206 select river〜“ロツカアンブブル”と罪の女……〜
日本 北海道 札幌
令和八年 夏
朝 晴れ
駅前広場
彼ら――二人とも黒いウルフカットで学校の赤いジャージを着ている――はこれからのことについて話している。
「漫画アンチだから殺されるなんておかしいだろ?」と、アマヤは呆れながら言う「この都会はそんなに退屈なのかな?」と、彼は辺りを見渡す「私は思わないけどな、この人の多さからも」
キヨイは肩をすくめ、「考えたって仕方ないよ、スナイパーのことなんて。まったくおかしいんだから」と、言う「我々若者が考えることはほかにある」と、自分の胸に手を置く「自分達のことだ。その格好でいいのか? 彼女を迎えに行くのに。まぁ、人のことは言えないが」
「変な言い方するなよ、彼女じゃない。――それよりスナイパーをどうにかしたい。おかしい奴だからどんな行動をするか分からないからな」
「そうだな。ならスナイパーを探そう」明日に、とキヨイは付け加えた。
「分かった。今の時間にここで集合しよう」
「ああ。――じゃ私は帰るよ。アマヤ、道外には行くなよ」と、キヨイは真剣な表情で言う「たとえ彼女の頼みでもな」
アマヤは肩をすくめる。「出るわけないだろ。――彼女だって出たくないさ」
「一応聞いただけさ。じゃ行くよ。お嬢様によろしく」
「ああ」
キヨイが去ると、アマヤはそこで待つ。
やがて彼女が来た。
「ミウさん、おはようございます」と、アマヤは一つ上の彼女――赤いロングヘア、白い長袖シャツに茶色のロングスカート――に挨拶する「疲れているでしょう? キミが泊まるホテルを用意してあります」
「ありがとう、アマヤ」と、ミウは苦笑して答える「すまないね、私なんかのために」
「そんな言い方しないでください、私はキミを助けたいんです」
「ありがとう」ミウはまた苦笑して言った。
ホテルは駅前すぐにあった。
ミウの部屋の前でアマヤは、「私はこれで。何かほしいものがあったら連絡してください」
「キミがほしいな」ミウはさりげなく言った「一緒に泊まってくれないかな? 寂しいんだ」
「分かりました。でも私はキミに触れませんよ」
「うん、分かっているよ」
二人は部屋に入る。
「最近北海道にスナイパーがいるそうだね?」と、ミウは不安そうに言う「私は怖いよ。どんな悪事をするか分からないからね」
「それなら尚更なるべく部屋にいてください」
「分かった。――何か話をしよう」
「分かりました」
その夜、「真っ暗にして眠りたい」と、ミウは言った。ずっとそうしたい。キミはそれでも平気? と彼女は付け加えた。アマヤはうなずいた。
翌朝、アマヤは駅前広場に行った。キヨイはすでにいた。
「おはよう」と、アマヤ「さっそく探そうか?」
「ああ。警察署へ行こう」
「警察署?」
「スナイパーの情報を教えてもらうのさ」
警察署は歩いて数分の距離にあった。
二人は署長室に入り、すぐに出た。
「ネットと同じで手がかりはなし、これからどうする?」と、キヨイは言う「手当たり次第探してみるか?」と、苦笑しながら言う。
「そうするか」
「マジか?」
「不安は取り除きたい」
キヨイは肩をすくめる。「よし、行こう」
二人は警察署の前に出る。
「そこの二人」
と、背後から男の声がした。アマヤ達は振り返る。
補導という言葉が、警察官の隣の女――長い金髪で学生服を着た――からアマヤは思い浮かんだ。
アマヤが女を見た瞬間、女は気まずそうな顔をした。と、彼女は顔を背けた。アマヤが首をかしげた時、「キミ達、スナイパーのことが知りたいなら情報屋を訪ねるといい。もしかしたら分かるかもしれない。最新の情報が聞けるからな」と、警察官が声をかけた「住所は――だ。健闘を祈る」と、警察署の中に入っていく。
アマヤは呼び止めようとした時、「キミ達」と、金髪の女がふいに言った「酷なことを言うけど、情報屋を訪ねても無駄に終わるぞ?」
「どうしてそんなことが分かるんだ?」と、キヨイが聞いた。
すると女はにやりと笑って、「答えないわよ」
「えっ? あっ、じゃキミも?」
ふと女はアマヤを見る。「そうよ。私も“ロツカアンブブル”よ」
男二人はあまり驚かない。
女は肩をすくめた。「まぁ、そんなもんか。――キミ、名前は?」女はアマヤに聞く「私はサリーよ」
「アマヤだ。――ハーフ?」
「そうよ」
だから金髪か、とアマヤは思った。
「キミは?」サリーはキヨイに聞く。キヨイは名乗ると、アマヤに、「手がかりはなくなった。どうする?」
「手当たり次第探すさ」
「おい、このクソども」と、サリーは言った「そんな馬鹿なこと考えてないで私に協力しなさい。私は命を懸けて優しいことがしたいんだ」
(へぇ、良い女だな)
と、アマヤは感心した。
(口は悪いけど)
(協力か――)
アマヤは考えて、「それは札幌で完結する話か?」
「まさか。札幌と――そうね、道北に行きたいわ」
「なら駄目だ、協力できない」アマヤはきっぱりと答えた「私にはお世話がある」
「お世話?」と、サリーは不思議そうな顔で言った「ヤングケアラーなの?」
「違う。私には助けたい人がいるんだ」
「ふーん、会ってみたいわね」と、サリーは面白そうに言った「会わせてくれる?」
「ああ、良いよ」
「即答ね」と、サリーは笑って言った「少しは考えたら?」
「キミは良い奴だからさ」
「ふっ、ならこういうのはどう?」と、サリーはある提案をした「どう? 最強メイド。これならいけるでしょ?」
「どうしてそこまでして私と行動したいんだ?」アマヤは不思議だ「キヨイがいるだろう?」
「“目的”――“目的”をゼロにするためよ。キミ達にも各々あるでしょ? 私はゼロにしたいの。協力してよ」
着信音がした。キヨイにだった。彼は電話に出る。一分くらいで通話が終わる。
「悪い、アマヤ、ちょっと用事ができた。スナイパーを手当たり次第探すことはできそうにない」と、キヨイはサリーを見る「私は協力できない」
「そのようね。行けば?」
「ありがとう。――アマヤ、悪い」
「いいよ」
「ありがとう」と、キヨイは立ち去った。
「それで? キミはどうするの?」サリーは聞く「私に協力するの?」
「相談して決めたい。私が助けたい人と」
「良いわよ」
二人はアマヤ達が泊まるホテルの前まで来た。
「私はここで待っているわ」と、サリーは言った。
「どうして? 会いたいんじゃないのか?」
「うるさい、早く済ませろ」
翌朝、混雑する札幌駅ホームの中、アマヤはベンチに座っていた。
「おはよう」ふとアマヤは横から挨拶された。見ると、サリーが立っていた。と、彼女はアマヤの前に行き、「不満そうな顔してるわね。まだ気にしてるの?」と、呆れた様子で続けた「お嬢様なんだから普通なんじゃないの? すんなり」それより今日は名寄に行くわよ、と彼女は付け加えた。
昼近く、二人は名寄――田舎の盆地――に着いた。駅前に出ると、誰もいないなとアマヤは思った。まるでゴーストタウンじゃないか、とも。車の流れも、向こうや南北に横たわる通りになかった。二人は駅前通りを右に曲がり、北へ。数分歩き、小さなカフェに入った。店内に客は一人、テーブル席に若い女――長い髪、緑の長袖のワンピース――が座っていた。こいつが情報屋だな、とアマヤは思った。聞いていた通りだ。
店員が出てくるのと同時にサリーは女に近寄り、「私がサリーよ」と、話しかけた。
「座りなさい」と、女は答えた「そっちの彼もね」
二人は言われた通りにする。
「何か興味深い話ある?」と、サリーは向かいに座る女に聞いた。
「そうね――“フィッシュアラーン”には気をつけたほうがいいわ」と、女――情報屋は答えた。
「“フィッシュアラーン”?」
情報屋はうなずき、「気をつけなさい、“ロツカアンブブル”が“フィッシュアラーン”に話しかけたら――」
「ふざけんなよ!」
情報屋は肩をすくめた。「私に言われても困るわ」
「そうね、ごめん。――ほかには?」
「“フィッシュアラーン”は組織――」
「“フィッシュアラーン”じゃなくて!」
「そう? そうね――札幌でスナイパーがまたやったそうよ」
(何!?)
サリーは顔をしかめた。「ゲーム感覚のクソ野郎め……ほかには?」
「ちょうど今、名寄で菜の花畑が見頃よ」
「菜の花なんて嫌いよ!」
「じゃこれは? 美深の道の駅で期間限定のジェラートが販売されているわ。絶品よ」
「マジでか? 良い情報だわ。――アマヤ、これから行くぞ」
「良いけど」
サリーは道の駅への行き方を情報屋に聞いた。情報屋は教える。聞くと、「行くぞ」サリーはアマヤに呼びかける。
「また何か知りたくなったら連絡して」情報屋は言った。
二人は店を出た。それから名寄駅に戻り、バスを待つ。数分後、二人はバスに乗る。美深の道の駅へは一時間くらいかかる。
途中、左手に菜の花が広がる。
「げっ、菜の花……アマヤ、なんか楽しい話しようぜ。なんか話せよ」
アマヤは考えて、「“フィッシュアラーン”をどうする?」と、深刻な表情で言う「大変なことになったぞ」
「はぁ? そんなもん気にしたってしょうがないでしょ。かまわず生きるのよ」
アマヤは微笑した。「良い女だな」
「でしょ?」
「大切に思えるよ」
「はぁ!?」
「どうした?」
「べ、別に」
お目当てのものを食べ終えると、二人はすぐバスで名寄に戻った。駅のバス停にはさっきの情報屋がいた。
「話しておくことがあるわ」と、情報屋はサリーに言う「“フィッシュアラーン”はキミ達の優遇が不愉快で組織されたのよ」
(キミ達?)
(サリーもそうだったのか)
「ありがとう。――まさか私達にそれを教えるために待ってたの?」
「まさか。今から下川町の温泉に行くの。で、気分がいいから教えてあげたのよ」
「なるほど。――温泉か、私達も行っていい?」
「もちろんよ」
「ありがとう。――でもキミ手ぶらね、入浴セットは?」
「借りるのよ」
「なる」
「アマヤ」
横から彼は呼ばれた。見ると、若い男がいて、「私は“ハツイファマター”の者だ」
「“ハツイファマター”?」
聞いたことがない言葉だ。
「キミ達とサリーを攻撃する者だ」
「攻撃?」
ふと、サリーと情報屋はアマヤの左右に並び、「知っているわ」と、男を見ながら情報屋が口を開いた「“フィッシュアラーン”と同じ理由でできた、でもそれとは違って積極性のある組織よ」
「その通り。我々は機雷ではない」と、男はアマヤを睨む「我々はキミ達を許さない」
馬鹿な連中だ、とアマヤは呆れた。
「手始めに顔面を殴ってやる」と、男は言った。
アマヤはサリーを一瞥――険しい表情の彼女と目が合う――する。
しかし、男は動こうとしない。険しい表情を浮かべている。どうしたんだろう? とアマヤが思った時、「今日のところはこのへんにしておいてやる」と、男は悔しそうに言った「関わるのが嫌なら我々の対象外になることだな」と、男は去った。
「どうして殴らなかったんだろう?」と、サリーはアマヤに言った。
「さぁ?」
「怖いんじゃない?」と、情報屋はサリーに言う。
「怖い?」
情報屋は肩をすくめる。「暴行罪で逮捕されるから」
サリーは苦笑する。「なるほど。――アマヤ、どうしてさっき私を見たの?」
「キミを心配したからだ」
サリーは微笑した。「良い心がけね。――そうだ、今日温泉に泊まらない?」
「良いよ」
夕方、アマヤの部屋にノック。出ると、浴衣姿のサリーがいた。
「入っていい?」
「どうぞ」
アマヤは彼女を和室に入れると、「何か用?」
ふいに彼女は畳の上に仰向けに寝た。
(なんだ?)
と、アマヤは彼女を見下ろす。
と、彼女は真っ赤になって、「アマヤ、私はキミが好き。抱いて……」
「えっ!?」
(いや、驚くな)
(ゼロにしたいんだろう)
「断る」アマヤは冷たく言った「立て」
サリーは赤いまま笑って、「我慢できるの? きて……」
彼は答えず、しゃがんで、手を伸ばした。
翌朝、アマヤは露天風呂に入っていると、「いい湯ですね」と、声をかけられた。若い男だった。
「そうですね」
「研究の疲れが癒やされます。――私はトダと言います。キミはアマヤ君だね?」
「どうして私の名前を?」アマヤは警戒する「私に何か用ですか?」
「用はありません。その必要はなくなっていますから」
「……何か悪いことでも企んでいるんですか?」
「いいえ。むしろ逆だと思うよ。まぁお楽しみに」
昼、アマヤとサリーは名寄駅前にいた。
「良い温泉だったな、アマヤ」
「ああ。――これからどうする?」
「そうだなー――情報屋を使うか」
「戻るのか?」
「アホか、電話するんだよ、ほかの奴に」と、サリーは連絡する。彼女は少し話した。
電話をしまうと、「アマヤ、またスナイパーの犠牲者が出たらしい」と、サリーは言った「アマヤ、札幌が怖いか?」真面目な顔で聞く「どうなんだ?」
答えようとした時、「そこの男!」と、アマヤは背後で怒声を聞いた。
アマヤは振り返る。若い男がいて、「私の女に手を出したな! 殺してやる!!」
ふとサリーはアマヤの隣に来て、「はぁ? 私の女?」
(なるほど)
「キミはストーカーか?」アマヤは男に聞いた。
「そうだよ」
(やはりそういうことか)
「くだらないな」と、アマヤは言った。と、彼はストーカーを指差し、「ちょうどいい、今も人がいない」
その瞬間、ストーカーは消えた。
「何をしたの?」サリーは驚きながら聞く。
「誰にも言わないでくれ」アマヤは頼む「バレたらまずいんだ、この力」
「――私のために力を? それとも自分のため?」
「さぁね」
「とぼけんな!」
「怒るなよ。――一つなんでも言うこと聞くから許してくれ」
「な、なんでも?」サリーは戸惑いながら言う。
「どうした?」
「なんでもねーよ。――なんでもか、少し考えさせてくれ」
「分かった。――札幌に戻らないか?」
「はぁ?」
「嫌か? いや、怖いか? 私は怖くない。私のそばにいれば大丈夫だよ」
「――決めた。アマヤ、キミは札幌へ一生戻るな」
「はぁ!?」
サリーはふっと笑い、「そんなに嫌か? すでに道外へ行けないんだからいいだろうが」
「私には助けたい人がいるんだ! そうか、それを考慮した嫌がらせだな。この人でなし! キミにはがっかりしたよ」
「ああ? 殺すぞ!! 私だって――」
「殺すのは駄目だ」
サリーの話は、横からの声に遮られた。
(誰だ? この男は)
と、アマヤが怪しんだ時、サリーにリボルバーが向けられる。
「動くなよ、アマヤ」と、若い男は言った「アマヤ、私はキミに用がある」と、サリーの後ろへ行く。
「私になんの用だ?」アマヤは聞く。
「キミを道外に連れ出す」
「何? どうしてだ?」
「キミ達によってこの世界を封印するためだ。我々はこの世界に疲れたんだ。だから封印する」
「疲れたなら消してやる。だから彼女を解放しろ。彼女は関係ない」
「いや関係ある。彼女は人質だ。消されないためにな。私は消えたくはない。――私を消すことができるか? この女を無視して」
「くっ……」
「キミの選択肢は二つ。大人しく我々に協力するか。それかこの女ごと私を消すかだ。選べ。あと三秒のうちに決めないと私はこの女を撃つ。三」
(サリーを消す……?)
アマヤはふと怖くなる――
ふと、ミウが思い浮かぶ。
(でも――)
「二、一」
「分かった! 答える」
その瞬間、男はぱっと消えた。
「何?」と、アマヤは思わず言った。
と、彼の携帯が鳴った。彼は電話に出る。
「もしもし」
「キヨイだ。朗報だぞ、脅威が減った」
「何? どういうことだ?」
「昨日キミと別れたあとに私はあるプロジェクトに参加したんだ。そのプロジェクトによって、私達のことを憎んで積極的に関わろうとする悪い奴らを無力化することができるんだ」
(だから消えたのか)
「すごいじゃないか!」
「そうだろ。私に感謝しろよ? 連絡がついたプロジェクトのキーパーソンは私だけだったからな」
「ありがとう!!」
「ああ。――今どこにいる?」
「名寄だ」
「名寄? ああ、サリーに協力してるのか。邪魔しちゃ悪いから切るぞ、じゃな」
「ああ」
通話が終わると、「サリー、話したいことがある」と、アマヤは電話の内容を話した。
その途端、サリーははっとした。
アマヤは、「どうした?」
「なんでもない。――なぁ、中川町へ行かないか? ちょっと行きたい所がある」
「良いよ」
それから、二人はあまり待たず特急列車に乗る。北へ発車すると、「なぁ、さっきの答えを聞かせてよ」と、サリーは向かいに座るアマヤに言った。
「答え?」
「大人しくあいつに従うか、私ごとあいつを消すかだよ」
アマヤは険しい顔になる。「……サリー、抱きしめていいか?」
「はぁ!?」
「悪い、きもかった。忘れてくれ」
「べ、別にしても良いよ?」
「本当か? ならデッキへ行こう」
「う、うん」
そして彼は抱きしめた。
「私は怖かった」と、抱きしめたままアマヤは言う。
「何が?」と、彼の胸に顔をうずめてサリーは聞いた。
「キミを失ったら私の大事な何かも失われてしまうと思ったからだ。そうなったら私は生きていけないだろう。――ああ、やっぱりそうだ。キミを抱きしめて実感したよ。ありがとう」と、アマヤはサリーの肩に手を置く。
「まだ駄目。抱きしめて」
「ああ……」と、アマヤはまた彼女の背中に腕を回す。
しばらく二人はそうしていた。
その日、二人は中川町のホテルに泊まった。
翌朝、二人は中川町の隣にある音威子府村のレストランで食事した。
「札幌へ行くぞ」食後、サリーは提案した。
「いいのか? 私が札幌へ行って」
「いいんだよ」と、サリーは晴れやかな表情で答えた。
昼頃、二人を乗せた特急列車は札幌駅に着いた。多くの人がいるホームに降りると、「アマヤ、ちょっと電話する」と、サリーは言った「端っこへ行こう、少しはうるささがマシになるからな」
「ああ」
移動して、彼女は電話する。
「――やっぱりか。ありがとう」と、微笑しながら言って彼女は電話を切る。
(警察官が一人行方不明――なんでそんなこと聞いたんだろう?)
と、不思議に思った時、「アマヤ」と、彼は横から話しかけられた。見ると、若い男がいて、「キミを殺す」と、真剣な表情で言った。
アマヤは眉をひそめ、「どうして?」
「キミには守ろうとしている女がいる。私は彼女が幸せになることが許せない。彼女は“罪の女”だからだ」もっとも彼女だけじゃない。私は罪人を等しく憎んでいる、と男は付け加えた。
(なぜ消えない?)
と、アマヤは顔をしかめ、「彼女に手出しはさせない。彼女は私が助ける」と、右手を男に向ける「命を懸けて」
瞬間、男は消えた。
「アマヤ」サリーが呼んだ。
「なんだ?」
「私もキミを殺したい」サリーは真剣な顔で言った。
アマヤはびっくりした。「どうして?」
ふと彼女は微笑した。「さようなら」
と、彼女はぱっと消えた。
(消えた!? どうして!?)
(憎んだからか?)
(どうして……?)
「アマヤ」と、戸惑う彼は背後から呼ばれた。キヨイだった。
アマヤはほっとして、「キヨイ、キミのプロジェクトによって消えた人間を復活する方法を教えてくれ」
「方法? ないよ」
「えっ!?」
「ない」
(そんな……)
「どうしたんだ? 何かあったのか?」キヨイは聞くが、アマヤは答えない。
「そうだ、アマヤ、スナイパーどうする?」
「……いい」
「いい?」
「ああ。放っておけばいい……」
「キミがいいならいいが。――ミウさんのところへ行けば? 助けるんだろ?」と、キヨイは明るく提案した。
「……うん。助けるよ……」
〈了〉




