魔法の鏡が怪談口調で答えてくる
深夜の王宮。王妃は鏡の間へと入る──。
「ほっほっほっほ。鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しい人はだぁぁぁあああれ?」
『……ぼーん。ぼーん。ぼーん。
草木も眠る丑三つ時……。
夜な夜な白い服を着た長い髪の女が……。
鏡に向かって話しかけるのです……』
「……ん? 何? 今の」
『はっはっはっは。雰囲気ですよ。雰囲気。王妃様の魔女っぷりを表現したのです』
「白い服を着た長い髪の女……。私かい! 私のことかい!」
『イエス、マダム。その通りです!』
「そういうのやんなくていいから」
『おや、王妃様はこういうのはお嫌いで』
「嫌いよ」
『あらま』
「私はそもそも怖い話とか苦手なの。そういうのやめて。じゃあ、もう一回いくわよ!? 鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しい人はだーーれ?」
『……むかーし
越後の山奥に……。
八蔵という猟師がァ……
暮らしておったァ……』
「なにその、日本昔話夏休みバージョン」
『はっはっはっは! カスタマイズですよ。マダム』
「越後の山奥……。いや関係ない!」
『そーなんですよねー。こりゃ参った!』
「真面目にやんなさいよ!」
『あらやだ』
「……いい? 夜中なんだから、そんなテンションおかしいわよ。私が聞いたことをサッと答えて、私はそれを聞いたらスッと去ってく。そんなのがいいんじゃない。なによ。30分くらい尺がありそうな話をしないでちょうだい」
『なるほどっスね!』
「それじゃいくわよ? 鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しい人はだーれ?」
『……これ、いっちゃって言いかどうか分かんないんだけど……。
友ダチから聞いた話なんだけどね』
「ストップ!」
『え?』
「でた友ダチから聞いた話。それって怖い話の定番じゃん?」
『そー、そー』
「そもそも誰よ。あなたの友ダチは。鏡のクセして」
『ずーと友ダチ、いません』
「そうでしょう? だったらそんな作り話しなくていいのよ! いくわよ? 真面目に。鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しい人はだーれ?」
『いやね、私もこの鏡歴がずいぶん長いんですけど。
ある王宮に飾られることになったんです。
まあ人を写すことが仕事ですから、真面目にそれをやってたんですけど。
ある晩。
この部屋までの長い階段を──
カツーン、カツーン。
と登ってくるものがいたんです
「やー、誰だろうなこんな夜中に」
カツーン、カツーン……。
なーんか悪い予感がしたんですよね。
カツーン、カツーン……。
わー、怖いなー、怖いなー。
て、思ってると、正面の扉が
ぎ、ぎ、ぎ、ぎいー
っと開いたかと思うと、
そこには白ーい服を着たながーい髪の女性が立ってまして。
わー。なんか来るなー、怖いなー。
と、思ってたら、こっちに
ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ……』
「キャーーー!!!」
『ど、ど、ど、どうしました?』
「どうしたも、こうしたもない! 怖いじゃない!」
『でもこれ、王妃様のことですよ?』
「んー、あ、そうか。白い服の長い髪の女性ね」
『そうです。そうです』
「なんで私が怖いのよ!」
『いやー、雰囲気です。雰囲気』
「そーゆーの、いいから! そういうの、今日はやんなくていいの! 今日は1っっ個もやんなくていいの!! 『それは王妃様です』ってあなたが言えば今日の話はおしまい! いいわね?」
『えー……』
「なによ! 不服なの!?」
『せっかく考えて来たのに~』
「割るわよ?」
『割らないで~』
「じゃあちゃんとやんなさい」
『あの~王妃様』
「なによ!?」
『答えは王妃様に決まってるんですけど、ちょっとだけアレンジしてもいいですか?』
「アレンジ? 答えは決まってるのね?」
『はい』
「じゃあいいわよ」
『やったあ』
「それじゃ、本日五回目です。鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しい人はだぁーーれ?」
『そ
れ
は
お 前 だぁーーーッッ!!!』
「キャァーーーーーーッッッ!!!」
次の日。鏡の間には砕け散った鏡だけが残されておりました。
なんか、息抜きにやりたくなりました。
( *´艸`)
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(そんなのねえよ)