王女の無茶振り
『お久しぶりです皆さん!レイス王女様は始めましてですね。私はセイルと言います。以後お見知りおきを』
姿勢を正して挨拶をするセイルに見とれたレイスは、慌てて返事を返した。
「は、始めまして。レイス・フォン・サーシェスですわ。その…セイル様……私の事はレイスと呼んでくださいまし。セイル様は私の命の恩人ですので」
『分かりました。じゃあレイスはどうして此処に?私はこれから《運び屋》の登録にきたのですが?』
「それは〜…その……えっと…」
返事に困ったレイスの代わりに従者達がセイルに説明をし始めた。その様子を見ていたレイスはふと思い出した。
少なくとも魔王討伐から4日経っている筈なのに、セイルがここにいることが不思議に感じたのだ。最果ての地から王都までは最低でも1ヶ月掛かかるのに……
レイスは恐る恐るセイルに聞いてみる事にした。
「あのセイル様?どうやってここまで来たのですか?いくら何でも速すぎるのですが?」
『あぁ……海の上を通って来たのですよ。陸路だと遠回りなので』
話を聞いたレイス含め従者達は、平然と話すセイルに驚いた。
セイルが通った海域は【死の海】と言われる場所で、行方不明者が続出した為に通航禁止になった所だ。第一に空を移動する人はいないし、地図もほぼ無い海域を移動することは自殺行為そのものなのだ。
少し暗い雰囲気をよそにセイルは【運び屋組合】に入った。レイスと従者達もセイルが入ったことに気付いて遅れて入る。
突然フロアに怒鳴り声が響き渡る。セイルとレイスは声のした所に目を向けると、小太りの男が新人らしき人に怒鳴り散らしている。
「どうしてくれるのだ!これは大事な取引なのだぞ!!」
「すみません!すみません!」
どうしようかとセイルが見ていると、レイスが2人に近づいて話の間に入った。
「どうしたのですかヤハゴ会長?何かあったのですか?」
「おぉ!レイス王女様。気が付かず申し訳ありません。実はエルフの国エンシェントへ材木の運搬が遅れていまして…。新人が期日を間違っていたらしく、間に合わないのですよ。」
小太りがヤハゴ会長か。【運び屋組合】のトップが絡んでるのに新人に任したのが悪いよなこれ。
「なるほど…期日はいつまでなのですか?場合によっては解決出来るかもしれません」
あれ?なんかレイスがこっち見てるだけど。まさか…
「本当ですか!?あと2日以内に届けないといけないのですが……」
「2日あれば大丈夫ですわよ。彼なら直ぐ運べます。彼は魔王を倒したパーティーに所属し、私の命の恩人。セイル様ですわ!!」
レイスの無茶振りに、セイルは静かに承諾するのだった。




