【一場面小説】ジョスイ物語 〜官兵衛、貴公子達の軍師となるノ段 其ノ壱
軍監黒田官兵衛が率いる宇喜多隊は、長宗我部元親の罠をやり過ごして阿波に侵入、本隊羽柴秀長らと合流した。
決戦を避け、敵を追い込む。速やかに長宗我部を降伏させ、徳川佐々ら与党に蜂起の暇を与えない。さらには「秀吉の息子達」に手柄を挙げさせる。官兵衛には三つ仕事がある。
「軍師殿がいれば百人力です。」全軍の副将羽柴信吉が微笑んだ。幼少から養家を渡り歩いてきた秀吉の甥。その手垢に塗れた人懐こさが官兵衛には不憫に思え、この若殿に手柄をと奮い起った。
讃岐を侵し、罠を見透かして阿波へと軍旗を進めた軍監官兵衛の宇喜多勢。羽柴信吉軍と合流し、今は岩倉城を囲んでいる。開城を早めるには仕掛けが必要だ。最新の大筒が恐怖と富を見せつけ、籠る敵の士気を挫くだろう。
設えたばかりの櫓が爽やかな香りを放つ。戦場を眼下に官兵衛が策を巡らしていた時、蜂須賀が現れて耳打ちした。なんと秀吉が関白に収まった、全国に武を布く前に公家の頂に立ったというのだ。石田ら奉行衆の働きが大だったらしい。
今、官兵衛は信吉と秀家の武勲に心を砕いているが、手柄の種も変わっていく潮目なのか、そんな想いが頭を霞めた。