光ある世界へ
チートはない予定です。世界の中で決められた中で主人公が努力していく形になります。
だらだらと更新していきます。
「最悪だ…。ガットの野郎、戻ったら文句言ってやる…」
暗がりの洞窟の中、光源に左手に持つ松明のみ。右手には強烈な酸の影響により刃のつぶれてしまった解体用のナイフ。元々愛用していた長剣も折れてしまっており、苔むした壁のに雑に放り投げられていた。
眼前には全長1mほどの蟻。ガチガチと刺々しい顎を鳴らしながら口元より手元のナイフを溶かした元凶である酸を飛び散らせていた。ジュウジュウと大きな音を立てて酸が垂れ流しとなっていおり、酸と酸により溶けた地面の臭いが鼻につく。そのありの空中上部には【アシッドアント:Lv20】と赤く表示されている。
「ックソ。開始の支度金の8割つっこんで買った剣だったのに…。」
思い返せばもっと計画的に装備を整えればよかったと後悔する。解体用のナイフも元々アイテムストレージの中に備え付けられていたアイテムであり戦闘において使用する武器ではない。舌打ちをしながらもはや使い物にならないナイフにちらりと視線を動かす。
果たしてこの使い物にならないナイフで切り抜けられるだろうか…。洞窟に入り2時間程経っているだろうか。道中のモンスターを討伐していた成果によりレベルアップはしているが、いかんせんこのナイフではどうすることもできない。そもそも現在レベル4の状態で到底眼前のモンスターを討伐できるとも思えない。
蟻は頭部の触角を左右に激しく動かしながらこちらにいつでも襲い掛からんとしている。
(さっきまでレベル3~4程度のスライムやゴブリンだったのになんでこんなとこにレベル20超えのモンスターがいるんだよ!全力で走ればギリギリ生き残れるか…?)
などと思考を巡らせていると蟻が口元より酸を俺に目がけて吐き出してきた。
「ウオォ!?あぶねーもうちょい待てよ!!」
咄嗟に左に飛び酸を回避する。姿勢が不安定な状態のまま飛んだため、受け身を取る事も出来ずに洞窟の苔むした壁に思い切り身体を打ち付ける。
「~~~~ッ!!」
言葉にならない痛みが左肩を襲う。
(痛みも臭いも本格的すぎるぞ!くそったれ!!)
ハァハァと荒い息遣いが洞窟内に反響する。口は乾ききっており唾液も出てこない。それでもなんとか渇きを得ようろ唾液を飲み込もうとする。そんな姿を蟻は見て好機ととらえたのか、再び酸を俺めがけて吐き出した。酸は正確に俺の顔面へと直撃し焼ける痛みが襲い掛かる。
「あ、ああ!!!!あああああああ!!!!!」
痛みにより声を上げる。ナイフと松明を手放し顔面に付着した酸を拭おうと両手で触れる。
「ああああ!?いだいいだい!!!」
素手で触れたため酸を拭おうとした両手も付着した酸に直接触れたことでジュウジュウと音を立てて溶け始める。俺は地面を転げまわりながらなんとか痛みから逃れようとするが痛みが緩和されることは当然なく、むしろ痛みが増長するだけだった。
ギチ…ギチギチ…。
アシッドアントがこちらに近づいていた。俺はそんなことよりも酸による痛みにより、大声を上げて苦しんでいたため、そんな音に気付くことが出来ない。蟻はゆっくりと俺に近づく。まるであざ笑うかのようにギチギチと顎を鳴らす。
何とかして視界を得ようと目を開けると、眼前には酸を垂らしながら顎を大きく開けるアシッドアントがいた。
俺の視界が真っ黒に塗りつぶされる瞬間だった。
はじめての冒険が終了した。