その八 早く資格を取ろう
「で、これからどうすんだお前?」
俺達はクソジジイを置いていき現在はそこらへんの食べ物屋で今後について考えていた。
「僕は師匠資格を取るのを諦めないつもりです。和人さんはどうするんですか?」
「う〜んどうしようかな〜。資格とんねぇとあいつが怒るしな」
俺は骨付き肉を加えながら今後の事について考えた。
「何ですか、和人さんも誰かと師匠になるって約束したんですか」
「約束って言うかほぼ無理矢理?俺が師匠になるってそいつと約束しちゃったんだよ」
「うぐぅ!―――和人さん師匠資格が無いのに弟子が居るんですか!?」
すると飲んでいた飲む物を勢いよくこぼす。
「何やってんだよ。ま、そういうことだな。だからそいつの為にも資格とんなきゃいけないんだよ。ごっそーさん」
俺は骨を皿に置き手を合わせた。
「じゃ、俺もう行くから。会計よろしくな」
「え!?もう行くんですか!ていうか会計よろしくって割り勘じゃないんですか!?」
「俺金ないんだよ。それじゃあまた何処かで会えたら師匠になってるといいな」
俺は剣を手に取り店を後にした。
「さてとどうしましょうかね」
これから師匠資格を取ろうにもどこで取ればいいかもわからないし、そもそも今の俺に取ることはできるのか?
「情報屋に聞くのがベストなのか?こういう時ゲームの場合何するべきだったっけ?」
確か最初に出会った人からドンドン物語が進んで行くのがゲームの定番だよな。
「最初に会ったのがコイトで、その後ハイナだよな。コイトは………俺のせいで命を落としちまった。ハイナには毛嫌いされてて……ん?ちょっと待てこの後の展開ってどうなんだ?」
俺、完全にゲームで言う正規ルートから外れてるよな。
「ああもう!こうなったら困った時のサポートセンターだ!!」
―――――――――――――――
「というわけでまた来ちゃいました」
「もう二度と来なくても良かったんですけどね」
そんな酷い言葉を笑顔で包み隠さず俺に伝える。
「これからあんたの笑顔を見るたびその言葉が頭から離れねぇよ。それよりあんた俺にわざと嘘の場所教えただろ!クソジジイが居るだけのただの家だったぞ!」
「あーすみませんでした。こちらが正しい地図です」
そう言ってまるでミスをしてしまったと言う風に言いながら違う地図を渡して来た。
さっきの絶対わざとだろ。
「あのーこれ本当に師匠になれる場所が書かれてる地図なんですよね」
「はい、そうですよ」
「ツボを売りつけてくる人位の胡散臭さ何ですけど。本当に本当なんですよね」
「はい、そうですよ」
「本当に本当にほんと―――――」
「本当だって言ってんだろ。早く行けようざ男が」
「…………はい」
俺は地図を片手にサポートセンターを後にした。
「さてと今日も元気にトラウマ植え付けられたし、早速行くとするか」
俺は地図に書かれている場所に早速向かった。
15分位歩いた所にその建物はあった。
「ここか………」
それは先程のボロっちい家とは違い、RPGのお城のような巨大な建造物だった。
「マジかよ……やっぱこういう所なんだな、師匠の資格を取るのは」
俺は早速その城みたいな建物の中に入って行った。
中には偉い老人ぽい人やカッコよく才能がありそうなクソイケメン野郎などもいた。
「えっと……師匠資格が取れるところは何処だー。ん?あそこか」
何故か1箇所の受付だけ人が並んでいる。
それに平民臭がする奴らしか並んでないから多分あそこがそうなんだろうな。
「ささっと資格とって早く家に帰って寝たい」
俺はダルい体を動かしながら列の最後尾に並んだ。
するとその直後に俺の後ろに男の人が並びだした。
「ああ、やべー緊張するーやべー吐きそー」
余程緊張してるのか独り言が激しくぶつぶつと呟いていた。
そう言えば最近緊張なんてしたこと無いな。
あんまりそういうことしたことなかったからな。
今もまだゲームをやっているような感覚で過ごしてるし、ていうかまだ現実かどうか少し怪しんでる所があるんだよな。
「どうしよう。受かんなかったらこれからどうすればいいんだよ。でも俺はあれだけ頑張ったんだ。絶対受かる。でも本番は違うからな」
情緒不安定なのか、励ましたり落ち込んだりと感情表現が激しくなっている。
「次の人どうぞー」
「あ、はい」
後ろの人の独り言を聞いてたらいつの間にか俺の番になっていた。
「師匠資格の試験を受付ですね。こちらに名前と自分の得意魔法をお書きください」
「わかりました」
名前は書けるが得意魔法か………
適当でいいかな。
ササッと書いてそれを提出した。
「はい、ありがとうございます。えっと……得意魔法相手の弱点を瞬時に分かる魔法ですか?」
「はい、中々便利ですよ。周回とか初見のボスもあまり躓かなくなりますし」
「そ、そうですか。分かりました。それでは試験料として3000コインですよ」
ん?今なんて言った。
「えっと……もしかしてお金払うんですか」
「はい。もしかして手元に無いとかですか」
「その通りですね。だから後で払うんで受けさせてもらえないですか」
「駄目ですね。お帰りください」
きっぱりと断られてしまった。
「あ、ちょっと待って下さい。………あった!230円でどうだ!」
「次の人どうぞー!」
「あれ?お姉さん?おかしいぞ、お姉さんが目を合わせなくなったぞ。お姉さーん!」
――――――――――――――
「はあ〜あどうしましょうかね〜」
俺は資格を受けられないという事が分かりどうしようか階段に座ってしばらく考えていた。
すると奥からゾロゾロと人が出てきた。
中には満面の笑みで喜ぶ人や絶望のどん底に叩きつけられたような顔をしてる奴もいた。
その中にあの後ろでぶつぶつと呟いていた人がいた。
だがその人の表情はあまり明るいとは言えないくらい表情をしていた。
落ちたのか。
「あ、そうだ。いい事思いついちゃった」
俺はうなだれて入る男の元に向かった。
「はあ〜………」
俺はうなだれている男の目の前に飲み物を置いた。
「ここ、座ってもいいか?」
「ど、どうぞ」
少し困惑してる様だがまあ座れればこっちのもんだ。
俺は男の目の前の席に座った。
「何がものすごく落ち込んでるみたいだけどもしかしてあれか?試験落ちたのか」
「なんですかあんた。人の傷口をえぐるのが趣味なんですか。俺、暇じゃないんで」
すると男が席を立とうとしたので俺はすかさず止めた。
「悪かった冗談だよ。それよりほら飲めよ」
俺は買って来た飲み物を男に飲ませる。
「なんだよまじで。これ飲んだら俺は帰るぞ」
「まあ別にいいぜ」
10分後
「何で俺が落ちなきゃいけないんだ!!俺はこの日の為にどれだけやったと思ってんだこんちくしょー!!ひっく」
「まぁまぁ落ち着け落ち着けって」
にしてもこんなにすぐに酔うとは思わなかったな。
酒癖悪いのかこいつ。
「クソが!全員ぶっ殺してやる!!」
これ以上はこいつが殺人犯になっちまうな。
本題に入るとするか。
「ま、ここまで話も聞いたし、相談料として3000コインくれないか」
「あ?テメェ何言ってんだ?」
え?急に雰囲気変わった?
もしかして金の話になるとそういう感じになるタイプか?
「えっと……今の話は無しの方向で」
「ははは!!お前おもしれぇな!おい!もっと酒持ってこい!!!」
「酒なんかないですよーていうか俺もう帰りますね」
金が貰えないならこれ以上ここにいる意味は無い。
俺が席を立とうとすると俺の肩を掴みその場に留まらされた。
「まあいいじねぇか!それより面白い話があるんだけどよ」
「いや、マジでいいんで、ていうか酒臭いんで、ていうかキモいんで」
「聞けよ!なあ!」
うわーめっちゃ面倒くせぇー!
適当に話聞いて帰ろう。
「お前はあの事件知ってっか?ある師匠には弟子が居たんだよ。だがよ、その弟子の親が俺は親だからこいつの師匠になる権利があるって言ってどちらが師匠になるか裁判で争ったんだよ」
「へーそうなのかー」
俺はコップの縁を指でなぞっていた。
「それで結局勝ったのは親の方でずっと弟子として育ててきた師匠の方はそりゃもう怒ったさ。そして親が師匠の権利を勝ち取って数ヶ月後その弟子は死んじまったよ。原因はただ1つ親が過度の暴力と度が過ぎた修行での過労死だそうだぜ。元師匠はそりゃもう殺すくらいの勢いで親を襲撃したんだよ。ま、結果取り押さえられて師匠権の剥奪と10年間牢獄に打ち込まれたらしいぜ」
「へーそうなんだー」
「ちなみにその師匠は釈放されて今はボロボロの家に1人で師匠資格を与える育成場をやってるらしいぜ。師匠権を失ったのに与えられるわけねぇよな!」
俺はその言葉を聞いてコップの縁をなぞる手を止める。
「へーそうなんだー」
これはやっと前進したって感じかな。
「じゃ、俺もう行くわ」
俺は剣を手に取り席を立つ。
「おい!もっと付き合えよ!」
「あとは後ろに立っている人が相手してやるってよ」
「あ!?どう意味だ―――――」
男が後ろを向くとそこには怒りをあらわにした店員が立っていた。
「お前か!うちの酒盗んだの!」
「あ!?何のことだ!」
「とぼけんじゃねぇ!その酒金も払わず持ってっただろ!」
「し、知らねぇよ!おい!お前なんとかして……あれ?あいつどこ行った!」
「おらこっち来い!万引き野郎め!」
「やめろ!触んじゃねぇ!くそ!世の中腐ってやがる!!」
俺は外に出てある目的地に向かった。
「よし、行くか」




