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サイバーパンクANGELS-死にゲー転生幼女、物理反射チートで運命を跳ね返す-  作者: 東山スバル
2 原作なき世界

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17/17

EP17 原作知識の暴露

「クソみたいな街だ」カスミは小声で囁く。

「……あのビル一帯を取り仕切るのは、日本の〝超大企業〟『壮麗グループ』だ。ピザの販売から、核兵器まで所有している噂がある。まさしく、この街の支配者どもだな」


 ローニンは、原作でも出てきた〝壮麗グループ〟のビルを忌々しく見つめ、やがて目を逸らす。


「L-3区域まで、あと何分かかるの?」

「20分ってところだな。寝るか?」

「そうするよ」


 サイバーパンクな街並みは始めてみたが、正直気に入らないところだらけだ。こんな街でパクス・マギアを手に入れられなかったら、10年も過ごすと考えただけで吐き気がする。せめてその鬱憤を眠ることで晴らそうと、カスミはローニンの肩に寄りかかって寝てしまうのだった。


 *


『L-3区域でございます』


 モノレールのアナウンスとともに、カスミは目を覚ます。日本の電車と違い、この街のそれは到着時間・始発時間ともにいい加減である。20分と説明されていたが、結局40分くらいかかってしまったらしい。


「行くぞ」

「うん」


 そのおかげで、仮眠はとれた。カスミはダウン・タウンの外れにある、L-3区域に足を踏み入れる。


「あのアバズレの家は、もう少し先だ。もうタクシー代もねェから、歩いていくぞ」

「分かった」


 ダウン・タウンにしては珍しい、統一感のない曲がりくねった道を歩いていく。

 その道中、ローニンはカスミに目を合わせることもなく、尋ねてきた。


「なぁ、オマエの〝知識〟ってヤツはどこから仕入れたんだ?」


 カスミは大あくびしながら、


「素性に興味はないんじゃないの?」


 と最前の言葉を言ってみる。


「興味はねェが、これからの生き残り戦略を考えたとき、オマエは有用だ。おれとオマエが手を組んでいるというのなら、少しその知識を話してくれ」

「良いよ」あっさりと了承した。「まず、この世界には主人公がいる。名をビクター。中立地点に暮らしてたけど、成り上がりとパクス・マギアを懸けて身を起こした」

「ビクター? どんな面だ?」

「赤い髪で、白い目。18歳くらいの少年だよ」

「いつだか、そんなガキを叩きのめしたことがあった気がするよ」

「だろうね。ビクターとローニン……いや、お父さんは物語が始まる前に交戦してる。結果はお父さんの圧勝。命からがら、ビクターは逃げ出した」

「恐ろしいほどに正確だな」ローニンは電子マスクの右目をバツ、左目をマルにした。「なかなか骨のあるガキだったから生かしておいたが……、まさかアイツがこの世界の主人公だとはな」

「信じるの?」カスミは訝る。

「おれが信じないのは、神だけだ。あとはおれ次第で信じる」

「原作通りだね」

「で? ビクターってガキはどうなるんだ?」

「結論から言うと、最終的にはパクス・マギアは手に入らない。でも、壮麗グループの乗っ取りに成功する。幹部級を皆殺しにして、そもそも社長のいなし壮麗のトップに君臨し、パクス・マギアを手に入れるぞ、ってところで物語は終わる」

「打ち切りか?」

「作者が死んじゃったからね」

「なるほど。それで、パクス・マギアの正体は掴めぬままか」

「そーいうこと。けどさ」

「なんだ」

「私らの目的と、ビクターの目的は被ってるようで被ってない。ビクターは権力を求めてる。私たちは夢を追い求めてる。なら……」


 前々から、うっすらと思っていた。ビクターの目的は権力であり、パクス・マギアを手にするという建前はあまり重要でないと。主人公らしからぬ考えだが、この荒んだ世界で絶大な権威を手にすれば、それはもはや、どんな目的も叶えられると同意義なのだ。


「いつか、ビクターと私たちが協力する日が来るかもね」

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