その六 怪しいバイト
「花をここに置いてよし、完成だな」
俺達は前に進む為にコイトの墓を作った。
「コイトありがとね」
そう言って涙を流しながら静かに拝む。
俺も同じ様に手を合わせる。
「よし、それじゃあまた明日来よう」
「うん、それよりこれからどうするのよ」
「俺はとりあえず何かアルバイトでもしようと思う。もうこれ以上サバイバルしたくねぇし」
昨日も金が無くそこらへんのモンスターを狩って食べたのだ。
正直ハイナは料理が下手でもちろん飯も不味かった。
「それじゃあ俺先に街行ってるから」
俺は一足先に街に向かった。
――――――――――――
「て、言っても何やろ」
正直アルバイト何てやったことが無いから何をやればいいのか全く分からん。
「簡単なのがいいなぁ……面倒くさいのはやりたくない」
「それなら私のバイトをやってくれない?」
そこには綺麗な20代後半位の女の人がいた。
「何だあんた?今時ナンパなんて流行んないぞ」
「ふふ、そうかい?あんたなら引っかかってくれると思ったんだけどね」
そう言って何かの鍵を俺に渡してきた。
「何だこれ?もしかして家の鍵か?」
「なんか期待してるみたいだけど違うよ。それは私の店の鍵さ。私は今様があって店を開けなきゃいけないから代わりに店番しといてくれ」
「おいおい、見ず知らずの人に店番任せるか普通」
「大丈夫よ。客が来ても適当にあしらってくれればいいから」
「ちょっと待て、それより報酬はどうなんだよ」
こんな簡単なバイト裏があるに違いない。
報酬が少なかったら違うバイトに行こう。
「報酬はこれでどうだい?」
そう言って両手を開く。
「な、そんなにか!?」
これは完全に10万ってことだよな。
「それじゃあよろしくね」
そして俺はバイトを引き受けてしまった。
「にしてもここなんの店だ?何かいろんなもん置いてあるけどもしかしてリサイクルショップとかか?」
まあ取り敢えずここにいればいいんだし、早く終わんねぇかな。
すると1人男の人が入ってきた。
やべ、客来やがった。
「いらっしゃいませー」
「ん?アミさんは今日はいないのか?」
「アミさん?ああ……その人なら今日用事があって俺が店番してます」
ていうか名前も聞くの忘れてたな。
金に目がくらんで全然気にしなかった。
「そうか。ならこれを買い取ってくれ」
そう言って棒のような物がモーター音を鳴らしながら動いていた。
「いや、何ですかこれ」
「何って棒だよ」
「棒っていうか18禁ですよね。ていうか何でウィンウィン動いてんですか」
「何言ってんだ、これはあれだよ。マッサージ機だよ!別に変な使い方してないから」
「あの頼むから帰ってくれませんか?気持ち悪いです」
「違うから!なんか大きな勘違いをしているぞ君は!」
「キモいって言ってんだろ!早く帰れ!」
そう言って、俺は男をぶん殴った。
「たく、何なんだよ一体」
するとまた別のお客さんが来た。
今度は2人組だな。
片方男でもう片方は女だな。
「いらっしゃいませ」
「やっちまったよ。やっちまったよ」
「あれ?アミさん居ないのか?」
「用事があって俺が店番してます」
「そうなのか」
「ていうかお隣さん大丈夫ですか?何かブツブツ言ってますけど」
「やっちまったよ。やっちまったよ」
「気にしなくていいよ。それよりこれ買い取ってくれない?」
そう言って赤い液体が付着してるトンカチを出して来た。
「殺っちまったな」
「は?何言ってんの?これあれよ、血糊だから。血とかじゃないから」
「やっちまったよ。俺はやっちまったよ」
「いや、これ完全に血でしょ。隣でやっちまってる人いるし」
「いや、これあれだよエアコン点けっぱなしで後悔してるのよ」
「エアコン点けっぱなしでここまで落ち込む奴が世の中生き残れる訳ねぇだろ」
「うぎゃぁぁぁぁ!!!」
するといきなり奇声を上げてその場でうずくまる。
「おい!何かやばいぞ!何か覚醒したぞ!」
「この人年に1回奇声あげんのよ」
「どんな体してんだよ!もう病院いけよ!」
「田中ごめん!田中ごめん!田中ごめん!」
「おい、何か田中って言ってるぞ!田中さん殺ったのか!?田中さんの血なのかこれ!」
「違うわよ!田中じゃないわよ!TANAKAよ!」
「イントネーションなんてどうでもいいから、ていうかお前ら早く帰れ!」
そう言って血だらけのトンカチを持ってトボトボ帰っていった。
「たく何なんだいったい。リサイクルショップってこんなに怖い所だったか?」
するとまた男の人が入ってきた。
「あの〜これ買い取ってもらえませんか?」
そう言って真っ白い粉をテーブルに出す。
それを見て俺は男を蹴飛ばした。
「ぐふっ!?え!ちょ、何!?」
「テメェいい加減にしろよ。ここは黒歴史処分場じゃねぇんだぞ」
そう言って俺は男を足でグリグリとやる。
「ちょ、あれ何か勘違いしてるけどこれ小麦粉だから!」
「そんなバレそう言い訳TOP3に入る言葉言っても無駄だぞ」
「いや、本当だから!ほら、小麦粉って書いてるだろ」
白い袋に黒いペンで手書き感満載で小麦粉と書いてあった。
「お前ナメすぎだろ。こんなんで騙せると思ってんのか!さっさと出てけ!」
「え?ちょ、うぉー!?」
そう言って俺は背負投した。
「はぁ……もう閉めちまおうこんな店。社会的に死んだ人間しかここには来ねえし」
そう思い鍵を閉めようと扉に向かったら、小さい女の子が居た。
「これ」
そう言ってダンボール箱を渡してきた。
「ん?箱?おいこれなんだ?」
「開けてみて」
俺は言われた通り箱を開ける。
そこにはデジタルの数字が表示されている機械が入っていた。
「お、おいこれってもしかして……爆弾じゃねぇか!!?おい、これかえ―――――」
しかし目の前には既に女の子の姿は無かった。
「あのクソガキー!!て、そんなこと言ってる場合じゃねぇな!!これどうすんだよ!」
数字は刻々と減っていっている。
「残り1分30秒ってやばいぞ!まじで爆発する!」
その機械には3本のコードが繋がっていた。
コードは赤、青、黄の3色だった。
「マジかよ!こんなベタな事あるか。でもやるしかねぇ」
俺はペンチを取り切るコードを選ぶ。
「何色いく?青か!青でいくか!?何か大丈夫そうな色って青だよな!」
そう心に信じ込み俺は青を思いきって切った。
「…………何も起きない?成功か!」
その瞬間先程の秒数が2倍のスピードで減っていく。
「マジかよ!失敗かよ!!くそ、間に合わねぇ。かくなるうえは」
俺は爆弾を空中に放り投げた。
「行っけぇぇぇぇぇ!!!」
そして剣でかっ飛ばした。
そのまま空中に飛んでいきゼロになった途端空中で爆発した。
「マジかよ……間一髪だ」
安心して思わず腰が抜ける。
「待たせたね」
そう言って女の人がこちらに向かってくる。
「アミさん?やっと帰ってきたのか、もう俺はもう懲り懲りだ!早くバイト代をくれ」
「分かってるよ。ほら、バイト代だよ」
そう言って俺に手袋を渡した?
「は?何だよこれ」
「バイト代の手袋よ」
「10万は?」
「10万?何を言ってるの?最初に手で表したじゃない」
あれは10万ではなく手袋を表していたのか。
「ふ、ふざけんじゃねぇよ!!!」
今日俺はもうバイトをしないと固く誓った。