る女の子にも冷たいので興味がないような態度。少しゲイ疑惑を持っていたんだけど、どうやら違ったらしい~~しかも僕の感では奈那ちゃん同様に絶対に童貞だよ!


「ハルはなにニヤついてるんだ」


「イチゴちゃんて面白い子だと思って~」


「うん、良い子だし、一緒に居ると楽しいよ」


「もしかして惚れちゃった?」


「そっそんなんじゃないよ」


初心な奈那ちゃんは顔を真っ赤にさせてまんざらでもなさそうか?


僕としては女の子としての魅力に欠けて考えちゃうけど~~



退屈な日常がイチゴちゃんの出現で楽しくなりそうで久しぶりにワクワクするのだった。





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