一本の電話
あるところにて、電話が鳴る。
面倒そうにその受話器を取り上げる、初老に差し掛かっていそうな男性が一人。
「もしもし」
その声は、明らかな不機嫌さが入っている。
だが、電話相手からの連絡を受けて、その顔はみるみる険しくなっていった。
「あー、なるほどな。たしかに、それは手野武装警備マターだろうな。仕方ない、テック・カバナー総合軍事会社への連絡は……」
矢継ぎ早に指示を出しながらも男性は、近くにあった椅子の背もたれにひっかけている背広をつかんだ。
電話は無線利用の子機だったが、できるだけ部屋から出る前に指示を出し尽くしておきたいと考えているらしい。
武装社長室と名札に書かれた部屋を出ると、男性はさっさとどこかへと歩いて行ってしまった。