EP14 自然災害級の衝突
そして、反射され彼方へ飛んでいく巨大な石の先には、男が立っていた。
「……チッ。あの野郎、まだ生きてやがったか」
車の外にリフレクトを作動させたため、車内・車外ともに傷はない。されどローニンは車から出て、その男に対峙する。刀を取り出し、挨拶代わりに〝飛ぶ斬撃〟を彼に繰り出した。
だが、その男は虫でも払うような動作で、斬撃を彼方へ吹き飛ばした。崖の一部に切り傷が刻まれ、そのパワードスーツを着た男は、顔がゾンビのように砕けている男は、不敵に笑う。
「くたばったくらいでくたばると思うなよ? ローニン」
男はローニンとの間合いを一瞬で狭め、パワードスーツの持つ恐ろしい腕力で彼の頭を砕こうとした。ローニンは刀で男の拳を迎撃するものの、ジリジリと彼の腕が追い詰められていく。
(……コイツは)
カスミは、車より降りて、しっかりゾンビみたいな顔とパワードスーツの男を見つめる。
(間違いない……。オーガだ。ローニンの仇敵のひとりで、物語の中盤でローニンを殺す男。でも、なぜここで現れた? 原作ではローニンはオーガに痛手をくらわせて、しばらく復活できなかったはずなのに)
やはり物語の歯車がおかしくなっている、と確信せざるを得ない。そして、オーガが強化後だとして、ローニンはまだ強化イベントを消化していないため、このままでは彼は確実に殺される。
であれば、カスミが応戦するしかない。
カスミは地面を蹴って、オーガの腕に触れてそれを弾いた。ベチャッ、と吹き飛んだ腕を一瞥もせず、オーガはカスミに邪気溢れる笑みを見せてくる。
「おぉ……、リフレクトの適合者か」
(知られてる……? アーク=セラフが密告したか?)
ますます、原作とはかけ離れた世界になってしまった。カスミは一旦息を吐き、
「──うぉおおおお!!」
鈴のような声で、叫んだ。
そうすると、ふたつの台風が発生した。黒い台風は、まっすぐにオーガのほうへ道路をベキベキと破壊しながら進んでいく。
さりとて、オーガも覚醒イベントをこなした後だからか、地面を蹴って空に身を舞わせ、目では捉えられない速度でカスミの背後に回り込んだ。
「しまッ──!!」
リフレクトで張れる反射壁は、全方位に展開できない。そんなことをしたら、カスミの身体が保たない。そのため、カスミは常に敵に背後を取られないように立ち回ってきたが、オーガはそれを見越していていた。
「──遅せェ。まるで、遅せェんだよ!!」
カスミは慌てて背後にリフレクトの壁を張り直すが、時すでに遅し。カスミの小さな身体は、レジ袋のように宙に跳ね、壁に直撃した。
「ぎゃぁあああああああ!!」
カスミは悲鳴を張り上げるが、かろうじて意識は保っていた。身体中に骨折したような……いや骨折した痛みが走るが、反射膜が前面に起動していたので、致命傷だけは避けられた。
「……テメェ、ガキ相手に容赦ねェな」
「この街でガキだということは、ただの罪だろォ!? 痛てェ思いしたくねェなら、オマエみてェな疫病神とつるまなきゃ良かっただけだ!! なぁ──!!」
ローニンは刀を2本取り出し、オーガを斬り裂くために背中のジェットパックを起動させ、彼との間合いを狭める。
そして、
ローニンの刀とオーガの拳が、交差した。すると、さながら自然災害のように天気が荒れ始め、先ほどまで晴れていた道に雨が降り注ぎ始めた。
「ぎゃぁははは!! 愉快だねェ!! ローニン!!」
ローニンは刀でオーガの拳を受け続ける。この状態が続けば、ローニンは確実に負ける。それでも、骨の軋む音と激痛でカスミは援護に入れない。
そんな中、ローニンは冷静な口調で言う。
「その馬鹿げた腕力、後何分持つんだ?」
「……あァン?」
「巷でこんな麻薬が流行っていると聞く。名をシア・ハート・アタック」




