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死神様の雑用係り!(改訂版)  作者: 海野 真珠
ウェランツァイ編
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18・裏事情


 キーキーと不愉快なほどの高音を響かせながら、ぐるりと周りを囲む猿に似た魔獣。

 その数、数十匹。百匹近い数で群れる魔獣のため、ここに居るのはほんの一部だろう。


「焼きつくします」


 動くな、とザンゲルとプダムラに伝え、一気に焼き尽くす。

 断末魔すら上げさせず、高温で。

 今夜の宿となる砦の手前。本当に目と鼻の先の距離で出会った魔獣。

 視線を砦へと向ければ、砦の騎士たちも交戦中だった。


「ザンゲル、プダムラ。魔獣だけ凍らします。砦の騎士たちに知らせて」


 下手に破壊されては、魔獣が復活する。

 凍らせた魔獣に手を出さないように、二人に先行して知らせてもらう。


「ギルジェモ。破壊してきて」


 確実に破壊できるギルジェモに一言命じて。

 砦へと馬を駆けさせながら大声で叫ぶ二人を追いながらも、魔獣を次々凍らせていく。

 全ての魔獣を凍らせたタイミングで馬から身軽に降りたギルジェモが、確実に破壊していく。

 ソレを馬上から眺めつつ、他の魔獣の探索をかける。

 どうやら、この辺は猿共の縄張りだったらしく、他の魔獣は居なかった。


「ウェランツァイ様、ありがとうございました」


 破壊の終わった砦の内部に入れば、ギルジェモと共に駆け寄ってきた中年の男。

 コレがこの砦の責任者だろう。


「間に合ったようで何よりです。被害は?」


 ギルジェモの手によって馬から降ろされ、正面で膝を付く中年に声をかける。


「怪我人を含め被害はございません」


 死傷者ゼロの報告に安堵し。


「今晩はお世話になります」


 やっと挨拶を交わすことが出来た。




 砦の騎士たちと一緒に夕食を取りつつ魔獣の被害状況を確認し、明日の討伐区域の割り振りを行う。

 ウェランたちの次の目的地までの道中は騎士たちの討伐区域から除外してもらい、こちらで受け持つことに。

 途中で魔獣の住処を潰しつつ、野営をしつつ次の砦まで向かう。

 討伐がスムーズにいけば、野営は一回で済む計算だ。


「水は必要ないわ。食料も、ある程度は現地調達で良いでしょう」


 魔獣が大量発生している今、砦の食料や水をウェランたちが貰うことは躊躇われる。

 砦の騎士たちも、魔獣討伐のために野営をする必要があるのだ。


「しかし、それではウェランツァイ様の食事が」


 事前にその事は伝えてある筈だが、それでもやはり納得しない責任者。

 まぁ、自国の次期、それも精霊王の寵児であるウェランに水や食料すら渡さない、というのは了承できることではないだろうが。


「わたくしであれば、精霊達が全てを用意します」


 だから、心配はいらない、と伝える。

 実際、今回の遠征にあたって水は用意しなかった。

 少人数での移動のため、出来るだけ荷物は少なくしたかったのだ。

 荷物の中で一番嵩張るのが水である。

 生命線のため仕方が無いことだが、その水さえなければ三分の一の荷物が減らせるのだ。


「わかりました。他に必要なものがあれば、申し付け下さい」


 本来であれば、自分達騎士だけで行う魔獣の討伐。

 それを、いくら非常事態とはいえウェランが出てしまっている今、使えるモノは使え、と意識を切り替えられる者は少ない。

 こちらもソレを理解しているだけに、少しでも手助けを、と色々気を使ってもらうのも忍びないが。


「ありがとう」


 行為を無碍には出来ないので、感謝の言葉だけを返して。


「明日の見送りは不要です。おやすみなさい」


 この砦の騎士たちも早朝から出発することになっている。

 わざわざ、ウェランたちを見送るために時間を割く必要は無い、と伝えておく。

 了承の言葉が出ないのはわかっているため、言い逃げするように与えられた部屋に入る。


 さて、どうしたものか。


 ぶっちゃけ、こんな対応が後数ヶ月続くと考えると憂鬱である。

 ぐるっと国内一周旅行なわけだが、毎日でないにしろ、宿泊は砦を予定しているのだ。

 私は野宿希望だったのだが、ソレを言った瞬間に各方面から速攻で却下が出た。

 これでも話し合いの結果、宿泊宿に押し込められるのは回避したんだが。

 魔獣討伐の為に国庫を使う無駄を切々と説いたのは記憶に新しい。

 まぁ、その都度の対応しか仕方がない、と意識を切り替えて、ベッドに潜り込む。


 わざわざウェランが魔獣討伐に出たのは、何も魔獣による被害を憂いたわけではない。

 反則的な行為ではあるが、ウェランであれば王宮からちょっと『お願い』するだけで魔獣を滅することは可能だ。

 かなりの力技だし、周囲への被害を考えなければ、という制約がつくが、不可能ではない。

 なのに、何故わざわざこうして討伐の旅に出ているか。

 理由としては簡単で、どうやらこの世界においてウェランに課せられた義務とは、この魔獣たちの一掃らしい。

 普通であれば精霊王達が監視し、精霊たちが適度に間引く魔獣。

 ソレが間に合わないほど、今回はほぼ全種類の魔獣たちの繁殖期が重なった。

 このままでは世界のバランスが崩れ、ウィン様たち創造主の管理能力をもってしても被害が尋常ではなくなる。

 いくらこの世界の創造主と言えど、たった四人で世界の細部まで管理するのは大変、とのこと。

 手足となって働く精霊にしても、ウィン様たちが把握しきれないものを間引くのは不可能。

 加減ができず、最悪辺り一面を焦土と化す可能性もあるらしく。

 ソレを回避するために、無制限で精霊術を行使でき、ウィン様との意思の疎通が可能なウェランが直々に『お願い』されたのだ。


 他国の魔獣も、可能な限りこの水の国に移動させるらしい。


 各国の討伐能力以上の魔獣が出ないようにウィン様たち創造主が手を加え、その過剰分を水の国に放つ。

 ソレを、ウェランたちが討伐と言うより、殲滅させる。

 一応、こちらの進行に合わせて発生させるようにはしてくれるらしいが。

 なので、効率よく討伐するために、出来れば野宿をしたかったのだ。

 まぁ、きちんとしたベッドで眠れる方が有難いのではあるが。



 そんな事をつらつらと考えながら、意識は緩やかに落ちて行く。

 さて、ウェランの『為すべきこと』がこの魔獣討伐であるのなら。

 ウェランの終着点は何処になるのかね。






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