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八天の聖剣  作者: 蒼風
短章墓参り
12/22

短編墓参り

申し訳ございません。

小説の書き方関連のサイトを見て…や―について知りました。

ここかは・・・を…に変えたり-を―に変更しょうと思っています。

前の話も徐々に修正していくつもりです。

いきなり変わって驚かれるかもしれませんがご了承くださいませ。

 太陽が空高く大地を暑く照らす。

 コンクリートは焼けるような熱を発し行き交う人達も体中から汗をかいている。

 剣二も例外ではなく汗を体中から流しながら駅へと向かっていた。その両手にはいつも持っているアーティファクトの入ったアタッシュケースの姿はなく、代わりに花束と質素な鞄がそれぞれの腕に収まっている。

 彼は静かに歩く。しかし何か考え事をしているのか彼の意識はここにはない。

「剣二」

 彼が意識を戻したのは聞き慣れた声が聞こえてきたからだった。

「綾香……」

 見るとそこには白のワンピース姿の少女がいた。



 話は先の事件の翌日の戻る……

 場所は剣二が暮らしているマンション。そこに剣二と綾香、冴子がいた。

 先の事件で何故剣二が狙われたのか問い詰めてくる彼女に剣二がこの日、この場所を指定したのだ。

 そうして今、その話を全て終えたところだった。

「……それが本当の剣二なんだ」

 それが全てを聞いた綾香の最初の言葉だった。

「そのすまない……」

 どんな顔をしていいかわからず剣二は目を伏せる。

 その傍では冴子がコーヒーを飲みながら剣二と綾香の二人を交互に見つめている。

「仕方ないよ。事情が事情だもの」

 そんな彼を励ますように綾香が声をかけてくる。

「それじゃあ、この事は他の人には黙っておいてくれるんだね」

 彼女の反応を見て冴子がそう尋ねてくる。

「はい」

 迷わず彼女は冴子にそう返事をした。

「そう。それじゃあこれでとりあえず一安心だね。なんか食べ物をとってくる」

 そう言うと冴子は立ち上がりキッチンの方へと向かっていった。

 そんな彼女の様子に剣二と綾香は互いに相手のを顔を見合うとほぼ同じように失笑するのだった。


「……なるほど。泉堂さんところのお嬢さんにね」

 綾香が帰った後、まるでタイミングを見計らったかのように総一がやってきた。

 綾香に全てを話した事を報告すると彼は一瞬顔をしかめたが彼の立場から考えればそれは仕方ないだろう。

 こちらとしても何か言われるのも嫌なのですぐさま話題を変えることにする。

「それで今日はどんな用件できたんですか?」

 晩ご飯の準備をしながら剣二は訪ねてきた理由を尋ねる。

 それを聞いて総一は思い出したようにその用件を告げてきた。

「そうそう。一年前の現場から君の妹のアーティファクトが見つかったって聞いてね。それを渡しに来たんだ」

 その瞬間、剣二の動きが止まった。総一の側からでは顔を見えないが恐らく驚いた顔をしているだろう。

 やがて、剣二は晩ご飯の準備を再開するがどこかその動きがぎこちないのは気のせいではないだろう。

「あいつのアーティファクト……見つかったんですか」

 平静な声でそう答えるが内心そうでないのは誰の目にも明らかだった。

「ああ、これだ」

 そう言って彼はポケットからビニール袋に入ったそれを取り出すとテーブルの上に置いた。

 晩ご飯の合間にチラッと見ると確かに見覚えのある指輪がビニール袋に入っていた。

「……確かに妹のです」

「そうか」

 それっきり二人は黙りこんでしまった。

「そういえば今月はどうするの?」

 その沈黙を壊ったのはそれまで黙って話を聞いていた冴子だった。

「できれば行きたいとは思っているんですけど……」

 二人が言っているのは妹の墓参りの話だ。

 事件のあった日、つまり妹の命日には時折剣二は墓参りに行っている。

 先月は編入で慌ただしかった事もあって行く暇がなかった。そのため今月は行こうと思っていた。ちなみにその日は再来週の日曜日。

 しかし、襲撃の件もあってどうしようかと迷っているところだった。

「折角だから行ってきなよ。綾香ちゃんと一緒に」

「綾香とですか?」

 意外な名前が登場したことに剣二は驚く。

「本当の事、全部話したんだしこの際お墓も見せてきなよ。総一さんだって問題ないよね?」

「できればあまり出歩かないで欲しいのが本音なんだけどね」

 冴子にそう言われ総一はあきらめ顔でそう答えた。


 そうして綾香を誘ってみたところ彼女は喜んで彼の誘いを了承してくれた。

 そうして墓参りの当日、駅で待ち合わせをしたのだった。



「それにしても剣二。随分と驚いてたね」

 列車に揺られながら綾香が隣に座る剣二にそう話しかけてきた。

「……」

 剣二は口を噤んで黙り込んでいる。余りに服装が似あっていて見惚れてしまっていたのだ。

 そう言うのが恥ずかしくて聞こえないふりをしている。

 その反応を見て綾香は楽しそうに笑う。

 そうして黙りこんだ剣二は暇なこともあってその視線を窓の外に向けることにした。

 今は太陽がもっとも強くなる時間帯だ。

 自分達は電車の中にいるためそれほど暑さは感じないが外の人達は大変だろう。

 そんな事を考えていると不意に視界に体操服でマラソンをしている集団を発見した。

 恐らく学校の部活だろう。皆、一生懸命に走り続けている。

 それを見てふと、剣二は前の学園での生活を思い出した。

――確か自分も彩花もあんな風に走っていたな。

 前の学園に入った年の事だ。

 風紀委員に入った彼女は周りの期待に答えるためにと常に己を磨き続けていた。

 戦い方の研究や基礎体力の訓練にアーティファクトの訓練。

 その中に基礎体力を上げるためにとマラソンをしていた頃もあった。

 剣二もまたそれに付き合っていた。

 というより全ての訓練に剣二は付き合っていた。

 彩花は別に付き合わなくてもいいのに、と言っていたが剣二としてはどうしてもやらなければならない理由があったのだ。

 彩花と一緒にいれるだけの強さを手に入れる。

 それが剣二が当時密かに抱いていた目標だった。

「今、考えると恥ずかしい目標だな」

 ポツリと剣二は呟く。

「え? 何……」

 呟いた彼の言葉に綾香が反応する。

「いや、ちょっと昔のことを思い出してた」

「昔って妹さんと一緒に通っていた前の学園の時の話?」

 その問いに剣二は頷く。

「そういえば剣二の妹さんってどんなアーティファクトを使っていたの? 剣二と同じ意思操作型?」

 前の学園と聞いて興味を持ったのだろう。興味津々といった表情で綾香が尋ねてくる。

「あいつのアーティファクトは効果補助型だな。効果は一時的な無機物創造。かなり相性良かったお陰か普通の剣や槍だけじゃなく銃やアーティファクトまで作る事ができてたな」

 その言葉に綾香は目を見張る。

「やっぱり、驚くか」

「だって、それすごいことだよね?」

「まあな。他の人が使ったところでアーティファクトを創造することなんてできなかったみたいだしな。どういう訳か俺の場合は自分が使ってたアーティファクトだけは創造できたけど」

 やはり兄妹だったからか?、と当時と同じ感想を思い浮かべる。

「あいつの戦い方は相手に合わせて適切なアーティファクトを創造、それを使って戦うタイプだったな。あいつ他のアーティファクトともそれなりに相性が良かったみたいだから」

 思い出すように語る剣二に対して綾香は感心したようなため息を漏らす。

「ねぇ、他には何かないの?」

「そうだな……」

 そうして二人は目的地に着くまで昔話を堪能するのだった。



「お待ちしておりました」

 その場所へ入ると総一はそこで待っていた男にそう挨拶された。

 場所は安置室みたいなところで台の上には白いシーツを被った何かがそこにはあった。

「それで?」

「まずはこれをご覧ください」

 そう言ってその男はシーツをめくる。そこにあったのはこの間、剣二を襲った襲撃者の遺体だった。

 彼女の遺体はその後,総一達のところの機関が引き取った。遺体から何か手掛かりが得られないか?、と考えたからだ。

 そう考えたった理由の一つが彼女の持ち物にアーティファクトがなかったためだ。そうしてその様子は当たったようだ。

 少女の遺体には何度か縫い直された後があった。手術の後があったため今ここにいる男がそこを切り開いて確認し、その後縫い直したためだ。そして遺体の横には何か小さな物が置かれていた。それは青の球体で球体のあちこちから配線のような物が伸びている。総一はそれに触ってみると回してみたり顔を近づけてみたりしてよく見ようとする。

「予想通り、今触っておられますそのアーティファクトの装置が彼女の中に埋め込められていました」

 男の報告を聞いた途端、総一は顔をしかめてすぐさまその球体から顔を離す。

「酷い事をするね」

「そうですね」

 そう言いつつ総一は遺体の方へと視線を向け、相槌を打った男もそれに同じようにそちらを見る。

 しかし、これで相手の方の検討はついた。しかし……

「何で剣二君を殺そうとするんだ?」

 その動機がわからず総一は首をひねるばかりだった。



「所詮、試験開発か……」

 何処ともしれない場所で男は呟く。

 そこへ新たな人物が姿を表す。

「マスターいかがしますか?」

 それは少女だった。

 もっとも男にとって少女は人形という位置づけでしかない……

 男の位置づけ通りその人形も以前の人形と同じく生気のない気配をまとっていた。

「無論、継続だ。バグの要因は消しておくに限る」

「イエス、マスター」

 そう言って人形は姿を消す。

「それにしても生きているとはな……」

 人形がいなくなった後男はそう独り言をこぼした。

 正直、生きてるとは思っていなかった。偶然、政府のデータベースにハッキングして知った時は驚いたものだ。

 まず間違いなく1年前のあの日に死んだと思っていた。あの怪我で助かるはずがないのだから……

 そこで男は考える。

――あるいはあれが無意識に……

 そうして男は背後へと振り返る。

 そこにはガラス状のケースがあった。

 中には培養液が満たされており、その中には先ほどとは別の新たな人形の姿があった。

 それは少女だった。少女が体を丸め培養液の中を漂っている。

 よく見るとその少女はどこか千堂剣二に似ていた……



 千堂剣二は墓の前に立っていた。

 目の前の墓標には”千堂彩花”という文字が刻まれている。

「あれから、1年か……病院に居たときは長いと感じてたのにこっちに来てからは時間を短く感じてしまうな」

 そう言いつつ剣二は墓の掃除をしていく。

 敷地内からゴミを拾い、水を含んだスポンジで墓石を拭いていく。

 そうして後で水を掛け香炉に線香を焚てると花束を置き、眼を閉じて両手を合わせる。

 お参りしながら思うのはいつもいた半身がいなくなってしまった悲しみだ。

 いつも当たり前にいたものがいなくなったのだから悲しむのは当然だろう。

 しかし、それと同時に思うのはその半身のいなくなった生活が始まって、その生活を楽しむ自分がいるという驚きだ。

 悲しみがないわけではない、でもやはり心から笑っている自分もいる。

 両者は相容れないものだと思っていたがそれは違うようだ。それを痛感させれた。

「だから、彩花心配しないでくれ……」

 そう一言だけ墓標に告げる。

 そんな様子の彼の姿を綾香はを後ろから眺めていた。

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