EP7 野望人 to meet 野望人
黒光りするパワードスーツを着た巨漢は、なんらためらいなくカスミに拳を振り落とした。
結果、
「……ッ!!」
カスミの張った、カスミ以外には見えない青白い膜が、敵の腕をめちゃくちゃな方向へと折った。腕がデコボコになり、それはパワードスーツ越しにも見える始末であった。
「なるほど……」
ローニンが嬉々とした声で、拍手した。周りにいる兵士たちは、ローニンに向かって怒鳴る。
「貴様ッ!! 我々と契約したのではないのか!?」
怒号を前に、ローニンは電子マスクの目元をバツマークにして、
「悪いが、このガキのほうに旨味を感じた。契約破棄だ」
ボイスチェンジャー越しにも無慈悲な口調で、そう言い放つ。
「だから、通らせてもらうぞ。引火で死にたくないだろう? ほら、行くぞ。クソガキ」
「うん」
カチャカチャカチャ! とアサルトライフル等の銃火器を向けてくるが、発砲した時点で引火する。カスミは反射で、ローニンも彼固有の能力でいくらでも逃れられるが、一般兵士にその実力はない。そのため、銃で威嚇することしかできない。
すると、ローニンが銃を構えた兵士のひとりに近づき、ライフルを腕力だけで捻じ曲げた。
「ッ!?」
「言っておくが、オマエらにァ闘う覚悟が足りていない」ローニンは背中から、刃のない日本刀のようなものを取り出す。「覚悟のないヤツは喰い物だ。スラムの連中へのプレゼントにしてやるよ」
その柄だけで構成されている刀は、急に赤い光を帯びた。刃の部分が赤く光ると、ローニンはそれを溢れ出るオイルに突き刺す。
そして、
わずか1秒足らずで、大爆発が起きた。銃火器がぶぉんとこちらに飛んできて、反射膜でそれを防ぎ、今度は腕が、次は足、更には頭、兵士たちは死に絶えるのだった。
「さて、セーフハウスに向かうか」
ローニンは、なおも傷跡ひとつないカスミを一瞥した。
「リフレクト、本物のようだな」
「本物じゃなければ、私は生き残れないよ」
「生き残ることが目標か?」
「いいや──」
カスミは、スラム街の外で蠢く天使型兵器──ANGEL-3を指差す。
「パクス・マギアを手に入れることさ」
こんな世界で10年間も生きるくらいなら、最短でパクス・マギアを見つけたほうが良い。
「ほう、随分高望みするんだな。まず図面探しか」
原作でもついに明かされなかった、最大の謎に向けて、カスミとローニンは歩き出す。
「それくらいの夢も掲げられないのなら、私はスラムの外で生きる資格もない」
ANGEL-3がこちらを識別し、カスミがスラム街の出身だと知った途端、その白い翼を広げて羽を飛ばしてきた。この羽をモロにくらえば、切れ味の良い包丁で豆腐を切ったかのように、スパンとどこかが斬り落とされる。
だが、カスミのギアはその攻撃の上を行く。小さく、そしてみすぼらしい幼女を突き刺そうと高速で向かてきた天使の羽を、カスミは目視することすらなく反射し、逆にANGEL-3を1体撃破してしまった。
「オマエのその野望、おれも乗るぜ。夢は果てしないほうが楽しいもんな」
ローニンはそう言い、カスミに腕を差し出す。カスミが疲れていることを知っているのだろう。
お姫様のように抱っこされ、カスミはローニンによって運ばれていくのだった。
*
「アーク=セラフが襲撃に失敗した、と。しかも失敗だけに飽き足らず、目的の品まで盗まれたって?」
「らしいね。犯人は未だ追跡中だけど、もうL-9区画からは逃げられてる。これじゃ、アーク=セラフの実働部隊も頭を抱えるだろうね~」
「そりゃ良い。おれらの計画が楽に進む」
この物語の〝本来〟の主人公、ビクターと序盤で死ぬ仲間セラフィムは、スラム街に潜り込んでいた。




