蕁麻疹が出た
蕁麻疹が出た
シュークリームを食べて、牛乳を飲んだ。
しばらくすると、首のあたりが赤くなり、少し痒くなってきた。
「あれ? かぶれたかな?」
何かが触れたのかもしれない。そう思って洗面所へ行き、首を水で洗った。
これで治まるだろうと思ったのに、赤みは消えない。それどころか、こころなしか少しずつ広がっているような気がする。
「なんだろう……」
首だけではない。わき腹や背中にも、妙な違和感が出てきた。服の上から手を当てると、むずむずする。
鏡の前で服をめくってみた。
「えっ、なにこれ」
赤みは思っていたよりも広範囲に広がっていた。しかも、さっきより色が濃くなっている。
「これって、もしかして蕁麻疹?」
こういう時はAIに聞いてみる。
いろいろ説明は出てきたけれど、そのうち治まるものらしい。
「まあ、一晩寝れば治るでしょう」
そう考えて、いつものようにベッドに入った。
ところが――治りません。
夜中、猛烈な痒みで目が覚めた。
「痒い……」
掻いてはいけないと思えば思うほど、痒みが気になる。眠ろうとして目を閉じても、意識がすべて痒いところへ集まってしまう。
とうとう諦めて起き出し、濡らしたタオルを患部に当てた。
「冷やせば少しは楽になるはず」
けれど、普通の水で濡らした程度では、あまり効き目がない。
それならばと、洗面器に氷水を作り、その中でタオルを冷やした。
「うん。これは冷たい」
ところが、体に当てると、あっという間にぬるくなってしまう。そのたびにタオルを氷水につけ直さなければならない。
「もう、えーい!」
とうとう冷凍庫から保冷剤を取り出した。
最初はきちんとタオルに包んで使っていた。けれど、それでは物足りない。
「直接当てたら、冷たくて飛び上がるかもしれないけど……」
覚悟を決めて、保冷剤を赤くなったところへ当ててみた。
ところが――。
「あれ? なんともない」
飛び上がるどころか、冷たさが心地よい。むしろ、もっと冷やしてほしいくらいだった。
しかし、カチカチだった保冷剤は、すぐにやわらかくなってしまう。
「もう溶けたの?」
それを冷凍庫へ戻し、次の保冷剤を取り出す。溶けたら交換。また溶けたら交換。
冷凍庫と部屋を往復しながら、妙なところに感心した。
「人間の体って、こんなに暖かいんだ……」
普段は意識しないけれど、わたしの体はせっせと保冷剤を溶かしている。
明け方になって、ようやくベッドへ戻った。少しうとうとしたものの、また痒みで目が覚めた。
「もう、病院へ行こう」
近くの皮膚科を調べてみる。
ところが、時期はお盆。
「お休み……ここもお休み……」
念のため総合病院にも電話をかけてみた。他の診療科は普段どおりなのに、皮膚科だけがお休みだった。
「そうだよね。吹き出物も蕁麻疹も、すぐ命に関わるものではないと思われているのかな……」
もちろん、ひどいアレルギーなら危険なこともある。けれど、今のわたしは息苦しくもないし、喉も腫れていない。ただ、ひたすら痒い。
そこで薬局へ行き、登録販売者さんに症状を説明した。
「昨日から、体のあちこちに赤いものが出て、すごく痒いんです」
相談しながら痒み止めを選び、家に戻ると、赤くなっているところへ塗りたくった。
「ああ……少し楽になった」
完璧に痒みが消えたわけではない。それでも、何もしないよりはずっといい。
蕁麻疹を経験した人ならわかると思うけれど、患部が移動する。
さっきまで首や背中が痒かったのに、今度は足の裏が痒い。
「このまま足の先から抜けていってくれないかしら……」
そんな都合のいいことは起こらないだろうけれど、そう願いたくなる。
それにしても、何が原因だったのだろう。
シュークリームと牛乳を口にしたあとだったけれど、わたしに乳製品アレルギーはない。今まで何度も食べたり飲んだりしてきた。
「もしかして、新しいスマホになったストレス?」
慣れない操作に苦戦し、電話に出るだけでも緊張する日々だ。まったく関係がないとは言い切れないような気もする。
何かに集中している間は、少しだけ痒みを忘れられる。
けれど、痒くて集中できない時もある。
何かをしようとしても、気がつけば手が患部へ伸びている。
「こんな時くらい、好きなことだけやればいいよね」
無理に頑張るのはやめよう。
好きなものを読んで、好きな文章を書いて、眠れそうなら眠る。
そうやって気を紛らわせながら、蕁麻疹が足の先から抜けていってくれるのを待つことにした。
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