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死神様の雑用係り!(改訂版)  作者: 海野 真珠
雑用係になりました
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こんな始まり


 山奥の屋敷に一人、修行のために暮らしている。

 朝夕の滝行は精神統一と肉体強化にはもってこいだが、夏でも凍えそうなのはどうにかして欲しい。


 そんな生活を送る私、神守鈴。27歳。女。

 エエ年した女が山奥で一人暮らし・・・ 哀れんでくださらなくて結構ですが。

 

 代々巫女の家系のウチは、15歳になると神様が守護についてくださる。

 母は水神様にお仕えしていたし、祖母は雷神様にお仕えしていた。

 だから、私もそう・・思っていたのに・・・・




 15歳になった瞬間、私の目の前に現れたのは“死神様”だった。




「神守の巫女か・・・ ふむ。 ちょうど良い。 巫女、これからオマエは私の雑用係りだ。光栄に思い私に尽せ」


 年の頃は10歳位の愛らしい容貌の少女は、その手に大きな“鎌”を持ち、真っ黒の衣装で滝行真っ最中の私を見下しそう言った。


「し・・・ 死神様?!」


「そう。私は死神。当代巫女よ、オマエはこれからこの私、死神の雑用係だ。丈夫そうなその身体、私のために使うがいい」



―――そりゃ、風邪一つ引いたことのない丈夫な身体ですけど!!



 愛らしい少女の顔からは想像できない上から目線の辛辣な言葉に、頷く以外の選択肢は存在していなかった。

 神守の巫女は、神様の下されたお言葉には逆らえない。

 


―――それがどんな理不尽な言葉でも!!





「では巫女。私と契約を。

 私はヤエ。死神ヤエ。オマエはこの私、死神の雑用係としてこれから後私に仕えるのだ」


 屋敷の本堂に場所を移し、さっさと契約を進めるヤエ様に慌てて私も続く。


「私は鈴。神守の巫女。当代巫女の鈴は、死神ヤエ様にお仕えすることをここにご契約申し上げます」


 出されたヤエ様の左手に自分の右手を重ねて、死神様と契約を結んだ。

 右手の甲に現れた痣のような紋様は、契約成立の証。


 これで私は生涯、死神様にお仕えすることになる。



―――何度も言うが、神守の巫女に選択の自由はない。




「うむ。では雑用。さっそく仕事だ」


 満足そうに紋様を眺めていた死神様の言葉に私は青くなった。


「し、死神様!! 私、人は殺せません!!!!」


「当たり前だ。人間のオマエが人間を殺しても、それは私の仕事が増えるだけで手伝いにはならん。むしろそんな楽しいことは自分でやる。

 雑用の仕事は、私が“うっかり”“間違えて”殺した人間の残りの人生まっとうするだけでよい。どうだ、簡単だろう?」


 半泣きで訴えた私に、死神様はあっさり軽くのたまった。


 簡単って・・・ うっかりって・・・ 間違えてって・・・



「そ、そんなことできるかぁっっ!!」


 大絶叫した私は、間違っていないと今でも思う。


 が、死神様は強かった。



 大絶叫した私を綺麗に無視して、死神様は手にしていた鎌を振り下ろした。


 ぐにゃりと出来た空間に、まさに“ポイ”っと捨ててくださった。



「本体の記憶はそのまま自由に閲覧可能だ。オマエの身体は仮死状態でこっちの世界に残るから心配するな。私に用ができたら“呼べ”。 ま、頑張ってな。私の雑用巫女」


 ぐるぐる回る背景に、直接響く死神様の声。

 軽い吐き気を我慢しつつ、死神様に一言。


「せめて肉体は布団の中に入れてくださいー!!!」


 爆笑と共に聞こえた了承に安堵しつつ溜息をついたら、ドシンと衝撃。

 落下の感覚にビックリして目を開けたら、紫の髪と紫の瞳の人々に覗き込まれていた。



「魔道師様!!」



 頭のてっぺんから出ているようなキンキン声にビックリして、気絶したフリで死神様を“お呼び”してみた。


「死神様!! ヤエ様!!!!」


 必死で呼んでいるのに、返された声はひどく億劫そうで。


「なんだ、うるさいぞ雑用」


 肉体は布団に入れておいてやったと言われても、今はそれどころじゃない。


「魔道師様って何ですか?! 紫の髪と瞳って何ですか?! あの爬虫類みたいなのは何ですかー!!」


 目の前で覗き込まれていたのは、紫の蛍光色の髪と、紫のパステルカラーの瞳の、トカゲのような竜のような人間ではない爬虫類よりの生物だった。


「頭ン中は閲覧可能だって言っただろ。勝手に自分で調べろ。 あぁ、一応注意してやる。自殺とそれに準ずる行為は禁止だ。常に生きること考えてソイツの人生キッチリ終わらせろ」


 それが雑用の仕事だ、と言われれば反論できない。



―――が。



「せめて地球生物にしてくださいー!!」


 そう。 絶対に、ここは地球じゃない!!


「言ってなかったか? 同じ次元に魂があると、モトの身体が消滅するぞ?」


 それでもいいなら考慮してやる、と言われて、色々私はアキラメタ。


「・・・・。ココでいいです。 あの、この人の寿命、あとどのくらいあるんですか?」


 自殺がダメとなると、私はこの人の天寿をまっとうしないと自分の身体に戻れないことになる。

 だから聞いたのだが、死神様は冷たかった。


「ンなコト雑用に教えられるか。いいからオマエはさっさとソイツの人生まっとうしてこい。じゃあな」


 一方的に切り上げられ、私はいわゆる『異世界』に放置された―――




 こうして、私の“死神様の雑用係”としての人生が幕開けたのでした。


 もう10年以上も死神ヤエ様にお仕えしてるけど、いまだに性格は変わらず。

 日々、こき使われております。




 ちなみに。

 この初仕事、かるーーく1000年越えましたよ?

 もう、思い出したくもないけどね!!!




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