控室トーク:歴史の味、未来の一杯
(対談を終えた4人が、スタジオ裏手の控室に向かう。
部屋には木のテーブルとゆったりしたソファ、温かい照明。
テーブルの上には、それぞれが用意を希望したこだわりの料理と飲み物が並んでいる)
あすか(にこにこしながら)
「対談お疲れさまでした!
みなさんのリクエストに合わせて、控室には推しの飲み物と料理を用意しましたよ〜!」
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トマス・モアの推し:赤ワイン&全粒粉の素朴なパンと羊乳チーズ
モア(目を細めて)
「これはありがたい。私の故郷では、“労働の後の一切れのパン”こそが最高の贅沢なのです。」
スミス(パンを手に取り)
「シンプルだが……いい香りだ。ふむ、チーズの塩味がちょうど良い。」
ニーチェ(ワインを一口)
「ふ。気取ったものは何もない。だが、それがいい。
これは“節制と徳”の味がするな。」
鄧
「よく働く人民に、こういう食事を与えられる社会でありたいものだ。」
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アダム・スミスの推し:スコッチウイスキー&スモークサーモンのカナッペ
スミス(グラスを掲げて)
「では、控えめに一杯。これはハイランドの熟成シングルモルトです。
そしてこちら、塩気の効いたスモークサーモンと全粒クラッカーの組み合わせが絶妙でして。」
モア(口に含んで)
「おお……これは、礼拝の後には似合わないが、討論の後にはぴったりだ。」
鄧(感心して)
「香りが深いな。“市場の見えざる手”で燻されたか。」
ニーチェ(ニヤリと)
「この煙の向こうに、理性と欲望が踊っているようだ。いい。もっとよこせ。」
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鄧小平の推し:中国茶&焼き小籠包
鄧(湯呑を手に)
「これは福建省の鉄観音茶。香りが立つ。
そしてこちら、焼き小籠包。皮は香ばしく、中は熱々。気をつけろよ。」
スミス(ふーふーしながら)
「これは驚くほどジューシーだ……!熱い、が……美味い。」
モア(にこやかに)
「湯気の立つものは、人の心をほぐしますね。」
ニーチェ(頬張って、目を細め)
「……これには反論の余地がない。」
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ニーチェの推し:黒ビール&肉厚なシュニッツェル(カツレツ)
ニーチェ(グラスを掲げて)
「これがドイツの魂、“シュヴァルツビア”だ。そしてこれが勝者の肉、シュニッツェル。
噛みしめろ。文明とは牙をむいた肉の上に築かれたものだ。」
モア(カツを食べながら)
「……これは、私の“ユートピア”にはなかった味ですね。」
スミス(苦笑しつつ)
「だが、よく揚がっていて、これもまた調和の一形態ですな。」
鄧(小さく笑って)
「こういう脂の味に、人民はすぐ虜になる。」
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食後のひととき
(あすかがポットに入ったハーブティーを配りながら)
あすか
「皆さん、対談の時とはまた違って、いい顔されてますよ〜。
でも……最後に聞いてもいいですか?
“今日、一番意外だった発言”って、誰のだったと思います?」
スミス
「私は……ニーチェ殿の“挑発が愛”という言葉ですね。思わず記録したくなった。」
モア
「私は鄧殿が“指導者のいらない社会”とおっしゃったとき……少し、胸を衝かれました。」
鄧
「モア殿の“教育は対話の場である”という言葉も、静かに響いた。」
ニーチェ(ウイスキーを飲み干して)
「……私は、おまえたち全員が、私を嫌っていないことに驚いている。」
(全員、少し笑う)
モア(グラスを掲げて)
「反対する者を敬う心が、議論を豊かにしますからね。」
スミス
「そして、食卓はその最高の場です。」
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(控室ではで、笑い声と湯気が重なる。
彼らの思想の違いを超えて、今だけは、ひとつの“場”を共有している…)