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最弱師匠と最強の弟子!  作者: 福田ひで
第一章 最弱師匠の誕生
6/17

その五 師匠になったよ

2日、3日、1週間経ってもハイナは帰って来ない。

そして俺はハイナを何度も何度も探し回った。

他の人に聞きまわったり顔写真を街中に貼ったりしたが成果は見られなかった。

そんな事をしていたらもう1週間も経ってしまった。

そして今日も俺は何も成果を得られず家に戻っていた。

すると路地裏から何やら液体が照らされていた。

その方をよく見ると杖が見えた。

俺は気になってしまい歩を進める。

そしてそこで俺が見たのは真赤な血で染まったハイナの姿だ――――――


「ぎゃあああ!!!」


俺は悪夢を見たせいで飛び起きる。


「はあ……はあ……ちくしょう。なんつー夢見てんだ俺は」


俺は汗だくの体で辺りを見渡す。

横には氷で冷やされてるコイトの姿があった。


「そろそろ埋めてやらねぇとな」


俺はベトベトの体を洗う為寝室を出る。

その時ハイナの部屋が見えた。


「もしかしたら寝てるかもしれねぇしな」


俺はハイナの部屋を叩いた。

だが返事はしない。


「おい、居るのかいねぇのか返事しろー!入っちまうぞ」


それでも返事はしない。

俺はじれったくなって返事を聞かず部屋に入る。


「おじゃましまーす。ってやっぱり居ねぇか」


部屋の中はあいつが出ていったきり変わっていなかった。


「たくっホントに何処行っちまったんだよあいつ」


俺はベトベトの体をきれいにする為シャワーを浴びた。


「ふーっすっきりした。それじゃあ探しに行くとしますか」


俺は着替え、剣を持ち玄関の前に立つ。


「はあ……外に出るって考えただけで憂鬱になるな。だが出るわけにも行かねぇし……たく、面倒事は嫌いなんだけどな」


俺は頭をポリポリと掻きながら外に飛び出した。


――――――――

〘モンスター消失。モンスター排除区域に異常なし。待機モードに移行します〙

「はいはい、分かったわかった。それもう聞いたから」


俺は結局モンスターに追われいつも通りの展開になっていた。


「たく、何なんだよこの森は。全くモンスターのやる気が変わらねぇじゃねぇか。いつでも元気いっぱいなのかあいつらは」


俺はふらふらの足取りで街を歩く。

とりあえず聞き込み調査をしようと思い、俺は人通りの多い場所に向かった。


「ここなら人通りも多いし、見かけた奴もいるかもしれねぇな」


俺は早速聞き込みを開始した。

魚屋の店主、八百屋の店主、質屋や魔道具店にも聞き込みしたが有効な手がかりは掴めなかった。


「こんだけ聞き込みして収穫ゼロってどうなってんだよ」


もしかするとハイナは人気が無いところに行った所を攫われたとか?


「いや、でもあいつは一応魔法使い。そう簡単には捕まりはしないだろうが、もしかして何か問題が起きたとかか?」


ここに居てもしょうが無い。

そう思い、俺はまた聞き込みをしようと立ち上がるとちょうどおばさん達の会話が聞こえた。


「ねぇ知ってる?最近小さい子を誘拐する事件が相次いでいるらしいわよ」

「それ私も聞いたわよ。何でも子供の魔法使いを狙ってるらしいじゃない」

「最近は師匠とかに目がくらんだ人達が、優秀な魔法使いを育てる為に子供の頃から、才能がありそうな子達をさらっていくって言うし一体どうなっちゃのかしらね」


小さい子供を攫って行くってもしかしてハイナ……


「おい!おばさん!その話詳しく!!」


―――――――――

暗くジメジメした場所。

そこは1人の魔法使いの住処だった。

そこに1人の少女が捕まっていた。


「離しなさいよ!こんな事してただで済むと思ってんの!?」


ハイナは手首を紐で結ばれていて身動きが出来無い。

すると奥から不気味な笑顔で近づいてくる男が1人。

その名はロウリ、彼は重度のロリコンで師匠をしているが子供の魔法使いしか弟子にはしない程だ。


「威勢たっぷりだねハイナ。そろそろ僕の物になる覚悟は出来たかな?」

「あんたみたいなクソゲスロリコンクソ野郎何かの物になるわけ無いじゃない!」

「クソをわざわざ2回使う辺りも威勢たっぷりだね。でも、もうすぐ君は僕の物にならざる負えなくなる」


そう言って笑いながら椅子に座る。

自分が優位に立ってると思っての笑顔なのだろうか。

ちなみに今やっている声は天の声であり、ハイナや和人の心の声ではないぞ。

そこんところよろしく!


「はっ!ふざけたこと言ってんじゃ無いわよ!ふざけるのはあんたの性癖だけにしときなさい」

「うっ!本当に威勢だけはいっちょ前だね。だが残念だけど君がどんなに抗ってもその事実は変わらない。様子を見て君が素直に僕に従うなら使わないと思ったけどその様子じゃ使うしか無いようだ」


そう言って机の中から液体の入った注射器を取り出す。


「これは特殊な洗脳効果があってこれを使えばたちまち僕の弟子になれる」

「もしかして、今までの弟子達も同じようにやって来たわけ。従順な弟子にする為に。イカれてるのは性癖だけじゃないようね。本当に救いようのないクズね」

「ふふふふ……そのクズの言う事しかもうすぐ聞けなくなるんだよ」


不気味に笑いながら片手に注射器を持って近づいて行く。

ていうか気持ち悪!

あ、ごめんなさい心の声が漏れてしまいました。


「来んな!変態!クソ野郎!ハゲ!」

「いやいや、剥げてないからね。ていうか僕まだ20歳だから」

「20歳でそんなのに目覚めるなんて人生間違えちゃったのね」

「本当に口が悪いね。その口調も僕好みに変えてあげるよ」


そう言って気持ち悪い呼吸をしながら興奮気味にハイナの方に近づいていく。


「きゃああああ!!誰か助けて!ロリコンにヤラれる!!」

「いやいやヤラないから。ていうか叫んでも無駄だよ。この場所は誰にも知られて無いからね。あの最強と言われるコイトすら道が分からなければ辿り着くことも出来ないからね」

「コイト……コイトは………」


ハイナは素直に来るとは言えなかった。

それは自分の中では既にコイトは亡き者となってしまっているからだ。


「それじゃあ、新しい師匠と新しい魔法生活を送ろうか」


ハイナは逃げようにもロウリの予想以上の握力に振り払えないでいる。


「や、やめ……やめろぅぅぅ!!!」


ハイナの体に針が入る瞬間ドアが蹴破られる。


「だ、誰だ!もしかしてコイトが来たのか!?」


その男は剣を肩にかけまるで馬鹿にするかの様な顔でこちらを見据える。


「どうも〜異世界転生系師匠、相田和人でーす」

「か、和人!?何でここにいるのよ!」


言葉ではこう言っててもハイナの心情は安心と言う気持ちで一杯だった。

それはまさしくツンデレと言わざるおえない……


「おい、ナレーションもういいぞ。お疲れさん。こっから俺やるから」


あ、そっすか。

ありがとうございました。


「おい、お前誰と話してるんだ?」

「あ、気にしなくていいぞ。脳内ナレーション、いわゆる天の声さんだからな」

「そんな事より私の話は無視か!」


ハイナの方を見てみるとどうやら捕まってる状態みたいだ。


「ていうかまず、お前何捕まってんだよ。飯食いに行ってたんじゃないのかよ」

「違うのよ。巧妙な手口にやられたのよ。まさかハンバーグが落ちてるなんて……あったら取りたくなるでしょ」

「ならねぇよ!お前は散歩中に拾い食いするいぬか!」


すると何か注射器を持っている男がコチラを睨みつけてくる。


「何だ?いきなり睨みつけてくるなんてヤンキーかテメェは。そんなんでビビるわけねぇだろ!」

「そう言いながら足ガクガクだよビビト」

「だからその名前で呼ぶなって言ってんだろ!ていうかこれビビってなってる訳じゃないから。武者震いだよ」

「ていうか僕を無視するな!」


俺達の輪に入れなかった男がこちらに文句を言い出す。


「あ、すまん。忘れてた」

「普通あの状況で忘れないだろ。まあいいよ、それよりお前は誰だ」

「人に名前を聞くならまず自分からってかあさんに言われなかったのか」

「それはすまなかった。僕はロウリ、師匠をやってる者だ。それでお前は」

「何だこれ?なんて結び方してやがんだ、解けにくいじゃねぇか」


俺はハイナの縄を解くのに悪戦苦闘していた。


「おい!何やってんだお前!?人の話を聞け!」

「え?あ、すまんすまん、ロウリコンだったけ?」

「ロウリだから!コンいらないから!」

「違うわよ。ロマクエンスよ」

「いや、誰だよ!もう別人になってるじゃん!」

「ギャーギャーうるせぇな。名前ぐらいでそんな怒んなよ。えっと……ロマンスコーヒー?」

「もう分かった。名前は諦める。それでお前の名前は?」


何か諦めた様子だがとりあえずこの縄を切りたいな。


「俺は相田和人だ。こいつの師匠でもある。というわけでこいつは返してもらうぞ」


そう言って俺は再び縄を解く作業に入る。


「ハイナの師匠?ふっ嘘をつくならもっとマシな嘘をつくんだな。お前がこいつの師匠なわけないだろ」

「やっぱこれ駄目だわ。剣で切ったほうが早いな」

「いや、だからさ。せめて話は聞いてほしいんだけど」

「別に信じねぇならそれでいいよ。ただお前が何をしようとしてるのか分からないがこいつの師匠はお前でもないぞ」


するとロウリが注射器を机に置く。


「お前が何者なのか分からないが、こちらの敵だということは分かったよ」


そう言って何か棒状の杖を手に取る。


「和人危ない!」


その瞬間ハイナに突き飛ばされたと思ったら近くで勢いよく爆発する。


「な、何だ何だ!?何でいきなり爆発したんだ!」

「僕の邪魔をすると言うなら容赦はしないよ」


爆発の原因はこちらを鋭い視線で睨みつけてるロウリの魔法だとすぐに分かった。


「おいおい、こっちは丸腰だぜ。そんなやつに魔法なんて使わないだろ」

「そんなの知らん!さっきの侮辱された怒りも一緒にぶつけてやる!」


そう言って爆発魔法を連発で撃ってくる。


「おいぃぃぃ!!ちょっと待て!当たる!当たっちゃうから!おい、ハイナ助けてくれ!」

「和人……あんた私の事助けに来たんじゃないの?」

「今は無理!俺が助けてほしい!」


俺は何とか逃げ回っているが逃げるのにも限界が来てしまい追い込まれてしまう。


「正義感に駆られてこんな所に来たようだけど、それも無駄だったみたいだね」

「なあちょっとお話しない?ほら、平和的解決が1番ハッピーで終われるだろ?」

「こんな醜態晒されて今更話し合いで追われるか!死ね!!」


何かねぇか!

その時ポケットから袋が落ちる。

それは果物屋の店主から貰ったジュウカだ。

そうだこいつで。


「これでも喰らえ!」


俺は袋からジュウカを取り出したロウリに向かってジュウカを潰した。


「ぐぅあ!目が!目がぁぁぁぁ!!!」


目が見えなくなった事で的が外れ後ろの棚が爆発しそのまま棚が倒れる。

その時写真の様な物が目に映る。


「こ、これは………」


それは上半身裸で体中傷だらけの少女が笑顔で写真に写っていた。


「美しいだろ?その子は薬を打っても中々心が折れないから物理的に屈服させたんだよ」

「どうやらテメェがイカれてるのは性癖だけじゃ無さそうだな」


こいつらも本当は弟子にもなりたく無かったのに薬で人生変えられちまったってことか。


「きーめた。やっぱり俺、ハイナの師匠になる事にした。こんなクズ野郎の弟子にならせるくらいなら俺がなる方がまだマシだ」

「え?ちょ、何言ってんのよ!勝手に決めないでよ」

「残念だが師匠変更は罰則に値するぞ。まぁハイナがなりたいと言えば変更可能だけどね。でもそれは無理だ。ハイナは絶対コイトを選ぶ。だからこそ俺が薬で屈服させるんだよ」

「そんなことは知ってんだよ。だからハイナお前が決めろ」


俺はハイナを指差す。

突然の出来事で混乱してるのかそれともまだ迷いがあるのか困惑の表情を浮かべる。


「こんだけ待った所で居ないもんは居ないし、帰っても来ない。いつまでも立ち止まってるだけじゃなくもうそろそろ進まなきゃいけないんじゃねぇのか?コイトもそれを願ってるはずだぞ」

「コイト………」

「選べ!クズロリコンの弟子になるか!それとも魔法も使えない最弱の師匠の弟子になるか!」

「それってどっちも最悪じゃない!?」

「そんなもんだ人生なんて!上手くいくことなんてないんだよ!だからこそ後悔の無い選択を選ぶんだ」

「何言ってんだお前は!」


ロウリが再び魔法を放ち始める。

それを俺は何とか避ける。

森を走ったりとかしてたから脚力がついて案外避けられるな。


「ハイナ!」

「私は!私は………」

『ハイナ、師匠が弟子を選ぶんじゃないの。弟子が師匠を選ぶのよ。自分に付きたいと思う人の所に付きなさい。それがあなたにとっての師匠なんだから』

「っ!?コイト私決めたよ………」


するとハイナがロウリの所に近づいてくる。


「ハイナ!やっぱり僕の所に来たんだね。そりゃそうだ。こんないい加減な男の所なんかより僕の所に来た方が……え?」


するとハイナはロウリの手を握りニコリと笑顔を向ける。


「な訳ねぇだろ!このクソロリコン野郎がァァァ!!!」

「何でぇぇぇぇぇ!!!??」


そしてそのままハイナによってふっ飛ばされた。


「お前意外と怪力なんだな」


するとハイナがこちらに近付いて来る。

そしてスッと手を出す。


「え?何?お小遣いか?お小遣いが欲しいのか?」

「そんなわけ無いでしょ!」


そう言って思いっきりすねを蹴る。


「痛ってぇぇぇ!!!おま、冗談でもそこは蹴っちゃだめだろ!」


俺はすねを抑えながらうずくまる。


「いいから早くしなさい!」


そう言ってまた手を出す。


「………分かってるよ。よろしくな」


俺はハイナの手を握る。

その手は俺のより小さく長年触れた事がなかった女の手だった。


「言っとくけど完全に認めた訳じゃないからね!コイトの為にしょうがなく弟子になってるだけだから!分かった」

「分かった、分かったって。それじゃあ早く帰ろうぜ。腹減って仕方ねぇよ」

「私もお腹空いたわ。和人お金頂戴」


そう言って金をよこせと言わんばかりに手を出す。


「俺が持ってる訳ねぇだろ。お前が払えよ」

「は!?前上げたお金全部使っちゃったの!?」

「え?だって俺ジャンケンで勝ち取ったやつだし。使っていいと思って服とか買っちまったんだよ」

「よく見ると服とか色々変わってる。どうすんのよ!私、もうお金使い切っちゃったわよ!」


そう言ってポケットから空っぽの袋を取り出す。


「はぁ!?てことは何、今日晩飯抜きってことか!?ふざけんなよ!俺結構頑張ったのにその結果がこれかよ!」

「しょうがないわね。今日はモンスターでも狩ってしのぎましょうか」

「おい何だそのひと狩り行こーぜ的なノリは。俺まじ無理だから、今日本当に疲れて無理だから!」

「何言ってのよ。ほら、さっさと行くわよ」

「やだー!もう嫌だー!!」


こうして最弱師匠と最強の弟子が誕生した。



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