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死神様の雑用係り!(改訂版)  作者: 海野 真珠
ウェランツァイ編
59/74

05・タヌキオヤジの爆弾


「では、叔父上が解除を?」


 見慣れた部屋の、座り慣れたソファーの上。

 正面に座る叔父上の言葉に確認をとれば、叔父上はその顔に苦笑をのせた。


「陛下では解除は無理だったのだよ」


 聞かなかったのかい? と問われて、否定を返す。

 先程まで陛下と話していたが、そのようなことは聞かされなかった。


「父上とは、セチュエットお姉様の処遇についてお話しただけですので」


 親子の会話ではなかった先程までのことを思い出して、苦笑する。

 セチュエットを強制的に帰してから、王宮より遣いがきた。ウェランがセチュエットを拘束したことが王妃の知るところとなり、怒り狂った王妃によって呼び出しをくらったのだ。しかし、王妃がウェランに命令することはできない。従う必要なし、と遣いの者を帰したら、次は陛下の名前で説明を求める書状が届いた。

 その書状の内容も決して強制するものではなく、必要であればウェランの元へ行く、としたためられていた。国王自らが来ることはないと思ったが、それなりの地位のある者が来ることは必然。学校に迷惑をかけることは避けたかった(これ以上目立ちたくなかった)ので、寮へ戻ることなく王宮へと帰ってきたのだ。


「あの母にしてあの娘、か」


 帰ってきてすぐに陛下へと報告し、やっと解放されたのが夕食の時間。まだ政務の残っていた陛下を残して自室へと戻れば、そこには夕食と叔父上の姿。

 一緒に夕食をとりながら、陛下へ話した内容よりも愚痴っぽい報告をしていたのだ。


「何度も繰り返していますのに、なぜ覚えられないのでしょう?」


 人間は学習する生き物ですのに、とトゲも隠さず口にする。王妃もそうだが、セチュエットも無能すぎる。あの頭は飾りに違いない。


「加護も無い王族など価値はない、と言っているのだけどねぇ」


 その点ツェギエットは利口だね、と笑う叔父上。第一王子のツェギエットは、早くから己の将来を見据えて行動している。

 あの一族の子供とは思えないほど利口なお兄様は、自分に王位継承権が得られないと理解すると勉学に打ち込み始めた。自身が王にならずとも宰相として国政に携わる事を目標としたのだ。

 だから、ツェギエットはウェランに刃向かうことも対立することもない。一番利口な選択だろう。


「ツェギお兄様は宰相の元へ見習いについたとか。父上もお喜びでした」


 王妃と王女がウェランと対立する中、王子だけがウェランと良好な関係を築いている。次期国王はウェランに決まっているため、陛下もツェギエットだけを贔屓するようになった。だんだんと冷遇されていく王妃とセチュエット。それに比例して優遇されていくツェギエット。まぁ、悪循環の始まりである。


「臣下に下ることが決定しているからね。加護が無くても幸いツェギエットは利口だし、それが最良の選択だろうね」


 直系の王族が二人とも無能でなくてよかった、と言う叔父上に同意して。そういえば、と思い出したことを伝える。


「騎士団長のご子息にお会いしました」


 ギルジェモがセチュエットを諫め、拘束した、と伝えれば、叔父上は面白げに目を細める。

 この人がこんな顔をするときは、大概意地の悪いことを考えているときだ。


「噂の三男か。セチュエットと同じ歳の、未来の騎士団長」


「未来の?」


 おかしな事を言う。騎士団は実力社会のため、その団長の地位は世襲ではない。受け継がれることはあっても、それは全て実力が伴っている。齢一桁の子供の未来など、ましてや生まれたときから位置づけの決定している精霊の加護ではなく、純粋な強さの事などまだわからないだろう。


「長男、次男は加護持ちなんだよ。といっても、弱い加護ではあるけどね。両方とも精霊術よりも剣術の方が秀でてはいるけど、その剣術も加護無しの三男の方が優れているのさ。近年希にみる才能らしいよ」


 加護持ちは騎士団への入団は認められていない。そのため、長男、次男は騎士団ではなく術士団への入団が決まっているそうだ。術士団は純粋に精霊術のみ使う第一と、術と武器を使う第二にわかれている。連携の都合上分けられているらしいが、その行動内容も異なる。第二はどちらかといえば騎士団のソレに近い。


「才能があるため、未来の騎士団長、と?」


 まだまだ成長過程の子供だ。今後どうなるかなど判らないだろう、と言えば。


「その三男は、術を剣で跳ね返すんだよ」


 ビックリだね、と爆弾を落とした。



―――は?



「・・・笑えないご冗談ですね」


 精霊術を剣で返すなど、冗談としか思えない。

 精霊術は、自然災害を人工的に起こすようなものなのだ。ソレが本当なら、ギルジェモは竜巻を剣で押し返すことができる、という事だ。まぁ、これは大袈裟すぎる例えではあるが。


「それが本当なのだよ。攻撃として向かってくる術であれば、大概のモノは剣で跳ね返すみたいだよ」


 火の玉をギルジェモに飛ばせば、ギルジェモは剣でソレを跳ね返し、風の刃を飛ばせば、ソレも剣で四散させる、と。



―――ナニソレコワイ。



 ただ、向かってくる攻撃に対してのみ有効らしく、セチュエットにしたような水の拘束や空気の濃度を変えることは可能らしい。

 こんな才能があれば、未来は団長間違い無し、とは叔父上の弁。まぁ、納得。


「で、そんな将来性のある三男にセチュエットはご執心」


 にやにやと、イヤラシイ笑みでそう続ける叔父上。

 ものすごく、イヤな予感。


「私は会ったこと無いが、整った顔立ちみたいだね」


 どうだった? とその笑みのまま聞かれて、曖昧に頷く。実際、かなり整っていたと思う。


「将来は是非自分の護衛に、と陛下にお願いしていたんだよ」


 継承権が無く、臣下に下ることが決定されているとはいえ、その血は直系。現王や次期王と同じ血。危険に晒されることが無いとはいえない。多分、きっと。いや、利用価値はある・・・かぁ?


「まぁ、セチュエットに危険なんて無いだろうから、そのお願いは却下されたけどね」


 ツェギエットならまだしも、セチュエットはねぇ、とブッタ切る叔父上。激しく同意はするが。


「そんな三男から、騎士団長を通して陛下にお願いがあってねぇ」


 にやにやにやにや・・・・・とますます深まる叔父上の笑み。背筋にイヤな汗がタラリ。


「ウェラン、明日からその三男君が護衛に付くから」


 よかったねぇ、と満面の笑みで落とされた爆弾。理解するのに暫し時間を有する。


「・・・・・はいぃっ?!」


 ちょっと待て。本気で待て。よく考えろ。

 今、この叔父上は何と言った?


「ギルジェモが、わたくしの護衛、とおっしゃいました?」


 いや、聞き間違いだろう。きっとそうに違いない。


「そう、三男君がウェランの護衛」


 ・・・。本当らしい。


「ギルジェモ本人からのお願い、と?」


 激しくなる動悸に、痛み出す頭。ここらで何とかしてほしい。


「あぁ。父親である騎士団長を通してはいたけど、本人の上奏付きだったねぇ」


 上奏。天皇や国王に事実や意見を申し上げる事。

 ってことは、ウェランが報告する前に、ギルジェモから報告されていた、と。そして、それをこの叔父も一緒に聞いていた、と。・・・・このタヌキオヤジめっ


「わたくしに、護衛など不要なのですが」


 無詠唱で精霊術が使えるのだ。術の発動までのタイムラグは皆無。一個師団相手でも圧勝できる。


「それは承知しているよ」


 でも、いつまでも護衛無しではいけないだろう? とニヤニヤ言われる。

 絶対、何か裏がある。それか、この叔父上が面白がるネタがある。


「第一、ギルジェモにも授業があります」


 ギルジェモが寮暮らしか実家暮らしかは知らないが、ウェランが授業中の時は同じように授業中なのは間違いないのだ。そんな者に護衛など務まらない。が、逃げ道だったのにっ


「あぁ、ウェランもずっと見張られているのはイヤだろうから、寮から学校までの往復と、その他外出時だけだよ」


 どうせ同じ所へ行くのだから、そんなに考えなくていいよ、と軽く宣う叔父上にメラッと殺意。


「・・・。でしたらなおのこと、護衛など不要でしょう」


 別に、護衛が付くのは仕方がない、と諦めることは簡単だ。しかし、その護衛がギルジェモであることや、この叔父上の笑みが気にかかる。バシバシ押し寄せるイヤな予感も。


「いやねぇ、せっかくの三男君の好意を無駄にするのもねぇ」


 ほら、陛下はウェランに護衛を付けたがっていたし、とのらりくらりと交わされる会話に、ブチッと切れたのは私だった。えぇ、短気だという自覚はありますよ、もちろん。


「・・・叔父上。何をお考えですか?」


 ストレートに真正面から。知りたいことを聞いてみる。


「やだなぁ、ウェラン。何も考えてないよ?」


 ニヤリと口角を上げながら言われても説得力皆無ですが。


「では、何がそんなに楽しいのですか?」


 楽しいことを思いついた、でもいいですが。と聞けば。


「やっぱりウェランが一番お利口だねぇ」


 よしよし、と頭を撫でられた。いや、だから内容を教えてくれ。


「お・じ・う・え」


 にっこりと笑いながら、食事用のワインを精霊術で持ち上げる。ボトル一本分のワインがふよふよと空中に浮いているのだ。頭の上で術を解除すればワインを被ることになる。


「ウェラン、その笑顔が怖いよ?」


 いくら神官長とはいえ、ウェランの術には干渉できない。叔父上に与えられた選択肢は、素直に白状するか、ワインを被るか、だ。ザマーミロ。


「何が、そんなに楽しいのですか?」


 ふよんふよんと形を変えながら、一滴だけ垂らしてみる。力の無駄遣い? そんなのは気にしません。


「言うから、そのワイン戻そうか」


 ひきつった笑みでそう乞われ、仕方がないのでワインを戻す。さて、白状しろ、と視線を向ければ、またもやニヤニヤ笑いの叔父上。


「いやぁ、セチュエットがあんなに求めた相手が、自分からウェランに付く、なんて言うからさ。思わず、セチュエットに報告したんだよ」


 見物だったなぁ、あの顔。と本当に楽しそうに言う叔父上。性格悪いなぁ・・・ではなくっ


「あ・・・」


「あ?」


「あほかーーーー!!!」


 ばっしゃーんっ と盛大に水をぶっかけてみた。ワインじゃないだけ有り難いと思え!!


「なんてことするんですかっ ただでさえ鬱陶しいセチュエットお姉様がよりいっそう鬱陶しくなるじゃないですかっ」


 見て解るほどギルジェモを気に入っていたセチュエット。あれは恋する乙女だったと言ってもいい。

 そんなセチュエットからギルジェモを奪うような真似をするだけでも鬱陶しい展開になるだろうに、ギルジェモ本人が望んだ事を聞かせるとは・・・。


「酷いなぁ、ウェラン。水浸しじゃないか」


 ウェランの怒りも何のその。侍女が持ってきたタオルで拭きながら文句を言う叔父上。ある意味マイペースな人だと思う。


「酷いじゃありません。酷いのは叔父上です。セチュエットお姉様が今まで以上に鬱陶しくなったらどうするんですかっ」


 鬱陶しいんだ、邪魔なんだ、と詰め寄るウェランを相変わらずな笑みで見据えて。


「いいじゃないか。これからは三男君が守ってくれるよ」


 ニヘラと笑いながらノタマッタ。


「火に油注いでどうするんだーーー!!」


 もうやだ、この人。



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