結婚式/落胆する神
ある男女が結ばれた。
さーっという雨音に包まれ、ひんやりとして静謐な教会で、誓いのキスを交わして微笑み合う。
見届けたのは互いの両親と親しい人のみなため、小さく祝福の拍手が木霊し、すぐに静寂が戻る。
するとチャイルドブーケのため、小さな男の子がブーケを抱えて二人の前に立つ。
そして穏やかに真っ直ぐ、大きな瞳で新婦を見上げ、腕を伸ばして斜め上に掲げた。
ピンクのバラ、黄色のラナンキュラス、胡蝶蘭、かすみ草などの中、ブーケにはブライダルベールが忍ばされている。
「ありがと」
口元に笑みを浮かべて膝を折り、そっと指輪をはめた左手とウエディンググローブに包まれた右手で受け取った。
男の子は一歩後に引き、言祝ぎを口にする。
「結婚、おめでとうございます」
雨音にかき消されることなく、その声は新婦に届きーー
≪あー、ダメだダメ。これでは求めていた趣旨とはブレてしまってる。実験結果として欲してるのは、こんなものじゃない≫
両手を打ち合わせると対象の二人が、ここまでの時間が音も無く消滅した。
≪人で摸して験しても、やはり欲し、納得いく結果は得られ無いのだろうか……?≫
神は疲れたような落胆を見せた。