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八天の聖剣  作者: 蒼風
最終章取り戻すために
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最終章一話その力共に

 剣二は走っている。町の中を。

 今彼が見ているのは人々が逃げる景色だ。

 まだ見えぬ人波の向こう。そこで警官たちと喜久雄の人形、剣二の妹の彩花が戦っている。

 その激しい戦いに人々が怯え、巻き込まれるのを避けるために出来る限り離れようとしているのだ

 その姿を見て他の人たちも怯え始め、最初の人たちと同じよう逃げ出す。

 そしてその姿を見た人たちも……というように怯えと逃走の連鎖がこの人々の波を作り上げているのだ。

 そんな彼らの間を剣二が逆走する。

 彼の手に自身のアーティファクトはない。

 だが彼の右手の中指。そこには妹が使っていた指輪が嵌められていた。



 一方、喜久雄たちの方の戦闘は意外にもまだ続いていた。

「ふむ。予想外に粘るな」

 彼の言うとおり、警官たちは多数の負傷者、怪我人をだし、戦闘不能になった者もかなりいるが、それでもまだ残っていた。

「まあ、実際には警官ではないしな……」

 笑みを浮かべて彼はそう呟く。

 彼の言うとおり、彼らは警官の制服を着ているが実際は違う。総一の所属している機関の者たちだ。

 警官の姿をしているのは人々の目を誤魔化すためのものだ。

「だが、だからこそ。この作品の相手として相応しい」

 嬉しそうに顔をニンマリさせて彼らを見る。

 警官姿の彼らはそんな喜久雄を無視して少女を睨んでいる。

 これまでの戦闘で彼女の恐ろしさを実感したからだ。

 喜久雄を止めるためには彼女をどうにかする必要がある。

 故に彼らは相手の一挙一動を見逃さないように見据える。

 彩花はそんな彼らをただ無表情に眺めていた。

 と、そこに警官の一人が飛び込む。彼は己のアーティファクトの力を使い、己の身を彼女のもとへ飛ばす。

 彼女は鉄の壁を作り彼の接近を阻もうとする。

 しかし、その壁が突然壊れた。

 別の警官が巨大な鉄槌のアーティファクトを壁にぶつけた途端、壁が崩れ去ったのだ。

 さらに、別の警官が風を放って鉄の瓦礫を吹き飛ばす。

 障害物のなくなった警官は速度のままに彩花に迫る。

 だが、警官が持っていた短剣を振ろうとした瞬間、彩花の姿が消えた。

 これには彼だけでなく彼を援護した警官たちも驚く。

 そんな中で喜久雄は余裕の表情を浮かべていた。

「何を驚いている? そもそも彼女の本来の戦い方はアーティファクトの創造による多様な戦術だ。当然こんな戦い方も出来る」

 その直後、彼女に接近していた警官が倒れる。

 その瞬間、風の放っていた警官が風を放つ。

「ほぉ、光を曲げることで姿を消す効果を見切ったのか」

 少し驚いた表情を浮かべる喜久雄。

 警官は僅かに聞こえた接近の足音から、彼女が使ったアーティファクトの力を特定したのだ。

 後は足音が聞こえた場所に攻撃を放てばいい。

 近くには仲間がいるが彼らも覚悟を持って任務に挑んでいる。だから、彼は迷わず放った。

 透明化を解除した彼女は相手と同じ効果を持つアーティファクトを創造。形は短剣だった。

 同じ風の力を使って攻撃を相殺する。

 そこに彼女の背後から鉄槌の警官が襲い掛かる。彼のアーティファクトの効果は鉄槌が触れた物体を砕くため人などに向けてもその力は働かない。

 しかし、人相手ならそんな効果使うまでもなく、鉄槌の重さだけで十分なダメージが期待できる。

 故に振り下ろす。

 彩花はその攻撃を持っていた短剣で受けようとするが、相手が悪い。

 巨大な鉄槌の重みを受けきれるわけもなく、その威力に彼女は押しつぶされる。だが、これで終わりではない。

「やれ!!」

 その掛け声と共に先程の警官が彼諸共風を放ってくる。

 その風に巻き込まれた彼は吹き飛ばされ、やがて地面へと落下する。

 傷ついた体を無理に動かし彼は起き上がり、先程の成果を確認する。

 丁度その時、彩花がゆっくりと立ち上がる。その右腕はプランと垂れ下がっている。

 先程の攻撃で骨が折れたのだろう。筋肉も痛めたはずだ。

 だが、次の瞬間それがたちどころに治ってしまう。

 恐らく、己の体の部品を創造したのだろう。

「全く、なんてデタラメなアーティファクトだ」

 呟くように漏らす。

 そこに他の仲間たちが彼女に襲いかかっていく。

 彼女は避け、防いでは彼らに反撃を放つ。

 その現場に彼は向かう。

 もはや全身がズタボロだ。しかしまだ任務を完遂しておらず、自分は動ける。

 ならば行くだけだ。

 周囲の者達にあわせ一斉に接近する。

 彼らを迎撃しようと彼女は周囲の熱を上げ、炎を生み出す。

 一瞬、足を止める彼ら、それに合わせて仲間の一人が風を放ち、炎を吹き飛ばす。

 それに対して今度は周囲に鉄の壁をいくつも作り出す彼女。

 それを巨大な鉄槌が砕いていく。

 また、意思操作御型のアーティファクトがいくつも彼女へと迫る。

 彼女は同じ意志操作型のアーティファクトでそれを迎え撃ちつつ、指輪型のアーティファクトを生み出す。

 今度のは力場の足場を空中に作る効果のようだ。そうして彼女は上へと登るか。

 逃がさないと彼らは視線で彼女を追う。そこでようやく彼らは空中に何かが浮かんでいることに気がついた。

 一言で表すならそれは輪っかだった。黒い腕輪ぐらいの大きさの輪が合計8つ。広がりように円をつくるようにに配置されていた。 そして彼女がその輪よりも高い位置に登った瞬間。

 警官たちは何かの力に押しつぶされた。

 その様子を喜久雄は離れた場所で眺めていた。

 彼女が使ったのは輪が囲んだ円内の重力を増大させる効果を持ったアーティファクトだった。

 そのため警官たちだけでなく空間内の建物や瓦礫が全部が自身の重みに軋みをあげる。

 そうしている間にも重力は増大しているのか軋みの音が徐々に大きくなり、一部の建物は己の重みに耐え切れなくなり崩れ落ちていく。

 警官たちとて、このままでは重力の重みで自身の体が潰され死んでしまうだろう。

 動けない苦しむを声をあげるしかない。

 と、その時甲高い音がいくつも響く。

 黒い輪が意思操作型の剣によって断たれたのだ。

 たちまち効果は消え、重力は元通りに戻る。

 剣はそのまま主のもとへ戻って行く。

 喜久雄はその剣を追い、そしてその姿を見て驚いた。

「久しぶりと言うべきか」

 空を飛ぶ剣の上……そこには少年の姿があった。

 彼は喜久雄を見下ろすかのように彼に視線を向けていた。

「千堂剣二……」

 忌々しげな感情を込めて彼は少年の名前を告げる。

 それを聞きそれから剣二は少女の方へとその視線を動かす。

 死んだと思っていた家族……それが目の前にいた。

 あのとき、彼女は自分を助けてくれた。

「だから彩花。今度は俺がお前を助ける番だ」

 その言葉に呼応するかのように剣群がその剣先を彼女へと向ける。

いよいよ最終章です。

こんな小説ですが最後までよろしくお願いいたします。

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